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俺は元相方から逃げたい
古参とのご対面
ガチガチに固まっている俺を見て、雪は笑っていた。
「固いよ綾人!笑顔を見せて」
「緊張するに決まっているだろう!こんな、こんな人気ミュロボPたちと歌い手さんがいて」
ライブが終わり、ファンミーティングの用意が進められている間、俺と雪は楽屋でひと休みしようとしたところ、そこに関係者席で来場していた方々が俺たちを出迎えていた。
俺が招待した誠さんと光さんも勿論いたが、雪の招待客は著名なミュロボP、歌い手、事務所関係の方々がいた。
通りで雪が広い楽屋をリクエストした訳だ。
そんな豪華なメンバーが雪へ労いの言葉をかける際、社交辞令で俺にも労いの一言をもらえるが、押し寄せる有名人に俺はいたたまれない気持ちになり、ひっそりとその輪の中から離れた。
俺が抜けたことを誠さんが気づき、『戻りなさい』と軽く手招きしたが、俺は苦笑いを返し、遠巻きで見ていた光のもとへ駆け寄った。
「光!来てくれてありがとう!ナツホシでダイダスのワンマンライブのカウントダウン配信ができたおかげだよ!」
「ご招待ありがとう!僕もカウントダウン配信とても楽しかったよ。それにしても…雪の招待客の面子がすごいね」
「本当だよ、俺は当日になって雪が招待する人のリストを見て震えたよ」
「僕も誠さんを知らなかったら、あそこの関係者席で見てられないよ」と光も身を縮こませた。
『怖いね、怖いね』とお互い言い合いながら二人で寄り添っていると、目の前に人影が。
俺が見上げると雪がいる。
雪は俺と光がくっついているところを見てぷくっと頬を膨らませた。
「『ナツホシ』でくっつかないで、今のホシは『ダイダス』だ」
高校生の無邪気で甘えん坊だった雪を思い出させる行動に俺はクスッと思わず笑みを漏らした。
ーーあぁ、変わらない。雪の周囲が変わっても、雪は変わらない。
「悪い、悪い。ちょっと緊張したんだよ」と俺は言った。「でも大丈夫だ。ファンミーティングはしっかりやるよ!」
「頼むよ、相方」
そんな俺たちの会話はスタッフの声で終わる。
「ユキさん、ホシさん、ファンミーティングの準備が整いました!」
「よし、じゃあ行くよ、ホシ!」と雪は俺に満面の笑み笑う。
「あぁ、行くぞ、ユキ!」と俺も彼の笑みにつられて満面の笑みを返した。
**********
初めての試みだったファンミーティングに正直、どれほどの人が集まるか不安だったが、心配は杞憂だった。
ライブまで来てくれる方々はファンミーティングに参加してくれた。
正直、みんな雪に会いたくて、俺にはあまり興味をもたないかと思っていたが、意外にも俺のファンも駆けつけてくれていた。
インターネットを通して応援してくれていたファンがこうして目の前にいると、嬉しい気持ちになる。
ますます、活動を頑張ろうと励みになった。
ファンミーティングが終わりに差し掛かるころ、一人のファンが俺の目の前に立った。
「ホシくん!いつも応援しています!!!」
高校生ぐらいのショート髪の男の子。
どこかまだ幼さを感じる姿に、高校1年生に見えた。
「俺、ユーザネームの『おむすび』です!」
「えっ!?おむすびさん!?」
おむすびさんといえば、俺の古参中の古参。
俺の配信同接数が一桁のころから、配信を見てくれている方だ。
まさか、まさかライブに参加してくれたなんて!!!
「いつもありがとう!!!」
歓喜する俺におむすびさんは照れ臭そうだ。
「生のホシくんに会えて本当にうれしいです」
「いやいや、俺もだよ!俺の過疎っている配信にほぼ毎日来てくれたおむすびさん、会えてうれしい!」
「ヘへっ、ファンですから。あの、ホシくん!伝えたいことがあって、実はホシくんがきっかけで俺も歌い手活動を始めました」
「そうなの?もしよかったら、歌い手名を教えてくれる?」
「ぜひ!あの、あまり大きな声で言えないので、耳貸していただけますか?」
「いいよ!」
前のめりに俺はおむすびさんに近づく。
おむすびさんも口を囲うように両手を添え、俺の耳元へ一方近づく。
「俺の歌い手名は…」
「はい、終了!」
グイッと後ろから強い力に引っ張られると、雪が俺を胸で受け止めた。
「終了です。」と笑顔を浮かべながら無情に告げる雪。
「えっ、ちょっと待って!いまいいところー」
「時間だよ。いくら前から応援していたファンだと言っても時間を守っていただかないと、おむすびさん」
不穏な空気を醸し始めた雪を察知し、俺はとっさにおむすびさんに謝る。
「ごっごめんね、おむすびさん。もう時間みたいだから、DMで教えてもらえるかな?」
彼は首を横に振り、そして二カッと笑った。
「いいえ、今度は正式にお伝えします。待っていてください、ホシくん。ではまた!」
颯爽と去るおむすびさんの姿はまぶしい。
その姿に高校生だった自分の姿と重ねてしまう。
期待と夢しかなかったあのころの無邪気な自分に。
ーー彼も仲間に会えるといいな。
思わず彼の後ろ姿を見届けながら考えに耽る俺は、隣の雪の様子に全く気付かなかった。
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