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「――ぁん」
そんな艶めかしい声が、生徒会室から聞こえた。
私は貴族学校に通うリリアンナ。階級で言えば、子爵家の令嬢なので、そこまで権力があるわけではない。
しかし、実力主義であるこの学校には階級などあってないようなもので、私は生徒会長になることができた。
そのこともあって、私はとある公爵家の次期当主であるセイバー様と婚約し、順風満帆な学校生活を送っていた。
……はずだったのだが…………。
「落ち着いて。さっきのはなにかの間違いよ。そう、なにかの間違い」
だって、生徒会室は神聖な領域。
いかなる権力者でも、生徒会に関係がない者は立ち入りが許されてないし、決して穢してはならない。
という、学校のルールが存在している。
だから、さっきの喘ぎ声は私の幻聴。
先週までテスト週間だったから、きっと疲れているのだと思う。
しかし、
「ああん……っ」
やっぱり幻聴ではなかった。
……き、聞かなかったことにしようかな。
い、いや……そんなこと恐れ多くてできない。
前・生徒会長である先輩から、
『生徒会を頼みます』
と、お願いされてるし……。
そのときに、私が絶対に守ってみせます……とか、カッコつけちゃってるし。
しかも、その先輩まだ学校に在籍しているし。
……あぁ、気が重い。
私のせいで、この誉れある学校から退学者が出る。
いや、まだそれだけならいい。
だけど、恨みを買って復讐しにくるかもしれない。
で、でも……やっぱりこのままにしておくわけにもいかないし。
まずはこっそりと仲を見ることにしよう。
ゆっくり、ゆーっくり、慎重に。
物音を立てずに、中の様子を……。
「――きゃあああああぁぁぁぁぁああああああああああ――ッッッ!」
私はひとしきり叫んだ後、気絶した。
私が生徒会室で見たものは、婚約者であるセイバーが、女性のあれに、その……打ちつけるところでした。
つまり、浮気現場です。
しかし、私が感じたのは浮気されたことへの怒りとか、寂しさとかではなく、単純な恐怖だった。
私、男性恐怖症なんです。
弟の裸を見ただけで失神してしまうぐらいなんです。
でも、それじゃあダメだと思って、克服しようと頑張ってはいるのですが、とても無理で……。
そして、今回の件。完全にトラウマになりました。
私は今後一生、独り身が確定しました。
……で、そんな私は今、どこでなにをしているのかと言うと、保健室で寝かされています。
そして、周りには生徒会のメンバーがいて、彼女たちが私をここまで連れてきてくれたみたい。
「……大変な目に遭いましたね、会長」
「えぇ……。それで、セイバー様はどうなりましたか?」
「即刻退学になりました。相手の方も同様に。
それで、そのセイバーとやらは、会長の婚約者だとかほざいてましたが、聞く耳を持たれていませんでしたね。
まぁ、それもそのはずでしょう。自らその地位を放棄したわけですし、なにより……伝統ある生徒会に泥を塗ったのですから、当然です」
「そうですか……」
「大丈夫ですか? あまり顔色がよくないみたいですが」
「杞憂ならいいのですが、不安なのです。私は子爵家の令嬢で、セイバー様は公爵家の次期当主。
なにか嫌がらせをしてくるのではないか……と」
「……それなら、私に考えがあります」
それから1ヶ月も経たないうちに、セイバー様は嫌がらせをしてきました。
が、無事に撃退。というのも、彼はあの一件で家を勘当されていました。
だから、容易に追い返すことができた。
せっかく、書紀ちゃんがいろいろとやってくれていたのに、無駄骨になってしまった。
「ごめんなさい。せっかく彼氏のふりをしてくれていたのに」
「これぐらい大丈夫っす。ほかでもない姉貴の頼みだったので」
「……そうですか。なら、いいのですが……」
ここで会話が途絶え、気まずい雰囲気になる。
しかし、すぐにお別れのときがやってきて。
「それでは、今日までありがとうございました」
私はお礼を口にした。
それで、普通ならここで背を向けるところなのですが、書紀ちゃんの弟――ウォルフはなにか言いたげな様子だったので、帰るにも帰れず口を開くのを待つ。
「……リリアンナさんは、男性恐怖症なんですよね?」
「えぇ。そうですが……」
「でも、俺とは普通に話せてますよね。それって、そういうことだと思っていいんですか?」
「……えっ?」
「それじゃあ、帰ります」
「えっ、それってどういうこと? ねぇ!? ウォルフくん!?」
こうして、元・婚約者の浮気から始まる一連の事件は収束し、次の物語が始まるのでした……。
~完~
そんな艶めかしい声が、生徒会室から聞こえた。
私は貴族学校に通うリリアンナ。階級で言えば、子爵家の令嬢なので、そこまで権力があるわけではない。
しかし、実力主義であるこの学校には階級などあってないようなもので、私は生徒会長になることができた。
そのこともあって、私はとある公爵家の次期当主であるセイバー様と婚約し、順風満帆な学校生活を送っていた。
……はずだったのだが…………。
「落ち着いて。さっきのはなにかの間違いよ。そう、なにかの間違い」
だって、生徒会室は神聖な領域。
いかなる権力者でも、生徒会に関係がない者は立ち入りが許されてないし、決して穢してはならない。
という、学校のルールが存在している。
だから、さっきの喘ぎ声は私の幻聴。
先週までテスト週間だったから、きっと疲れているのだと思う。
しかし、
「ああん……っ」
やっぱり幻聴ではなかった。
……き、聞かなかったことにしようかな。
い、いや……そんなこと恐れ多くてできない。
前・生徒会長である先輩から、
『生徒会を頼みます』
と、お願いされてるし……。
そのときに、私が絶対に守ってみせます……とか、カッコつけちゃってるし。
しかも、その先輩まだ学校に在籍しているし。
……あぁ、気が重い。
私のせいで、この誉れある学校から退学者が出る。
いや、まだそれだけならいい。
だけど、恨みを買って復讐しにくるかもしれない。
で、でも……やっぱりこのままにしておくわけにもいかないし。
まずはこっそりと仲を見ることにしよう。
ゆっくり、ゆーっくり、慎重に。
物音を立てずに、中の様子を……。
「――きゃあああああぁぁぁぁぁああああああああああ――ッッッ!」
私はひとしきり叫んだ後、気絶した。
私が生徒会室で見たものは、婚約者であるセイバーが、女性のあれに、その……打ちつけるところでした。
つまり、浮気現場です。
しかし、私が感じたのは浮気されたことへの怒りとか、寂しさとかではなく、単純な恐怖だった。
私、男性恐怖症なんです。
弟の裸を見ただけで失神してしまうぐらいなんです。
でも、それじゃあダメだと思って、克服しようと頑張ってはいるのですが、とても無理で……。
そして、今回の件。完全にトラウマになりました。
私は今後一生、独り身が確定しました。
……で、そんな私は今、どこでなにをしているのかと言うと、保健室で寝かされています。
そして、周りには生徒会のメンバーがいて、彼女たちが私をここまで連れてきてくれたみたい。
「……大変な目に遭いましたね、会長」
「えぇ……。それで、セイバー様はどうなりましたか?」
「即刻退学になりました。相手の方も同様に。
それで、そのセイバーとやらは、会長の婚約者だとかほざいてましたが、聞く耳を持たれていませんでしたね。
まぁ、それもそのはずでしょう。自らその地位を放棄したわけですし、なにより……伝統ある生徒会に泥を塗ったのですから、当然です」
「そうですか……」
「大丈夫ですか? あまり顔色がよくないみたいですが」
「杞憂ならいいのですが、不安なのです。私は子爵家の令嬢で、セイバー様は公爵家の次期当主。
なにか嫌がらせをしてくるのではないか……と」
「……それなら、私に考えがあります」
それから1ヶ月も経たないうちに、セイバー様は嫌がらせをしてきました。
が、無事に撃退。というのも、彼はあの一件で家を勘当されていました。
だから、容易に追い返すことができた。
せっかく、書紀ちゃんがいろいろとやってくれていたのに、無駄骨になってしまった。
「ごめんなさい。せっかく彼氏のふりをしてくれていたのに」
「これぐらい大丈夫っす。ほかでもない姉貴の頼みだったので」
「……そうですか。なら、いいのですが……」
ここで会話が途絶え、気まずい雰囲気になる。
しかし、すぐにお別れのときがやってきて。
「それでは、今日までありがとうございました」
私はお礼を口にした。
それで、普通ならここで背を向けるところなのですが、書紀ちゃんの弟――ウォルフはなにか言いたげな様子だったので、帰るにも帰れず口を開くのを待つ。
「……リリアンナさんは、男性恐怖症なんですよね?」
「えぇ。そうですが……」
「でも、俺とは普通に話せてますよね。それって、そういうことだと思っていいんですか?」
「……えっ?」
「それじゃあ、帰ります」
「えっ、それってどういうこと? ねぇ!? ウォルフくん!?」
こうして、元・婚約者の浮気から始まる一連の事件は収束し、次の物語が始まるのでした……。
~完~
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