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第二章
これは恋じゃない
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ユージェニーは借りている客間に入り、深くため息をついた。
右手にはレスターからの手紙がある。侍女たちが手紙を書く準備を整えてくれたが、気が乗らなかった。
ヴィクトリアに心配をかけているのは分かる。強引に仲を取り持とうとはせず、ユージェニーの気持ちに寄り添ってくれる心遣いがありがたい。
夜会での出来事は、ほとんどが話した通りだ。二人でヴィクトリアのことを話して、支援を断った理由を聞こうとした。酔っぱらって口が軽くなっていたレスターは、そこだけは絶対に言わなかったけれど。
だが、彼の表情から察することはあった。どこか後ろめたいような、羞恥を感じさせるような。後悔するような顔をしていた。
ヴィクトリアに何か失礼なことをしたのだろうか、とも考えたが、それにしてはヴィクトリアの方にまったく心当たりが無いようだ。
机に座り、ペンを手に取る。宛名と、挨拶を書いたところですぐに止まってしまった。
もう一度ため息をついて、昨夜の会話を思い出す。
アイラ公爵夫人の紹介で、いろんな男性と話をして。休憩のために少し離れた時に、レスターの方から声をかけてきた。アイラ令嬢のご友人ですよね、と。
劇場で会った時よりも、身なりがちゃんとしていた。元の外見が悪くないので、服や髪を整えると見違えるようだった。
それだけでドキリとしてしまった自分を、ユージェニーは叱咤した。
ユージェニーは自分のことを、惚れっぽい性格だと自覚している。デリックの時だって一目惚れだった。幼い頃は、綺麗な見目の使用人や騎士について回っていたという恥ずかしい記憶もある。
だから、次こそは失敗したくないと思っていた。家族は好きな相手を選んでいいと言ってくれたが、そんな我が儘が許されるはずもない。デラリア領は盛り返してきたとはいえ、荒れた農耕地が完全に元の姿に戻るまでは、まだ時間がかかる。少しでも領地に貢献したかった。
だから、一度助けられたくらいで、素敵な好青年だからといって、恋に落ちてはいけないのだ。
彼は駆け出しの劇作家。家の跡取りでもなく、デラリアの利益になる立場の人ではない。そしてユージェニーからも、彼のために差し出せるものは何もない。
貴族の結婚は義務だ。ヴィクトリアとリアムのように結ばれる方が珍しい。
(私は、レスター卿を選んでは、いけないの)
そう言い聞かせている時点で、もう遅いのだという事実には、目を背けて。
『ヴィクトリアの友人』として話していると、レスターがぽろりと零したのだ。多分、本人としては無意識に。
「アイラ公爵令嬢は完璧すぎて、俺のような人間は気後れしてしまいます。隣にいたいと思えるのは、ユージェニー嬢のような人ですね」
ヴィクトリア様だって完璧じゃない、という反論は、喉の奥に消えてしまった。
その時点でかなり酔っていたレスターが、どういう気持ちでそれを言ったのかは知らない。ユージェニーは、「お世辞がお上手ですね」と辛うじて返した。
書きかけの便箋にインクが滲んで、ユージェニーは我に返った。
新しい便箋に取り換えたものの、やはり筆は進まない。
謝罪を受け入れて、観劇を断るだけだ。それなのに。
(しっかりしなさい、ユージェニー。……もう恋はしないと、決めたでしょう)
最初から心を預けて、裏切られるくらいなら。――裏切ってしまう、くらいなら。
義務と契約だけで繋がった関係の方がいい。
人の心など分からない。自分のものでさえも。
ユージェニーは、自分が惚れっぽいことを、知っている。
尊敬してやまない二人のような、心のすべてを相手に捧げる恋なんて、ユージェニーにはきっとできない。
ならば、不確かで曖昧な心の揺らぎなど封じてしまうべきだ。
(これは、恋じゃない。絶対に)
今度はすらすらと手が動いた。
当たり障りのない返事と、断りの文章を書きあげて、ユージェニーはほっと息をついた。
手紙を侍女に託し、ヴィクトリアのいるサンルームに戻ると、リアムから何やら報告を受けているところだった。
ユージェニーの顔を見てほっと安心したように息を吐いたヴィクトリアは、それ以上何も言わずに隣の椅子を勧めてくれた。
少し前に、恋愛が分からない、と言っていたヴィクトリアが、探るようにユージェニーを気遣ってくれている。
それだけで、ユージェニーはもう良かった。
「ヴィクトリア様、どうなさったんですか?」
尋ねると、ヴィクトリアは機嫌の良さそうな声で答えた。
「あのリアムの兄だとかいう、ハーバートの居場所が分かったの。それと、エルベール・フォルジュからの求婚。そちらも片付きそうだわ」
このところヴィクトリアを悩ませていた案件のことだ。
元第三王子との件で、ヴィクトリアとリアムは引き離されることにトラウマを刻まれてしまっている。本人たちに自覚があるのかは分からないが、ハーバートという男が植物園で接触してきた時の二人は、必死に身を守ろうとしているように見えた。
彼女たちの憂いが晴れるのなら、喜ばしいことだ。
「ユージェニーには申し訳ないのだけど、明日は別行動させてもらうわ。好きにくつろいでいて。もし観光するのなら、案内もつけさせるけど」
「ありがとうございます。私のことは気になさらずとも大丈夫ですわ。十分良くしていただいていますもの」
「ユージェニーはわたくしの大切なお友達だもの。当然のことよ」
そう言って笑うヴィクトリアの幸せを、ユージェニーは心から願っている。
右手にはレスターからの手紙がある。侍女たちが手紙を書く準備を整えてくれたが、気が乗らなかった。
ヴィクトリアに心配をかけているのは分かる。強引に仲を取り持とうとはせず、ユージェニーの気持ちに寄り添ってくれる心遣いがありがたい。
夜会での出来事は、ほとんどが話した通りだ。二人でヴィクトリアのことを話して、支援を断った理由を聞こうとした。酔っぱらって口が軽くなっていたレスターは、そこだけは絶対に言わなかったけれど。
だが、彼の表情から察することはあった。どこか後ろめたいような、羞恥を感じさせるような。後悔するような顔をしていた。
ヴィクトリアに何か失礼なことをしたのだろうか、とも考えたが、それにしてはヴィクトリアの方にまったく心当たりが無いようだ。
机に座り、ペンを手に取る。宛名と、挨拶を書いたところですぐに止まってしまった。
もう一度ため息をついて、昨夜の会話を思い出す。
アイラ公爵夫人の紹介で、いろんな男性と話をして。休憩のために少し離れた時に、レスターの方から声をかけてきた。アイラ令嬢のご友人ですよね、と。
劇場で会った時よりも、身なりがちゃんとしていた。元の外見が悪くないので、服や髪を整えると見違えるようだった。
それだけでドキリとしてしまった自分を、ユージェニーは叱咤した。
ユージェニーは自分のことを、惚れっぽい性格だと自覚している。デリックの時だって一目惚れだった。幼い頃は、綺麗な見目の使用人や騎士について回っていたという恥ずかしい記憶もある。
だから、次こそは失敗したくないと思っていた。家族は好きな相手を選んでいいと言ってくれたが、そんな我が儘が許されるはずもない。デラリア領は盛り返してきたとはいえ、荒れた農耕地が完全に元の姿に戻るまでは、まだ時間がかかる。少しでも領地に貢献したかった。
だから、一度助けられたくらいで、素敵な好青年だからといって、恋に落ちてはいけないのだ。
彼は駆け出しの劇作家。家の跡取りでもなく、デラリアの利益になる立場の人ではない。そしてユージェニーからも、彼のために差し出せるものは何もない。
貴族の結婚は義務だ。ヴィクトリアとリアムのように結ばれる方が珍しい。
(私は、レスター卿を選んでは、いけないの)
そう言い聞かせている時点で、もう遅いのだという事実には、目を背けて。
『ヴィクトリアの友人』として話していると、レスターがぽろりと零したのだ。多分、本人としては無意識に。
「アイラ公爵令嬢は完璧すぎて、俺のような人間は気後れしてしまいます。隣にいたいと思えるのは、ユージェニー嬢のような人ですね」
ヴィクトリア様だって完璧じゃない、という反論は、喉の奥に消えてしまった。
その時点でかなり酔っていたレスターが、どういう気持ちでそれを言ったのかは知らない。ユージェニーは、「お世辞がお上手ですね」と辛うじて返した。
書きかけの便箋にインクが滲んで、ユージェニーは我に返った。
新しい便箋に取り換えたものの、やはり筆は進まない。
謝罪を受け入れて、観劇を断るだけだ。それなのに。
(しっかりしなさい、ユージェニー。……もう恋はしないと、決めたでしょう)
最初から心を預けて、裏切られるくらいなら。――裏切ってしまう、くらいなら。
義務と契約だけで繋がった関係の方がいい。
人の心など分からない。自分のものでさえも。
ユージェニーは、自分が惚れっぽいことを、知っている。
尊敬してやまない二人のような、心のすべてを相手に捧げる恋なんて、ユージェニーにはきっとできない。
ならば、不確かで曖昧な心の揺らぎなど封じてしまうべきだ。
(これは、恋じゃない。絶対に)
今度はすらすらと手が動いた。
当たり障りのない返事と、断りの文章を書きあげて、ユージェニーはほっと息をついた。
手紙を侍女に託し、ヴィクトリアのいるサンルームに戻ると、リアムから何やら報告を受けているところだった。
ユージェニーの顔を見てほっと安心したように息を吐いたヴィクトリアは、それ以上何も言わずに隣の椅子を勧めてくれた。
少し前に、恋愛が分からない、と言っていたヴィクトリアが、探るようにユージェニーを気遣ってくれている。
それだけで、ユージェニーはもう良かった。
「ヴィクトリア様、どうなさったんですか?」
尋ねると、ヴィクトリアは機嫌の良さそうな声で答えた。
「あのリアムの兄だとかいう、ハーバートの居場所が分かったの。それと、エルベール・フォルジュからの求婚。そちらも片付きそうだわ」
このところヴィクトリアを悩ませていた案件のことだ。
元第三王子との件で、ヴィクトリアとリアムは引き離されることにトラウマを刻まれてしまっている。本人たちに自覚があるのかは分からないが、ハーバートという男が植物園で接触してきた時の二人は、必死に身を守ろうとしているように見えた。
彼女たちの憂いが晴れるのなら、喜ばしいことだ。
「ユージェニーには申し訳ないのだけど、明日は別行動させてもらうわ。好きにくつろいでいて。もし観光するのなら、案内もつけさせるけど」
「ありがとうございます。私のことは気になさらずとも大丈夫ですわ。十分良くしていただいていますもの」
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