望まれて少年王の妻となったけれど、元婚約者に下賜されることになりました

能登原あめ

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現在

これからは共に(終)

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 私とレオは両親、お義母様、屋敷で働く者達と領民に見守られて教会で式を挙げた。
 ベール越しだから、レオには見えないと思って遠慮なく見つめていると、彼は困ったような表情になる。
 気配で見られているとわかるのかも?

 それに、誓いのキスはベールを上げて唇を一瞬掠めるようなものだった。
 やっぱり私のことは王命だから仕方なく娶るのかもしれない。悲しい。

 だけど、その後の晩餐でお義母様はこの日を楽しみにしすぎて、嬉しくて泣きすぎて顔が腫れてしまったから出迎えることができなかったとすまなそうに笑った。確かにまだ少し、目蓋が腫れている。
 そんな話を聞いたら私の気分も上向いた。

「ようやくこの日を迎えられて嬉しいわ。よろしくね」
「はい、お義母様。こちらこそよろしくお願いします」
「もう、誰にも邪魔されないのだから、そんなに堅苦しいのはやめましょう。駆け足で結婚式をすませてごめんなさいね。……だって、レオが急かすものだから」
「あらまぁ、もっと詳しく聞きたいわ」

 お母様がそう言って、まるで昔みたいな和やかな雰囲気になる。
 私はちらちらとレオを見てしまって、その度に彼と目が合ってどきどきした。
 お義母様の話からすると、レオも私を嫌っている訳じゃないのよね?
 王妃生活で表情に出さないことに慣れていたから、私が混乱していることに気づかないと思うけど。

 みんなのおしゃべりが頭の中に入ってこなくて、穏やかで夢みたいな時間にそっと息を吐く。私にとっては、好きな人と結婚できて嬉しいから。
 お義母様が私の様子に気づいた。

「今日は移動してきたばかりで疲れたでしょう。……レオ」
「……では、先に失礼しますね。ジュスティーユ、行こう」
「はい」

 みんなが微笑んでいるから、それ以上何も言わずにほんの少し会釈してレオに続く。
 なんとなく客室に行くと思っていたから、大人になった彼の部屋に案内されて、驚いた。
 
 どうしてこんなにぼんやりしていたんだろう。
 今夜は二人の初めての夜。

 みんなが微笑んでいたのは、つまり、わかっていたから?
 恥ずかしくて、でも今さら何も言えない。
 それに、レオと二人きりだなんて、胸が痛いくらい、激しく打った。

「ジュジュ」

 懐かしい呼び方に泣きたくなって、瞬きを繰り返してなんとかやり過ごす。
 いつの間にか、レオが私の顔を見下ろしていた。

「ジュジュ、ますます綺麗になったね……この結婚は、いやだったか……?」

 彼の真摯な眼差しを受け止めて、私は首を横に振ってから口を開いた。

「レオが嫌なのかと思ったの……私は、ずっと……」

 彼を見つめていると好きだと言う気持ちが溢れてくる。
 私の震える唇を、彼のそれが覆った。
 柔らかくて、温かい感触だとわかるくらいの長い時間。

「俺の勘違いじゃないなら、先に言わせてほしい。……昔からジュジュだけを愛してきた。離れている間もずっと……何度も手紙を読み返して耐えたんだ。……ジュジュ、愛しているよ」

 耐えられなくて嗚咽が漏れる。
 私も愛している、と伝えたいのに喉が震えて声が思うように出ない。

「……っ、……レオ……」

 彼に抱きつくと、レオの腕が背中に回されて私を包み込むように抱き寄せる。
 それから彼はそっと息を吐いた。

「目の前にジュジュがいるのが夢みたいで、でも同じ気持ちじゃないかもしれないと、不安になったんだ。あまり表情に出ないから」

 レオも私と同じことを考えていたなんて。
 嬉しくて胸がいっぱいで、でもまだ言いたいことを少しも言ってない。

「愛している……私も同じこと、考えていたの。好き……ずっと、昔からレオだけ、レオだけが好きなの……」

 彼が私の頬に唇を寄せる。柔らかい感触にそっと顔を向けると再び唇が重なった。
 夢をみているみたい。
 
「長かったな……」

 私達はただただ見つめ合った。
 レオの綺麗な碧い瞳が潤んでいる。それを見てまた涙が溢れたけれど、大きな手で優しく拭ってくれるからほっと息を吐いた。
 
「……レオ、たくさん話したいことがあるの」
「教えて。聞きたい」

 その夜は、お互いの手を握りながら寝台に上がってお喋りをした。
 ドレスを緩めてもらうのはすごく恥ずかしかったけど、この日の為にレオが用意していたと聞いて、私は嬉しいのに涙が止まらない。
 ドレスごと抱きしめられて、それから笑って、時々唇を重ねて……朝を迎えていた。 
 








 翌日は両親が領地に戻るというので見送った。
 レオの妻として見送る日が来たことが感慨深い。

「落ち着いたら、遊びにおいで」
「はいお父様、色々ありがとうございました。帰りもお気をつけて」

 お父様とレオも握手を交わし笑顔で頷き合い、お母様とお義母様も涙を浮かべてお互いを抱きしめ合っていて、本当に気が合うのだと思った。
 二人を乗せた馬車が見えなくなってから、私とレオは街まで出かけることにした。
 眠くならないのは、いまだに気持ちが高ぶっているからかもしれない。
 
「揃いの指輪が欲しい。それにもっとジュジュを飾りたい」

 そう言って、私の胸元のロケットペンダントに触れる。

「このペンダントのおかげで私は耐えることができたの。だから、これは外したくないわ」

 レオはもっと宝石のついた派手なものを私に送ろうとしているの?
 そう思って首を傾げる。

「俺も今だって身につけている。……まいったな、喜んでもらえるかわからなくなった」

 レオがまっすぐ向かったのは宝飾店だった。
 別室に案内されて、目の前に指輪がずらりと並ぶ。

「気にいるのがあればいいんだが」

 ずいぶん消極的な物言いに私は笑顔を向けた。

「私、一目でこれが気に入ったの。つけてみていいかしら?」

 控えめな模様の彫られた指輪を選び、レオも笑顔になってあっさり決まった。あとはサイズの調整をしてもらうだけ。
 その後、店主が奥から箱を持ってきた。

「これがお預かりしていたものです。では数日中に指輪をお届けに参りますので」

 レオが箱を受け取り、馬車に乗る。屋敷に帰るかと思ったけれど、領地を見下ろせる高台へ連れてこられた。
 二人でベンチに腰掛けて、のんびり景色を眺める。

「ジュジュ、開けてみて」

 隣に座ったレオからさっきの箱を受け取り、開いた。
 水色と碧い宝石が散りばめられた二つのロケットペンダントが並んでいる。
 お互いの瞳の色と一緒で、とても贅沢で手の込んだ細工が施されていた。

「とってもきれいね……」
「新しいものを用意していた。どうだろう? 今身につけているものは、俺達を結ぶ絆となってくれたけれど、思い出すのは楽しいことばかりじゃない。だから、よければこれをつけてほしい」

 お店に入る前に、呟いていたのはこれのこと?
 
「はい。すごく嬉しいわ。これに今のレオの姿絵が欲しい。……新しいペンダントはきっと見るたびに幸せな気持ちになるわね」

 そう答えると、レオが心から嬉しそうに笑った。
 私達はまだ離れていた時間を取り戻せていない。

「レオ、大好き。まだ、話し足りないみたい。早く帰りたいわ」
「そうだな、俺達の家へ」

 私達は手を握って歩き出した。









                   終








******


 お読みいただきありがとうございました。
 この後は、糖分を追加したいのでR18二人の初めての夜、レオ視点のその後の小話(Rなし)の予定です。
 
 

 

 
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