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本編
11話 デザート
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自室。
私、アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィア・アーヴァインは考えごとをしていました。
「何もするな、俺に構うな」
そうレオン王子殿下から言われて、数日が経った。
あれから、なかなか顔を合わせる機会のないまま生活を送って、気が付けば全く会話もしていません。
私が屋敷で会話をするのは、執事のセバスチャンとメイドのサラ、そして護衛のクライヴだけです。
レオン王子殿下は、屋敷にいる時は自室に引きこもっています。
やっと出て来たかと思えば、今度はすぐに外へと行ってしまいます。
これでは、仲良くなるどころか話す機会すらありません。
「はぁ......」
自然とため息が漏れてしまいました。
人を寄せ付けず、近付けないその様子は、うわさのやさぐれ王子そのものです。
「何か、良い方法はないかしら」
やさぐれ王子とはいえ、婚約者となったのです。
なってしまったからには、仲良くなって幸せな家庭を築きたいと思うのが自然ではないでしょうか。
私は、ただ部屋にいても仕方がないので、少し歩くことにした。
あまり広くはない屋敷ではあるけれど、それでも一個人の屋敷と考えると、十分な広さはある。
廊下を歩きながら、何か良い方がないかと考えることにした。
◇
廊下を歩いていると、ガサゴソという物音が聞こえて来た。
私が今いるのは、厨房付近なのでサラが何か作業をしているのかもしれない。
そんな考えで、厨房へと近付いて行く。
「うーん、やっぱりこれも良いですね」
厨房からは、サラの声が聞こえて来る。
ここにいるのは間違いないようです。
「サラ? そこにいるのですか?」
「シ、シルフィアひゃまっ!?」
私が声をかけると、サラは驚いたように噛みながら振り向いた。
その勢いのまま、ゴンっと大きな音を立てて棚へと激突しました。
「きゃっ!」
そしてぶつかった衝撃で、棚から落ちて来たボウルに頭をぶつけました。
「い、痛いです......」
サラは頭を押さえながら、そう言いました。
こんな見事に頭をぶつけた人は、初めて見ました。
「その、大丈夫?」
「ありがとうございます、シルヴィア様」
私は、手を差し出して倒れていたサラを引き上げる。
「それでサラ、何をしていたのです?」
「えっ! な、何もしていませんよ」
サラは、ものすごく目を泳がしながら、私と視線を合わせようとはしませんでした。
何か、隠し事でもしているのでしょうか、怪しいです。
私は、サラの口元に何か白いものが付いているのに気が付きました。
「サラ、その口についている白いものは何です?」
サラは、急いで口元に手を当てて確認しました。
そして手に付いたものを見ると、焦ったように言いました。
「ち、違うのですシルヴィア様! こ、これは決してつまみ食いをしようとしていたわけではなくて......」
サラは、話せば話すほどにボロが来ました。
私が、机の上を見るとボウルの中に入った生クリームが目に入る。
「生クリーム、それに口元についた白いもの......分かりましたわ、つまみ食いをしていたのですね!」
「は、はい......どうかこのことはセバスチャンさんには言わないで下さい......」
サラは小さくなりながらそう言った。
どうやら、セバスチャンに見つかると怒られてしまうみたいです。
「分かりましたわ、言いませんわ」
「ありがとうございます、シルヴィア様!」
私が言わないと言うと、嬉しそうに感謝を言って来ました。
「でも生クリームのつまみ食いなんて、何か作るのですか?」
机には、さまざまなものが置かれている。
まるで、これから何かを作ろうとしているように見えます。
「ええ、新作のデザートを考えていたのですが、その途中でお腹が空いてしまって......」
それで、ついつまみ食いしてしまったと言うことですか。
つい、というわりには結構な量を食べた形跡がありますね......。
それにしてもデザートですか。
「あっ!」
「ひっ? どうしたんですか、突然大きな声を出して」
「これですわ!」
私は、サラのつまみ食い現場を見て、今までの曇っていた頭の中の霧が晴れたように感じました。
デザート、これならば......。
「サラ、私にデザートの作り方を教えてくれませんか?」
これならば、あのやさぐれ王子と言えど、仲良くなれるかもしれません。
私の手作りを持っていけば、話すきっかけにもなります。
「ええっ! シルヴィア様が料理を!?」
サラは大きな声を出して、驚いています。
だけどそれも無理はありません。
貴族は、自分で何かを作ることは普通はしません。
「ダメです、そんなのダメですよ! 私がセバスチャンさんに怒られちゃいますよ! そ、それにレオン様も......」
サラは、中々うんとは首を縦に振ってくれそうにはありません。
ならば仕方ありませんね。
「あれ、何だか私、先程のつまみ食いの件をうっかりとセバスチャンに話してしまう気がして来ましたわ」
「えっ!!!」
サラは目をまん丸にしました。
「そんなのはもっとダメです! シルヴィア様、意地悪です!」
目を潤ませながら、そう言って来た。
こうして私は、レオン王子殿下と仲良くなれるかもしれない方法を見つけることが出来たのです。
私、アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィア・アーヴァインは考えごとをしていました。
「何もするな、俺に構うな」
そうレオン王子殿下から言われて、数日が経った。
あれから、なかなか顔を合わせる機会のないまま生活を送って、気が付けば全く会話もしていません。
私が屋敷で会話をするのは、執事のセバスチャンとメイドのサラ、そして護衛のクライヴだけです。
レオン王子殿下は、屋敷にいる時は自室に引きこもっています。
やっと出て来たかと思えば、今度はすぐに外へと行ってしまいます。
これでは、仲良くなるどころか話す機会すらありません。
「はぁ......」
自然とため息が漏れてしまいました。
人を寄せ付けず、近付けないその様子は、うわさのやさぐれ王子そのものです。
「何か、良い方法はないかしら」
やさぐれ王子とはいえ、婚約者となったのです。
なってしまったからには、仲良くなって幸せな家庭を築きたいと思うのが自然ではないでしょうか。
私は、ただ部屋にいても仕方がないので、少し歩くことにした。
あまり広くはない屋敷ではあるけれど、それでも一個人の屋敷と考えると、十分な広さはある。
廊下を歩きながら、何か良い方がないかと考えることにした。
◇
廊下を歩いていると、ガサゴソという物音が聞こえて来た。
私が今いるのは、厨房付近なのでサラが何か作業をしているのかもしれない。
そんな考えで、厨房へと近付いて行く。
「うーん、やっぱりこれも良いですね」
厨房からは、サラの声が聞こえて来る。
ここにいるのは間違いないようです。
「サラ? そこにいるのですか?」
「シ、シルフィアひゃまっ!?」
私が声をかけると、サラは驚いたように噛みながら振り向いた。
その勢いのまま、ゴンっと大きな音を立てて棚へと激突しました。
「きゃっ!」
そしてぶつかった衝撃で、棚から落ちて来たボウルに頭をぶつけました。
「い、痛いです......」
サラは頭を押さえながら、そう言いました。
こんな見事に頭をぶつけた人は、初めて見ました。
「その、大丈夫?」
「ありがとうございます、シルヴィア様」
私は、手を差し出して倒れていたサラを引き上げる。
「それでサラ、何をしていたのです?」
「えっ! な、何もしていませんよ」
サラは、ものすごく目を泳がしながら、私と視線を合わせようとはしませんでした。
何か、隠し事でもしているのでしょうか、怪しいです。
私は、サラの口元に何か白いものが付いているのに気が付きました。
「サラ、その口についている白いものは何です?」
サラは、急いで口元に手を当てて確認しました。
そして手に付いたものを見ると、焦ったように言いました。
「ち、違うのですシルヴィア様! こ、これは決してつまみ食いをしようとしていたわけではなくて......」
サラは、話せば話すほどにボロが来ました。
私が、机の上を見るとボウルの中に入った生クリームが目に入る。
「生クリーム、それに口元についた白いもの......分かりましたわ、つまみ食いをしていたのですね!」
「は、はい......どうかこのことはセバスチャンさんには言わないで下さい......」
サラは小さくなりながらそう言った。
どうやら、セバスチャンに見つかると怒られてしまうみたいです。
「分かりましたわ、言いませんわ」
「ありがとうございます、シルヴィア様!」
私が言わないと言うと、嬉しそうに感謝を言って来ました。
「でも生クリームのつまみ食いなんて、何か作るのですか?」
机には、さまざまなものが置かれている。
まるで、これから何かを作ろうとしているように見えます。
「ええ、新作のデザートを考えていたのですが、その途中でお腹が空いてしまって......」
それで、ついつまみ食いしてしまったと言うことですか。
つい、というわりには結構な量を食べた形跡がありますね......。
それにしてもデザートですか。
「あっ!」
「ひっ? どうしたんですか、突然大きな声を出して」
「これですわ!」
私は、サラのつまみ食い現場を見て、今までの曇っていた頭の中の霧が晴れたように感じました。
デザート、これならば......。
「サラ、私にデザートの作り方を教えてくれませんか?」
これならば、あのやさぐれ王子と言えど、仲良くなれるかもしれません。
私の手作りを持っていけば、話すきっかけにもなります。
「ええっ! シルヴィア様が料理を!?」
サラは大きな声を出して、驚いています。
だけどそれも無理はありません。
貴族は、自分で何かを作ることは普通はしません。
「ダメです、そんなのダメですよ! 私がセバスチャンさんに怒られちゃいますよ! そ、それにレオン様も......」
サラは、中々うんとは首を縦に振ってくれそうにはありません。
ならば仕方ありませんね。
「あれ、何だか私、先程のつまみ食いの件をうっかりとセバスチャンに話してしまう気がして来ましたわ」
「えっ!!!」
サラは目をまん丸にしました。
「そんなのはもっとダメです! シルヴィア様、意地悪です!」
目を潤ませながら、そう言って来た。
こうして私は、レオン王子殿下と仲良くなれるかもしれない方法を見つけることが出来たのです。
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