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22.甘い時間

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「ッ、ぅあ」

 かぷ、と先端を食まれて、思わず絢也は低く唸った。
 その感触もさることながら、四つん這いになった士郎が、絢也のものを夢中で頬張るという絵面の視覚的な暴力がすごい。

「ッ士郎、無理すんな、ッ、」
「んー? 無理してないけど、別に。したくなったから」

 ぺろぺろと舌でカリの裏側のところを舐めながら、平然と士郎が返す。

 ——俺、が、無理ッ……!

 温かい士郎の口内は信じられないほど気持ち良くて、なにをされているのか分からないけれど、もう腰から溶けてくずおれてしまいそうだった。
 初めて他人から口淫を受ける絢也の雄は、このまま暴発してしまいかねないほどに張り詰め、反り返り、ピクピクと震えていた。

「あッ、ぅあ、士郎、ッも、やべえから、離せって……!」
「んー」

 聞いているのかいないのか、士郎はちらりと上目遣いで絢也を見上げると、一層きつく口内で絢也の雄をしごき出す。
 それなりに長さも質量もある絢也の雄を目一杯口の中に受け入れて、さすがに苦しそうだ。
 目元を赤く染め、眉をひそめて絢也のモノをしゃぶる士郎は言葉も出ないほどに淫らで、その破壊力に絢也はあっけなく屈した。

「う、あ、ぁあッ、だめだ、ッ、しろ、出る……!」

 ビク、ビクッと身体を跳ねさせながら、絢也は士郎の喉奥目掛けて思いっきり吐精してしまった。
 急に訪れたそれに、士郎も受け止めきれずに咳き込む。
 まだ吐精を続けていた絢也のソレは、咳き込んだ拍子に口を離した士郎の顔にその残滓を飛ばして、士郎の頬を白く彩った。
 唇からは飲みきれなかった絢也の精が垂れ、顔にも浴びせられた白濁が頬を伝い落ちるその有り様は、どんなエロ漫画よりも攻撃力が高くて。
 今熱を放ったばかりだというのに、絢也の腰はまたどろりとした熱に重たくなる。

「エッロ……」

 ティッシュで顔を拭う士郎に、かけるべき言葉はもっと他にあったろう。
 だが、絢也は今しがた見せつけられた光景の凄まじいまでの威力にほぼ全ての語彙を失い、ようやく絞り出した言葉がそれだった。

「てか、お前、それ飲まなくても……」
「そお? まあ、そうしたかったし? てか、予想はしてたけど、味えっぐいな、これ」

 そう言って、舌を見せながら士郎が苦笑いする。
 ほれ、とテーブルに置きっぱなしになっていたペットボトルの緑茶を手渡すと、士郎は受け取って勢いよく飲んだ。

 ペットボトルを枕元に置くと、士郎が絢也にもたれかかるように抱きついてくる。
 汗ばんだ士郎の肌は、しっとりと吸い付いてくるようで、うなじにキスを落とすと、少しだけしょっぱい。

 こうして触れ合っているだけで、気持ちがいいなんて知らなかった。
 これまで何度も身体を重ねてきたのに、こんなに涙が出そうに満たされる感覚は初めてだった。
 ゆったりと、お互いの気持ちを確認し合うように、これまでの隙間を埋めるように求め合うその行為は、何物にも替えがたい喜びに満ちていた。

 士郎の頬を絢也の指がとらえて、深いキスを交わす。
 士郎の口の中は少し、緑茶の味がした。

 一度精を吐き出してくたりと横たわっていた絢也のモノは、士郎がキスに応えてくれるたびに、再び硬度を増していく。
 絢也は士郎の後頭部に手のひらを差し入れ、より口付けを深くした。
 もう片方の手で、背中から腰を撫で、その肌の感触を楽しむ。
 先ほど散々かわいがった尻たぶの狭間に指を這わせれば、ビクッと震えて士郎が反応を返してくれる。

「ッは、いつも思うけど、お前のキスって、ほんっとエロいよな……」

 士郎がすっかりトロンとした瞳になって、絢也の唇のすぐそばで囁いた。

「そうか……?」
「ん……だって、俺、もう我慢できねーもん……」

 もじもじと腰を揺らめかせた士郎の脚の間では、しっかりと勃ちあがった雄がトロトロと蜜を溢している。
 雄どうしが擦れ合うたびに、甘く痺れるような快感が走り抜けた。

「でも、まださっきは指2本しか、」
「へーき、だって……少しきつくてもいい、早く、挿れて……」

 士郎が絢也の腕を掴んで、とさりと仰向けになるから、絢也も引っ張られて覆いかぶさるように、士郎の身体の横に手をついた。
 絢也の腹に熱くいきり立った士郎の雄が擦れて、士郎が甘い声を漏らす。
 切なげな瞳で士郎に見つめられてねだられたら、絢也だって我慢はできなかった。

「ッ、……じゃあ、挿れるぞ。痛かったら、すぐ言えよ」

 手早くゴムを装着し、ローションを足して、士郎の後孔に先端を合わせる。
 孔の縁は柔らかく濡れて、物欲しそうにヒクついていた。
 ぐぐ、と腰を進めて、少しずつ絢也の猛った雄を飲み込ませて行く。
 十分には解れきっていない士郎の中はきつく、それでも温かく濡れて、絢也をみっちりと咥え込んだ。

「は……すげ、お前ん中……ヌルヌルで、キツキツ」
「そ、いうこと、言うなって……ぁ、ああ、絢也の、挿入って、くるッ……」

 ず、ずず、と少しずつ奥を暴いて行く絢也の腰の動きに合わせるように、士郎も腰をくねらせた。
 自ら奥へ奥へと咥え込もうとする様が酷くいやらしい。

「ッあ! あ、そこッ……」
「ん、士郎の好きなとこ」

 士郎が感じてしまう場所を掠めたのか、締め付けがいきなり強くなる。
 食いちぎられそうなほどのその衝撃に顔をしかめながら、絢也はさらに奥へと腰を進めた。

「ぁ、ああ、絢也ぁ、イイ、気持ちいッ……」

 きゅうきゅうと内壁で絢也の雄をしゃぶりながら、士郎は涙をポロリと一粒こぼした。

「俺、ッも、イイよ……お前ん中、すげーイイ……」
「ッ、ほんと? 嬉し、ッぁ、ああッん!」

 最奥をずん、と突き上げられ、ひときわ高らかに士郎が啼いた。
 先端まできつく咥え込まれ、絢也も背骨を駆け上がる凄まじい快感に歯を食いしばる。
 一度出しているから少しは余裕があるものの、気を抜けばすぐ持っていかれそうなほど、士郎の内壁は甘くきつく絢也の雄を締め付けて蠢いていた。

「ああッ、やッ、あ、絢也ッ、すごッ、ああ、ッあ……!」

 ずん、ずんとリズミカルに抽送を開始した絢也に、士郎が揺さぶられながら快楽で蕩けた声を漏らした。

「やぁ、絢也、奥、すき、気持ちイイ」

 トロトロに蕩けきった顔でうわごとのように快感を伝えてくる士郎に、絢也は望まれるまま、一番深いところを激しく愛した。

「やッ、はげしッ、あ、絢也ぁッだめッ、んんッ!」
「イきそ? 士郎の奥、すげーひくひくしてる」

 士郎の雄からはひっきりなしに雫が流れ落ち、脚の間をしとどに濡らして、絢也の雄が士郎の中を擦り上げるたびに、ぐちゅぐちゅと濡れた音が零れる。
 絢也は士郎の好きな一番奥を捏ねて、突いて、士郎が限界を超えるまで腰を止めるつもりはなかった。

 やがて士郎が口をうっすらと開けて、はくはくと忙しない呼吸をしだした。
 これは、士郎が達する直前の合図。
 腹の奥も痙攣して、中のうねりがすごい。

「ぁ、だめ、イきそ、イくッん、絢也ッ、イくぅ……ぁ、ああ、……!」

 ひくん、と大きく身体を震わせて、士郎が絶頂した。
 ぎゅうぎゅうとうねりながら締め付ける内壁を、絢也がさらに蹂躙する。

「やぁあッ、絢也ッいま、イって、ああッ!」

 過ぎる快感から涙をポロポロとこぼし、士郎が訴える。

「俺、も、イく……ッ!」

 一拍遅れて、絢也も士郎の中に精を吐き出し、ゆるゆると擦り付けるように腰を動かした。
 達してすぐの敏感な身体にはその動きさえ堪えるのか、ビクビクと士郎の腰が跳ねる。

 暖房をつけた室内は暖かすぎて、絢也も士郎も汗だくだった。

「こっちの布団は使えねーな」
「もともとそのつもりだったけど? そっちに二人で寝ればいいだろ」
「……」

 しれっと言ってのけた絢也に、士郎が赤くなって黙り込んだ。
 今の今までもっと恥ずかしいことをしていた気がするのだが、1つの布団に2人で寝るという発想がくすぐったかったらしい。

「しかし、ベットベトだな。シャワー浴びるか。士郎、手貸せ。洗ってやる」
「……ん」

 いつもなら小言やひねくれた一言二言が飛んでくるのに、今日に限って士郎はやけに素直に差し出された手を取るから、またしても絢也は面食らう。
 ぎこちなく歩く士郎の腰を支える絢也に、士郎が頭をすり寄せた。
 こんなに甘ったるい時間はやっぱり慣れなくて、どうしてもぶっきらぼうになってしまう絢也の内心をまるで分かっているかのように、士郎は絢也に甘えた。

 俺、お前とすんの、好き。

 そうやって士郎に耳元で囁かれて、絢也は真っ赤になって俯く。
 くすぐったくて、むず痒くて、温かくて。
 絢也はなんだか叫び出したいような、そんな気持ちだった。
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