95 / 100
九十三話 過去
しおりを挟む
「………………は?」
泣き崩れた男が言った一言。それはリンの両親を殺害したという衝撃的な一言だった。
「いや、両親殺したって、生きてるよ? お母さんは死んじゃったけど、……師匠は生きてるよ?」
確かにリンの母親は既に他界している。だが、師であり父であるコウジは今もピンピンしていることは二人共よく知っている。
「……コウジ=ウォーカーは貴方様と血の繋がりはありません。貴方様の本当のお父様はルーカス=アリッジ。今は亡きアリッジ王国第二王子様でございます」
「………………は?」
しかし、男が告げたのは二人が知るものと異なる事実。リンの両親はアリッジ王国王子。王族の一員だという秘密。
「……師匠は親じゃないの……?」
ポツリと漏れたリンの一言。両親が王族だった、そんなことよりもリンにとって大事な者のこと。コウジのこと。
その一言はまるでリンの心を吐き出したようでただ呆然と虚空を見つめるリン。悲しみも驚きも何もかもを吐き出した様に。
「あ、あの! こんなところで立ち話もなんですし場所を変えませんか!? ど、どこかゆっくり落ち着ける様なところに……」
そんなリンの様子を見てミイナは咄嗟に口を挟む。少しでも落ち着かせないと、と。
「……そうですね。こんなところで話していい内容じゃない。申し訳ございません。少し歩きますが場所がございますのでご同行願えますか」
男もそれに賛同し、立ち上がる。先程の泣き崩れたのから落ち着いて来たようで身に纏う鎧らしさを取り戻してきた。
「ほら、リンさん。大丈夫ですか? 歩けますか?」
「え……、うん……。大丈夫だよ……」
「……私も近くまで行きますから。何かあったらすぐに助けに行きますから。行きましょう?」
「……うん。……でも、ミッちゃんも一緒に来て、聞いて」
「え?」
「……ダメ?」
「い、いえ、いいんですけど、その……」
ミイナは言いよどむ。リンのことが心配だから付いて行きたい気持ちが大きいのは間違いない。だが、内容が内容だ。これを自分なんかが聞いてもよいのかと躊躇する気持ちもあるのも事実。
「……ボク、………………ミッちゃん……」
消え入りそうなリンの声。大丈夫なんて言っていたが、大丈夫な訳が無い。リンにとって今頼りとなるのはミイナのみ。そのミイナに縋るようにその名を呼ぶ。
「……申し訳ございませんが、あなたはリン様とどの様な関係でいらっしゃいますか?」
冷静を取り戻してきた男は、ミイナも内容の一部を聞いてしまったことをようやく理解したようだった。そして、部外者にこれ以上聞かれる訳にはいかないと静かに威圧する。関係の無い部外者は引っ込んでいろと。
静かに的確に急所を刺すような威圧。リンの攻撃をいなしていたようにこの男もまた達人の力量を持つ者。その威圧は並の者なら呼吸も乱れ言葉を発するなんて出来なくする脅し。だが、
「わ……、私はリンさんの弟子ですっ! 弟子は師匠の言うことに拒否出来ないんです! だから、私も一緒に行きますから!」
ミイナとてその脅しに屈する程もうヤワではない。今までの修行の成果、そして、リンを想うその気持ちの表れだ。
「……失礼致しました。お弟子様でしたか。疑う様な真似をお許し下さい。では、ご案内致します」
ミイナの目をじっと見た後、男は謝罪し歩き出した。その瞳に何を見たのかは分からない。これからどこへ連れて行かれるかも分からない。でも、二人は頷き合う。そして、歩き出した。
「お疲れ様です! そちらの二人は?」
「……俺の客人だ。気にするな」
「はっ! かしこまりました!」
二人が男に連れられて来たは立派な門に屈強な門番が警備をする城。この王都において、この王国において一番の城。王城。その城の中、奥進んだ一室へと二人は案内された。
「こちらへお掛けください。……名乗りが遅れて申し訳ございません。俺はレオニクス=アズベ。アリッジ王国親衛隊隊長をしております」
男が名乗る。名はレオニクス。王国親衛隊隊長。親衛隊と言えば、騎士団の中でも最高位に位置する騎士と言う事なるがそんなこと二人は知らないし、今は重要ではなかった。
「……それで話しは……」
「……はい。あいつ……、彼コウジ=ウォーカーは貴方様の育ての親になります。本当の産みの親は第二王子ルーカス=アリッジ様、婚約者であるイザベラ様のお二人です」
改めて告げられるリンの両親。アリッジ王国第二王子とその婚約者がリンの両親。そして、
「そのお二人を、貴方様のご両親を殺害したのは俺です。いくら謝ったところで許して頂けるとは思っておりません。文字通り、煮るなり焼くなりお好きになさって下さい」
地に頭をめり込ませるかのように頭を下げるレオニクス。
彼は今完全に無防備な状態だった。レオニクス自身何の防御や抵抗をしようとする様子は一切無く、その言葉に間違いがないことを示していた。今の彼なら誰でも簡単に殺すことが出来る。ましてや、先の言葉に偽りが無いなら、リンにとって彼は親の敵となる。たが、
「……話して」
「話して。知ってること全部。一つも残さず嘘も付かずに。それからどうするか決める」
「……かしこまりました」
リンは話をすることを選んだ。
「……では、少し長くなりますがコウジと出会った時からお話し致しましょう」
リンの言葉を聞いてレオニクスは顔を上げる。そして、静かに語り始めた。
泣き崩れた男が言った一言。それはリンの両親を殺害したという衝撃的な一言だった。
「いや、両親殺したって、生きてるよ? お母さんは死んじゃったけど、……師匠は生きてるよ?」
確かにリンの母親は既に他界している。だが、師であり父であるコウジは今もピンピンしていることは二人共よく知っている。
「……コウジ=ウォーカーは貴方様と血の繋がりはありません。貴方様の本当のお父様はルーカス=アリッジ。今は亡きアリッジ王国第二王子様でございます」
「………………は?」
しかし、男が告げたのは二人が知るものと異なる事実。リンの両親はアリッジ王国王子。王族の一員だという秘密。
「……師匠は親じゃないの……?」
ポツリと漏れたリンの一言。両親が王族だった、そんなことよりもリンにとって大事な者のこと。コウジのこと。
その一言はまるでリンの心を吐き出したようでただ呆然と虚空を見つめるリン。悲しみも驚きも何もかもを吐き出した様に。
「あ、あの! こんなところで立ち話もなんですし場所を変えませんか!? ど、どこかゆっくり落ち着ける様なところに……」
そんなリンの様子を見てミイナは咄嗟に口を挟む。少しでも落ち着かせないと、と。
「……そうですね。こんなところで話していい内容じゃない。申し訳ございません。少し歩きますが場所がございますのでご同行願えますか」
男もそれに賛同し、立ち上がる。先程の泣き崩れたのから落ち着いて来たようで身に纏う鎧らしさを取り戻してきた。
「ほら、リンさん。大丈夫ですか? 歩けますか?」
「え……、うん……。大丈夫だよ……」
「……私も近くまで行きますから。何かあったらすぐに助けに行きますから。行きましょう?」
「……うん。……でも、ミッちゃんも一緒に来て、聞いて」
「え?」
「……ダメ?」
「い、いえ、いいんですけど、その……」
ミイナは言いよどむ。リンのことが心配だから付いて行きたい気持ちが大きいのは間違いない。だが、内容が内容だ。これを自分なんかが聞いてもよいのかと躊躇する気持ちもあるのも事実。
「……ボク、………………ミッちゃん……」
消え入りそうなリンの声。大丈夫なんて言っていたが、大丈夫な訳が無い。リンにとって今頼りとなるのはミイナのみ。そのミイナに縋るようにその名を呼ぶ。
「……申し訳ございませんが、あなたはリン様とどの様な関係でいらっしゃいますか?」
冷静を取り戻してきた男は、ミイナも内容の一部を聞いてしまったことをようやく理解したようだった。そして、部外者にこれ以上聞かれる訳にはいかないと静かに威圧する。関係の無い部外者は引っ込んでいろと。
静かに的確に急所を刺すような威圧。リンの攻撃をいなしていたようにこの男もまた達人の力量を持つ者。その威圧は並の者なら呼吸も乱れ言葉を発するなんて出来なくする脅し。だが、
「わ……、私はリンさんの弟子ですっ! 弟子は師匠の言うことに拒否出来ないんです! だから、私も一緒に行きますから!」
ミイナとてその脅しに屈する程もうヤワではない。今までの修行の成果、そして、リンを想うその気持ちの表れだ。
「……失礼致しました。お弟子様でしたか。疑う様な真似をお許し下さい。では、ご案内致します」
ミイナの目をじっと見た後、男は謝罪し歩き出した。その瞳に何を見たのかは分からない。これからどこへ連れて行かれるかも分からない。でも、二人は頷き合う。そして、歩き出した。
「お疲れ様です! そちらの二人は?」
「……俺の客人だ。気にするな」
「はっ! かしこまりました!」
二人が男に連れられて来たは立派な門に屈強な門番が警備をする城。この王都において、この王国において一番の城。王城。その城の中、奥進んだ一室へと二人は案内された。
「こちらへお掛けください。……名乗りが遅れて申し訳ございません。俺はレオニクス=アズベ。アリッジ王国親衛隊隊長をしております」
男が名乗る。名はレオニクス。王国親衛隊隊長。親衛隊と言えば、騎士団の中でも最高位に位置する騎士と言う事なるがそんなこと二人は知らないし、今は重要ではなかった。
「……それで話しは……」
「……はい。あいつ……、彼コウジ=ウォーカーは貴方様の育ての親になります。本当の産みの親は第二王子ルーカス=アリッジ様、婚約者であるイザベラ様のお二人です」
改めて告げられるリンの両親。アリッジ王国第二王子とその婚約者がリンの両親。そして、
「そのお二人を、貴方様のご両親を殺害したのは俺です。いくら謝ったところで許して頂けるとは思っておりません。文字通り、煮るなり焼くなりお好きになさって下さい」
地に頭をめり込ませるかのように頭を下げるレオニクス。
彼は今完全に無防備な状態だった。レオニクス自身何の防御や抵抗をしようとする様子は一切無く、その言葉に間違いがないことを示していた。今の彼なら誰でも簡単に殺すことが出来る。ましてや、先の言葉に偽りが無いなら、リンにとって彼は親の敵となる。たが、
「……話して」
「話して。知ってること全部。一つも残さず嘘も付かずに。それからどうするか決める」
「……かしこまりました」
リンは話をすることを選んだ。
「……では、少し長くなりますがコウジと出会った時からお話し致しましょう」
リンの言葉を聞いてレオニクスは顔を上げる。そして、静かに語り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる