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第一章
第9話 索敵
しおりを挟む「対戦車ミサイル背負った蜘蛛とか、笑えねぇよ……ミサイルはどうやって補充してんだ? ナノマテリアルから生成したとか、夢みたいなこと言ってんじゃねぇだろうな?」
ケインが、大蜘蛛の死骸を見ながら唸っていた。
「どうして、三本しか発射筒が無いのにあんなに連続して撃てたんだろ? 照準器は……生身の方?」
キララが大蜘蛛によじ登って、ミサイル発射器を覗き込んでいる。
「形は蜘蛛だけど、外皮とか金属が混じってるかも? サイボーグっぽい? 生体ロボットなのかな? この蜘蛛、生き物っていうより作り物だねぇ」
マイマイが、大蜘蛛の表皮をナイフで削って小さな容器に入れていた。
(なんか……この人達、素人じゃなさそうだな)
戦闘面では、ユキしか頼りにならなかったが、どうやら、ケイン達はそれぞれ何かの専門家らしい。熱心に死骸を調べて意見を交わし合っていた。
(静かだな)
レンは、大蜘蛛から少し離れた位置で周囲を警戒していた。気味が悪いくらい、森が静まり返っている。
大蜘蛛の死骸を挟んで反対側では、ユキが同じように見張りをしているはずだ。
***
討伐ポイント:50
異能ポイント:2
技能ポイント:3
採取ポイント:0
***
これが、ミサイルを撃つ大蜘蛛を倒して獲られたポイントだった。
大蜘蛛は、何の素材も出さなかった。
費やした銃弾の数を考えると、まったく割が合わない。
(二度と戦いたくない)
レンは、抱えている64式小銃を見た。
『高濃度ナノマテリアルを摂取できました』
落ち込んだレンを慰めるように、視界に文字が浮かんだ。
(ナノの量は多かった?)
『岩山龍アビオドロスの半量の高濃度ナノマテリアルです』
(へぇ、ポイントや素材はショボいのに、ナノ素材としては優秀……うっ!?)
補助脳とやり取りしながらも、レンは微かな物音に反応して、身を捻って64式小銃を構えた。
そこに、ケインが立っていた。
「あっ……すいません」
レンは、慌てて銃口を逸らした。
「いや、俺の方こそすまなかった」
ケインが苦笑する。
「何か分かりました?」
「でたらめな空想モンスターだってことだけだ。当たり前だが、あれは地球産じゃねぇな」
ケインが大蜘蛛を振り返って言った。
「レンさん」
ユキが、他の2人を連れて近付いて来た。
「そろそろ移動しませんか?」
「そうですね」
「レン君は【マップ】を解放したのよね?」
キララが自分で作っている手描きの地図を見ながら訊いてきた。
「はい」
レンは頷いた。【マップ】の事は、大蜘蛛を斃した後に伝えてあった。
ケイン達はまだ異能ポイントが3しか貯まっていないため、メニューの解放ができていないらしい。
「山とか川とか、何かマップに出てない?」
「先ほど見たんですが、まだ未踏状態の場所が多くて、特に変化はありません」
レンは首を振った。
まだ、マップのほとんどがブラインド状態だった。
「そっか……見通しも悪いし、ポータルポイントを見付けるのは難しいわね。未帰還者が多い理由が分かる気がするわ」
キララが周囲の巨樹を見回した。
どちらを向いても変わり栄えしない光景が広がっている。
「レン君は、どこを目指してたの?」
マイマイが、64式小銃を重そうに担ぎながら訊いてきた。
「方角としては、北東を目指して歩いていたようです。【マップ】のおかげで、やっと方位が分かりました」
レンは、【エリアマップ】を表示しながら言った。
「北東って、特に根拠無し? 何かを目指していたんじゃなく?」
「はい。動かないと何も分からなかったから、一方向に歩いていただけです」
「……そっかぁ」
マイマイが溜息を吐いた。
「少し落ち着ける場所があれば良いんだがな」
ケインが巨樹の梢を見上げた。
「皆さんが歩いてきたのは、こちら側……北西側からでしたよね?」
「いやぁ、それが結構迷走してたんだ。途中で、ムカデみたいなのに追いかけられて……ユキさんのおかげで退治できたんだが、生きた心地がしなかったぜ」
ケインが苦笑した。
「そうねぇ、もう終わったって思ったわ」
「私も、死を確信した」
マイマイとキララがユキを見る。
「全長が7メートルほどの大きなムカデです。頭部が硬くて、銃弾が3発に1発は弾かれました」
ユキが、レンを見ながら説明する。レンより年上だと思うのだが、ユキは誰に対しても丁寧な言葉を選ぶようだった。
「確か……タイタン・センティピードでしたね」
調査隊の資料に載っていたムカデのモンスターだ。
「元々は、他の奴が引き連れて逃げてきたんだ。俺達3人は、ちょうどユキさんと出会って、同行をお願いしていた時で……」
「何とか倒したんだけど、ケインがムカデを連れてきた子にキレて殴りかかったのよ」
キララがぼやく。
「いや、あれはひでぇだろ? わざとムカデを連れて来たって言いやがったんだぜ? 冗談じゃ済まねぇよ。それを、あいつ……ヘラヘラ笑いやがって」
「まあ、実際危なかったよねぇ」
マイマイが頷く。
「ユキさんが言ってたんだが、レン君は索敵が早くて正確だって……俺達に声を掛けたときも、先にこっちを見付けてたんだよな?」
ケインがレンを見る。
「臆病なだけです。1人で行動していたから、神経が過敏になっているんだと思います」
レンは小さく首を振った。索敵は、レンの力というより補助脳の能力である。
その時、タイミングを計ったかのように、補助脳が警告メッセージを出した。
『高濃度ナノマテリアルを検知しました』
視界内に点ったマーカーは、まだ方向を示す矢印だけだ。
- 927.7m
補助脳の索敵範囲がやけに広くなっていた。いつの間にか、測距可能な距離まで伸びている。蜘蛛のナノマテリアルを摂取したおかげだろうか?
「何か近付いて来ます。まだ遠いようですから、移動しませんか?」
レンは、64式小銃を構えながら提案した。
「どこ? 何か見えるの?」
キララが、レンの64式小銃が向けられた方向に眼を凝らす。
「数は分かりますか?」
ユキが小声で訊ねた。
「1体です。この先、真っ直ぐ」
レンは、斜め前方を指さした。
「回避に賛成です」
ユキが他の3人に言った。
「分かったぜ」
「ユキちゃんが言うなら逃げましょう」
「どうせ、私達は戦闘の役には立たないもんね」
ケイン、キララ、マイマイが即座に頷いた。
この3人は、ユキの判断に全幅の信頼を置いているようだった。
- 911.4m
こちらに向かって移動している。今のところ、移動の速度はあまり速くない。向こうは、まだ気がついていないのだろう。
(南東側へ行けば回避できるかな?)
レンは、補助脳に訊ねてみた。
『探知範囲内に、高濃度ナノマテリアル反応は一つだけです』
(……まあ、行ってみないと分からないか)
レンは、ユキを見た。
「どちらへ?」
ユキが訊いてくる。
「他のモンスターがいるかもしれませんが……とりあえず、南東側へ移動しましょう」
レンは、接近してくる反応とは真逆の方向を指さした。
「了解。行きましょう」
ユキが他の3人を促して先頭に立った。
(決断、早いな)
迷い無く決断して歩き始めたユキを見送って、レンは小さく息を吐いた。
(ナノ反応だけじゃなく、普通の人間が隠れていても通知してよ?)
レンは、最後尾を守って続きながら補助脳に頼んだ。
『鋭意努力します』
補助脳からメッセージが返った。
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補助脳の探知範囲が広くなった!
高濃度ナノマテリアル反応、接近中!
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