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八十七話 古本屋
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「うー! あー! ぬうあーー!!」
「まだ怒ってるんですか……」
「ミッちゃんは何もされてないからね!! いいよね!! 他人事でっ!!」
「私に怒らないで下さいよ……」
風俗街での一悶着があった次の日。未だ怒り冷めやらぬリンと腫れ物に触れる様に接するミイナはある場所へ向かって歩いていた。
「それにシオンもシオンだよ! 邪魔するだけ邪魔してフッと消えちゃうし!」
「……そうですね」
下手に触れるとまたその怒りがこちらに向かって爆発すると思うと肯定しか出来ないミイナ。正直なところ、あの状態のリンを止められる者は自分含め居なかったからシオンの登場は非常に有り難かった。とは口が裂けても言えない。
「勉強しろだのうるさいし! ボクはそんなに馬鹿じゃない!」
「…………ソウデスネ」
またも肯定はしたが、その肯定の言い方がまずかった。けれどリンはそれに気づく様子もなく「そうだよねっ!」と少しご機嫌な様子。こういうのが言われる原因ではと口にはしなかったのはリンよりは賢い証明となりそうだ。
ギャーギャーとうるさいリンと肯定だけして受け流すミイナが歩くこと三十分。目的地へとたどり着いた。
「シオンが言ってた古本屋ってここかな?」
二人がたどり着いたのは一軒の古本屋。シオンに言われた王都の西の端っこにある古本屋。二人の旅路が「西ってどっち」という言葉から始まったのは言うまでもない。
「本屋なんて来るの初めてだなー。ちょっと楽しみ」
「良い本があるといいですね」
初めて来る本屋への期待からか機嫌も良くなるリン。嬉しそうに扉へと手をかける。
「いらっしゃいませ」
扉を開けるとチリンチリンと鈴が鳴る音と男性の声が聞こえた。店の中はこじんまりとしていたが設置された本棚はどれも綺麗に整頓され、本棚だけでなく店の中全体が綺麗に整頓された感じだった。
そして、そんな店の中に居たのは五十代後半ぐらいの白髪の紳士然とした男性。白い髪も髭も店のように綺麗に整えられ、柔らかな微笑みをたたえている老紳士。
「こんにちはっ!」
「……はい、こんにちは。今日はどんな本をお探しですかな?」
元気よく挨拶するリンに穏やかに返答する男性。傍から見れば祖父と孫娘にしか見えない。
「えー、あの、……なんだっけミッちゃん?」
「『力と嘘』ですよ」
「あっそれだ! すいません『力と嘘』って本ください!」
ど忘れのなのかそもそも話を聞いていなかったのか、本のタイトルすら覚えていないリン。
「……『力と嘘』ですか。ふぅむ、残念ですがその様な本は取り扱っておりませんな」
「「え!?」」
予想外の答えに二人して驚く。まさか本が無いとは。
「あれ? ここじゃなかったのかな?」
「でも、近くに古本屋さんなんて無かったような……。あのー、この近くに古本屋さんって他にありますか?」
「この近くにはございませんな。東へずっと行ったところにはございますが、あれは遠くと表現されるでしょう」
シオンが言う店はおそらくここで合っている。そもそも古本屋自体が珍しい店なのだから間違えられる程数が無い。
「シオンに言われて来たのに……。シオンが間違ってるのかな?」
「その方がどなたかは存じ上げませんが、『力と嘘』という本自体も聞いたことがございませんな」
「……嘘ついたなシオン」
うぎぎと騙されたことに腹を立てるリン。それをまたその怒りがこっちに向かないかとハラハラして見るミイナ。そんな二人の様子を店主である老紳士は微笑ましく眺めていた。
「しかし、中々興味をそそられるタイトルですな。『力と嘘』。力持つ者がつく嘘ということでしょうか。これは中々。お二人はいかが考えられますか。このタイトル。『力と嘘』を」
そして、店主は二人へと問いかける。この本のタイトルをどう思うか。それぞれの意見を問う。
「嘘つくのは良くないと思うよ。それが誰でも。力持ってる人も持ってない人も」
「確かに嘘は良くありませんな。お嬢さんはいかがです?」
「わ、私も嘘つくのは誰でも良くないことだと思います。……特に力ある人が無い人に向かって嘘ついてニヤニヤ笑ってるのは駄目だと思います!」
リンとミイナがそれぞれ意見を述べる。まだ意見として採用できる客観寄りなものと、思いっきり私情を挟んだ感情的なものを。
「確かに……。ふむ、そうですな。その本はご用意がございませんが、代わりにそれに関するお話を一つ聞いてみてはいかがでしょうか」
「おなはし?」
店主が二人へと提案する。本の代わりにある一つのお話を。
「ええ。そうです。タイトルは『二人の王子』」
「まだ怒ってるんですか……」
「ミッちゃんは何もされてないからね!! いいよね!! 他人事でっ!!」
「私に怒らないで下さいよ……」
風俗街での一悶着があった次の日。未だ怒り冷めやらぬリンと腫れ物に触れる様に接するミイナはある場所へ向かって歩いていた。
「それにシオンもシオンだよ! 邪魔するだけ邪魔してフッと消えちゃうし!」
「……そうですね」
下手に触れるとまたその怒りがこちらに向かって爆発すると思うと肯定しか出来ないミイナ。正直なところ、あの状態のリンを止められる者は自分含め居なかったからシオンの登場は非常に有り難かった。とは口が裂けても言えない。
「勉強しろだのうるさいし! ボクはそんなに馬鹿じゃない!」
「…………ソウデスネ」
またも肯定はしたが、その肯定の言い方がまずかった。けれどリンはそれに気づく様子もなく「そうだよねっ!」と少しご機嫌な様子。こういうのが言われる原因ではと口にはしなかったのはリンよりは賢い証明となりそうだ。
ギャーギャーとうるさいリンと肯定だけして受け流すミイナが歩くこと三十分。目的地へとたどり着いた。
「シオンが言ってた古本屋ってここかな?」
二人がたどり着いたのは一軒の古本屋。シオンに言われた王都の西の端っこにある古本屋。二人の旅路が「西ってどっち」という言葉から始まったのは言うまでもない。
「本屋なんて来るの初めてだなー。ちょっと楽しみ」
「良い本があるといいですね」
初めて来る本屋への期待からか機嫌も良くなるリン。嬉しそうに扉へと手をかける。
「いらっしゃいませ」
扉を開けるとチリンチリンと鈴が鳴る音と男性の声が聞こえた。店の中はこじんまりとしていたが設置された本棚はどれも綺麗に整頓され、本棚だけでなく店の中全体が綺麗に整頓された感じだった。
そして、そんな店の中に居たのは五十代後半ぐらいの白髪の紳士然とした男性。白い髪も髭も店のように綺麗に整えられ、柔らかな微笑みをたたえている老紳士。
「こんにちはっ!」
「……はい、こんにちは。今日はどんな本をお探しですかな?」
元気よく挨拶するリンに穏やかに返答する男性。傍から見れば祖父と孫娘にしか見えない。
「えー、あの、……なんだっけミッちゃん?」
「『力と嘘』ですよ」
「あっそれだ! すいません『力と嘘』って本ください!」
ど忘れのなのかそもそも話を聞いていなかったのか、本のタイトルすら覚えていないリン。
「……『力と嘘』ですか。ふぅむ、残念ですがその様な本は取り扱っておりませんな」
「「え!?」」
予想外の答えに二人して驚く。まさか本が無いとは。
「あれ? ここじゃなかったのかな?」
「でも、近くに古本屋さんなんて無かったような……。あのー、この近くに古本屋さんって他にありますか?」
「この近くにはございませんな。東へずっと行ったところにはございますが、あれは遠くと表現されるでしょう」
シオンが言う店はおそらくここで合っている。そもそも古本屋自体が珍しい店なのだから間違えられる程数が無い。
「シオンに言われて来たのに……。シオンが間違ってるのかな?」
「その方がどなたかは存じ上げませんが、『力と嘘』という本自体も聞いたことがございませんな」
「……嘘ついたなシオン」
うぎぎと騙されたことに腹を立てるリン。それをまたその怒りがこっちに向かないかとハラハラして見るミイナ。そんな二人の様子を店主である老紳士は微笑ましく眺めていた。
「しかし、中々興味をそそられるタイトルですな。『力と嘘』。力持つ者がつく嘘ということでしょうか。これは中々。お二人はいかが考えられますか。このタイトル。『力と嘘』を」
そして、店主は二人へと問いかける。この本のタイトルをどう思うか。それぞれの意見を問う。
「嘘つくのは良くないと思うよ。それが誰でも。力持ってる人も持ってない人も」
「確かに嘘は良くありませんな。お嬢さんはいかがです?」
「わ、私も嘘つくのは誰でも良くないことだと思います。……特に力ある人が無い人に向かって嘘ついてニヤニヤ笑ってるのは駄目だと思います!」
リンとミイナがそれぞれ意見を述べる。まだ意見として採用できる客観寄りなものと、思いっきり私情を挟んだ感情的なものを。
「確かに……。ふむ、そうですな。その本はご用意がございませんが、代わりにそれに関するお話を一つ聞いてみてはいかがでしょうか」
「おなはし?」
店主が二人へと提案する。本の代わりにある一つのお話を。
「ええ。そうです。タイトルは『二人の王子』」
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