20 / 221
しょぼ
しおりを挟む
静かに、しかし引かない姿勢で主張をぶつけ合うしょーちゃんと監督。
絡まった意地を解きほぐすように穏やかに監督に語りかけたのは小国さんだった。
「確かに無意味なキャスティングに振り回されたくはありません。ありがちなプロダクションの論理、バーターとかね、もしくはスポンサーのごり押しとか? そういう、作品の純度とは関係のないところから、適切ではないキャストの起用を強要されるとか、そんなものはご免蒙りたい。こちとらメジャーでも超大作を創りたいわけでもありませんからね。一方で、意味があってそれが作品の純度を維持または高めるのに必要であるなら、プロにこだわらないってのも、プロとしての腕の見せ所でしょう? 実際千屋さん、あなたそんな作品をいくつも手掛けてるじゃありませんか。
そもそも依頼させてもらった時点で、主となるコンセプトと構成の概要、キャスティングの構想は伝えていて、その内容で受けてくださったんですから、今更そこをごねないでくださいよ」
駄々をこねる子どもに、「ね?」とでも言いそうな顔で語りかける小国さん。
この人は、この厄介そうな監督馴らしのプロとしてここにいるのかもしれない。バツの悪そうな監督からは、気勢が削がれた雰囲気があった。
「……なら訊くがよ。映は美宝をこの作品のテーマに導く序盤のキーマンだ。主人公を惹き込み、巻き込むエネルギーがあるキャラクターだ。その解釈はあっているか?」
「はい、ご認識の通りです」しょーちゃんは頷く。
「主演は妃夜だぞ? オーラを抑え、巻き込まれる主人公くらいいくらでも演じきれる実力派だ。俺だってどれだけのスター様だろうが、そう撮ろうと思えば、地味などこにでもいる人物として映すことだってできる。それでもなぁ? このしょぼくれたガキが同格の存在としてひとつの画面に納まんのは無理あんだろーが」
しょっ…ぼっ⁉︎
私のこと⁉︎ 私今、すごい悪口言われなかった……⁉︎
「んなっ⁉︎」
言われた私よりも先に反応し、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバーが闘犬になったかのように、可愛らしい顔に闘争心を現している要さん。
「それは聞き捨てなりません!」
しょーちゃんもややファイティングポーズを取っている。これは要さんを抑えつつ、でもしょーちゃんとしてもしっかり否定しておきたいという意志表示だろう。
「確かに、一見この子はぼんやりしているようにも見えます」
えーっ⁉︎
まあ、自分が悪く言われているのに、自分の代わりに声をあげている人たちの後ろで、何も言えていないのだから、言われても仕方ないのかもしれないけれど……。
絡まった意地を解きほぐすように穏やかに監督に語りかけたのは小国さんだった。
「確かに無意味なキャスティングに振り回されたくはありません。ありがちなプロダクションの論理、バーターとかね、もしくはスポンサーのごり押しとか? そういう、作品の純度とは関係のないところから、適切ではないキャストの起用を強要されるとか、そんなものはご免蒙りたい。こちとらメジャーでも超大作を創りたいわけでもありませんからね。一方で、意味があってそれが作品の純度を維持または高めるのに必要であるなら、プロにこだわらないってのも、プロとしての腕の見せ所でしょう? 実際千屋さん、あなたそんな作品をいくつも手掛けてるじゃありませんか。
そもそも依頼させてもらった時点で、主となるコンセプトと構成の概要、キャスティングの構想は伝えていて、その内容で受けてくださったんですから、今更そこをごねないでくださいよ」
駄々をこねる子どもに、「ね?」とでも言いそうな顔で語りかける小国さん。
この人は、この厄介そうな監督馴らしのプロとしてここにいるのかもしれない。バツの悪そうな監督からは、気勢が削がれた雰囲気があった。
「……なら訊くがよ。映は美宝をこの作品のテーマに導く序盤のキーマンだ。主人公を惹き込み、巻き込むエネルギーがあるキャラクターだ。その解釈はあっているか?」
「はい、ご認識の通りです」しょーちゃんは頷く。
「主演は妃夜だぞ? オーラを抑え、巻き込まれる主人公くらいいくらでも演じきれる実力派だ。俺だってどれだけのスター様だろうが、そう撮ろうと思えば、地味などこにでもいる人物として映すことだってできる。それでもなぁ? このしょぼくれたガキが同格の存在としてひとつの画面に納まんのは無理あんだろーが」
しょっ…ぼっ⁉︎
私のこと⁉︎ 私今、すごい悪口言われなかった……⁉︎
「んなっ⁉︎」
言われた私よりも先に反応し、ノヴァ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバーが闘犬になったかのように、可愛らしい顔に闘争心を現している要さん。
「それは聞き捨てなりません!」
しょーちゃんもややファイティングポーズを取っている。これは要さんを抑えつつ、でもしょーちゃんとしてもしっかり否定しておきたいという意志表示だろう。
「確かに、一見この子はぼんやりしているようにも見えます」
えーっ⁉︎
まあ、自分が悪く言われているのに、自分の代わりに声をあげている人たちの後ろで、何も言えていないのだから、言われても仕方ないのかもしれないけれど……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
スルドの声(共鳴2) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
何も持っていなかった。
夢も、目標も、目的も、志も。
柳沢望はそれで良いと思っていた。
人生は楽しむもの。
それは、何も持っていなくても、充分に得られるものだと思っていたし、事実楽しく生きてこられていた。
でも、熱中するものに出会ってしまった。
サンバで使う打楽器。
スルド。
重く低い音を打ち鳴らすその楽器が、望の日々に新たな彩りを与えた。
望は、かつて無かった、今は手元にある、やりたいことと、なんとなく見つけたなりたい自分。
それは、望みが持った初めての夢。
まだまだ小さな夢だけど、望はスルドと一緒に、その夢に向かってゆっくり歩き始めた。
スルドの声(共鳴) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
日々を楽しく生きる。
望にとって、それはなによりも大切なこと。
大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。
それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。
向かうべき場所。
到着したい場所。
そこに向かって懸命に突き進んでいる者。
得るべきもの。
手に入れたいもの。
それに向かって必死に手を伸ばしている者。
全部自分の都合じゃん。
全部自分の欲得じゃん。
などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。
そういう対象がある者が羨ましかった。
望みを持たない望が、望みを得ていく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる