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ある生産職
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ある日声が頭に響いた。
わたしは会社員だ。
外回りをしていた際の声だったので慌てて会社に連絡を取ろうとしたがスマホは電源が落ちていた。
道路は動かない車で身動きが取れなかった。
徒歩で戻ると慌ただしく帰宅する人間で溢れかえっていた。
話を聞いてくれる人はほぼいない。
居ても働く意味が無くなったから買い占めに走ると言うことだった。
私は自宅に向かう途中、追加の声を聞いたので買い占めには向かわなかった。
帰宅すると妻と小学生の娘と幼稚園に通い始めた娘が待っていた。
職業を与えられたと。
私も妻も生産職だった。
娘は二人共魔術師だという。
妻は声を聞いたとき、買い占めに向かっていた。
そこで目にしたのは貨幣に意味がなく、略奪している者たちだった。いきなり目の前から消える者もいたそうだ。
浮浪者に襲われそうになったが、それもまた突然消えたそうだ。
相談の結果、父方の実家で農業をやることにした。
歩いていけば一月は掛かる距離だったが即行動した。
半年の食料支援というのがどういうものか分からなかったが、毎日3食弁当と飲み物が目の前に現れた。
寝床はその時々の民家にお邪魔した。
親切な人は迎い入れてくれたし、ホテルは少しだけ空いていた。
風呂だけはどうにもならなかったが、川で自宅から持ってきたタオルを濡らして身体を拭いた。
色々ありつつ到着には二月掛かった。
カルマ値というのがどういうものか知らないが、無法を働く人間が少なく、実家にすんなり受け入れられた。
その日実家の近くにダンジョンが現れた。
見た目は洞窟の入口。
岩山があってそれに出来た洞窟の入口ではない。
洞窟の入口だけがそこにあった。
試しに覗いてみた。
竜だ。死んだと思った。だが竜は動かない。
しばらくするとまた声が聞こえた。
このダンジョンはあまりにも酷いということで制限付きで2年間の猶予が与えられたという。
このままでは生きていけない。
そんな時配信を観ていた妻が移住を促す動画を見つけた。
これに賭けるしかない。
移動に3ヶ月は掛かるだろう。
もう猶予が無い。
妻と娘と爺婆を荷車に乗せ懸命に引いた。
食事には困らないが、風呂と歯磨きには難儀した。
そんな時だ。娘が生活魔法なる物を覚えたという。
種火。飲水。穴凹。そよ風。灯り。暗がり。
一気に清拭、歯磨きが改善した。
ただ娘に頼り切りなのが情けない。
ある時生産職の妻が生活魔法を発動した。
なるほど納得だ。生活魔法なのだから誰でも使えるに決まっている。苦労したのは魔力か何だか知らないが、魔力の流れを知らないと発動し無いということだった。
魔力の流れを覚えると一気に移動距離が伸びた。
何しろ体が軽いのだ。力も強くなったような。
洗濯もこれで出来るようになった。
飲水を無理矢理大きくして、そよ風で対流を加える。
荒れ放題になった街並みにはあちこちに小枝が散乱しているので焚き火で暖を取りつつ、洗濯物を乾かした。
家族みんな生活魔法を使えるようになったので、洗濯は各々行っている。
更に驚いたことに7歳の娘が誰よりも力が強くなっていた。
娘も荷車を引いてくれるようになったので移動距離は更に伸びた。
そんなこんなで食料ダンジョン改め人類補完ダンジョンに到着した。
一月掛からなかった。
ダンジョンは入口が農業○同組合だったのでここでいいのか迷ったが、人で溢れていたので間違い無いだろう。
入場制限人数は今では3千人になっているらしい。
入れるのだろうか?
不安だったが聞いてみるとカルマ値マイナスで消えていく人が多かったらしい。どれだけ犯罪を起こしたのか。
ダンジョン内は未だ街と呼ぶには程遠い。
収容人数40世帯二十階建てのアパートが四棟。
少人数アパート十階建てが四棟しかなかった。
電気が無いのに上階の世帯はどうするのかと不安だったが転移魔法陣での移動らしい。
ここでも上階のマウント等あったが、そんな人間はすぐ消えることになるから無視するようにダンジョンマスターから通達があった。
実際何人かは消えた。
今一生懸命に拡張作業をしているそうだ。
ダンジョンポイントは人数✕時間とリソースで大分プラスになっているらしいので、3千人の収容も時期だろう。
そんな中働かない者はすぐ排除すると通達があった。
下は十二歳から上は上限なし。病人や身障者にも健常者と同じ働きを期待するとあったので、残念だがそのうち淘汰されるであろう。ダンジョン内の仕事は3交代制。生産職は一先ず農業と育児等に従事してもらい、徐々に細分していくらしい。兎にも角にも2年後の氾濫での竜討伐だ。あのダンジョンが竜1体ならばいいが、さらなる強敵がいないとも限らない。
探索者側はもう既に動いているらしい。
ダンジョンマスターの育成計画に沿ってレベリングをするらしい。ダンジョンマスターも経験値の分配がどうなっているのか、分からないらしいので、これは手探り状態とのこと。直接話が出来るわけではないので難しいらしいが一人で頑張っているそうだ。ダンジョン入口の受付経由でしか話が出来ない。そんな状態なので文句を言う人間も出てくる。文句を言った人間はそのうち消えるので無視推奨とのことだ。
1週間もすると倍の収容人数になった。
探索者のレベリングは最高が十らしい。竜退治は最低レベル百が五十人はいるらしい。それでも確実ではないらしい。
生産職は武器鍛冶や防具鍛冶と細分化している。
ゲーマーが言うには熟練度を極めて行けば上級職があるというので、今残ってる人達は頑張っている。
ただ与えられた職業でダラダラしている人間はどんどん入れ替わっている。
一月後収容人数は一万人になった。
これを期にダンジョンがアップグレードするそうだ。
農地の拡張やステータスボードの実装、転職システムの実装とダンジョンマスターの眷属の実装。これによりダンジョンの状況がさらに改善した。
このまま行けば10万人の収容もすぐだろう。
わたしは会社員だ。
外回りをしていた際の声だったので慌てて会社に連絡を取ろうとしたがスマホは電源が落ちていた。
道路は動かない車で身動きが取れなかった。
徒歩で戻ると慌ただしく帰宅する人間で溢れかえっていた。
話を聞いてくれる人はほぼいない。
居ても働く意味が無くなったから買い占めに走ると言うことだった。
私は自宅に向かう途中、追加の声を聞いたので買い占めには向かわなかった。
帰宅すると妻と小学生の娘と幼稚園に通い始めた娘が待っていた。
職業を与えられたと。
私も妻も生産職だった。
娘は二人共魔術師だという。
妻は声を聞いたとき、買い占めに向かっていた。
そこで目にしたのは貨幣に意味がなく、略奪している者たちだった。いきなり目の前から消える者もいたそうだ。
浮浪者に襲われそうになったが、それもまた突然消えたそうだ。
相談の結果、父方の実家で農業をやることにした。
歩いていけば一月は掛かる距離だったが即行動した。
半年の食料支援というのがどういうものか分からなかったが、毎日3食弁当と飲み物が目の前に現れた。
寝床はその時々の民家にお邪魔した。
親切な人は迎い入れてくれたし、ホテルは少しだけ空いていた。
風呂だけはどうにもならなかったが、川で自宅から持ってきたタオルを濡らして身体を拭いた。
色々ありつつ到着には二月掛かった。
カルマ値というのがどういうものか知らないが、無法を働く人間が少なく、実家にすんなり受け入れられた。
その日実家の近くにダンジョンが現れた。
見た目は洞窟の入口。
岩山があってそれに出来た洞窟の入口ではない。
洞窟の入口だけがそこにあった。
試しに覗いてみた。
竜だ。死んだと思った。だが竜は動かない。
しばらくするとまた声が聞こえた。
このダンジョンはあまりにも酷いということで制限付きで2年間の猶予が与えられたという。
このままでは生きていけない。
そんな時配信を観ていた妻が移住を促す動画を見つけた。
これに賭けるしかない。
移動に3ヶ月は掛かるだろう。
もう猶予が無い。
妻と娘と爺婆を荷車に乗せ懸命に引いた。
食事には困らないが、風呂と歯磨きには難儀した。
そんな時だ。娘が生活魔法なる物を覚えたという。
種火。飲水。穴凹。そよ風。灯り。暗がり。
一気に清拭、歯磨きが改善した。
ただ娘に頼り切りなのが情けない。
ある時生産職の妻が生活魔法を発動した。
なるほど納得だ。生活魔法なのだから誰でも使えるに決まっている。苦労したのは魔力か何だか知らないが、魔力の流れを知らないと発動し無いということだった。
魔力の流れを覚えると一気に移動距離が伸びた。
何しろ体が軽いのだ。力も強くなったような。
洗濯もこれで出来るようになった。
飲水を無理矢理大きくして、そよ風で対流を加える。
荒れ放題になった街並みにはあちこちに小枝が散乱しているので焚き火で暖を取りつつ、洗濯物を乾かした。
家族みんな生活魔法を使えるようになったので、洗濯は各々行っている。
更に驚いたことに7歳の娘が誰よりも力が強くなっていた。
娘も荷車を引いてくれるようになったので移動距離は更に伸びた。
そんなこんなで食料ダンジョン改め人類補完ダンジョンに到着した。
一月掛からなかった。
ダンジョンは入口が農業○同組合だったのでここでいいのか迷ったが、人で溢れていたので間違い無いだろう。
入場制限人数は今では3千人になっているらしい。
入れるのだろうか?
不安だったが聞いてみるとカルマ値マイナスで消えていく人が多かったらしい。どれだけ犯罪を起こしたのか。
ダンジョン内は未だ街と呼ぶには程遠い。
収容人数40世帯二十階建てのアパートが四棟。
少人数アパート十階建てが四棟しかなかった。
電気が無いのに上階の世帯はどうするのかと不安だったが転移魔法陣での移動らしい。
ここでも上階のマウント等あったが、そんな人間はすぐ消えることになるから無視するようにダンジョンマスターから通達があった。
実際何人かは消えた。
今一生懸命に拡張作業をしているそうだ。
ダンジョンポイントは人数✕時間とリソースで大分プラスになっているらしいので、3千人の収容も時期だろう。
そんな中働かない者はすぐ排除すると通達があった。
下は十二歳から上は上限なし。病人や身障者にも健常者と同じ働きを期待するとあったので、残念だがそのうち淘汰されるであろう。ダンジョン内の仕事は3交代制。生産職は一先ず農業と育児等に従事してもらい、徐々に細分していくらしい。兎にも角にも2年後の氾濫での竜討伐だ。あのダンジョンが竜1体ならばいいが、さらなる強敵がいないとも限らない。
探索者側はもう既に動いているらしい。
ダンジョンマスターの育成計画に沿ってレベリングをするらしい。ダンジョンマスターも経験値の分配がどうなっているのか、分からないらしいので、これは手探り状態とのこと。直接話が出来るわけではないので難しいらしいが一人で頑張っているそうだ。ダンジョン入口の受付経由でしか話が出来ない。そんな状態なので文句を言う人間も出てくる。文句を言った人間はそのうち消えるので無視推奨とのことだ。
1週間もすると倍の収容人数になった。
探索者のレベリングは最高が十らしい。竜退治は最低レベル百が五十人はいるらしい。それでも確実ではないらしい。
生産職は武器鍛冶や防具鍛冶と細分化している。
ゲーマーが言うには熟練度を極めて行けば上級職があるというので、今残ってる人達は頑張っている。
ただ与えられた職業でダラダラしている人間はどんどん入れ替わっている。
一月後収容人数は一万人になった。
これを期にダンジョンがアップグレードするそうだ。
農地の拡張やステータスボードの実装、転職システムの実装とダンジョンマスターの眷属の実装。これによりダンジョンの状況がさらに改善した。
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