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初めての言葉
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「圭司、それもしかして、サプライズのプロポーズしてる?」
突然ステラが圭司をうかがうように覗き込んで聞いてきた。
「えっ? えっ? どういうことだ?」
意味がわからず圭司が聞き直す。
「確かに私、青い瞳にテネシーよ。さっきの曲って私にプレゼントかなあって」
「ちょっと待て、ステラ。この曲はたまたま……」
「照れなくてもいいよ。私も圭司なら……、まあ、圭司がそう思ってるなら、私もそういう選択肢もちょっと考えてみても……いいよ」
「あ、あのさ。だいたい俺たちってそもそも付き合ってたか? さすがにいきなりプロポーズってのも、その、なんだか。それに、ステラは30歳だっけ? 俺と15歳も違う。もったいないだろ」
「えっ、圭司って45? 大丈夫、もう少し若く見えるよ。15歳差なら女は、っていうか私は平気だから、圭司が本気なら気にしなくてもいいよ」
——なんか、話が噛み合ってない気がする。
圭司とステラがちょっと艶っぽい話をしていたそのときのことだ。
「アカイキャンディ ツツンデクレタノハ フルイ NEWS paper……」
ケイが日本語で静かに歌い出したのだ。さっき曲をかけたばかりの「青い瞳のステラ」だった。圭司とステラは会話をやめて歌い始めたケイを見た。それに気がついたケイが歌うのをやめる。
「もしかして、それも今覚えたのかい?」
圭司が聞くと、ケイは頷いて、
「初めて聞いた言葉だから、ちゃんと発音できたかわからないけど……。2人がちょっといい感じだったから、BGMがあったらいいなって思って」
と言う。
「いや、ちゃんと歌えていた。しかも音も完璧だ。驚いたよ」
「そうそう、あんた上手いわ」
そう2人から言われたケイは、とてもうれしそうに笑った。そんなことがあって、それまでの噛み合わない圭司とステラの会話もすっかりと忘れられ、3人を乗せた車はアミティの街へ入っていった。
⌘
「ところでケイ。ちょっと寄りたいところがあるんだが、案内してくれるか」
カセットを入れて音楽を楽しんでいるケイに圭司が話しかけた。
「どこ?」
「この街の警察署」
それまで楽しそうに歌っていたケイが突然黙り込み、目を見開いて圭司を見ているのがわかった。
「警察署? この子は警察に届けるの?」
代わりに返事をしたのはステラだった。
「あー、届けるというか、どうしても確かめたいことがあるんだ」
「何を確かめるの」
「昨日からずっと考えてることがあるんだけど、今はまだ言えない。でも、どうしても先にそこを確かめなきゃ、それからでなければ、この子をどうすればいいのか答えが出せなくてな」
ステラが音楽を止め、車内が静まり返った。多分ステラももっと圭司に聞きたかったのかもしれないが、そうすると昨日のケイの体の傷のことを、本人の前で話すことになる。それは避けたかっただろう。
「パンを……、私がパンを盗んだから……、警察に連れて行くの?」
蚊の鳴くような声で、突然ケイが口を開いた。圭司は思わず車を路肩に寄せて止めた。
「どういうことだい」
「逃げてるとき……、お腹が空いて。一個だけ……、お店のパンを」
ぽろりとケイの大きな瞳から涙が溢れた。
「お腹が空いちゃったんだよね?」
ステラが優しくケイに言うと、ケイは頷き、涙が止まらなくなった。ステラがそっとケイを抱きしめた。
「大丈夫だ、ケイ。そのことじゃないんだよ。別のことで確かめたいことがあって、警察には俺だけで行くから、場所を教えてくれないか。その間、ケイはこのステラと一緒に車で待っててくれればいいんだよ」
——笑え。
圭司はできるだけ笑顔を作るように、そう自分に言い聞かせた。
「本当?」
不安そうにケイが聞く。
「もちろんだ。そのかわり、パンを食べさせてもらったお店のことも、これが終ってからでいいから、場所を教えてくれるかい?」
そう圭司が言うと、ステラに抱かれたケイは最初少しためらっていたが、大きく頷いて、まず警察署の場所を圭司に告げた。
車は静かに警察署の駐車場に滑り込んだ。
突然ステラが圭司をうかがうように覗き込んで聞いてきた。
「えっ? えっ? どういうことだ?」
意味がわからず圭司が聞き直す。
「確かに私、青い瞳にテネシーよ。さっきの曲って私にプレゼントかなあって」
「ちょっと待て、ステラ。この曲はたまたま……」
「照れなくてもいいよ。私も圭司なら……、まあ、圭司がそう思ってるなら、私もそういう選択肢もちょっと考えてみても……いいよ」
「あ、あのさ。だいたい俺たちってそもそも付き合ってたか? さすがにいきなりプロポーズってのも、その、なんだか。それに、ステラは30歳だっけ? 俺と15歳も違う。もったいないだろ」
「えっ、圭司って45? 大丈夫、もう少し若く見えるよ。15歳差なら女は、っていうか私は平気だから、圭司が本気なら気にしなくてもいいよ」
——なんか、話が噛み合ってない気がする。
圭司とステラがちょっと艶っぽい話をしていたそのときのことだ。
「アカイキャンディ ツツンデクレタノハ フルイ NEWS paper……」
ケイが日本語で静かに歌い出したのだ。さっき曲をかけたばかりの「青い瞳のステラ」だった。圭司とステラは会話をやめて歌い始めたケイを見た。それに気がついたケイが歌うのをやめる。
「もしかして、それも今覚えたのかい?」
圭司が聞くと、ケイは頷いて、
「初めて聞いた言葉だから、ちゃんと発音できたかわからないけど……。2人がちょっといい感じだったから、BGMがあったらいいなって思って」
と言う。
「いや、ちゃんと歌えていた。しかも音も完璧だ。驚いたよ」
「そうそう、あんた上手いわ」
そう2人から言われたケイは、とてもうれしそうに笑った。そんなことがあって、それまでの噛み合わない圭司とステラの会話もすっかりと忘れられ、3人を乗せた車はアミティの街へ入っていった。
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「ところでケイ。ちょっと寄りたいところがあるんだが、案内してくれるか」
カセットを入れて音楽を楽しんでいるケイに圭司が話しかけた。
「どこ?」
「この街の警察署」
それまで楽しそうに歌っていたケイが突然黙り込み、目を見開いて圭司を見ているのがわかった。
「警察署? この子は警察に届けるの?」
代わりに返事をしたのはステラだった。
「あー、届けるというか、どうしても確かめたいことがあるんだ」
「何を確かめるの」
「昨日からずっと考えてることがあるんだけど、今はまだ言えない。でも、どうしても先にそこを確かめなきゃ、それからでなければ、この子をどうすればいいのか答えが出せなくてな」
ステラが音楽を止め、車内が静まり返った。多分ステラももっと圭司に聞きたかったのかもしれないが、そうすると昨日のケイの体の傷のことを、本人の前で話すことになる。それは避けたかっただろう。
「パンを……、私がパンを盗んだから……、警察に連れて行くの?」
蚊の鳴くような声で、突然ケイが口を開いた。圭司は思わず車を路肩に寄せて止めた。
「どういうことだい」
「逃げてるとき……、お腹が空いて。一個だけ……、お店のパンを」
ぽろりとケイの大きな瞳から涙が溢れた。
「お腹が空いちゃったんだよね?」
ステラが優しくケイに言うと、ケイは頷き、涙が止まらなくなった。ステラがそっとケイを抱きしめた。
「大丈夫だ、ケイ。そのことじゃないんだよ。別のことで確かめたいことがあって、警察には俺だけで行くから、場所を教えてくれないか。その間、ケイはこのステラと一緒に車で待っててくれればいいんだよ」
——笑え。
圭司はできるだけ笑顔を作るように、そう自分に言い聞かせた。
「本当?」
不安そうにケイが聞く。
「もちろんだ。そのかわり、パンを食べさせてもらったお店のことも、これが終ってからでいいから、場所を教えてくれるかい?」
そう圭司が言うと、ステラに抱かれたケイは最初少しためらっていたが、大きく頷いて、まず警察署の場所を圭司に告げた。
車は静かに警察署の駐車場に滑り込んだ。
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