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2話

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(ヤバい……! 結局催眠なんて嘘ピョーンと言えぬまま1日が過ぎてしまった…!!)

 授業開始のホームルーム前。俺は自分の席で頭を抱え、これからの打開策を考えていた。

(催眠なんて嘘ピョーンは…イケる…か? いやそれしかないよな? でもアイツマジで何するかワカンねぇのが怖すぎる…!!!)

 幼馴染に催眠をかけて裸の写真を撮らせるようなクソサイコパス女だ。もし催眠が嘘でしたーなんて言えばなんて言われるか分かったもんじゃねぇ!!
 なら…催眠継続が一番良いのか…? わからん!! わからねば…!!

「よーーっすー。どうしたんシュウちゃん? 珍しく頭抱えちゃってー。何か悩みでもあんの?」
「田中。身近に平然と犯罪を起こそうとしてるサイコパスが居るとして、そいつを止めるにはどうしたら良いと思う?」
「こっわ!?!? 何言ってんのシュウちゃん!!」

 でも間違いじゃねぇんだよ。どうしよう。取り敢えず当番じゃないけど日直の仕事をちょっと手伝いながら考えよう。

「ぁ…! 佐藤くん…! ありがとう…!」
「いやいや、全然良いよこれくらい」

 こんなの今俺が抱えている悩みに比べればハナクソ程の苦労もな──教室の窓に棒立ちの香織がいた。

(こっっっっわ!?!? 怖い怖い怖い!! え!? アイツいつからそこに居た!? なんで教室の外で俺の方眺めてんの!? もうホラーじゃん!!!)

 気づかないフリをしようと決めた途端──香織はツカツカとこちらに歩いてきた。

「修也。こっちにきなさい」
「………はい」

 その命令に刃向かえるはずもなく、俺は香織の後ろをついていく。人気はどんどん少なくなり、軈て朝は完全に人が来ない北校舎の空き教室に連れてこられた。
 香りはカシャンと鍵を閉め、カーテンも閉め切る。うん、完全密室の完成である。俺殺されんじゃね?

「まだ催眠かかってるのは好都合だったわね。取り敢えず修也。他の女子に優しくするの金輪際禁止。自分から話しかけにも行かないで。勘違いした女子が増えるのは困るでしょ?」
「………はい」
「よろしい」

 満足そうに頷いた香織は、ツカツカとこちらに近づいて来る。

「アンタの好きな人は誰?」
「ふっ…藤宮さん…」
「ッチィイイイイ!!!」

 ごめん!! 本当にごめん藤宮さん!! 今度お寿司奢らせてください!!! でももう話しかけにいけなくなっちゃったのでごめんなさい!!

「見てなさい修也。すぐにアンタの目を覚させてあげるわ。えっと…《催眠解除》」

 直後パチン、と香織が指を鳴らした。つまり──催眠が解けた演技開始!!

「んぁ? あれ? なんで俺こんなとこにいんの?」
「あら、忘れたの修也? ここにちょっと備品を取りに来たのよ」
「あ!! そうか!! そうだったな! いやぁ俺も老化が始まっちまったかな~!」
「フフッ。ねぇ修也。今日の昼休み暇かしら?」
「お! おう!! 暇!! 今日も寂しくぼっち飯だ!!」
「そう。なら今日お弁当作りすぎちゃって、よかったら一緒に食べない?」
「マジで? 超助かる! 実は最近金欠でさ!! バイト始めよーかなーなんて思ったりしてさ!」
「へぇ…? そうなのね…」

 香織は何処か不穏な言葉を残すと、それ以降会話は途切れた。


*******



「修也。はいこれ」
「あ、あぁ。ありがとう」

 昼休み。俺は香織と共に人気の無い屋上に居た。これから突き落とされるんじゃないかとキモを冷やしたが、どうやら昼飯を食べるだけだったようで心底安心した。
 弁当を開くと──そこには俺の好物ばかりが入っていた。

「おぉ!! 凄いな香織!! めっちゃ良いじゃん!」

 こればかりは心からの言葉だ。

「えぇ。残さず食べなさい」
「ありがとう! いただきます!!」

 味は最高である。幼少期に食った三つ星料理店の味を思い出すほどだ。

「あら、修也ってばもうハンバーグ全部食べてるじゃない。そんなに好きなの?」
「ハンバーグは男なら全員大好きだから仕方ないだろ?」
「ふーん。ところで、アンタ藤宮さんのことが好きなの?」
「ぶふっ…!! げほっ!! ごほっ!!」

 ヤバい!! ハンバーグのかけらが変なところ入った!! 水!! 水!!

「んぐっ…んぐっ…! なんだよ? いきなりどうしたんだよ?」
「ちょっと風の噂で耳にしたのよ。告白するつもりはあるの?」
「無い」

 これだけは嘘で誤魔化したくはない。でも心の中で謝っとく。藤宮さん本当にごめんなさい。

「あら意外ね。諦めたの?」
「あー…まぁなんていうかな…。見てるだけで満足なんだよ。俺は」
「へぇ。そうなの」

 1分程度、沈黙が流れた後──

「──アンタがフラれたら、私が慰めてあげるわ」
「え…?」
「ッ! なんでもないわよ!!」
「いった!? なんで叩くんだよ!?」
「うるさい! 早く食べなさい!!」
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