複垢調査官 飛騨亜礼 ≪短編連作版≫

坂崎文明

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第五章 複垢狩りゲーム

いろいろとストーカーな人々

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 そこは<作家でたまごごはん>の会議室である。

 神楽舞の正面で、細面の顔にどじょうひげ、洋風の黒マントに漆黒の鎧を着た戦国武将が緑茶をすすっていた。
 無論、織田信長である。

 その右隣には人を何人か殺していそうなカラスのような男、飛礼同盟のザクロ、純白のワンピースに金髪碧眼のオランダ人美少女のハネケ、身体の所々が義体化された黒いジャージの上下、黒髪の日本人の夜桜が並んでいた。
 
 神楽舞の手前にはメガネ君こと服部新三郎がいたのだが、めんどくさいので、やっぱり、メガネというあだ名で呼ぶ。

「<刀剣ロボットバトルパラダイス>やってたら、火星ステージに飛ばされて、龍頭のボトムウォーリアーに襲われて、憑依されてた織田信長さんが助けてくれた、まとめるとそんな感じですね?」

 神楽舞は事務的に言った。

「で、この人たちは?」

 事情は何となく分かっているが、メガネに聞かずにおれなかった。
 
「俺は飛礼同盟の副隊長ですから、メガネ隊長の機体のマーカーに反応して、いつものように・・・・・・・後を追ったんですよ」

 ザクロが聞かれもしないのに答えた。

「あたしもメガネ隊長の機体マーカーを見たんで、いつものように・・・・・・・ちょっと話でもしようかなと思って」

 ハネケが続く。

「僕はハネケさんの機体マーカーを見たんで、いつものように・・・・・・・後をつけてみたんですね」

 夜桜の発言だけはニュアンスが微妙なので、ちょっと全員の視線を集めたが、ほぼ言ってることは同じである。

「まあ、いいわ。みんなゲーム仲間なんだから。仲良しでいいわね」

 神楽舞は冷静沈着に対応している。

「で、あの信長さまはどうすればいいの?」

 神楽舞は一番の懸念材料に言及してみた。

「大変、言いにくいのですが、しばらく預かってもらえないでしょうか?」

 メガネはおそるおそる言い出してみた。

「は? 何か、言ったかなあ、メガネ君?」 

 舞はとぼけようとしたが、絶妙ばタイミングで信長が助け舟をだした。

「清明殿から、京都での舞殿の活躍を聞き及んでいるので、わしも話がしたいのじゃが」

 流石の神楽舞でも、第六天魔王といいますか、戦国の覇王の申し出は断りづらい。
 
「―――はい。ですが、私ひとりでは心許ないので適任者を呼んでもよろしいでしょうか?」

 意外というか、当然の提案だった。

「誰じゃ?」

 信長はいぶかしんだ。

「織田めぐみ。信長様の子孫に当る者と思います。素敵なお茶でおもてなしできると思います」

 神楽舞はさらりと言った。



     †



「ザクロ、ハネケ、夜桜、ありがとう。お陰で助かったよ」

 メガネが安堵のため息をついた。
 そこは、<サンライスカフェ>京都伏見桃山店である。 
 一般的には「めろんぱん」と呼ばれている食べ物が、西日本の神戸~岡山~広島地域では「サンライス」と呼ばれている。
 ひたすら「サンライス」ばかりを、つまり、めろんぱん地獄に浸れるカフェチェーンで岡山が発祥である。最近の京都でもごく一部で人気だという。

「信長さまを、舞さん、めぐみちゃんに押し付けましたからね。ちょっと肩の荷が下りましたか?」

 ザクロがメガネの本心を言い当てた。
 眼光が鋭すぎる。

「ちょっと、気の毒だけど仕方ないわよね」

 ハネケは他人事ひとごとだと思ってるので、のんきなものである。
 
「でも、ちょっと、織田信長の話は訊いてみたかったです」

 夜桜ひとりだけ、あまり信長と過ごしたことがないので夢見がちな発言をしている。
 俺にもそんな時代があったよなとメガネは懐かしくなった。

「意外とそばにいると疲れるよ。夜桜」

「どの辺りが?」

 黒髪の好青年然とした夜桜が身を乗り出してきた。
 カルピスを啜ってるのが妙に似合う。
 
「やっぱり、アレがねえ」

 ハネケが透き通るような碧色の双眸をキラキラさせはじめた。
 金髪とあいまって妖精然とした存在感があった。
 夜桜は惚れ直した。

「駄洒落というか、ギャグがねえ」

 ザクロも珍しく何か言いたそうだった。

「きっつーな感じなんだよ」

 メガネは本当にきつそうな顔をした。
 好物のダブルチョコサンライスをパクついている。
 そのせいか、口の周りに髭のようにチョコがついている。
 田舎の百姓のようにも見えた。
 相当なストレスがかかってたことが想像できた。

「織田信長が24時間憑依してる状態って想像つく?」

 とメガネ。

「つかない」

 ザクロ。

「想像したくない」

 ハネケ。

「きっつーーーー」 

 夜桜。ノリがいい。 

「なかなかいいギャグじゃな」

 信長。

「きっつー」

 メガネ。

 とても背中が重い。






(あとがき)


 この話、幕間話ということで、これで終わりでいいかと思います。
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