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バハカォンにて
しおりを挟むシャッターを開けた入り口付近では、何人かのメンバーがアブリアーラの制作作業をしていた。大きなベニヤ板にスプレーで色を付けている。
あの板を折れないように曲げて、ふたつ繋げて底板をつけて、円形にするらしい。
なんだか繊細さが必要そうな作業だ。接続中に、板を支え、押さえる役割くらいできそうな気がしたが、迂闊に手を出したら割ってしまいそうだ。
「おー、誉も来たんだ。こんにちは。衣装組は二階でやってるよー」
小太鼓の『カイシャ』奏者のテッチャンのニコニコとした顔にはいつも癒される。表情は柔らかなのに、手に持った自動釘打ち機はバッスンバッスンと派手な音を立てながら木材に釘を打ち付けている。
「こんにちはぁ。わあ、大工さんみたい」
テッチャンの手で鮮やかに組みあがっていく木材を見て感嘆の声をあげると、テッチャンは嬉しそうに笑っていた。
倉庫内のテーブルに、作業用の衣装や素材が置いてあった。一セット持って二階に上がる。
「こんにちはー」
「こんにちは!」「おつかれさまー」「あ、誉―!」
口々にかけられる挨拶の声。
十四時くらいからやりまーすみたいな案内があって、その時間丁度くらいに着いたつもりだったが、既に室内には五人のメンバーが集まっていた。ダンサー三人、バテリアからはふたり。ただ、これでも集まりは良いとまでは言えない。多い時は朝から十人を超える規模で作業するなんてこともある。
「おつかれぇ。休みの日に来てくれてありがとうね」
みんなでやるべきことなのに、お礼を言ってくれたのはテッチャンと同じくカイシャの奏者で、バテリアのリーダーでもあるメイさん。チームのノベルティ関連も管轄している。
チームの運営に携わっている立場だからか、メンバーの献身にはまずお礼の言葉が浮かぶのだろう。
「メイさんは朝から作業してたんですか?」
「うん、今日はこれのために一日空けてたからねー。今日で一気に進めちゃいたい」
「ですね、がんばりましょう! いっぱい作るぞー」
気合を入れてグルーガンを握る。
チーム所有のグルーガンもたくさん置いてあったが、私が手にしているのは、前のチーム所属時代から愛用している、ハンズで買った白地に花柄模様でやや丸っこい形状のマイグルーガン。
いくつものイベントの準備を、支えてくれた存在だった。
グルーガンは、その名の通り、グルー(糊)のガン(銃)。
銃のような形状の道具の握る部分には、銃同様にトリガーがあり、それを引くと銃口に相当する位置にある金属の先端から、熱されて溶けた糊が出てくる。
その糊を、衣装の布地に付け、光るストーンやスパンコールなどを取付ける作業だ。
サンバの派手な衣装は手作りだったり、自らカスタマイズして仕上げたりすることが多く、その仕上がりはできるだけ派手になるような作業が多い。自ずと足し算の制作作業となり、光を反射する素材や派手な色味の素材をくっつけるといった作業をする機会が増える。
グルーガンはサンバを楽しむ人やサンビスタにとっては、必需品のひとつだ。
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