10 / 19
美月のあ参上!
危ないお仕事
しおりを挟む
さて、かれんが消えた翌朝のことである。東江戸川署生活安全課長の倉橋は直立不動で署長室に立っていた。
倉橋が緊張しているのも無理もない。署長室にある大型テレビが昨日ののんのの活躍を面白おかしく伝えるワイドショーの録画を流しているのだ。
「だいたいだな、倉橋課長」
そこまで言ってテレビ画面を見ながら東江戸川署長の湊川が深いため息をつく。
「俺は日暮警部補を隠せと言ったな。言ったよな?」
重ねて念押しされて、倉橋はいろんな考えが頭をぐるぐる回る。
「は、はい。おっしゃられたとおりです。しかし、しかしですね」
冷や汗をだらだら流しながら、次に繋がる言い訳を倉橋は考えていた。
「しかし、なんだ。行ってみろ」
明らかに「どうせ言い訳しかないんだろう」と見透かされている相手にする言い訳は辛い。
「あれは逃げ道に要求を待ち受けている半グレの集団がいることがわかり、あれ以外あの時点では方法が見つからないわけで……」
——北の国からかっ。
ひとりツッコミを入れながら倉橋が続ける。
「日暮警部補は、み、民間の協力者としてマスコミには発表したわけで」
「半グレの集団? どういうことだ」
——針にかかった!
署長が「半グレ」に興味を持ったらしい。これで少し今回の件から署長の意識を遠ざけることができるかもしれない。倉橋の汗が少し落ち着く。
「どうやら、若い女たちを薬づけにして売春などをさせている集団の存在があり、日暮警部補にはその潜入捜査を命じていたわけでして」
「なに? 聞いてないぞ。まさか日暮警部補に危ないことをさせたんじゃないだろうな」
——ヤバイ。
署長が妙なところに引っ掛かる。倉橋のアンテナが危険を知らせた。
「いえいえ、ま、まさか。日暮警部補には被害者である女への接触をしていただいたのでありまして、危ない捜査はさせておりませんです、はい」
「なるほど。それであの格好だったわけだな。気をつけてくれよ。日暮警部補はこれから警察庁を背負って立つかもしれない方だからな。くれぐれも危ないことはさせないように頼むよ」
「もちろんです、はい」
「で、その半グレ集団について聞こうか」
「それについては、調書をとった部下と日暮警部補を表に待機させていますので、説明させます」
倉橋はツカツカとドアの方へ歩いて行った。実は昨夜から、のんののことでマスコミ対応に追われ、まだ詳しい報告を受けていなかったのだ。
「失礼します」
そう言って入ってきたのはもちろん、のんのと山根巡査部長であった。
今日ののんのは、もちろん制服を着ていた。制服というのは不思議なもので、普段がどんな人間であっても制服を着ると2割3割増しでカッコよく見える。普通に出会ったら、あのコスプレ少女がのんのだと気がつく人は少ないだろう。
「あっ、日暮警部補。昨夜は大活躍だったそうで」
署長の態度がコロッと変わる。警察庁から「くれぐれも」と預けられた以上、ぞんざいな扱いをすると自分の首が飛ぶかもしれないのだ。自分の生活がかかっている以上、それも仕方ないことではあるが、それにしても態度が変わり過ぎと倉橋でさえも思うのであった。
倉橋が緊張しているのも無理もない。署長室にある大型テレビが昨日ののんのの活躍を面白おかしく伝えるワイドショーの録画を流しているのだ。
「だいたいだな、倉橋課長」
そこまで言ってテレビ画面を見ながら東江戸川署長の湊川が深いため息をつく。
「俺は日暮警部補を隠せと言ったな。言ったよな?」
重ねて念押しされて、倉橋はいろんな考えが頭をぐるぐる回る。
「は、はい。おっしゃられたとおりです。しかし、しかしですね」
冷や汗をだらだら流しながら、次に繋がる言い訳を倉橋は考えていた。
「しかし、なんだ。行ってみろ」
明らかに「どうせ言い訳しかないんだろう」と見透かされている相手にする言い訳は辛い。
「あれは逃げ道に要求を待ち受けている半グレの集団がいることがわかり、あれ以外あの時点では方法が見つからないわけで……」
——北の国からかっ。
ひとりツッコミを入れながら倉橋が続ける。
「日暮警部補は、み、民間の協力者としてマスコミには発表したわけで」
「半グレの集団? どういうことだ」
——針にかかった!
署長が「半グレ」に興味を持ったらしい。これで少し今回の件から署長の意識を遠ざけることができるかもしれない。倉橋の汗が少し落ち着く。
「どうやら、若い女たちを薬づけにして売春などをさせている集団の存在があり、日暮警部補にはその潜入捜査を命じていたわけでして」
「なに? 聞いてないぞ。まさか日暮警部補に危ないことをさせたんじゃないだろうな」
——ヤバイ。
署長が妙なところに引っ掛かる。倉橋のアンテナが危険を知らせた。
「いえいえ、ま、まさか。日暮警部補には被害者である女への接触をしていただいたのでありまして、危ない捜査はさせておりませんです、はい」
「なるほど。それであの格好だったわけだな。気をつけてくれよ。日暮警部補はこれから警察庁を背負って立つかもしれない方だからな。くれぐれも危ないことはさせないように頼むよ」
「もちろんです、はい」
「で、その半グレ集団について聞こうか」
「それについては、調書をとった部下と日暮警部補を表に待機させていますので、説明させます」
倉橋はツカツカとドアの方へ歩いて行った。実は昨夜から、のんののことでマスコミ対応に追われ、まだ詳しい報告を受けていなかったのだ。
「失礼します」
そう言って入ってきたのはもちろん、のんのと山根巡査部長であった。
今日ののんのは、もちろん制服を着ていた。制服というのは不思議なもので、普段がどんな人間であっても制服を着ると2割3割増しでカッコよく見える。普通に出会ったら、あのコスプレ少女がのんのだと気がつく人は少ないだろう。
「あっ、日暮警部補。昨夜は大活躍だったそうで」
署長の態度がコロッと変わる。警察庁から「くれぐれも」と預けられた以上、ぞんざいな扱いをすると自分の首が飛ぶかもしれないのだ。自分の生活がかかっている以上、それも仕方ないことではあるが、それにしても態度が変わり過ぎと倉橋でさえも思うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる