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番外編〜その3〜

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「ちょっと待って!やっぱり恥ずかしいよ!」
「待たないよ、やっと恋人になれたんだから…」
「だからって…付き合ってすぐ一緒に温泉なんて入らないよー!!!」
大晦日に佐野先生に誘われて旅行に来た凪咲と律はお互いに気持ちを伝え合い、晴れて恋人同士になれたのだが…まさかの凪咲が照れてしまい、そんな凪咲を見て律は無理矢理脱衣所に連れてきたのだった。
「ほら、凪咲」
「…変な事したら怒るからね、あとあんまりこっち見ない様に!」
凪咲の言葉に律は「分かった」と承諾をするとお互いに背中を向けて服を脱ぎ出した。
ボタンを外す音や服と肌が擦れる音に凪咲はドキドキして手が時折止まったが何とか服を脱いだ。
「凪咲、脱いだかい?」
「…脱いだけど…見ないで欲しい…」
すぐにタオルを腰に巻いて胸を腕で隠しながら答えるといきなり後ろから抱き着かれて、直に触れ合う肌に凪咲は顔を真っ赤にし悲鳴が上がりそうになったが何とか耐えた。
「大丈夫、こんな近いとそんな見えないよ」
「そ、そういう事じゃないでしょ!てか、律はドキドキしてないの、ズルい…僕ばっかりこんなドキドキして…」
そう言うと律はきょとんと目を見開いたが、すぐに凪咲の体を反転させ向き合う形にしてからまた抱き締めて耳に胸を押し付けてきた。
聞こえてきた律の鼓動は普通よりは早く、凪咲はすぐに顔を上げると頬を赤らめている律と目が合った。
「…僕だっていつも余裕じゃないよ…」
「…り…くしゅん!」
名前を呼ぼうとしたが裸でずっと脱衣所に居たからか凪咲はくしゃみをしてしまい、すぐに2人は洗い場に向かい背中を洗いあいっこして体を洗ってからゆっくり温泉に浸かった。
「はぁ…凄く癒されるー…」
「ふふ、そうだね。凪咲おいで」
手招きされて凪咲は律に近寄ると相手に背中を向ける形にされて、寄りかかった。
すると律が凪咲を後ろから抱き締めて肩に顔を埋めた。
「甘えん坊律だ」
「僕はいつも凪咲に対しては甘えてるよ」
「うっそだー、いつも余裕そうな顔して飄々としていて絶対に割り勘にはしないじゃん」
「それは年上だからね」
「たった1個じゃん!」
そんな話をしているとふいに沈黙が流れて素肌が触れ合っているのを感じて凪咲に恥ずかしさが戻ってきた。
少し離れようと体を動かしたが、すぐに律の抱き締める力が強くなり凪咲は振り返って相手を睨んだ。
「ちょっと…恥ずかしいの分かってよ…」
「うん、恥ずかしがっている凪咲が可愛くてつい…それに今離れられたら困るかな…」
“困る”という単語に首を傾げ凪咲は「どうして?」と問いかけると律は顔を真っ赤にしながら息を吐いて凪咲の耳元で囁いた。

「今、後ろ向きだから良いけど…顔見たらキスするし手を出すかもしれないよ」

まさかの発言に凪咲は目を見開いて驚き顔を真っ赤にした。恥ずかしさから何も言えなかったが…口をゆっくり開いた。

「り、律ならいいよ…」

一瞬律は固まってしまったが、すぐに嬉しそうに口角を上げると凪咲の体を反転させ向き合う様にするとゆっくり顔を近づけてそのまま唇を重ねた。
唇を離してからまた唇を重ねてを何度も繰り返し、暫くしてから凪咲から止めた。
「な、何回もしすぎ!」
「いや、嬉しくてつい…」
「…あんまり、キスしちゃダメ…僕キスあんまりした事ないからおかしくなっちゃう…」
そう伝えた瞬間、律の中で何かがプツンと切れた音がしてニッコリ笑顔のまま固まっていて凪咲は首を傾げて「律?」と声を掛けた。
だが次の瞬間には律に力強く抱き締められて凪咲は驚いた。
「うわっ!?り、律!?」
「凪咲…あんまり僕の理性を壊す様な可愛さはやめてくれるかい?」
「えっ!?それってどうい…んっ!?」
言い終わる前に唇を塞がれてしまい、凪咲はバシバシと律の背中を叩いたが全く離れる事はなく、そのまま深い口付けをされてしまうのであった。

「もう!律の馬鹿!」
部屋に戻り、寝間着姿になった凪咲は寝る前のスキンケアをしながらベッドの上で正座する律に怒っていた。
あの後も全く離して貰えず、凪咲は熱気にやられてしまい逆上せてしまったのであった。
「凪咲が可愛くて、つい…」
「ついじゃ許されないよ!もう!」
スキンケアを終えて律が正座しているベッドに座るとそのまま律をベッドに押し倒し、凪咲が覆い被さった。
「…大胆だね、凪咲」
「…律、キス凄い慣れてた…やっぱり暁斗さんとしまくったから?」
「!?いや、何でそこで暁斗くんが!?」
「だって、キスしても律平気な顔してるんだもん!僕はいっぱいいっぱいだったのにぃー!」
律の腹の上に跨り胸あたりをポカポカ叩く凪咲に律はニッコリ笑うと凪咲の腕を掴んでひっくり返しベッドに寝かせて、今度は律が覆い被さった。
「じゃあ、練習でもするかい?」
「……キスの?」
「もちろん、凪咲が納得するまで…何回でもしてあげるよ」
そう言って律の顔が近付いてきて凪咲は慌てたが避ける事はせずに、また唇を重ねてしまった。
すぐに離されてしまい、凪咲は目をとろんと蕩けさせながら口を開いた。
「…練習付き合って…」
「ふふ、まだ寝るのは惜しいからね、納得いくまで付き合うよ」
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