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6件目 すごく悪いやつ
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制服を着た二人の少女が、座席に座って電車に揺られている。
「ねえねえ、一昨日、駅の近くのアパートで火事があったの知ってる?」
「うん、知ってる知ってる。でも、亡くなった人はいなかったらしいね」
「そうそう。被害が建物だけだったから、まだ不幸中の幸いだよね」
「本当だよね」
「そういえばさ、昨日、河原で死体が見つかったらしいよ」
「えー、本当!?」
「本当、本当」
「それは、怖いねー」
「うん。しかも、その死体っていうのが、かなりボロボロだったんだって」
「え……、ボロボロ?」
「うん、近所の人が見つけたみたいなんだけど……、なんかすごく殴られてたり、爪が全部剥がされてたり、骨が見えるまで肉を抉られてたりで、すごかったらしいよ」
「うわー……、それは見つけた人も気の毒だね……」
「うん、本当だよね……」
「でも、近所でそんな死体が見つかるなんて、怖いね……」
「うん。でも、あんまりにも酷い状態だったし、強い恨みを買って殺されたんじゃないかって」
「恨みを買ってか……、じゃあ、その殺された人、すごく悪いやつだったんだね」
「うん、きっとそうだよ。そう考えるとさ、怖いっていうより、スカッとしない?」
「ああ、うん。ざまぁみろ、ってかんじにはなるかな」
「そうそう、ざまぁ、ざまぁ」
「あはは、それなら、もう怖くないね!」
「うん! 私たちは、別に悪いことしてないもんね!」
「そうだね! あ、そういえばさ、一時期SNSで流行った『#ザマァミロ』って最近、見ないよね」
「あー、うん。なんか、過去の話ばっかり再発信してるなーと思ったら、いつの間にか更新がなくなっちゃったね」
「そうそう。私、あれけっこう好きだったんだけどなぁー」
「うん、私も好きだったなー……あ、じゃあさ、二人で共同のアカウント作って、私たちで『#ザマァミロ』を発信してみない?」
「あ、うん! 面白そう! じゃあ、さっそく新しいアカウントを取って……」
「スカッとする体験談を募集しますってコメントをトップページに書いて……、あ! 見て見て、もう体験談が来たよ!」
「あ、本当だ! えーと、アカウント名は『アザミ』さんで、『すごく悪いやつを懲らしめた話でもいいですか?』だって!」
「お、それいいね! 悪人退治の話なら、共感する人がいっぱいいるから、きっとかなりの『いいね』をもらえるよ!」
「そうだよね! じゃあ、さっそく教えてもらおう!」
「うん、賛成!」
無邪気にはしゃぐ二人を乗せて、電車はどこまでも進んでいく。
「ねえねえ、一昨日、駅の近くのアパートで火事があったの知ってる?」
「うん、知ってる知ってる。でも、亡くなった人はいなかったらしいね」
「そうそう。被害が建物だけだったから、まだ不幸中の幸いだよね」
「本当だよね」
「そういえばさ、昨日、河原で死体が見つかったらしいよ」
「えー、本当!?」
「本当、本当」
「それは、怖いねー」
「うん。しかも、その死体っていうのが、かなりボロボロだったんだって」
「え……、ボロボロ?」
「うん、近所の人が見つけたみたいなんだけど……、なんかすごく殴られてたり、爪が全部剥がされてたり、骨が見えるまで肉を抉られてたりで、すごかったらしいよ」
「うわー……、それは見つけた人も気の毒だね……」
「うん、本当だよね……」
「でも、近所でそんな死体が見つかるなんて、怖いね……」
「うん。でも、あんまりにも酷い状態だったし、強い恨みを買って殺されたんじゃないかって」
「恨みを買ってか……、じゃあ、その殺された人、すごく悪いやつだったんだね」
「うん、きっとそうだよ。そう考えるとさ、怖いっていうより、スカッとしない?」
「ああ、うん。ざまぁみろ、ってかんじにはなるかな」
「そうそう、ざまぁ、ざまぁ」
「あはは、それなら、もう怖くないね!」
「うん! 私たちは、別に悪いことしてないもんね!」
「そうだね! あ、そういえばさ、一時期SNSで流行った『#ザマァミロ』って最近、見ないよね」
「あー、うん。なんか、過去の話ばっかり再発信してるなーと思ったら、いつの間にか更新がなくなっちゃったね」
「そうそう。私、あれけっこう好きだったんだけどなぁー」
「うん、私も好きだったなー……あ、じゃあさ、二人で共同のアカウント作って、私たちで『#ザマァミロ』を発信してみない?」
「あ、うん! 面白そう! じゃあ、さっそく新しいアカウントを取って……」
「スカッとする体験談を募集しますってコメントをトップページに書いて……、あ! 見て見て、もう体験談が来たよ!」
「あ、本当だ! えーと、アカウント名は『アザミ』さんで、『すごく悪いやつを懲らしめた話でもいいですか?』だって!」
「お、それいいね! 悪人退治の話なら、共感する人がいっぱいいるから、きっとかなりの『いいね』をもらえるよ!」
「そうだよね! じゃあ、さっそく教えてもらおう!」
「うん、賛成!」
無邪気にはしゃぐ二人を乗せて、電車はどこまでも進んでいく。
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