40 / 221
糖分
しおりを挟む
シュークリームの甘さを体に巡らせながら、私は要さんに伝えた。
「要さん、私は大丈夫ですから。千屋監督と真っ向からぶつかるの少し控えません?」
「……私、余計なことしてる?」
同じくシュークリームを齧っていた要さんが、途端に弱々しい目をする。ピットブルの射抜くような眼差しが、庇護欲をそそるチワワの涙目になっていた。
「そんなことないです! さっきのは絶対要さんが正しい! 蹴られていた照明の新人の方も、固いもの投げつけられていた大道具さんも、泣き寝入るべき被害者じゃないと思うもん。でも、本人たちがそれを言えないとして、半分部外者の私たちが正論を言ったとして、果たしてこの場における弱者の人たちにとって良い環境になるかは……」
「……確かに、わからないね。人のために怒っているようで、自分の価値観で物事を測って感情で対応してしまっていたかもしれない。反省する」
これが、要さんだ。
正義感が強く、少々血気盛ん。だけど本質は冷静で沈着。理性的で論理的。客観的に事実も自分も見ることができ、情報に対し正しい分析と評価ができる。その分析の結果、自分が間違っているとなれば、素直に認め、謝り、反省できる。
そういう器の大きさを持っている、尊敬できる先輩。ずっと尊敬してきた先輩。
「いえ、本来そういうあるべき姿への調整も含めて、僕がすべきなんですよ。演者の方にそれをさせてしまって本当に申し訳ない。いかな理由があれ、暴力は肯定できません。時代は関係ありませんよ。声をあげてくれた上杉さんが気に病まないでください。体質も含め、正しくないものはやはり、正すべき『悪しき慣習』なんですよ。変革に痛みを伴うとしても」
要さんの真摯な言葉に、小国さんも尚恐縮し陳謝した。
小国さんはどちらが良い悪いではなく、場と環境、業界の在り方と体質、そう言ったものへの求めたいこと、変えたいこと、どうにもならないこと、の狭間で悩み試行錯誤をしているのだった。
少し冷静になった要さんに、小国さんは理性的で論理的な意見を述べた。
みんなが一旦クールダウンしていた。
糖分、偉大だなぁ。
いや、その空気を作った小国さんがすごいのか?
実情に対し、真摯に詫びた小国さん。
「サーティワン案件、あの短期間で四回は出ちゃいましたよ。さすがに太るしおなか壊すから、三回に負けときますね」素直に謝られてしまい、少々バツが悪そうに言う要さん。
太りそうと言うが、さすがに一度に全権利を行使したりはしない。
このペースだと、債権の消費より債務の重なりの方が多くなりそうだ。
「要さん、私は大丈夫ですから。千屋監督と真っ向からぶつかるの少し控えません?」
「……私、余計なことしてる?」
同じくシュークリームを齧っていた要さんが、途端に弱々しい目をする。ピットブルの射抜くような眼差しが、庇護欲をそそるチワワの涙目になっていた。
「そんなことないです! さっきのは絶対要さんが正しい! 蹴られていた照明の新人の方も、固いもの投げつけられていた大道具さんも、泣き寝入るべき被害者じゃないと思うもん。でも、本人たちがそれを言えないとして、半分部外者の私たちが正論を言ったとして、果たしてこの場における弱者の人たちにとって良い環境になるかは……」
「……確かに、わからないね。人のために怒っているようで、自分の価値観で物事を測って感情で対応してしまっていたかもしれない。反省する」
これが、要さんだ。
正義感が強く、少々血気盛ん。だけど本質は冷静で沈着。理性的で論理的。客観的に事実も自分も見ることができ、情報に対し正しい分析と評価ができる。その分析の結果、自分が間違っているとなれば、素直に認め、謝り、反省できる。
そういう器の大きさを持っている、尊敬できる先輩。ずっと尊敬してきた先輩。
「いえ、本来そういうあるべき姿への調整も含めて、僕がすべきなんですよ。演者の方にそれをさせてしまって本当に申し訳ない。いかな理由があれ、暴力は肯定できません。時代は関係ありませんよ。声をあげてくれた上杉さんが気に病まないでください。体質も含め、正しくないものはやはり、正すべき『悪しき慣習』なんですよ。変革に痛みを伴うとしても」
要さんの真摯な言葉に、小国さんも尚恐縮し陳謝した。
小国さんはどちらが良い悪いではなく、場と環境、業界の在り方と体質、そう言ったものへの求めたいこと、変えたいこと、どうにもならないこと、の狭間で悩み試行錯誤をしているのだった。
少し冷静になった要さんに、小国さんは理性的で論理的な意見を述べた。
みんなが一旦クールダウンしていた。
糖分、偉大だなぁ。
いや、その空気を作った小国さんがすごいのか?
実情に対し、真摯に詫びた小国さん。
「サーティワン案件、あの短期間で四回は出ちゃいましたよ。さすがに太るしおなか壊すから、三回に負けときますね」素直に謝られてしまい、少々バツが悪そうに言う要さん。
太りそうと言うが、さすがに一度に全権利を行使したりはしない。
このペースだと、債権の消費より債務の重なりの方が多くなりそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
スルドの声(共鳴2) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
何も持っていなかった。
夢も、目標も、目的も、志も。
柳沢望はそれで良いと思っていた。
人生は楽しむもの。
それは、何も持っていなくても、充分に得られるものだと思っていたし、事実楽しく生きてこられていた。
でも、熱中するものに出会ってしまった。
サンバで使う打楽器。
スルド。
重く低い音を打ち鳴らすその楽器が、望の日々に新たな彩りを与えた。
望は、かつて無かった、今は手元にある、やりたいことと、なんとなく見つけたなりたい自分。
それは、望みが持った初めての夢。
まだまだ小さな夢だけど、望はスルドと一緒に、その夢に向かってゆっくり歩き始めた。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
スルドの声(共鳴) terceira esperança
桜のはなびら
現代文学
日々を楽しく生きる。
望にとって、それはなによりも大切なこと。
大げさな夢も、大それた目標も、無くたって人生の価値が下がるわけではない。
それでも、心の奥に燻る思いには気が付いていた。
向かうべき場所。
到着したい場所。
そこに向かって懸命に突き進んでいる者。
得るべきもの。
手に入れたいもの。
それに向かって必死に手を伸ばしている者。
全部自分の都合じゃん。
全部自分の欲得じゃん。
などと嘯いてはみても、やっぱりそういうひとたちの努力は美しかった。
そういう対象がある者が羨ましかった。
望みを持たない望が、望みを得ていく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる