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25話 決着
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「フィオナ……!?」
驚きの人物に私は目を丸くする。 それは、学園長もライカ先生も同じようだった。
「ルーナン嬢、なんでここに来たんだい?」
一瞬で表情を戻した学園長が、フィオナに問うた。
フィオナはこの状況に物怖じせず、ツカツカとこちらにやってくる。そして、持っていた鞄の中から1冊の冊子を取り出した。
「これは……」
「見覚えあるだろ? 異世界転移者、そしてこちらからあちらへ転移した者たちの名前が書かれたリストだ」
フィオナがパラパラと、学園長たちに見せつけるかのようにそれをめくる。そこには、名前がたくさん書いてあった。異世界の文字だろうか、読めない文字も多く書いてある。
「あんたの部屋から出てきたものだ」
フィオナが学園長を睨みつけた。
「忍び込んだのかい? なかなかお転婆な娘だね……」
学園長がくつくつと笑う。
「アリスから聞いたんだ。声が自分をこの世界に誘ったって。
アリスを──いや女性たちを世界転移を誘った声はお前だろ?」
ピシャリと言い放つ。 学園長がそれに物怖じする気配はない。それどころか、よく分かったというかのように、パチパチと手を叩いた。
「よく調べたね」
そう一言。学園長が言った。
パタンと開けっ放しであった学園長室の扉が閉まった──と、同時にライカ先生が動いた。背後からフィオナを襲う。彼女の手には光が宿っていた。赤い光。明らかな敵意であった。
「フィオナ、危ないっ!」
ライカ先生はこの学校の教授である。魔法を使うプロだ。そこまで、魔法をつかうことのないフィオナが太刀打ちできる相手ではない。
そう思っていた。
カキン──
魔法を弾く音が聞こえた。
フィオナがライカ先生の魔法を弾いたのだ。
フィオナはいつの間にか、手に剣を持っている。
その剣は、私も見たことのある剣であった。
気のせいかと思った。でも、学園長のあげた驚きの声により、それは確信に至る。
「……お前……!」
学園長が、ほんの少し声を荒らげる。
そして──フィオナが、いつもつけていた緑色のネックレスを外した。
彼女の姿が変わっていく。
細い腕は、がっしりとした腕になって。
腰まであった髪は、短くなり。
身長が高くなっていって。
気づけばその顔は私の知っている、また別の人間になっていた。
「フィーリオ……殿下……?」
口をあんぐりと開けてしまった。
まさか、フィオナがフィーリオ殿下だったなんて。
思えばその片鱗はあった。
フィーリオ殿下との関わりで生まれた好きな物の共通点、一緒にいる安心感。それはフィオナといた時に生まれたものと同じだ。
「ごめんね。オリヴィア」
殿下が申し訳なさそうに笑った。
「なんで、こんなところに王族が……!」
学園長たちにとっても思いがけない出来事であったようだった。その声は、私と対話していた時の余裕のあるものでは無い。
それもそうだ。相手は第1王子だ。
ここで学園長が対抗してしまったら、反逆罪となる。それに、殿下の魔法の腕、武道の腕は国が誇るレベルのものだ。魔法の研究者とはいえ、簡単に抑え込めるものではない。
「ずっと、潜入してたんだ。ネズミがコソコソ嗅ぎまわってる気配は感じていただろ?」
「そのネズミがまさか王族とは思わないだろ」
学園長が鼻で笑う。殿下は剣を腰の鞘にしまった。
「オリヴィア、ちょっと待っててね」
いつもの穏やかな笑みで。にこりと微笑んだ後──彼の姿が消えた。
目の前を一筋の風が走る。
身体がふわっと浮いた。誰かに抱き抱えられたのだ。思わず、目を瞑る。
優しい腕に抱かれているのを感じた。
優しく、暖かい。いい心地。
ゆっくりと……ゆっくりと目を開ける。上を見ると、殿下の顔があった。私の身体は殿下に抱えられていた。
「さすが……早いな……」
学園長が感嘆の声を上げる。しかし、その瞳は怒りの色を帯びていた。感情が表にでている。
「私だって、目標達成するまで、転移は止められないよ」
学園長が怒りを込めてそう言うと同時に、空気が震えた。
学園長が手をあげる。なにか魔法を繰り出すのか。私は身を構える。
「そうだ。君たち2人を転移させればいいのか。そうすれば、みんな君たちがいた記憶はなくなる」
学園長のねっとりとした声。殿下が、「ごめんね」と言って、私の身体を壁際に下ろした。身体が動かない私は壁に寄りかかる。
「まずは君たちを弱らせようか」
学園長が操る数十もの白い光の玉が、私たちに襲いかかった。殿下は剣を抜き、一振する。剣の先の動きに合わせ、光の玉を防御するようにシールドが張られた。
パキン、パキンと光の玉が割れたガラスのように崩れ落ちていく。
隣にいたライカ先生が、こちらに迫ってきた。ライカ先生の手から剣のような光があらわれ、私たちを切りさこうとする。
殿下はその剣を自分の剣で防いだ。刃と刃が擦れ合い、キリリ……という音がなる。
殿下の実力は、学園長とライカ先生、2人合わせて対等だ。私も戦わねば。戦えば、勝てる。
そう思うが、身体がピクリとも動かない。
魔法を出そうとするができない。
悔しい。何も力になれない。
「殿下……頑張って……」
応援しか出来ない。私の応援が聞こえたのか、殿下がちらりとこちらを見た。そして、にこりといつもの穏やかな笑みを携える。
「オリヴィア」
殿下が私の名前を言って。
殿下の足元に魔法陣がはられた。白く、神々しく、神聖な光を纏う魔法陣。殿下から放たれたものであると、ひと目で理解出来た。
殿下は学園長とライカ先生の攻撃を防ぎながら、己の術を展開させていく。
魔法陣はだんだんと大きくなって、部屋を覆っていく。
そして──部屋が光に包まれた。眩しすぎて、思わず目を瞑った。瞑っても光が目に入ってくる。
「ぐぁっ……!」
学園長の小さな呻きが聞こえた。
しばらくして──光がおさまった。
おさまった時、見えたのは倒れる学園長とライカ先生、そして荒れ果てた部屋とその中に立つフィーリオ殿下であった。
本棚の本はすべて地に落ち、家具は焼けたかのようにボロボロになっている。
助かった……?
そう思うと同時に、私の身体を何かが包み込んだ。
殿下だ。
「オリヴィア! 無事か……!?」
「ええ……」
身体は動かないが。
殿下に「ありがとう」と言おうとしたその時。
バタンっ!
重い扉が開く音がした。あらわれたのは、国の兵と兄、アラン様であった。
「ゲイチス・マルザール! ライカ・アルナ! お前らを王家反逆罪と禁忌魔法使用罪の容疑で逮捕する!」
兄の高らかな宣言が、部屋に轟いた。バタバタと学園長とライカ先生を拘束していく。礼を言う間もなく、フィーリオ殿下は兄とアラン様の方へ向かっていった。お仕事だ。少し寂しいが、私よりもそっちが大切なのは当然だ。
私はすぐに兵に連れられ、手当をうけた。
こうして、異世界転移魔法の件は解決したのだった
驚きの人物に私は目を丸くする。 それは、学園長もライカ先生も同じようだった。
「ルーナン嬢、なんでここに来たんだい?」
一瞬で表情を戻した学園長が、フィオナに問うた。
フィオナはこの状況に物怖じせず、ツカツカとこちらにやってくる。そして、持っていた鞄の中から1冊の冊子を取り出した。
「これは……」
「見覚えあるだろ? 異世界転移者、そしてこちらからあちらへ転移した者たちの名前が書かれたリストだ」
フィオナがパラパラと、学園長たちに見せつけるかのようにそれをめくる。そこには、名前がたくさん書いてあった。異世界の文字だろうか、読めない文字も多く書いてある。
「あんたの部屋から出てきたものだ」
フィオナが学園長を睨みつけた。
「忍び込んだのかい? なかなかお転婆な娘だね……」
学園長がくつくつと笑う。
「アリスから聞いたんだ。声が自分をこの世界に誘ったって。
アリスを──いや女性たちを世界転移を誘った声はお前だろ?」
ピシャリと言い放つ。 学園長がそれに物怖じする気配はない。それどころか、よく分かったというかのように、パチパチと手を叩いた。
「よく調べたね」
そう一言。学園長が言った。
パタンと開けっ放しであった学園長室の扉が閉まった──と、同時にライカ先生が動いた。背後からフィオナを襲う。彼女の手には光が宿っていた。赤い光。明らかな敵意であった。
「フィオナ、危ないっ!」
ライカ先生はこの学校の教授である。魔法を使うプロだ。そこまで、魔法をつかうことのないフィオナが太刀打ちできる相手ではない。
そう思っていた。
カキン──
魔法を弾く音が聞こえた。
フィオナがライカ先生の魔法を弾いたのだ。
フィオナはいつの間にか、手に剣を持っている。
その剣は、私も見たことのある剣であった。
気のせいかと思った。でも、学園長のあげた驚きの声により、それは確信に至る。
「……お前……!」
学園長が、ほんの少し声を荒らげる。
そして──フィオナが、いつもつけていた緑色のネックレスを外した。
彼女の姿が変わっていく。
細い腕は、がっしりとした腕になって。
腰まであった髪は、短くなり。
身長が高くなっていって。
気づけばその顔は私の知っている、また別の人間になっていた。
「フィーリオ……殿下……?」
口をあんぐりと開けてしまった。
まさか、フィオナがフィーリオ殿下だったなんて。
思えばその片鱗はあった。
フィーリオ殿下との関わりで生まれた好きな物の共通点、一緒にいる安心感。それはフィオナといた時に生まれたものと同じだ。
「ごめんね。オリヴィア」
殿下が申し訳なさそうに笑った。
「なんで、こんなところに王族が……!」
学園長たちにとっても思いがけない出来事であったようだった。その声は、私と対話していた時の余裕のあるものでは無い。
それもそうだ。相手は第1王子だ。
ここで学園長が対抗してしまったら、反逆罪となる。それに、殿下の魔法の腕、武道の腕は国が誇るレベルのものだ。魔法の研究者とはいえ、簡単に抑え込めるものではない。
「ずっと、潜入してたんだ。ネズミがコソコソ嗅ぎまわってる気配は感じていただろ?」
「そのネズミがまさか王族とは思わないだろ」
学園長が鼻で笑う。殿下は剣を腰の鞘にしまった。
「オリヴィア、ちょっと待っててね」
いつもの穏やかな笑みで。にこりと微笑んだ後──彼の姿が消えた。
目の前を一筋の風が走る。
身体がふわっと浮いた。誰かに抱き抱えられたのだ。思わず、目を瞑る。
優しい腕に抱かれているのを感じた。
優しく、暖かい。いい心地。
ゆっくりと……ゆっくりと目を開ける。上を見ると、殿下の顔があった。私の身体は殿下に抱えられていた。
「さすが……早いな……」
学園長が感嘆の声を上げる。しかし、その瞳は怒りの色を帯びていた。感情が表にでている。
「私だって、目標達成するまで、転移は止められないよ」
学園長が怒りを込めてそう言うと同時に、空気が震えた。
学園長が手をあげる。なにか魔法を繰り出すのか。私は身を構える。
「そうだ。君たち2人を転移させればいいのか。そうすれば、みんな君たちがいた記憶はなくなる」
学園長のねっとりとした声。殿下が、「ごめんね」と言って、私の身体を壁際に下ろした。身体が動かない私は壁に寄りかかる。
「まずは君たちを弱らせようか」
学園長が操る数十もの白い光の玉が、私たちに襲いかかった。殿下は剣を抜き、一振する。剣の先の動きに合わせ、光の玉を防御するようにシールドが張られた。
パキン、パキンと光の玉が割れたガラスのように崩れ落ちていく。
隣にいたライカ先生が、こちらに迫ってきた。ライカ先生の手から剣のような光があらわれ、私たちを切りさこうとする。
殿下はその剣を自分の剣で防いだ。刃と刃が擦れ合い、キリリ……という音がなる。
殿下の実力は、学園長とライカ先生、2人合わせて対等だ。私も戦わねば。戦えば、勝てる。
そう思うが、身体がピクリとも動かない。
魔法を出そうとするができない。
悔しい。何も力になれない。
「殿下……頑張って……」
応援しか出来ない。私の応援が聞こえたのか、殿下がちらりとこちらを見た。そして、にこりといつもの穏やかな笑みを携える。
「オリヴィア」
殿下が私の名前を言って。
殿下の足元に魔法陣がはられた。白く、神々しく、神聖な光を纏う魔法陣。殿下から放たれたものであると、ひと目で理解出来た。
殿下は学園長とライカ先生の攻撃を防ぎながら、己の術を展開させていく。
魔法陣はだんだんと大きくなって、部屋を覆っていく。
そして──部屋が光に包まれた。眩しすぎて、思わず目を瞑った。瞑っても光が目に入ってくる。
「ぐぁっ……!」
学園長の小さな呻きが聞こえた。
しばらくして──光がおさまった。
おさまった時、見えたのは倒れる学園長とライカ先生、そして荒れ果てた部屋とその中に立つフィーリオ殿下であった。
本棚の本はすべて地に落ち、家具は焼けたかのようにボロボロになっている。
助かった……?
そう思うと同時に、私の身体を何かが包み込んだ。
殿下だ。
「オリヴィア! 無事か……!?」
「ええ……」
身体は動かないが。
殿下に「ありがとう」と言おうとしたその時。
バタンっ!
重い扉が開く音がした。あらわれたのは、国の兵と兄、アラン様であった。
「ゲイチス・マルザール! ライカ・アルナ! お前らを王家反逆罪と禁忌魔法使用罪の容疑で逮捕する!」
兄の高らかな宣言が、部屋に轟いた。バタバタと学園長とライカ先生を拘束していく。礼を言う間もなく、フィーリオ殿下は兄とアラン様の方へ向かっていった。お仕事だ。少し寂しいが、私よりもそっちが大切なのは当然だ。
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