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第二話メアリー・ビスマルク

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 私の名前はメアリー・ビスマルク。

レオン王国の皇女です。

后であるお母さまは私を産むと同時に亡くなったそうです。

そのせいか、兄であるレアードお兄さまはことあるごとに私がいやがる事をしてくるようになっていました。

しかし、ある日を堺にお兄さまは別人のように変わっていました。

それは、お兄さまが足を滑らせて頭を打った日のことでした。

廊下でお兄さまに遭遇した私はいつものように物陰に隠れました。

すると、お兄さまは私に話しかけてきました。

「メアリー」

「な、なんでしょうか、お兄さま」

私は恐る恐る返事をした。

「何もしないからこっちへおいで」

そうやさしく手招きするお兄さま。

恐る恐る近づいてみる。

「僕の手をみてごらん。種も仕掛けもありません」

兄はそう云いながら広げた右手の上にハンカチを被せる。

とりあえず云われた通りに見つめる。

「はいっ!」

そしてハンカチを取るとそこにはなんと薔薇の花があらわれる。

「わーっ!」

思わず私は驚きの声を上げる。

「さ、どうぞお姫様」

突然のことに驚き、少し嬉しくなり花を受け取った。

それからお兄さまが私にいじわるすることは全くなくなりました。

それどころかいつも優しく話しかけてくるようになりました。

しかし、どうしたらいいか戸惑っていた私は今までどおり距離をとって過ごしていました。

あの日からお兄さまは別人のようになったと城内で云われています。

そして家庭教師をお願いして魔術の勉強を始めたと聞きました。

そんなある日、事件は起こりました。

それは建国記念のパーティーの日でした。

「ちょっといいかい?」

話しかけてきたのは知らない男の人でした。

「君のお父上に君を呼んできてほしいと頼まれたんだ。ちょっと来てくれないか?」

「はい、わかりました」

手を繋がれついて行くとやがて人のいない廊下にやってきました。

「あの、お父さまは?」

すると突然口を塞がれました。

「んー!んー!」

叫ぼうとしても声が出ません。

そして縛られて抱えられました。

まだ幼い私でもこれは誘拐だとわかりました。

馬車に載せられたその時でした。

「待て!」

それはなんとお兄さまでした。

声にびっくりした誘拐犯だったがお兄さまを見てすぐに態度が変わる。

「ちっ。脅かしやがって。ワガママ王子じゃねえか。こうなったらお前もだ!」

「うわっ!」

やはりお兄さまでも大人の力には敵わず、アッという間に縛られて口も塞がれてしまう。

そして私と一緒に荷台に載せられ馬車が発進する。

(ああ、お兄さままで捕まってしまうなんて・・・)

するとなんとお兄さまは魔術で縛られていたロープを切ったのです。

そして、私に小声で話しかける。

「今から口の布を外すけど、静かにできる?」

私は黙って頷く。

するとお兄さまは私の拘束を解き、なんと魔術で馬車を止めたのです。

「サンドロック!」

お兄さまが目の前に岩を出現させると馬車が止まった。

「な、なんだ!?」

誘拐犯が驚いている隙にお兄さまは私の手を繋ぎ一緒に馬車から飛び降りました。

そして反対方向に走り出します。

するとそれに気付いた誘拐犯が追いかけてきました。

「おい!待てっ!」

私たちは必死に逃げましたがやはり大人の足には追いつかれてしまいました。。

「メアリー!逃げろ!」

お兄さまは手を離して誘拐犯に向かいます。

「お兄さま!でも」

「いいから!!」

お兄さまがそう叫んだ時でした。

誘拐犯が剣を抜いたのです。

「おとなしくしてりゃ奴隷として生きれたものを」

「ふん!大事な妹を助けられるならこんな命くれてやるよ。メアリーは絶対お前なんかに渡さねぇ!!」

お兄さまがそう叫んだその時、私の胸の中が熱くなるのを感じました。

そして剣を構えた誘拐犯がお兄さまに攻撃してくる。

「ストーンキャノン!」

お兄さまが魔術は飛ばした石が高速で誘拐犯のお腹を貫いた。

「はあ・・はあ・・・やった・・のか?」

お兄さまはそう云いながら両膝をついた。

私は慌ててお兄さまに駆け寄りました。

「お兄さま!」

「メアリー。無事か・・・?お前は俺が・・まも・・るか・・ら」

私の目からはたくさんの涙があふれ出て来ました。

お兄さまにいじわるされた時の悲しい涙ではありません。

「はいっ。ぐす・・・お兄さま、わたくしは・・一生お兄さまについていきます。大好きです!お兄さま?お兄さま!!」

お兄さまは突然気を失ってしまいました。

するとすぐにお城の兵の人が馬に乗ってやってきました。

「メアリーさま!ご無事ですか!?」

「はい。わたくしは大丈夫です。それよりお兄さまが!!早く助けてください!」

「レアードさま!・・・どうやら魔力切れを起こしたようですね。身体に異常はありません」

「ほんとですか!?良かった・・・」

そして私たちは無事にお城に帰ることができました。

しばらくしてお兄さまが目を覚したと聞いた私は慌ててお兄さまの部屋にやってきていました。

「お兄さま!大丈夫ですか?」

お兄さまに駆け寄るとお兄さまの手を握りしめました。

「うん、大丈夫。メアリーこそ大丈夫か?」

「はい、お兄さまのおかげでわたくしはこの通り元気です!」

「それなら良かった」

「あの、お兄さま・・・」

「ん?」

「助けていただきありがとうございました」

「兄なんだから当たり前だろ?それから・・・今までお前に意地悪してすまなかった。この通りだ、許してほしい」

お兄さまは私にに向かって頭を下げた。

もうそんなことは気にしていません。

だってお兄さまはそんなこと忘れさせてくれるくらいに優しくかっこいいお兄さまに変わってしまったのですから。

そしてそんなお兄さまに私はこう答えます。

「いいえ、許しません!」

ちょっといじわるに云ってみると、お兄さまは少し悲しそうな表情になりました。

「許してほしかったら、毎日わたくしと遊んでください」

「え?」

「そして今晩は一緒に寝てください!そしたら許します」

「ぷっ」

お兄さまが笑う。

「お兄さま?わたくしは本気ですよ!?」

「あはは。わかったよ。うん、メアリーに許してもらえるよう頑張るよ」

(お兄さま・・・大好き)

それからというもの、私は毎日お兄さまと一緒に行動しました。

たし算というものも教えていただきました。

お兄さまは私の知らないお話をたくさん聞かせてくれました。

なかでも、『シンデレラ』というお話はとても興味がありました。

「シンデレラは最後は素敵な王子さまと結ばれて良かったです」

「そうだね。メアリーもいつか素敵な王子さまのとこへ行っちゃうんだろうな」

「いいえ。わたくしの王子さまはお兄さましかおりません」

「ん?まぁ、確かに一応は王子だけど・・・」

もう、お兄さまはわかってませんね。

そんなお兄さまと二人だけの幸せな日々がいつまでも続けばいいのにと私は思っていました。

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