ヴァ-サス7 ラストメッセージ

坂崎文明

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直人

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 最後に心に浮かぶのはやはり、地球のことと共通の幼馴染み藤森圭のことだった。

「また、圭ちゃんのお好み焼きが食いたいな」

 雄介がふとつぶやく。

「ああ。山芋いっぱいでふわふわのやつがいい」

 直人も調子を合わす。

 直人の恋人だったクリスはこの前の戦いで戦死している。

 雄介の胸がズキリと痛んだ。



「広島風は嫌だな」

 雄介が言った。

「野菜ばかりで具がないからな」

 直人が頷く。

「そうそう、あんなん頼んだら食った気がしないよ」

「まったくだ」 

 雄介の心に圭の泣き顔が浮かぶ。

 あれほど気丈に見えた圭だったが、行かないで、と最後は泣き崩れた。

 そんな彼女に、必ず帰ってくるという言葉をかけてやれなかったのが、唯一の心残りだった。



「時間だ」

 直人は、物思いに沈んでいる雄介に最後の言葉をかけた。

 雄介は慌てて、スタンドウルフの操縦システムであるゴーグルとヘルメットをつけた。

 雄介のヘッドマウントディスプレイに長髪でいつもクールな直人の顔が映る。

 直人は不思議な笑みを浮かべていた。

 黒い瞳には悲しみと喜び、複雑な感情が見て取れた。


 そんな表情が見えたのも、一瞬のことだった。

 すぐにゴーグルによって直人の表情は見えなくなった。




「エンジン始動」

 通信傍受を防ぐための有線通信ケーブルを切り離すと、直人の機体はゆっくりと空間に溶け込むように消えていった。

 雄介の機体も特殊空間に侵入する。

 ダークグリーンの異次元空間が雄介の目の前に広がる。

 少し前に直人の漆黒の機体も見える。

 突然、雄介のヘッドマウントディスプレイが、ブラックアウトした。

 最初、機器の故障かと思った。

「直人………」

 雄介は何か云いかけたが、ディスプレイに流れ出した文字を見て、絶句した。




*******************************************************

 雄介、勝手に航行プログラムを変えさせてもらった。

 お前の機体は、俺が自爆するまで動作しないようにプログラミングしてある。

 死ぬのはひとりで充分だろう。

 俺が失敗したら、後は頼む。

 どちらにしても、クリスが待っているので。

 悪いな。

*******************************************************




 圭は星空を見上げた。

 今頃、直人と雄介は最後の戦いに臨んでいるはずだ。

 圭にできることは、祈ることだけだった。

 帰ってきたら、お好み焼きを焼いてあげよう。

 瞳を閉じて、両手を合わせて願いをかける。

 三人、それぞれの想いを乗せて星が流れる。 

 星に願いを。






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