赤いリボンに包まれた七不思議

アズ

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 クラスに一人、もしくは学年に数名はいるんじゃないか、ピアノが上手い人が。私が助けた(と言っていいのか? 意識がない間に起こったことだから自覚はないけど)及川もピアノが上手かった。
 休み時間に各教室にあるオルガンで演奏が始まると、好きな人はわざわざ隣から聴きに来る子もいたし、中にはリクエストする子もいた。そして、そんなリクエストに及川は無茶難題でもないかのように演奏を始めた。
 及川は吹奏楽部で、私と背丈は同じくらい。おかっぱ頭でサラサラした髪が似合っている子だ。
 及川は公衆電話での一件の記憶をほとんど失っていたが、私がまるで助けたみたいな噂を聞いたのか、及川は休み時間に私に会いに来てくれた。
 及川が私に何を言ってくるのかだいたい予想ができた。
「あの、佳代子さん。教えて欲しいんだけどさ」
 小さな声でそう言ってから公衆電話の一件について聞いてきた。
 やはり、自分だけなにも知らないというのは気持ち悪い部分はあるだろう。しかし、彼女を救ったのは厳密には私ではなく、私の中にいる地縛霊であって、私はその時の記憶がないから説明のしようがなかった。
 とりあえず、私ができたことは嘘をつくことぐらいだった。
「皆が変な噂してるけど、全然違うよ。私はたまたま及川さんが倒れているのを発見して通報しただけだから」
「あ、そうだったんだ」
 どこか、安心そうにする及川さんを見て、むしろ私が不安になった。いったい私の知らないところでどんな噂をされているのだろうかと。
 正直、自分の噂を直接聞くことが中々出来ない為、部分的にしか知らなかった。
「あの、遅れちゃったけどあの時は助けてくれてありがとう」
 助けたという程だいそれた働きを私はしていない。
 私は遠慮したが、逆に彼女からは謙遜けんそんしているように見えてしまったようで、かえってお礼を言われまくってしまった。



 それから、今度は彼女の友達も現れて、その友達からもお礼を言われてしまった。
 その後にだけど、学校が終わった後にカラオケでも行かないか誘われた。私は雰囲気におされてしまい、断りきれなかった。
 帰宅後、そのことを台所で夕飯の支度をしていた母に友達に誘われたことを話すと、簡単にお小遣いをくれた。
「あまり遅くならないようにね」
 本当は叱られるんじゃないかって思っていたので、これはちょっと想定外だった。何故なら、私達は受験生の立場もあってそんなことをしていていいのかという罪悪感みたいなのがなかったわけではないからだ。
 しかし、体育祭にしても文化祭にしてもおそらく、中学生で楽しめる最後の時期ぐらいなのだろう。だから、許してもらえたのかもしれない。もしくは息抜き程度に思ってくれたのかもしれない。
 ともあれ、お小遣いもゲットしたところで、私は待ち合わせ場所の駅前に自転車で向かった。



◇◆◇◆◇



 転校してから学校以外の時間で生徒と一緒になるのは初めてかもしれないと思いながら、しかも、違うクラスと! という興奮が自分の中にあった。これをワクワクと言うんだろう。久しぶりの感覚だった。
 それまではどこか今の自分をつまらないと思っていた。実際そうだった。
 でも、ようやくその流れも変わってきた。
 いい流れだ。
「上手いね!」
 私の歌声を聞いた皆がそう褒めてくれた。お世辞ではなく。それは皆の反応を見れば分かった。
 私も実は驚いた。
 あれ? 自分こんなにうまく歌えたっけ?
 とくに練習をしていたわけでもなく、いきなり成長したかのような…… 。
 まさかと思った。私は及川さんを助ける際に妖精を取り込んでいた。その前は神で、それを取り込んだ私は学力と体力が嘘みたいに上がった。まさか、これも影響なのか。
 しかし、単に歌がうまくなるぐらいなら、クラスの人気者になるぐらいで問題はないだろう。
 それに人気者か……悪くない。
 すると、及川が立ち上がった。
「佳代子さん、私達と一緒に文化祭でバンドやりませんか」
「え?」
 まさかのお誘いだった。
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