異世界コラボ

アズ

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第2章 世界の蔓延

04 絶体絶命

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 暗闇の深い未来しか見えない世の中で、人の未来は決定づけられた死へと向かう。それでも人は生まれ、生きるのだが、いったい何の為に、誰の為に自分はいるのだろうか? 都会のようにビル群に囲まれ人の密の中で溺れるかのように生きづらさを感じるのか、やたら自然を愛し極端の逆を行くのか、全てを投げ出し逃亡するのか、夕焼けの空に飛ぶ黒いカラスはそこから何を見るのか。それはきっと、どんよりした瞳の色から徐々に更に光が失われていき、次第に希望の見えないまま気づけば底に落ちている人達なのだろう。どうしたらよいのか、何をすればいいのか、沢山ある選択肢の中でやらなければならない事の多さにパニックになり、それに埋もれていく。失業、借金、介護、増税、物価上昇、結婚、子供、学校、色々、何がなんだか分からない世の中で不吉な事件ばかり増えていっている、そんな気がする。そんな魔法のない現実の中で絶望に絶望を重ね、真っ黒に染まってしまった人達は何の目的でこの世を彷徨うのか。




 悲鳴が街中で起こる。
「死人が現れたぞ!!」
 そう叫び周囲に警告しながら逃げる男達。次々と悲鳴は連鎖し、住人達はとにかく走って逃げ出す。しかし、どこへ? どこから街に死人が入り込んだのか分からないというのに、どこに向かおうとしているのか。逃げた先に死人が現れ悲鳴を上げた女性を背後からもう一体の死人が飛びかかった。襲われた女はその場で倒れ、首の骨の折れる音がした。手を伸ばしたままその女は絶命した。その女には結婚指輪がしてあり、その指がピクリと突然動き出す。そしてゆっくり起き上がると、人間だった頃の言葉を忘れた女は「ああ……」と低い声をあげた後、今度は生きている人を襲い始めた。
 アリスは急いで窓にカーテンを閉め明かりを消した。それから玄関に鍵をかけ、音を立てず気配を消す。アリスは俺を心配してくれたが、俺はもう死人にはならない。
「どうして死人がまた現れだしたんだ?」
「分からない……」
 でも、正直こうなる予感はしていた。根拠はないけど、あれで終わったという実感を持てなかった。
 カーターは廊下から怯えながら四つん這いで俺達のところまで来た。
「カーターさん、裏の扉の鍵は閉めてくれました? 全ての窓にも鍵をしておいて下さい」
「逃げなくていいのか?」
「手遅れです。街中は死人で溢れている。そこから街の外まで逃げ切るのは流石に無理」
 俺はまるでゾンビ映画を体験しているかのようだと思った。でも、あれは死人であってゾンビじゃない。ゾンビは人を食うけど、死人はただ生きている人間を襲い殺すだけ。そして、死んだら死人として人を襲い死人を増やしていく。誰かにそう命令され動いている、それがネクロマンサーの術なんだ。死んだ人や命を弄ぶ非道が何故出来るのか。
 カーターはひっそりと家の裏口の扉に鍵を閉めた。窓の鍵はカーテンを閉める時にしてきたから問題はない。カーターはアリスの方へ戻ろうとした時、横の窓から視線を感じた。ゆっくり振り向くとカーテンが風に煽られている。何故? 窓は閉めた筈だ。カーターは恐る恐るゆっくり近づきカーテンの隙間を覗いてみた。そこには誰もいなかった。ホっとしたカーターは窓を閉め鍵をかけた。直後、通りから死人が現れこっちを向いた。カーターは直ぐにカーテンをしたが死人に完全に気づかれた。死人が走り出す。カーターはその場から逃げようとした。その直後、背後からもう一体の死人が襲いかかった。
 一瞬の出来事だった。カーターが悲鳴をあげ襲われると、それを耳にしたアリスと俺。それと周辺にいた死人達。アリスは目を見開いた後、俺はの腕を掴み急いで地下階段のある扉を開けて扉を閉め鍵をかけた。家中の窓ガラスが割れる音がした。アリスは人差し指を立てて口元にもっていく。俺は黙って頷いた。それから階段を降りて地下に行くと、そこは備蓄の食料と工具類が別々の棚で置かれてあった。そしてアリスが開けた引き出しには拳銃があった。
「私は剣と魔法があるから、あなたはこれで自分の身を守って」
「俺、これ使ったことないよ」
「これが安全装置、これを解除する。あとは引き金を引くだけ。反動に気をつけて」
「いや、素人の俺には無理だよ」
「さっき教えたでしょ。あとは使うだけ。それであなたは素人じゃなくなる。いい? 私はあなたを守りきれるか分からない。だから、いざとなったらその引き金を引くの。お願いだからそれを私にだけは向けないでよ」
「わ、分かった」
 上の方で物音がする。生きている人間を探し回っているのか?
 すると、ドアノブがゆっくりと回った。鍵のかかったドアはガタッと音を立てただけでドアが開かないと分かると今度はドンドンとドアを破ろうと体当たりしだした。木のドアは簡単に破壊されドアごと死人が階段から落っこちる。アリスは落ちたところをアリスは動かなくなるまで剣で突き刺した。そして、アリスが階段を見上げると上にもう一体の死人がこっちを睨んで飛びかかった。アリスはそれを剣で突き刺す。階段が死人の血まみれになり、アリスも全身が血だらけになった。
「急いで」
 アリスが階段を駆け上がると、そのすぐ出たところにも死人がいた。アリスは間髪入れずレンチを投げて頭をぶつけ、怯んでいるところをアリスの剣が首を裂き、頭部は床へ落ちた。
 そこに更に気配を感じたアリスは顔を上げ正面を見た。
「カーターさん……」
 血まみれのカーターは既にアリスを認識出来ずただ死人として術に従って襲いかかった。アリスは剣をおろした。俺は思わずアリスと叫んだ。アリスは小さく「ごめん」と言ってから直前でカーターから避けると背後に回り剣で心臓を一発で貫いた。そして素早く引き抜くと、カーターは受け身もせずうつ伏せになるように倒れた。
 直後、銃声が響く。アリスはハッとして振り返ると、ヤマトが拳銃でもう一体の死人の額を命中させ風穴をあけていた。
「逃げるよ」
 アリスはそう言った。俺はどこへ? と聞こうとした言葉を寸前で唾と一瞬に飲み込みながら頷いた。
 逃げ場のない場所でどこへ逃げるというのか、だが、それは逃げではなかった。ただ、生き延びる選択として足掻いているに過ぎなかった。最後の最後まで抵抗するゴキブリのような生命力と生への執着はどう見られようとも、生き伸びた人間の責務だ。死んでいった人達の為にも、成し遂げられなかったことを引き継ぎ未来へと繋げる。それはバトンのようで、それは過去から現在、現在から未来へと渡される。今があるのも、引き渡されたバトンがあってのことであり、それを繋げることが今を生きる俺達の責務なのだ。
 家を出た目の前の通りでクラクションが聞こえてくる。遠くから赤色のガソリン車が見えだした。その運転席で顔面が血まみれの両目がなくなっている死人がバンバンと笑いながらクラクションを何度も押し、アクセルを思いっきり踏み込んできた。
「死人は車も運転するのか!?」
 俺達は全力で逃げ出した。車は逃げる俺達を追いかけ始める。すると、建物の屋上や屋根の上から次々と通りに向かって死人がダイブしてきた。俺達は上を見上げそれを避けながら走った。後ろは狂った死人が運転する車が襲い、上から死人が何人も俺達目掛けて落ちてくる。心臓はバクバクと鳴り、何度も死を予感した。でも、まだ死んではいなかった。すると、駅の方で大きな爆発が起こった。
 アリスは顔を青ざめた。
「鉄道がやられた……」
 それは俺達が向かう先だった。
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