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スポンサーの論理
しおりを挟む(色部 誉)
河内さんが去り際にちらっと言っていた「アンバサダー」をそのアイドルに担ってもらうっていう話は、小国さん的にはできなくはないみたいだったが、安く使えると言ってもそれだけのために起用するのは割高で、前提のメリットが揺らいでしまう。
そもそもコンテスト作品として提出しつつ、助成金を得て展開しようとしている企画だから、広告や宣伝に関する考え方は通常の映画などとは異なる。
完成度と実績と評価と文化的な展開を以て、プレスリリースなどを使いじわじわと広げていく。
その過程で文化的な価値に対しての投資を行ったスポンサー企業のブランディングに寄与するというのが、今回のスポンサーへのベネフィットとなる。著名人を立ててリリース早々に紹介してもらうといったやり方には向いていない。その辺の話はすぐに理解してもらえたのだそうだ。
しかし理屈を超えた粘りを見せる相手には、論理のみで諦めてもらうというのは難しいと思える。となると、何らかの材料を提供したと思われた。
「要は、安く使える広告塔が使えれば良い。そして、それを使って自社のイメージ戦略に貢献できれば良い。ってことなので、別番組の制作プロデューサーを紹介しました。バラエティ専門の外注のプロデューサーですが、ちょうどうちで新しい企画を立てようという話がありまして。広告塔のアイドルありきで、コンテンツを制作し、そのスポンサーになってもらうという提案です。新たなスポンサー契約ですから、広宣計画の見直しや予算組など、すぐに簡単に出来ることではないですが、期をまたげばどうせ組まなくてはいけない計画です。そこに当て込めば良い」
内容は理解できる。
しかし、アイドルの人は、まるでモノ扱いだ。きっと妃夜さんも、なんなら監督も、もしかしたらプロジェクト自体も、企業にとってはモノのひとつなのかもしれない。
「半期が九月末ですから、三ヵ月も待たずに次の計画は必要になるのです。今のうちに動いても遅いということはあっても、早すぎることはない。制作は今のうちに始めておいて、リリースが秋頃といったところでしょうか。その頃、そのアイドルが旬かどうかは分のそれほど悪くない賭けではありますが、仮に旬をやや逸していたとしても、それは定番化している状態である公算が高く、むしろ単価は上がっているはずです。もちろん、問題行動等のイレギュラーは起こり得ますが、そのリスクは時期を問いません。もしその未来があるのだとしたら、むしろ今使用した方がその未来に発覚したときのダメージの方が大きい。未来に起こったあとの製作なら、差換えれば済むだけなのですから」
なるほど。そういうことも考えなくてはならないのか。
モノ扱いでも、モノではない。人間を完全に管理しコントロールすることなんてできない。たったひとりが、社会的な問題を起こしてしまえば、すべてが無駄になってしまうこともあり得る。そしてそれは、決して珍しいとまでは言えない頻度で起こっている。
もちろん契約の内容でリスクヘッジはしてるのだろうけど、多分法的に請求できる損害賠償を超える被害を、実際は蒙ることも多いのだと思う。場合によっては、二次的、三次的な被害も出るだろうし、影響が長期化することもある。
そう考えれば、色々な意味でスポンサーの担当者もシビアにならざるを得ないのだろう。
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