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1話
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彼と婚約して、同棲を始めてから日に日に体調が悪くなっていった。彼というのはとある伯爵家の次期当主でアレスといい、私のために奔走してくれているみたい。
病院に行こうとすると、俺が頑張って原因を見つけてみせるからって言ってもらえたし。
最近では、妹のマリーも様子を見に来てくれるし、私って恵まれているんだなって思えてた。
でも、それが私の勘違いだったことを知ったんです。
というのも、アレスは私のことを想って奔走しているわけじゃなかったし、マリーも私を心配して会いに来てくれていたわけでもなかった。
何が言いたいかって、アレスは私という婚約者がいるのにマリーと浮気していたということ。
マリーは私がアレスの婚約者だと知っているのに、寝取ったということ。
……今思えば、私は馬鹿だった。
本当に私のことを大事にしてくれていたなら、病院に連れて行ってくれていたはず。
体調不良でボーッとした毎日が続いていたとはいえ、どうしてこんな簡単なことに思い至らなかったんだろう。
病院に行こうとすると、アレスとマリー二人して引き止めてきたりしてたのに。
多分、アレスやマリーは病院に行かれてはマズイことがあるんだろう。
だから、私は二人の目を盗んで病院に行ったんです。
「……とても言いづらいことなのですが、ルミア様の体内から大量の毒物が検出されました」
そこで私が聞いたのは、驚愕の事実でした。
しかし、その瞬間すべてを理解した。
私が体調を崩し続けていたのは、毒を盛られ続けていたからで。毒を盛り続けていたのは、私が病院に行こうとしたら必死に引き止めてきたアレスとマリー。
きっと、二人にとって私は邪魔者だったのだろう。
だから、毒殺することにしたんです。
そのことがわかった私は、騎士団に助けを求めた。
アレスとマリーが毒を盛っているという証拠はないが、私が毒を盛られ続けていた証拠はあるので、簡単に取り合ってもらえた。
「……大変だったな。もう大丈夫だから」
そう騎士団を束ねる、少し変わった騎士団長――この国に四つしか存在しない公爵家の三男の言葉に、私は張り詰めていた緊張が切れてしまったのか、泣いてしまった。
そんな私をアレスの屋敷に帰らせることはできないと、アイゼンは屋敷に客として迎え入れてくれたんです。
その日から、私の体調は見る見る良くなっていった。
ずっと青白かった肌も健康的な肌に戻りつつあって、眠っているときに吐血をすることも無くなった。
たとえ、吐血をしてシーツを汚してしまっても、咎められることはなかったし、精神的にも楽になった。
それで、アレスとマリーはと言うと……。
「完全に黒だったよ。君がいないと知ったあの二人は、見つけるのではなく、暗殺することにしたみたいだ。
だから、今はまだ外に出ない方がいい。暗殺者が君の命を狙っている。
俺がそれを許しはしないが」
アイゼンからそう聞かされ、私は本当に殺されそうになっていたのだと改めて実感した。
しかし、もうアレスとマリーの尻尾も、その雇われたという暗殺者の尻尾を掴んでいるらしく、もう少しで事件は収束するとアイゼンは言っていた。
そして、それから――数日が経過した頃、アレスとマリーを逮捕したとアイゼンから聞かされた。
これで、ようやくあの二人から解放されるのだと知って、私は喜びを覚えた。
もう体調も完全に回復したし、近いうちに実家に戻るつもりだったのだけど……。
「今はまだ、友達という関係でもいい。君の心もまだ癒え切っていないと思うから。
でも、俺は君が好きだ。たったの数日でなにを言っているんだってそう思うかもしれないけど、俺は君と出会った瞬間に一目惚れをした。そうじゃないと、今まで誰も入れたことのない屋敷に、君を迎え入れたりはしない。
だから、さっきも言ったけど、まずは友達から……」
そんなことをイケメンの男の人に言われて、ドキッとしない女の人はいない。
それに、まずは友達からと、彼も言っているみたいだし、そこから始めるなら……。
「いいですよ。私なんかでよければ……ですけど」
「き、君がいいんだ!」
ぱあぁっと、表情が明るくなるアイゼンを見て、私も微笑みを浮かべた。
もちろん、初めてできた恋人に裏切られたわけで、男の人が怖くないと言ったら嘘になるけど、彼なら大丈夫。
私は何の根拠もないけれどそんな気がして、少しからかってみるのだった。
「それなら、私のことは『君』ではなく、ルミアと……そう呼んでください。……アイゼン様」
~完~
病院に行こうとすると、俺が頑張って原因を見つけてみせるからって言ってもらえたし。
最近では、妹のマリーも様子を見に来てくれるし、私って恵まれているんだなって思えてた。
でも、それが私の勘違いだったことを知ったんです。
というのも、アレスは私のことを想って奔走しているわけじゃなかったし、マリーも私を心配して会いに来てくれていたわけでもなかった。
何が言いたいかって、アレスは私という婚約者がいるのにマリーと浮気していたということ。
マリーは私がアレスの婚約者だと知っているのに、寝取ったということ。
……今思えば、私は馬鹿だった。
本当に私のことを大事にしてくれていたなら、病院に連れて行ってくれていたはず。
体調不良でボーッとした毎日が続いていたとはいえ、どうしてこんな簡単なことに思い至らなかったんだろう。
病院に行こうとすると、アレスとマリー二人して引き止めてきたりしてたのに。
多分、アレスやマリーは病院に行かれてはマズイことがあるんだろう。
だから、私は二人の目を盗んで病院に行ったんです。
「……とても言いづらいことなのですが、ルミア様の体内から大量の毒物が検出されました」
そこで私が聞いたのは、驚愕の事実でした。
しかし、その瞬間すべてを理解した。
私が体調を崩し続けていたのは、毒を盛られ続けていたからで。毒を盛り続けていたのは、私が病院に行こうとしたら必死に引き止めてきたアレスとマリー。
きっと、二人にとって私は邪魔者だったのだろう。
だから、毒殺することにしたんです。
そのことがわかった私は、騎士団に助けを求めた。
アレスとマリーが毒を盛っているという証拠はないが、私が毒を盛られ続けていた証拠はあるので、簡単に取り合ってもらえた。
「……大変だったな。もう大丈夫だから」
そう騎士団を束ねる、少し変わった騎士団長――この国に四つしか存在しない公爵家の三男の言葉に、私は張り詰めていた緊張が切れてしまったのか、泣いてしまった。
そんな私をアレスの屋敷に帰らせることはできないと、アイゼンは屋敷に客として迎え入れてくれたんです。
その日から、私の体調は見る見る良くなっていった。
ずっと青白かった肌も健康的な肌に戻りつつあって、眠っているときに吐血をすることも無くなった。
たとえ、吐血をしてシーツを汚してしまっても、咎められることはなかったし、精神的にも楽になった。
それで、アレスとマリーはと言うと……。
「完全に黒だったよ。君がいないと知ったあの二人は、見つけるのではなく、暗殺することにしたみたいだ。
だから、今はまだ外に出ない方がいい。暗殺者が君の命を狙っている。
俺がそれを許しはしないが」
アイゼンからそう聞かされ、私は本当に殺されそうになっていたのだと改めて実感した。
しかし、もうアレスとマリーの尻尾も、その雇われたという暗殺者の尻尾を掴んでいるらしく、もう少しで事件は収束するとアイゼンは言っていた。
そして、それから――数日が経過した頃、アレスとマリーを逮捕したとアイゼンから聞かされた。
これで、ようやくあの二人から解放されるのだと知って、私は喜びを覚えた。
もう体調も完全に回復したし、近いうちに実家に戻るつもりだったのだけど……。
「今はまだ、友達という関係でもいい。君の心もまだ癒え切っていないと思うから。
でも、俺は君が好きだ。たったの数日でなにを言っているんだってそう思うかもしれないけど、俺は君と出会った瞬間に一目惚れをした。そうじゃないと、今まで誰も入れたことのない屋敷に、君を迎え入れたりはしない。
だから、さっきも言ったけど、まずは友達から……」
そんなことをイケメンの男の人に言われて、ドキッとしない女の人はいない。
それに、まずは友達からと、彼も言っているみたいだし、そこから始めるなら……。
「いいですよ。私なんかでよければ……ですけど」
「き、君がいいんだ!」
ぱあぁっと、表情が明るくなるアイゼンを見て、私も微笑みを浮かべた。
もちろん、初めてできた恋人に裏切られたわけで、男の人が怖くないと言ったら嘘になるけど、彼なら大丈夫。
私は何の根拠もないけれどそんな気がして、少しからかってみるのだった。
「それなら、私のことは『君』ではなく、ルミアと……そう呼んでください。……アイゼン様」
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