そんなんじゃないってば!

春廼舎 明

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ダメなものはダメ

茜:「え、杏子さん別れちゃったんですか?」
杏子:「どうしても許せないところがあってね~。」
茜:「それはどんな?」

姉に散々馬鹿にされ、最近茜ちゃんにもがっかりされることが多い僕だけど、僕にだって曲げられない、ダメなものはダメっていうもの、ことがある。

杏子:「この間初めて、彼と和食のお店に行ったの。今まで一緒に食事を取ることがあっても、和食ってそう言えばなかったな~って思って。」
茜:「うん」
杏子:「そしたらね~、ご飯粒お茶碗にくっつけたまま、ごちそうさまって言う人だったの。」

うわ! それはないな、うん。

茜:「いますね、そういう人。まさるくんって和食は綺麗に食べますよね。骨つきのお魚なんかも。」
杏子:「うちは、箸づかいから食事のマナーはうるさかった。洋食は苦手だけど。」
僕:「……」

これは一応、シュークリームをうまく食べられない僕へのフォローなのだろうか……

杏子:「これが、考え方というより、価値観の違いとまでになったらどうしようも無い。」
茜:「お米一粒一粒、食材は大切に食べなさいって考え方と、そんな米粒一つでお腹を空かせるような貧乏はさせていない、みっともない、っていう考え?」
杏子:「まさしくそれ。そんな米粒一つで躍起になるより、短く賞味期限を設定されるためにまだ食べられるのに捨てられる、流通ロス、食品廃棄問題を考える方が有用だってね。」
茜:「なんか、問題をすり替えてるだけに感じる。食べられるものを捨てるのが問題なら、茶碗に残ってるご飯は捨てるの?」
杏子:「そういうすり替えをすることこそ、思考回路の違い、価値観の違い?」
茜:「うーん。……もしかして箸づかいが下手? そしたら考え方云々の前にしつけとか育った環境の問題じゃ無いですか?」

僕:「どういうこと?」
茜:「ご飯の前に汁物が先なのは、箸を濡らしてご飯がくっつきにくくする役目もあるでしょ。ご飯とおかずを交互に食べればくっつかないはずなんですけどね…食事の仕方が下手?」
杏子:「うーん…言われてみれば…」
茜:「お茶碗にご飯を押し付けて擦り取るようにご飯を箸に掬いとる? だからくっついてしまうんじゃない?」
杏子:「確かに箸づかいは上手くはなかった。そこまで詳しく見てないけど……」

つまり、箸づかいが下手だからそういう食べ方になる。ひどければ犬食いやかきこむ食べ方になる。
ちゃんとご飯とおかず交互に食べろってしつけられてないと、そういう弊害もあるのか~

僕:「僕はそういう食べ方の人、そこまで気になったことないなあ。」
杏子:「なんだろ、箸づかいから食べ方のマナーっていうほどのことじゃないかもしれない、小さなことが積もり積もって、気になったら気にせずにはいられなくなってしまって……。」
茜:「なんかわかります~、気にし出したら気になって仕方がない。」

杏子:「もし万が一、この人と一緒になった時、子供が真似したらどうしようとか、注意する時パパもやってるって言われたらなんて答えれば……」
僕:「飛躍しすぎでしょ。」
杏子:「この歳になると、将来のこととか考えちゃうのよっ」
茜:「でも注意したり教えてくれる人がいない、そういう食べ方が許された環境、考え方、そういう家庭だった、つまり育ってきた環境が違うんですよ。大事だと思いますよ。」

僕:「僕はそれより、食べる時、くちゃくちゃべちょべちょ音立てて食べる人は絶対ダメ。」
杏子:「あー! そっちの方もダメ!」
茜:「…死ねばいいのに」

…こわっ

茜:「ってくらい私も許せない。」
僕:「茜ちゃんの他に許せないものって?」
茜:「うーん、貧乏ゆすり!」
杏子:「あれって、緊張やストレスを紛らすための無意識で体が出すものなんだって。」
僕:「僕、やってる?」
杏子:「いや? でも、子どもの頃直されてた。」
茜:「治るものなんですか?」
杏子:「さあ? 無意識は意識しようがないからね…別のストレスを解消させる方法を見つけたんじゃない?」
茜:「別の方法?」
杏子:「諦める=ストレスから解放。」
僕:「……」
茜:「ああ、諦めが早いというか、潔いというか……」


……おかしい。
さっきまで僕をフォローするような感じだったのが、また残念なものを見る顔になってる。
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