28 / 29
28話 これから
しおりを挟む
私たちの婚約は、あっという間に国中の人たちに知られるものとなった。
国の第1王子の婚約だ。話題になるのも当然である。彼と結婚するということは、この国の王妃になるということであった。最初は不安で胸が押しつぶされそうだった。しかし、不安だった私を殿下や兄、両親が支えてくれた。
「オリヴィアはオリヴィアらしくいればいいんだよ。それで、大丈夫。それに私が全力でフォローするから」
殿下の言葉が心に残る。
不安はある。だけど、殿下さえいればなんか大丈夫な気がする。殿下はいつだって私を助けてくれる──。
私たちは国中からの祝福をうけた。誰からの反対もうけなかったことにひとまず安堵する。学校でも、「結婚おめでとう」と言ってくれる人がたくさんいた。
私は学校の勉強と並行して、妃教育も行った。睡眠時間も削り、趣味の時間はほとんどなかった。大変だった。が、やめたいと思うことは無かった。応援してくれる殿下のためにがんばった。結果、妃教育を行う先生から「飲み込みが早い」と言われ褒められた。
1年後──私は学園を卒業し王立大学に入った。魔法研究者となるためである。大学の勉強と研究は楽しかった。
大学では兄と関わることも多かった。兄は大学の研究に協力しており、異世界転移魔法についての研究も王立大学で行っている。特別講師として、講義をすることもあった。
兄の講義はおもしろい。元々、おちゃらけた性格であるためか、人と話すのが得意なのだ。それが、人を惹きつけるトーク術となっている。
私は妃教育を行いつつ、研究に没頭した。
そして、2年後──妃教育を終わらせた私は殿下と結婚した。学生のうちに結婚するとは思わなかったが、殿下の熱いプロポーズをうけ自分が思っているよりも早い結婚となった。
なお、結婚しても大学を辞めるつもりは無い。大学院にも行く予定である。貴族令嬢は結婚したら、仕事も学校も辞めるという人が多いが、私はそのつもりは無い。結婚もして、自分のキャリアも積む。そのキャリアがきっと私の人間としての厚みになっていき、王妃としての信頼に繋がっていくはずだ。
それに例の件と関わった以上、自分だけが蚊帳の外という訳にもいくまい。
今日は結婚式の日であった。
控え室にて。私は純白のドレスを身に纏う。
レースは少なく、大人びたデザインのドレスであった。すでにメイクを施されている。私の銀色の髪は綺麗にあげられていた。
自分で見ても、見とれてしまうほど綺麗である。
なお、このドレスは殿下が選んでくれた。さすがの殿下である。私の身体を引き立て、私が気に入るドレスを選んでくれた。
まじまじと鏡の前で自分の姿を見ていると、コンコンと扉をノックされた。
「入っていい? オリヴィア」
「ええ、フィー」
扉を開いてあらわれたのは、もうすでに白いタキシードを身に纏う殿下であった。美しいし、かっこいい。殿下は常にかっこいいが、今日の殿下はいつもの何倍もかっこいい。
そんな魅力的な殿下の姿に目が離せなかった。
結婚するにあたり、殿下から「殿下ではなく、愛称で呼べ」とお願いされた。フィーというのは、彼の幼い頃からの愛称らしい。兄やアラン様など古い友人だけでなく、国王と王妃もその名前で呼びかけることがあるという。
フィーは私の姿を見るなり、硬直した。そして、口に手を当て「想像以上だな……」とぼやく。
……なにかおかしなところがあったかと、怪訝に思う。
「なにが想像以上なのよ」
私は口を尖らせ、問い詰めた。すると、フィーはにこにこと微笑みながら、私の元にやってくる。そして、私の腰を抱いた。
「想像以上に綺麗だってことだ」
その言葉に、ドキンと胸がなる。私は、赤くなった顔を隠すかのように、俯いた。
「あら、ありがとう。フィーも素敵だわ」
俯きながら、言う。フィーの腰を抱く手が、強くなった。
「誰にも見せたくないな」
耳元でそんな声が聞こえる。
「ご冗談を」
私がふふっと笑う。そして、彼の顔を見上げた。冗談を言っていたかと思ったが、フィーの顔は真剣そのものだ。
……いやいや、まさか本気で言ってるわけではあるまい。
バタンと扉が開いた。あらわれたのは兄であった。兄も正装であった。 体を寄せ合う私たちの姿を見るなり、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。フィーが慌てて私から離れる。
「お熱いなあ……」
兄がからかい口調でそう言った。そして──
「お熱いのは見てて幸せだが、もう時間だ。イチャつくのは、終わってからにしてくれ」
兄がウィンクをひとつしてみせた。そして、バタバタと部屋を出ていく。
私とフィーは顔を合わせた。そして、1歩足を進めた。ゆっくりと……ゆっくりと会場に向かう。
これから訪れる光の未来の中へ。私たちは2人で入っていくのであった。これから始まる新しい物語に胸を高鳴らせながら──
国の第1王子の婚約だ。話題になるのも当然である。彼と結婚するということは、この国の王妃になるということであった。最初は不安で胸が押しつぶされそうだった。しかし、不安だった私を殿下や兄、両親が支えてくれた。
「オリヴィアはオリヴィアらしくいればいいんだよ。それで、大丈夫。それに私が全力でフォローするから」
殿下の言葉が心に残る。
不安はある。だけど、殿下さえいればなんか大丈夫な気がする。殿下はいつだって私を助けてくれる──。
私たちは国中からの祝福をうけた。誰からの反対もうけなかったことにひとまず安堵する。学校でも、「結婚おめでとう」と言ってくれる人がたくさんいた。
私は学校の勉強と並行して、妃教育も行った。睡眠時間も削り、趣味の時間はほとんどなかった。大変だった。が、やめたいと思うことは無かった。応援してくれる殿下のためにがんばった。結果、妃教育を行う先生から「飲み込みが早い」と言われ褒められた。
1年後──私は学園を卒業し王立大学に入った。魔法研究者となるためである。大学の勉強と研究は楽しかった。
大学では兄と関わることも多かった。兄は大学の研究に協力しており、異世界転移魔法についての研究も王立大学で行っている。特別講師として、講義をすることもあった。
兄の講義はおもしろい。元々、おちゃらけた性格であるためか、人と話すのが得意なのだ。それが、人を惹きつけるトーク術となっている。
私は妃教育を行いつつ、研究に没頭した。
そして、2年後──妃教育を終わらせた私は殿下と結婚した。学生のうちに結婚するとは思わなかったが、殿下の熱いプロポーズをうけ自分が思っているよりも早い結婚となった。
なお、結婚しても大学を辞めるつもりは無い。大学院にも行く予定である。貴族令嬢は結婚したら、仕事も学校も辞めるという人が多いが、私はそのつもりは無い。結婚もして、自分のキャリアも積む。そのキャリアがきっと私の人間としての厚みになっていき、王妃としての信頼に繋がっていくはずだ。
それに例の件と関わった以上、自分だけが蚊帳の外という訳にもいくまい。
今日は結婚式の日であった。
控え室にて。私は純白のドレスを身に纏う。
レースは少なく、大人びたデザインのドレスであった。すでにメイクを施されている。私の銀色の髪は綺麗にあげられていた。
自分で見ても、見とれてしまうほど綺麗である。
なお、このドレスは殿下が選んでくれた。さすがの殿下である。私の身体を引き立て、私が気に入るドレスを選んでくれた。
まじまじと鏡の前で自分の姿を見ていると、コンコンと扉をノックされた。
「入っていい? オリヴィア」
「ええ、フィー」
扉を開いてあらわれたのは、もうすでに白いタキシードを身に纏う殿下であった。美しいし、かっこいい。殿下は常にかっこいいが、今日の殿下はいつもの何倍もかっこいい。
そんな魅力的な殿下の姿に目が離せなかった。
結婚するにあたり、殿下から「殿下ではなく、愛称で呼べ」とお願いされた。フィーというのは、彼の幼い頃からの愛称らしい。兄やアラン様など古い友人だけでなく、国王と王妃もその名前で呼びかけることがあるという。
フィーは私の姿を見るなり、硬直した。そして、口に手を当て「想像以上だな……」とぼやく。
……なにかおかしなところがあったかと、怪訝に思う。
「なにが想像以上なのよ」
私は口を尖らせ、問い詰めた。すると、フィーはにこにこと微笑みながら、私の元にやってくる。そして、私の腰を抱いた。
「想像以上に綺麗だってことだ」
その言葉に、ドキンと胸がなる。私は、赤くなった顔を隠すかのように、俯いた。
「あら、ありがとう。フィーも素敵だわ」
俯きながら、言う。フィーの腰を抱く手が、強くなった。
「誰にも見せたくないな」
耳元でそんな声が聞こえる。
「ご冗談を」
私がふふっと笑う。そして、彼の顔を見上げた。冗談を言っていたかと思ったが、フィーの顔は真剣そのものだ。
……いやいや、まさか本気で言ってるわけではあるまい。
バタンと扉が開いた。あらわれたのは兄であった。兄も正装であった。 体を寄せ合う私たちの姿を見るなり、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた。フィーが慌てて私から離れる。
「お熱いなあ……」
兄がからかい口調でそう言った。そして──
「お熱いのは見てて幸せだが、もう時間だ。イチャつくのは、終わってからにしてくれ」
兄がウィンクをひとつしてみせた。そして、バタバタと部屋を出ていく。
私とフィーは顔を合わせた。そして、1歩足を進めた。ゆっくりと……ゆっくりと会場に向かう。
これから訪れる光の未来の中へ。私たちは2人で入っていくのであった。これから始まる新しい物語に胸を高鳴らせながら──
38
あなたにおすすめの小説
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる