謂れのない罪で処刑された私ですが、ただで死ぬはずないでしょう?死ぬときは一緒、そう約束したはずです。

無名 -ムメイ-

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1話

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 私が望んでいた未来はこんなのではなかった。
 ただ、私はあなたと幸せになりたかっただけなのに。
 でも、あなたは私ではなく、妹を選び――その挙句、なんの根拠もない戯言を聞き入れた。

 そして、私は今ここで首を刎ねられる。
 
 思えば、不幸な人生だった。
 なにかを手に入れれば、そのことごとくを妹に奪われた。
 きっと、私はこの世界そのものに嫌われていたのでしょう。
 そうでなければ、このような仕打ちは受けていない。

 でも、そんな人生を歩んできたからこそ、『死』というものに抵抗はなかった。
 いずれ、命すらも奪われると思っていたから。

 だからこそ、私は『私の死』をトリガーにした魔法をこの世に施した。
 命を対価にした魔法は、ただの魔法とは比べ物にならない威力があると聞く。

 きっと、私の『死』を笑いものにする奴らはみな、殺せるはず。

 そう、元・婚約者も妹も決して塵すら残してやらない。
 この世から抹消してやる。

 ふと、私の視界にそいつらが映った。
 こういうとき、私がまともなら命乞いをする場面なのかもしれない。

 だけど、今の私は早く死にたいと思っていた。
 だって、私が死ねばあいつらも死ぬもの。
 それが今は、ただただ待ち遠しい。

 でも、そうね。一つ欲を言うなら、婚約者には曇った表情をして欲しかった。
 そんな、『死』は当然とでも言いたげな表情はしてほしくはなかった。

 妹は……相変わらずね。とても醜い顔をしていた。

 私、妹に嫌われるようなことをした覚えなんてないんだけどなぁ……。

 でも、これから実の姉が処刑されるっていうのに、そんな見下した顔ができるってことは、よほど嫌われていたということだろう。

 その事実に、私は鼻で笑うことしかできなかった。

 もはや、涙なんてものは出ない。
 すでに涙は枯れている。

 婚約者を妹に寝取られたときに。

 ……まぁ、いいわ。
 その絶望があったからこそ、これからこいつらに降り注ぐ『死』が美しく輝くのだから。



 そして、私はなんの抵抗もしないまま――首を刎ねられた。
 が、話に聞いていた通り、すぐには死なないらしい。
 
『死』は確定しているけれど。

 そう、『死』は確定している。
 つまり、私の命を対価とした魔法が発動するのを、私は見届けることができるということだ。

 あぁ……、空が真っ赤に染まった。

 もし、私が処刑される立場でなければ、『死』をもたらす絶望に見えるかもしれない。
 だけど、今の私には今までの鬱憤を晴らす希望の光にしか見えなかった。

 これが、『死』の救済。今までこの言葉の意味を理解できなかったけど、こういうことだったのか。

 なら、今の私はこの世で一番の幸せ者だ――。


 その瞬間、世界は爆炎と爆風に飲み込まれ。



 そして――『死』がこの世を包み込んだ。
 
 
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