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16話 迎え
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強引に性的行為をしようとする描写が出ます。未遂ですが、ご注意ください。
──
体育館での出来事があった後。私は学校が終わったあとに王宮に向かうこととなった。本当は体育館の件の後すぐ向かおうとしたが、フィーリオ殿下に学業を優先するよう言われたのだ。
1日の授業が終わった頃、兄上からの連絡があり、迎えに行くから学園から少し歩いた木の下で待つよう言われた。
私はそこへ向かう。門から外へ出て、待ち合わせ場所に向かおうとした──その時。
「おい、オリヴィア」
荒々しい声が聞こえた。……誰の声だっけ。
私はくるりと振り返る。そこにいたのは、エドワードであった。
「オリヴィア、少し話がある」
「ごめんなさい。時間が無いわ」
「すぐ終わるから」
そう言ってエドワードはグイッと私の手首を掴んだ。力加減ができていない。
「痛いんだけど」
「いいから来い!」
エドワードは声を荒らげる。グイグイと私の腕を引っ張る。
「ちょっと……!」
普段であれば魔法でなんとかできる。しかし、今日の体育館の件で私は魔力が枯渇していた。使える魔法は限られている。
エドワードと共にやってきたのは、学園から徒歩数分の路地裏であった。
「なあお前」
手首を掴んだまま、エドワードが語りかける。どこか偉そうな態度に私は少しイラッとしてしまう。睨みつける私を無視して、エドワードは話をつづけた。
「また、婚約してやるよ」
「…………は?」
何言ってんだ。この人は。婚約してやる? そんな上から目線でものをいえる立場なのだろうか。
「顔は美人だし、身体はエロいし。アリスなんかよりいい女だ」
エドワードがニヤニヤとしながら、私を舐めまわすように見る。
こいつ……アリスが離れていったから、私に戻ってきたのか。
「なにより、おまえと結婚したら将来の地位は約束されたもんだ」
気持ち悪い……! 鳥肌がたつ。頭が真っ白になった。
「いやよ」
はっきりと断言する。エドワードはふっと鼻で笑った。
「冗談言うなよ」
「冗談じゃないわ。1回婚約破棄したくせに。都合よすぎるわ」
私が言い放つ。私はエドワードの手を振り払う。エドワードの眉間のシワが深くなっていく。
「私はあなたが婚約者じゃなくても生きてけるわ」
そう言って、彼から離れようとした──その時。エドワードが再びがっしりと腕を掴んだ。今度は両腕だった。私の身体を地面に押し倒す。
「いった!」
背中を強打した。エドワードが顔を寄せる。
「そうだ……。既成事実、作っちまえばいいかぁ……」
両手を上に挙げられ、エドワードの左手で抑えられる。足で蹴りあげようとするがその前にエドワードの膝で遮られた。
……まずいかもしれない。
ぷちぷちと私の服のボタンを外していく。だんだんと私の下着があらわになっていった。
「やっぱいい身体だなぁ……!」
彼の手がゆっくりと胸に触れた。下着越しで、こいつの気持ち悪い感触が伝わる。
視界が霞んでいく。これは、涙のせいか。
「やめて!」
いやだ……。
涙がこぼれ落ちる。
たすけて……
たすけて……!
そう願った刹那──
私の目の前に影がさっと入った。
「なにやっているんだ。お前」
背後に立っていたのはローブで身体を覆う、フードを目深に被った人であった。兄かと思ったが、声が違う。
「で……んか……?」
「オリヴィア、ごめん。こんな怪しい格好で」
フードを外したその中にあったのは、フィーリオ殿下であった。
「殿下!?」
エドワードが声をあげた。驚きと恐怖の声であった。エドワードの手と抑えていた膝の態勢が緩んだ。私はそのすきにエドワードの手を振り払い、エドワードを蹴りあげる。
「ぐっ……!」
怯んだすきに、私はエドワードの身体から逃れた。そして、フィーリオ殿下の背に隠れる。
「お前、こんなこと許されると思ってるのか!」
「オリヴィアは俺の婚約者だ!」
「ちがうわよ!」
婚約破棄しているのだ。もう他人である。フィーリオ殿下の前で誤解を招くようなことを言わないで欲しい。
「オリヴィアがお前なんかを相手するわけないだろ……」
殿下はため息をつく。
「はやくいけ。この件については後で処遇を決める」
「……は? なんで俺が……」
「早くいかないと切るぞ」
殿下が剣を抜く。エドワードは「ひっ」と小さな悲鳴を出し、路地裏から去っていった。
エドワードが私たちの視界から消える。それと同時に、私の腰がぬけた。ぽろぽろと涙が出る。
助かった……。
……怖かった。
「オリヴィア……」
何か暖かいものに覆われる。フィーリオ殿下の身体だった。殿下が私の背中を撫でた。
「待ち合わせの場所に行ったんだけど、いなかったから探してたんだ。ごめん。遅くなっちゃって」
「大丈夫です。むしろ早かったくらいだわ……」
「本当に……待ち合わせ場所から近くにいて良かった」
殿下のおかげで貞操が守られたのだ。感謝の気持ちしかない。
「ありがとうございます」
私は殿下の身体を抱き締め返した。ただひたすら、殿下の胸で泣く。しばらく、言葉は出なかった。私の口からこぼれたのは嗚咽だけだった。
しばらくして。私の心が落ち着く。
冷静に考えると、とんでもない状況だ。婚約者でもないのに一国の王子に抱きついて、一級品の服を涙でぐちゃぐちゃにしている。
「ごめんなさい!」
私は慌てて殿下からはなれた。そして、はだけた衣服を正す。
まさか殿下が来るとは。迎えに来ると聞いた時、てっきり兄が迎えに来ると思っていた。
「気にしないで」
殿下はそう一言、優しく言う。きっと気を使ってくれてるのだろう。本当に優しい男性である。
「移動するけど、瞬間移動で大丈夫?」
殿下の言葉に私は頷いた。早く兄の所へ行かなければ。
「ええ」
殿下は私に手を差し出した。私はその手に、自分の手を重ねる。
「いくよ」
その声と同時に、足元が緑色に光った。私たちは光に包まれ、瞬間移動する。着いたのは、王宮の例の執務室であった。
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体育館での出来事があった後。私は学校が終わったあとに王宮に向かうこととなった。本当は体育館の件の後すぐ向かおうとしたが、フィーリオ殿下に学業を優先するよう言われたのだ。
1日の授業が終わった頃、兄上からの連絡があり、迎えに行くから学園から少し歩いた木の下で待つよう言われた。
私はそこへ向かう。門から外へ出て、待ち合わせ場所に向かおうとした──その時。
「おい、オリヴィア」
荒々しい声が聞こえた。……誰の声だっけ。
私はくるりと振り返る。そこにいたのは、エドワードであった。
「オリヴィア、少し話がある」
「ごめんなさい。時間が無いわ」
「すぐ終わるから」
そう言ってエドワードはグイッと私の手首を掴んだ。力加減ができていない。
「痛いんだけど」
「いいから来い!」
エドワードは声を荒らげる。グイグイと私の腕を引っ張る。
「ちょっと……!」
普段であれば魔法でなんとかできる。しかし、今日の体育館の件で私は魔力が枯渇していた。使える魔法は限られている。
エドワードと共にやってきたのは、学園から徒歩数分の路地裏であった。
「なあお前」
手首を掴んだまま、エドワードが語りかける。どこか偉そうな態度に私は少しイラッとしてしまう。睨みつける私を無視して、エドワードは話をつづけた。
「また、婚約してやるよ」
「…………は?」
何言ってんだ。この人は。婚約してやる? そんな上から目線でものをいえる立場なのだろうか。
「顔は美人だし、身体はエロいし。アリスなんかよりいい女だ」
エドワードがニヤニヤとしながら、私を舐めまわすように見る。
こいつ……アリスが離れていったから、私に戻ってきたのか。
「なにより、おまえと結婚したら将来の地位は約束されたもんだ」
気持ち悪い……! 鳥肌がたつ。頭が真っ白になった。
「いやよ」
はっきりと断言する。エドワードはふっと鼻で笑った。
「冗談言うなよ」
「冗談じゃないわ。1回婚約破棄したくせに。都合よすぎるわ」
私が言い放つ。私はエドワードの手を振り払う。エドワードの眉間のシワが深くなっていく。
「私はあなたが婚約者じゃなくても生きてけるわ」
そう言って、彼から離れようとした──その時。エドワードが再びがっしりと腕を掴んだ。今度は両腕だった。私の身体を地面に押し倒す。
「いった!」
背中を強打した。エドワードが顔を寄せる。
「そうだ……。既成事実、作っちまえばいいかぁ……」
両手を上に挙げられ、エドワードの左手で抑えられる。足で蹴りあげようとするがその前にエドワードの膝で遮られた。
……まずいかもしれない。
ぷちぷちと私の服のボタンを外していく。だんだんと私の下着があらわになっていった。
「やっぱいい身体だなぁ……!」
彼の手がゆっくりと胸に触れた。下着越しで、こいつの気持ち悪い感触が伝わる。
視界が霞んでいく。これは、涙のせいか。
「やめて!」
いやだ……。
涙がこぼれ落ちる。
たすけて……
たすけて……!
そう願った刹那──
私の目の前に影がさっと入った。
「なにやっているんだ。お前」
背後に立っていたのはローブで身体を覆う、フードを目深に被った人であった。兄かと思ったが、声が違う。
「で……んか……?」
「オリヴィア、ごめん。こんな怪しい格好で」
フードを外したその中にあったのは、フィーリオ殿下であった。
「殿下!?」
エドワードが声をあげた。驚きと恐怖の声であった。エドワードの手と抑えていた膝の態勢が緩んだ。私はそのすきにエドワードの手を振り払い、エドワードを蹴りあげる。
「ぐっ……!」
怯んだすきに、私はエドワードの身体から逃れた。そして、フィーリオ殿下の背に隠れる。
「お前、こんなこと許されると思ってるのか!」
「オリヴィアは俺の婚約者だ!」
「ちがうわよ!」
婚約破棄しているのだ。もう他人である。フィーリオ殿下の前で誤解を招くようなことを言わないで欲しい。
「オリヴィアがお前なんかを相手するわけないだろ……」
殿下はため息をつく。
「はやくいけ。この件については後で処遇を決める」
「……は? なんで俺が……」
「早くいかないと切るぞ」
殿下が剣を抜く。エドワードは「ひっ」と小さな悲鳴を出し、路地裏から去っていった。
エドワードが私たちの視界から消える。それと同時に、私の腰がぬけた。ぽろぽろと涙が出る。
助かった……。
……怖かった。
「オリヴィア……」
何か暖かいものに覆われる。フィーリオ殿下の身体だった。殿下が私の背中を撫でた。
「待ち合わせの場所に行ったんだけど、いなかったから探してたんだ。ごめん。遅くなっちゃって」
「大丈夫です。むしろ早かったくらいだわ……」
「本当に……待ち合わせ場所から近くにいて良かった」
殿下のおかげで貞操が守られたのだ。感謝の気持ちしかない。
「ありがとうございます」
私は殿下の身体を抱き締め返した。ただひたすら、殿下の胸で泣く。しばらく、言葉は出なかった。私の口からこぼれたのは嗚咽だけだった。
しばらくして。私の心が落ち着く。
冷静に考えると、とんでもない状況だ。婚約者でもないのに一国の王子に抱きついて、一級品の服を涙でぐちゃぐちゃにしている。
「ごめんなさい!」
私は慌てて殿下からはなれた。そして、はだけた衣服を正す。
まさか殿下が来るとは。迎えに来ると聞いた時、てっきり兄が迎えに来ると思っていた。
「気にしないで」
殿下はそう一言、優しく言う。きっと気を使ってくれてるのだろう。本当に優しい男性である。
「移動するけど、瞬間移動で大丈夫?」
殿下の言葉に私は頷いた。早く兄の所へ行かなければ。
「ええ」
殿下は私に手を差し出した。私はその手に、自分の手を重ねる。
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