番になんてなりたくない!

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冒険者

拠点(クロ)

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「ようこそおいでくださいました。」

老齢の村長の自宅に赴き、依頼の件の確認をすることにした。

落ち着いたおももきのある建物内に案内され、促されるままソファーに座り、依頼書を見せた。
私とナヴィルはウィルの背後に控えるように立った。
ウィルから、『チームメンバーなのだから』と、小声で一緒に座ろうと促されたが、静かに断った。
主従関係というのもあるが、このチームのリーダーはウィルだ。
ウィルの横に座るという選択もあるかもしれないが、私やナヴィルよりも若いウィルがリーダーだと言ってもそう簡単に納得されないかもしれない。あえて背後に控えることにより、ウィルをトップだと認めさせた方がいい。

まぁ、ナヴィルは、兄である私が立てって控えるようにしているから、それに従っているだけなんだろうけど……

ウィルの少し困ったような、拗ねた顔も可愛いしな……
多分、『皇子扱いされても困る!』何て思ってるんだろうなぁ…

聞こえないようにクックッと笑う。
村長が一瞬キョトンとしていたが、直ぐに穏やかに話し始めた。
それで良い!

「この村は、見ての通り何もない、穏やかな土地です。若いもんは出稼ぎとかで街などに出稼ぎに出たり、移り住んでて、老齢化が進んでおります。今回の依頼は、森に住んでいる魔獣なんですが…いつもは大人しく、あまり害はないんです。ですが、今年に入ってから、森の樹々が倒されたり、村の畑が荒らされたりと……」
「その魔獣は昔からこの地にいたのですか?どんな種類で、大きさとか、数とかわかりますか?あと、討伐依頼とは書かれてなかったのですが?」
「昔からこの近くの森にいたんです。数は分かりませんが、多くはないと思います。あまり害が今まで無かったし、元々この村は、先祖が開拓して作ったものです。魔獣の居場所を少し奪ったかたちとも言えるでしょう。ですから、村民の命の危険が無いのなら、討伐はしなくても……と思っているんです。被害さえどうにかなれば……何か理由があるとは思うのですが、何せ、若い者があまりいませんので…」

少し困った顔をしていた。

なるほどね……

「わかりました。少し調査して、対処してみます。すみませんが、何処か私達泊まれる所を教えてもらえませんか?空き家でもなんでも良いので……」
「それでしたら、空き家で申し訳ありませんが、案内させます。生活に必要な物で、足らない物が有れば手配します。」

そう言うと、村人を呼んで、案内してくれた。
森の近く、この村の外れに位置する建物。
少し古ぼけて見えるが、手入れしたら大丈夫だろう。

「ここをお使いください。1年前に住んでた者が老齢で亡くなってから、誰も住んではいませんが、掃除は時々してたので、大丈夫だと思います。何かあれば、言ってください。」

そう言って、鍵を開け、窓を開けて行った。
鍵をウィルが受け取り、中に入ろうとした。
埃まみれなら、下手にウィルを入れて、喉を炒めたりしたら大変だ。
せめて、片付けてからウィルを入れたい。

「ウィル。少しだけ待ってくださいね。」
「何かあるの?」
「確認だけですよ。場合によっては、掃除してから……」
「一緒にするよ。」
「ダメです。」
「どうして?」
「どうしてもです。ここで待っててください。」

そう言い切る。
過保護の自覚はある。だが、しょうがない。
まぁ、ウィルが今まで色々やらかしてきたからか、心配事が尽きないのだが………


ウィルを外のベンチに座らせて、急いで作業を始めた。


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