スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら

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ひとつめの依頼

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「それで、早速で恐縮なのですが、話というのは――」
 
 監督から聴いているかもしれませんが、と切り出されたのは、まさに先ほど監督から聴いた話だった。半分以上は、この件のことだろうなという予感があった。

 監督は詳しいことは小国さんから聴くようにと言うだけで、具体的なことは教えてもらえなかった。
 既に映と美宝の山場のシーンは中抜きで撮影が済んでしまっている。
 簡単に増やしたりできるものなのだろうか。

 そんな疑問に、小国さんは答えてくれた。

 大枠はもちろん変わらない。


 映に導かれ、サンバと出会い、その魅力にハマっていく美宝。
 倦んだような日々が、日に日に彩られていくのが前半のシーンだ。
 その伴走者は、多少ぶつかりながらも共にスルドを演奏する同じクラスの同級生の映。いつしかその関係性は、「親友」と読んで差し支えのないものとなっていく。

 やがて、より深くサンバの世界を追求したいと思うようになった美宝。
 あるサンバのイベントで、本場ブラジルからパフォーマーとして来日していたサンビスタ、ラウラという女性と出会う。
 スケールもクォリティも、何もかもが桁違いの本場のサンバ。
 美宝はやがて、その世界に身を置きたいと思い至るようになった。魅入られた、といっても良い。


 そんな美宝の、人生を賭した決意を聞くのが、前半最大の山場となるシーンだ。ある種の決別のシーンでもある。
 満天の星の下、林間の澄んだ空気に包まれた美宝と映が、語り合い、想いをぶつけ合うシーンだ。


 後半は、夢を追う子どもと、現実を生きる大人。現実を語る大人たちは、単にリアリストという意味ではなく、現実的に、今その夢を実現するためには、何が必要なのかを美宝に突きつける。それを追求することになる美宝。

 ブラジルで生活し、サンバを突き詰めていきたい美宝の夢を実現するには、今高校を辞めてブラジルに渡るというやり方では無理があった。
 最も現実的なのは、ブラジルの学校に留学するか、入学するかだ。
 異国の大学への進学も、長期間を前提とした留学も、簡単にできることではないことではない。
 結局、高校を卒業しブラジルへの入学資格を得るための、国内の入試とは異なる難易度を持つ試練を受けることになる美宝。
 その傍らで、渡航や向こうでの生活をスタートさせるに能うだけの資金も自ら集めることになる。
 両親は、決して手放しで認めていたわけではない。その覚悟を問うていた。
 現地での生活は保証するとラウラは言っていたが、保護者の立場で、その提案に安易におんぶに抱っこというのも良しとはしなかった。

 日本で受験する同級生たちの受験勉強が本格化する前に、美宝の戦いは始まった。

 美宝のサンバへの想いと夢。
 それを掴み取るための戦いを描いたのが後半だ。

 この、前半と後半のバランスを変えるということだった。
 前半を少しボリューミーにして、気持ち三分のニ弱くらいまで延ばし、残り三分の一強で、一気に畳み掛けるという構成にするとのことだった。
 件の山場のシーンは、起承転結の四つに分けるとしたら、正に転を担う重要な位置付けとなった。

 確かに、この方がメリハリも効いているし、加速感があって、ある意味焦燥感に駆られながら走り続けている、強く激しく危うく儚い、盛んなれど不安定な焔のような少女の青春を描けるような気がした。
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