最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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九十三話 過去

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「………………は?」

 泣き崩れた男が言った一言。それはリンの両親を殺害したという衝撃的な一言だった。

「いや、両親殺したって、生きてるよ? お母さんは死んじゃったけど、……師匠は生きてるよ?」

 確かにリンの母親は既に他界している。だが、師であり父であるコウジは今もピンピンしていることは二人共よく知っている。

「……コウジ=ウォーカーは貴方様と血の繋がりはありません。貴方様の本当のお父様はルーカス=アリッジ。今は亡きアリッジ王国第二王子様でございます」
「………………は?」

 しかし、男が告げたのは二人が知るものと異なる事実。リンの両親はアリッジ王国王子。王族の一員だという秘密。

「……師匠は親じゃないの……?」
 
 ポツリと漏れたリンの一言。両親が王族だった、そんなことよりもリンにとって大事な者のこと。コウジのこと。
 その一言はまるでリンの心を吐き出したようでただ呆然と虚空を見つめるリン。悲しみも驚きも何もかもを吐き出した様に。

「あ、あの! こんなところで立ち話もなんですし場所を変えませんか!? ど、どこかゆっくり落ち着ける様なところに……」

 そんなリンの様子を見てミイナは咄嗟に口を挟む。少しでも落ち着かせないと、と。

「……そうですね。こんなところで話していい内容じゃない。申し訳ございません。少し歩きますが場所がございますのでご同行願えますか」

 男もそれに賛同し、立ち上がる。先程の泣き崩れたのから落ち着いて来たようで身に纏う鎧らしさを取り戻してきた。

「ほら、リンさん。大丈夫ですか? 歩けますか?」
「え……、うん……。大丈夫だよ……」
「……私も近くまで行きますから。何かあったらすぐに助けに行きますから。行きましょう?」
「……うん。……でも、ミッちゃんも一緒に来て、聞いて」
「え?」
「……ダメ?」
「い、いえ、いいんですけど、その……」

 ミイナは言いよどむ。リンのことが心配だから付いて行きたい気持ちが大きいのは間違いない。だが、内容が内容だ。これを自分なんかが聞いてもよいのかと躊躇する気持ちもあるのも事実。

「……ボク、………………ミッちゃん……」

 消え入りそうなリンの声。大丈夫なんて言っていたが、大丈夫な訳が無い。リンにとって今頼りとなるのはミイナのみ。そのミイナに縋るようにその名を呼ぶ。

「……申し訳ございませんが、あなたはリン様とどの様な関係でいらっしゃいますか?」

 冷静を取り戻してきた男は、ミイナも内容の一部を聞いてしまったことをようやく理解したようだった。そして、部外者にこれ以上聞かれる訳にはいかないと静かに威圧する。関係の無い部外者は引っ込んでいろと。
 静かに的確に急所を刺すような威圧。リンの攻撃をいなしていたようにこの男もまた達人の力量を持つ者。その威圧は並の者なら呼吸も乱れ言葉を発するなんて出来なくする脅し。だが、

「わ……、私はリンさんの弟子ですっ! 弟子は師匠の言うことに拒否出来ないんです! だから、私も一緒に行きますから!」

 ミイナとてその脅しに屈する程もうヤワではない。今までの修行の成果、そして、リンを想うその気持ちの表れだ。

「……失礼致しました。お弟子様でしたか。疑う様な真似をお許し下さい。では、ご案内致します」

 ミイナの目をじっと見た後、男は謝罪し歩き出した。その瞳に何を見たのかは分からない。これからどこへ連れて行かれるかも分からない。でも、二人は頷き合う。そして、歩き出した。





「お疲れ様です! そちらの二人は?」
「……俺の客人だ。気にするな」
「はっ! かしこまりました!」

 二人が男に連れられて来たは立派な門に屈強な門番が警備をする城。この王都において、この王国において一番の城。王城。その城の中、奥進んだ一室へと二人は案内された。

「こちらへお掛けください。……名乗りが遅れて申し訳ございません。俺はレオニクス=アズベ。アリッジ王国親衛隊隊長をしております」

 男が名乗る。名はレオニクス。王国親衛隊隊長。親衛隊と言えば、騎士団の中でも最高位に位置する騎士と言う事なるがそんなこと二人は知らないし、今は重要ではなかった。

「……それで話しは……」
「……はい。あいつ……、彼コウジ=ウォーカーは貴方様の育ての親になります。本当の産みの親は第二王子ルーカス=アリッジ様、婚約者であるイザベラ様のお二人です」

 改めて告げられるリンの両親。アリッジ王国第二王子とその婚約者がリンの両親。そして、

「そのお二人を、貴方様のご両親を殺害したのは俺です。いくら謝ったところで許して頂けるとは思っておりません。文字通り、煮るなり焼くなりお好きになさって下さい」

 地に頭をめり込ませるかのように頭を下げるレオニクス。
 彼は今完全に無防備な状態だった。レオニクス自身何の防御や抵抗をしようとする様子は一切無く、その言葉に間違いがないことを示していた。今の彼なら誰でも簡単に殺すことが出来る。ましてや、先の言葉に偽りが無いなら、リンにとって彼は親の敵となる。たが、

「……話して」

「話して。知ってること全部。一つも残さず嘘も付かずに。それからどうするか決める」
「……かしこまりました」

 リンは話をすることを選んだ。

「……では、少し長くなりますがコウジと出会った時からお話し致しましょう」

 リンの言葉を聞いてレオニクスは顔を上げる。そして、静かに語り始めた。
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