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テストプレイ当日がやってきた。場所は近場のカラオケ店の1室。大きな声を出しても問題なく、飲食もできる。時間が余ったら歌えばいい。
オリジナルルールでやるので、ルールブックもダイスも紙もペンも用意していない。
必要なものは全てスマホの中に入っていた。
「すみません、一曲だけ歌います!」
緊張をほぐすため、私は十八番のルパン三世のテーマを熱唱する。リヒロ氏は「ルパ~ンザサ~ド」の部分を歌ってくれている。優しい先輩である。
気を取り直して、テストプレイの開始である。
「物語の設定はこんな感じです。」
私はLINEのノートに、あらかじめ書いておいた設定を貼り付けて共有する。
■舞台:中東の国(特定しない)
砂漠の中で異音が鳴り響くようになり、調査隊が派遣された。
今まで光学迷彩で隠されていた古代遺跡が、何らかの原因で迷彩が機能しなくなり、可視化できるようになり、今回の発見に至った。
遺跡内部を調査していくと、イラストと古代語が書かれた壁画が発見される。
あなたは考古学者(古代語を解読できる)として今回の調査に参加してほしい。
「光学迷彩!?古代遺跡なのに!?」
「砂漠の中で独自の技術体系を獲得した感じです。深くは考えていないので、深く考えてはいけません」
「分かった。ふかくかんがえない」
「何でバカっぽく言い直したんですかw」
リヒロ氏のトークの軽快さに助けられながら、冒頭の設定について詰めていく。
「えーと、キャラクター名や能力、どういう研究をしてるかとかは決めといたほうがいい!?」
「いや、テストプレイなんでスルーしましょう」
私は早く、自分の考えた物語を体験してもらいたくて、先を急ぐ。
「分かった。壁画の詳細などは事前に知れるの!?」
「こちらです」
私はあらかじめ用意しておいた画像を、LINEで送る。そして、続けて壁画の解説をノートに追記した。
■遺跡に関する追加情報
中東の砂漠の真ん中に位置する。光学迷彩技術によりこれまで発見されることがなかった。先発隊の調査によると、風力発電装置に砂が詰まり、発電効率が低下、異音が発生、光学迷彩を維持できなくなった。
異音の報告を受け調査隊が砂嵐の中を進んで行ったところ、遺跡の発見となった。壁画は巨大な施設の4方向の壁に描かれており、詳細は以下のとおりである。
■壁画1『ビヒムカン』
1つ目の壁画。
天を貫く巨大な塔のようなものが描かれています。
古代文字で“不気味な音が聞こえ、人々は不安をいだいた。突然の地響きとともに巨大な塔が現れた。我々はその塔を目指した”と書かれています。また、絵の見出しなのか古代語で“ビヒムカン”と書かれています。“ビヒムカン”は他の文献にも出てきたことがなく、読めるけど意味が不明な単語です。
「イラスト付きとは気合が入ってるねw“ビヒムカン”は、考古学者として読み方は分かるけど、意味はわからない単語ってことでいい!?」
「その考え方で大丈夫です。残りの壁画についても情報を提供します」
■壁画2『カンガプルナ』
2つ目の壁画
不気味な翼竜(頭部や体が頭蓋骨や肋骨で覆われているかのような模様)の死骸を人々が目撃する様子が描かれています。
古代文字で“塔はいつの間にか消えてしまっていた。塔があったあたりに向かうと崩壊した街並みと『カンガプルナ』の死体を発見した。”と書かれています。
『カンガプルナ』はおそらくこの不気味な竜のことを指していると思われます。他の文献で見たことがない表現ですが、直訳すると“災厄を呼ぶ竜”というような意味になるようです。
「塔が消えていた!?一夜城的なもの!?集団幻覚、光学迷彩、宇宙にとんで行ったか地下に消えたか…」
リヒロ氏に考える余裕を与えないように、さらなる情報を開示していく。
■壁画3『卵』
3つ目の壁画
巨大な卵が描かれています。
“カンガプルナの死骸の下から卵が見つかった。まだ生きている可能性があるが、硬すぎて壊すことができないため、超低温で保存することで孵化しないように処置した。”と古代語で書かれています。
■壁画4『クルルカン』
4つ目の壁画
発見された遺跡の外観が描かれています。巨大な施設の周りに何本もの風力発電装置が立っているのが見えます。
“我々は再び災厄が訪れないことを願い、災厄の卵を保存するための施設、街を作ることにした。卵を孵化させてはならない。第三者に卵の存在が知られないよう、光学迷彩で街を隠す”と書かれています。タイトルとして“クルルカン(幻影都市)”と書かれています。この遺跡の元の名前だと思われます。
「先発の調査隊から送られてきた壁画の画像は以上になります。」
「固有名詞が多いな。“ビヒムカン”が意味が分からなくて、たぶん消えた塔のことを指している。“カンガプルナ”が“災厄を呼ぶ竜”、“クルルカン”が“幻影都市”ね。これ、実は異世界に来てましたとかじゃないよね!?」
「ファンタジーっぽい設定が出てきますが、現実世界に近い設定です」
「アンチャーテッドみたいな感じ!?」
リヒロ氏の言うアンチャーテッドとは、主人公のネイトを操り、遺跡などを探索する、プレイする映画とも称された名作ゲームだ。私は2が一番好き。
「主人公はネイトほど強くはないですからね。いきなり遺跡でパルクール始めないでくださいよw古代文字の解析が必要と判断したため、考古学者であるあなたに、調査への同行依頼が来たわけです」
「オッケー。整理すると、異音がするから調査に行ったら遺跡を発見して、古代文字の書かれた壁画があるので、専門家の考古学者を呼んだと」
「その理解で大丈夫です。それではセッションを始めたいと思います」
オリジナルルールでやるので、ルールブックもダイスも紙もペンも用意していない。
必要なものは全てスマホの中に入っていた。
「すみません、一曲だけ歌います!」
緊張をほぐすため、私は十八番のルパン三世のテーマを熱唱する。リヒロ氏は「ルパ~ンザサ~ド」の部分を歌ってくれている。優しい先輩である。
気を取り直して、テストプレイの開始である。
「物語の設定はこんな感じです。」
私はLINEのノートに、あらかじめ書いておいた設定を貼り付けて共有する。
■舞台:中東の国(特定しない)
砂漠の中で異音が鳴り響くようになり、調査隊が派遣された。
今まで光学迷彩で隠されていた古代遺跡が、何らかの原因で迷彩が機能しなくなり、可視化できるようになり、今回の発見に至った。
遺跡内部を調査していくと、イラストと古代語が書かれた壁画が発見される。
あなたは考古学者(古代語を解読できる)として今回の調査に参加してほしい。
「光学迷彩!?古代遺跡なのに!?」
「砂漠の中で独自の技術体系を獲得した感じです。深くは考えていないので、深く考えてはいけません」
「分かった。ふかくかんがえない」
「何でバカっぽく言い直したんですかw」
リヒロ氏のトークの軽快さに助けられながら、冒頭の設定について詰めていく。
「えーと、キャラクター名や能力、どういう研究をしてるかとかは決めといたほうがいい!?」
「いや、テストプレイなんでスルーしましょう」
私は早く、自分の考えた物語を体験してもらいたくて、先を急ぐ。
「分かった。壁画の詳細などは事前に知れるの!?」
「こちらです」
私はあらかじめ用意しておいた画像を、LINEで送る。そして、続けて壁画の解説をノートに追記した。
■遺跡に関する追加情報
中東の砂漠の真ん中に位置する。光学迷彩技術によりこれまで発見されることがなかった。先発隊の調査によると、風力発電装置に砂が詰まり、発電効率が低下、異音が発生、光学迷彩を維持できなくなった。
異音の報告を受け調査隊が砂嵐の中を進んで行ったところ、遺跡の発見となった。壁画は巨大な施設の4方向の壁に描かれており、詳細は以下のとおりである。
■壁画1『ビヒムカン』
1つ目の壁画。
天を貫く巨大な塔のようなものが描かれています。
古代文字で“不気味な音が聞こえ、人々は不安をいだいた。突然の地響きとともに巨大な塔が現れた。我々はその塔を目指した”と書かれています。また、絵の見出しなのか古代語で“ビヒムカン”と書かれています。“ビヒムカン”は他の文献にも出てきたことがなく、読めるけど意味が不明な単語です。
「イラスト付きとは気合が入ってるねw“ビヒムカン”は、考古学者として読み方は分かるけど、意味はわからない単語ってことでいい!?」
「その考え方で大丈夫です。残りの壁画についても情報を提供します」
■壁画2『カンガプルナ』
2つ目の壁画
不気味な翼竜(頭部や体が頭蓋骨や肋骨で覆われているかのような模様)の死骸を人々が目撃する様子が描かれています。
古代文字で“塔はいつの間にか消えてしまっていた。塔があったあたりに向かうと崩壊した街並みと『カンガプルナ』の死体を発見した。”と書かれています。
『カンガプルナ』はおそらくこの不気味な竜のことを指していると思われます。他の文献で見たことがない表現ですが、直訳すると“災厄を呼ぶ竜”というような意味になるようです。
「塔が消えていた!?一夜城的なもの!?集団幻覚、光学迷彩、宇宙にとんで行ったか地下に消えたか…」
リヒロ氏に考える余裕を与えないように、さらなる情報を開示していく。
■壁画3『卵』
3つ目の壁画
巨大な卵が描かれています。
“カンガプルナの死骸の下から卵が見つかった。まだ生きている可能性があるが、硬すぎて壊すことができないため、超低温で保存することで孵化しないように処置した。”と古代語で書かれています。
■壁画4『クルルカン』
4つ目の壁画
発見された遺跡の外観が描かれています。巨大な施設の周りに何本もの風力発電装置が立っているのが見えます。
“我々は再び災厄が訪れないことを願い、災厄の卵を保存するための施設、街を作ることにした。卵を孵化させてはならない。第三者に卵の存在が知られないよう、光学迷彩で街を隠す”と書かれています。タイトルとして“クルルカン(幻影都市)”と書かれています。この遺跡の元の名前だと思われます。
「先発の調査隊から送られてきた壁画の画像は以上になります。」
「固有名詞が多いな。“ビヒムカン”が意味が分からなくて、たぶん消えた塔のことを指している。“カンガプルナ”が“災厄を呼ぶ竜”、“クルルカン”が“幻影都市”ね。これ、実は異世界に来てましたとかじゃないよね!?」
「ファンタジーっぽい設定が出てきますが、現実世界に近い設定です」
「アンチャーテッドみたいな感じ!?」
リヒロ氏の言うアンチャーテッドとは、主人公のネイトを操り、遺跡などを探索する、プレイする映画とも称された名作ゲームだ。私は2が一番好き。
「主人公はネイトほど強くはないですからね。いきなり遺跡でパルクール始めないでくださいよw古代文字の解析が必要と判断したため、考古学者であるあなたに、調査への同行依頼が来たわけです」
「オッケー。整理すると、異音がするから調査に行ったら遺跡を発見して、古代文字の書かれた壁画があるので、専門家の考古学者を呼んだと」
「その理解で大丈夫です。それではセッションを始めたいと思います」
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