最強師匠ズ、才能なしチートなしの私を育てる

ノミ

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四十四話 ジャスティス・ロウ ②

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「みんな下がっていてくれ。もう大丈夫。後は僕に任せてくれ!」

 白いマントをはためかせ、白を基調としたコスチュームに身を包み現れたヒーロー。ドラゴンの放った火球を殴り返し、無傷で私達の前に立つヒーロー。

「ジャ、ジャスティス・ロウだあ! ジャスティス・ロウが来てくれたぞ!!」

 彼の登場に重い雰囲気だった場が沸き立つ。歓喜し安堵の声で溢れかえる。現れただけでこの反応。すごいまさにヒーロー。「ジャスティス・ロウ」。それがこのヒーローの名前。

「ふおおぉぉ! ヒーローヒーロー! カッコイイ!!」

 沸き立ったのは彼らだけではない。ここにも一人、目を輝かせ歓声を上げる者が。さっきまでシオンさんを盾にしていたリンさんが。

「あっ、あくしゅ、握手してもらえるかな!?」

 ヒーローの登場にはしゃぎ過ぎているリンさん。いや、まだヒーローは登場しただけですからね?

「後にしとけよ。ヒーロー様のお仕事はまだ終わってねえんだぜ?」

 そう。彼はまだ登場しただけでドラゴンもまだ生きている。さっきまで自分の放った火球を打ち返されて怯んでいたドラゴンももう立ちなおった。あのドラゴンを倒すのが先だろう。

「じゃあボクがサクッと倒してくる!」
「それじゃヒーローの意味ねえだろ。ここは大人しく待ってろよ」

 リンさんシオンさんはいつも通りだが、それ以外の周りの人達もヒーローの登場に歓喜し、ドラゴンのことなんか忘れてるかのようにグダグダな光景が広がる。これを好機と捉えたかそれともそんなことお構いなしなのかドラゴンは再び息を吸い込み、炎を放とうとする。

「させないっ!」

 それにいち早く反応したヒーロー。炎を放出する前に下から口を叩き上げる。それにより開きかけた口は閉ざされ、ドラゴンの顔は上へと向いた。

「ハアアアアァァァ!!」

 下から叩き上げた後、彼は止まることなく連打をお見舞する。顔が上がったことにより無防備に晒された内側の首や腹。外側は硬い鱗に守られたドラゴンの体も内側は鱗がなく柔らかい。と言っても、外よりは柔らかいと言うだけだけど。

「オオオオォォ!!」

 首から腹までを殴る殴る。柔らかいと言っても、リザードマンなどの中級魔物の鱗より硬いドラゴンの体。普通の人が殴れば、逆に殴った方がダメージを負う程だが、彼にはそんなの関係無いのだろう。殴る度にドラゴンの体がへこみ、うめき声を上げさせる。

 硬い体を易易と粉砕していく拳。すごい。けど、なんだろう。初めて見るはずなのになんか初めての気がしない。うーん、どこかで見たような。武器を持たず、自分の体のみで戦う姿を見ているとなんだか。破壊力もすごいけど、意外と丁寧って言うか正しい戦い方って言うか。いやでも、会うの自体初めてだしなぁ。まあ、いいや。

 これ以上内側を殴られるのはまずいと感じたのかドラゴンは地面にうつ伏せとなった。彼を押し潰すかのように地面へ倒れ込み、避けられた後も起き上がろうとはしない。うつ伏せの状態で彼を威嚇する。

「硬い鱗で身を守るか。それがどうした! 僕は、僕はジャスティス・ロウだ!!」

 硬い鱗で完全に守られたドラゴンを前にしても彼は挫けない。彼は自分を奮い立たせ、拳を更に強く握りしめる。そして、高く跳び上がり、ドラゴンの顔前へ。

「オオオオォ! くらえ! ジャスティスパーンチ!!」

 高く跳び上がり、振り下ろされた拳。その拳はドラゴンの硬い鱗だけでなく頭蓋も砕き、ドラゴンを絶命させた。

 すごい。あの硬い鱗に頭蓋を素手で砕くなんて。それにしても、……ジャスティスパーンチ。

「……よし。みんな、もう大丈夫だ! ドラゴンはこのジャスティス・ロウが倒した!!」

 ドラゴンの頭上から振り返り、拳を見せながら言うジャスティス・ロウ。その瞬間、その場は先程以上の歓喜の声で溢れかえった。

「オオオォ! さすがはジャスティス・ロウだあ!!」
「ありがとう! ありがとうジャスティス・ロウ!!」 
「すごいすごい! カッコイイカッコイイ!! ヒーローヒーロー!!」

 場はもの凄い盛り上がりとなった。討伐の為に集まっていた冒険者達だけでなく、いつの間にか街の人達もやって来ていて、みんなすごく盛り上がっている。リンさんもさっきから「すごい!」とか「カッコイイ!」ばかり言ってる。うん、まあ、すごいしドラゴン倒してカッコイイとは思うけど、……ジャスティス・パーンチ。シオンさんと私だけがこの場で浮いていた。

「ありがとう! ありがとう! ん? サイン? お安い御用さ!」

 ドラゴンから降りてきたロウさんはみんなに囲まれ、まさしくヒーローとなっている。握手をせがまれたり、サインをお願いされたり。

「はっ! ボクも行ってくる! 握手してー!!」

 リンさんもあの人だかりに突撃して行っちゃった。してもらえるといいですね。握手。

「良いもん見れたなぁ。実にハイクオリティなヒーローショーだったな」
「ショーって……」

 残ったシオンさんはさも愉快そうに笑う。

「ショーだったろ? 最後の一撃は鱗も頭蓋も砕く程の威力。あれを最初からやれば一撃なのにわざわざ派手に何発も。何か理由があったのかは知らねえが」

 うーん、確かにそう言われるとそう思えてきた。それまでのもすごい威力だったけど、最後の一撃は比べ物にならないぐらいの威力だったし、はじめからそうしてれば一撃、ショーと言われてもおかしくないのかなぁなんて。

「それにしても正義の味方であるヒーローがあんな戦い方するなんてなあ」
「まあ、確かにやり過ぎっていうか、一方的っていうか……」
「そんなことじゃねえよ。見ていて分からなかったのか?」

 え? なに、分からなかったのかって。ちゃんと見ていたけどそんな変なところとか無かったけど。あの人強いなぁとか、パンチすごいとかぐらいしか分からなかったけど。

「一つ一つの動作に出てただろ? お前も見たことある奴が」

 見たことある奴? そう言えば、ロウさんの戦いを見ていてなんだか初めて見た気がしないなぁなんて思ったけど、やっぱり間違いじゃなかったんだ。でも、誰だろう。私も見たことある人って。

 すごい破壊力に、意外と丁寧な戦い方で武器を持たない人ってことでいいのかな? そんな人居たっけ? リンさんもシオンさんも武器使うし、それ以外だと……。あっ……。

「あれは間違いなくドン・オーガストと同じだ」

 そうだ。あれはドンさんだ。以前リンさんとの戦いで見たことがある。あの時は手を抜いてたけど言われて見れば動作が似ている。……ような気がする。確信はない。でも、まあ、「あれ?なんか見たことあるかも?」なんて思ってたし、分かってたことにしよう。あれはドンさんだ!

「正義の味方ととある組織のドン。いったいどんな関係があるのかねえ?」
「さあなんでしょうかね。って言うか、とある組織ってただの冒険者ギルドじゃないですか」

 そんな悪の組織みたいな言い方して。そんな風に言えば、私もリンさんも悪の組織の構成員になるじゃないですか。まあ、確かにドンさんそう言うの似合いそうだけど。
 
「やったよー! 握手してもらえたー」

 二人はいったいどんな関係があるかななんて考えてるとリンさんが満面の笑みで帰って来た。良かったですね。握手してもらえて。

「じゃあ、僕はこれで失礼させてもらうよ。みんな、また会おう!」

 リンさんがこちらに帰って来たころにロウさんは足早にこの場を離れて行ってしまった。ああ、ちょっとぐらい私もお話したかったのに。ドンさんのことの真偽も確かめたかったなあ。

 風のように現れ、風のように去っていったヒーロー「ジャスティス・ロウ」。「また会おう!」なんて言ってたしまた会えるといいな。……ジャスティスパーンチ。
 
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