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2章 関節痛のお婆ちゃんと、骨を強くするご飯
第7話 いつもより熱いのに気を付けてね
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まず浅葱は、トマトの底に十字の切り込みを入れ、湯剥きして行く。それを細かく切ってボウルへ。
次に生姜とにんにくを微塵切りにし、玉葱は薄くスライスしておく。
ブロッコリは小房に分けて、塩を振って固めに蒸しておく。
続けて鶏肉を出す。首を落として羽根を毟られ、内臓が抜かれた姿まるままの鶏肉である。
それを捌いて、様々な部位に分けて行く。もも肉や胸肉、ささみ、手羽など。今回使うのはもも肉と胸肉、ささみである。そして骨から軟骨を剥がす。
肉の部分を細かく切り、2本の包丁を使ってリズミカルに叩いて行く。そうして出来上がった挽き肉を、ボウルに入れておく。
軟骨は荒微塵切りにしておく。
挽き肉に塩を加えて捏ねる。粘りが出るまでしっかりと。そうしたら小麦粉と軟骨を入れて更に練る。
それを一口大に丸めて、オリーブオイルを引いたフライパンで、ころころと表面を焼き付けて行く。
程良い焼き色が付いたそれをバットに上げておいて。
同じ鍋でにんにくと生姜の微塵切りを弱火で炒め、香りが出て来たら玉葱のスライスを加える。軽くこびり付いた鶏肉の旨味をこそげ取る様にして、塩を振り、中火で炒めて行く。
玉葱から甘い香りがしてしんなりとして来たら、トマトとブイヨンを加える。沸いたら焼いた鶏肉の団子を入れる。
そこからはくつくつと煮込んで行く。
そこで洗い物などをするところだが、カロムが抜かり無い。流し台は綺麗なものである。
「へぇ? 細かくした肉に軟骨を混ぜてるのか。そんな調理法も初めてだぜ。軟骨は骨付き肉を食う時に一緒に食う事はあるが、こんな使い方は初めてだ」
「この世界には挽き肉を使った料理は無いの?」
「ひきにく? 細かくした肉をそう言うのか。そこまで細かくするのは面倒だしなぁ。大概はごろごろ切って煮ちまうな」
「僕の世界には簡単に挽き肉が作れる機械もあるんだよ。手で作るのは確かに面倒だよね。でも今回は軟骨を使うから、少しでも面白い食感になると良いなと思って」
「へぇ、食うのが楽しみだな!」
トマト煮込みが大分煮詰まって来たので、ブロッコリを加えて混ぜ、味を整える。砂糖を少量、塩と胡椒、バター。
耐熱皿にオリーブオイルを塗り、トマト煮込みを平らになる様に入れ、その上にスライスしたゴーダチーズをたっぷりと乗せ、ガス窯へ。
数分後、チーズが溶けて程良い焦げ目が付いたら完成である。
ガス窯を開けると、香ばしいチーズの香りが台所にほわっと広がった。
「へぇ!? チーズって焼くとこんな風になんだな」
「こっちではグラタンとか作らないの?」
「ガス窯で作るのはパンとか菓子ばっかりだからな。こいつでこんな料理とかは無かったな。チーズはパンに挟むとか、酒と一緒にそのまま食べるとか、まぁやっぱり煮込みには使うか」
「ああ、成る程。ガス窯でお肉とか魚も焼けるよ。勿論フライパンでも充分なんだけど、フライパンで表面だけを焼いて、ガス窯で弱火でじっくり焼いたら、中が柔らかくふっくらと焼き上がるんだ。蒸し焼きみたいになるのかな」
「前に焼いてくれた肉も、充分柔らかくて旨かったけどな」
「蒸し焼きにすると、もっと柔らかくなるよ」
「そうなのか!?」
「今度やってみようか。でもそうしたら、ミリアさんのお家にガス窯あるかなぁ」
パンはこの世界でも買う事が多いらしいし、菓子も趣味で無ければそう作る事は無いらしい。なら無い家庭があってもおかしく無い。
無かったら無かったで、別のチーズにして、仕上げにさっと入れて煮込み料理にしようか。
「確かあった筈だぜ。結構前だが、ミリアおばさんが焼いたクッキー食った事がある。壊れて無かったらある筈だ」
「そっか。なら良かった。やっぱりね、グラタンの美味しさは別格だよ。お家で手軽に作れる洋食ってところかな」
「何の事かは良く判らんが、早速食おうぜ。あ、スープの味付けよろしくな」
カロムが浅葱の横で、玉葱とレタスと卵、ブイヨンでスープを作ってくれていたのだ。
浅葱がその味を見て、塩と胡椒で調味をし、完成である。
「しっかし、同じ調味料を使ってるのに、何が違うんだろうなぁ」
カロムが首を傾げる。
「僕、カロムさんが作ってくれる朝ご飯、美味しいと思っていただいてるよ」
「いやいや、あんなの買って来たパンに塩漬け豚とか挟んでるだけだからさ。いや、何かこう、違う気がするんだよなぁ」
「んー、カロムさんの気の所為だと思うんだけどなぁ」
今朝の食事は、たっぷりレタスとチーズを挟んだパンと、燻製豚と豆類がたっぷり入ったスープだった。確かに凝ってはいないが、ブイヨンはいちから作ってくれているのだし、美味しいと思っているのは本心なのだ。
さて、出来た料理をダイニングに運ぶ。グラタンをテーブルの中央に、金属製の鍋敷きを使って置き、スープはスープボウル、ロロアの分はサラダボウルに注いでそれぞれに置く。スプーンを添えて。
「ロロア、ご飯だよー」
呼ぶと、ロロアが研究室から慌ただしく出て来た。待ち兼ねていたのだろう。
「とても良い香りがするのですカピ! 楽しみですカピ」
「ロロアも初めて食べるものかも知れない」
ロロアはテーブルの上でほかほかと湯気を上げているグラタンを見て、首を傾げた。
「これは何と言うお料理なのですカピか?」
「俺も初めてなんだよ。グラタン、て言うらしいぜ」
「ぐらたん……初めてですカピ。僕はこれまで煮込み料理やスープが殆どだったのですカピ」
「俺もだ。昼のパスタの食い方もだが、焼いた肉も、アサギが来てからやっとちゃんとした旨いものが食えたし」
「そうですカピね……そう思うと、この世界のお料理は種類が少ないのですカピね」
確かにオリーブが作ってくれていたご飯も、食堂でメニューを見た時も、煮込み料理をメインに、サイドにスープかサラダばかりだった。
肉や魚を焼く事を不得手としているとは知っていたが、和え物の小鉢だとか、そういう細々したものも無い。
そして肉類を焼かないからか、野菜もそうした調理法をしていなかった。基本なところだと野菜炒めなども、この世界では見ない。野菜を炒めても最終的には煮込み料理の具材になるのだ。
「そうだな、今まであまり考えた事が無かったが……って、冷めないうちに食おうぜ」
「そうですカピ!」
はっと気付いた様に椅子に上がるロロア。カロムが小皿にグラタンを取り分けてくれて、食事の開始である。
食事の前には神への祈り。食事を出来る事への感謝をするのである。そう長いものでは無い。「今日もありがとうございます」と、そんな簡単な言葉を捧げる。
祈りが終わると、浅葱だけがあらためて手を合わせて「いただきます」をした。
スプーンを手に、まずはスープを啜る。良い塩梅だ。とろとろに煮込まれて甘い玉葱、しゃきしゃきが残るレタスも甘みが引き出されていて、卵はふわふわだ。
やはりベースのブイヨンが美味しくなければ、いくら味付けをきちんとしても美味しいものにはならないのだ。
「カロムさん、スープやっぱり美味しいよ?」
「そりゃあアサギが味付けしたんだからさ」
「そうじゃ無くて、ベースのブイヨンだよ。カロムさんもお料理上手なんだよ。ただ僕が元の世界、異世界の知識があるってだけで」
「確かに俺は自分で言うのも何だが、この世界では料理上手な方だがな。で無ければ錬金術師の世話係にはなれんさ。そうだ、その知識ってのが狭い世界で止まっちまってるんだな。教えてくれな、アサギ」
「うん。僕の知ってる事なら何でも」
浅葱はゆったりと頷いた。
「さ、このグラタンてやつを食ってみるか。スプーンで良いんかな?」
「うん。その方が食べ易いと思う。ロロアは齧り付くから、いつもより熱いのに気を付けてね」
「はいカピ」
カロムがグラタンにスプーンを入れ、掬う。すると蕩けたチーズが見事な糸を引いた。
「お、いいねぇ、溶けたチーズはこれが醍醐味だよな」
「そうですカピね」
そうして大きな口へ。カロムも、そろりと噛り付いたロロアも眼を見開いた。
「焼いたチーズってこんなに香ばしくて旨いのか!? いや、そのまま食っても煮込みで溶けても勿論旨いんだが、これは凄いな!」
「本当ですカピ! 独特の癖も不思議と和らいでいますカピ」
「だよな。トマトはフレッシュチーズと合わせる事が多かったけど、これは良いな」
「そうですカピね。煮込みですカピと、ミルク味と合わせるのが多かったと思いますカピ」
「同じ乳製品だから相性良いもんね。でもトマトも良いでしょ」
「おう、旨いな! トマトも何だかまろやかな味だ。酸味が控えめと言うか」
「はい、美味しいですカピ!」
香ばしく焼けたチーズと、角が取れ甘みが引き出されたトマトの組み合わせが良い。そして肝心の鶏団子。
「お、鶏肉ほろっと崩れるな。細かくしたからなんだな。で、その中にコリッとした軟骨の食感のアクセント。面白いなぁ」
「そうですカピね。これは不思議な食感ですカピ。でもとても美味しいですカピ。美味しいしか言えないのですカピ」
「ブロッコリも良いし。これで関節痛が良くなって痩せられるんなら、ナリノ婆ちゃんも喜んでくれるんじゃ無いか?」
「だと良いけどなぁ。ブロッコリは骨を強くするのを助けてくれるんだ。トマトをベースにしたのは、血液を少しでもさらさらに出来たらと思って。チーズはホワイトソースとも凄く合うし、牛乳だから骨に良いけど、軟骨も入れてるしね。ナリノさん、今までお肉沢山食べてたんなら、血液の状態も心配だから」
「成る程なぁ、考えてあるんだな。凄いな」
「本当ですカピ。これで少しでもナリノお婆ちゃまの容態が改善すると良いですカピ」
「後は、ロロアのお薬だね」
「はいカピ。もう少しなのですカピ。頑張りますカピ!」
軟骨入り鶏団子とブロッコリのトマトグラタン。評判は上々で、浅葱は嬉しくて笑みが止まらなかった。
次に生姜とにんにくを微塵切りにし、玉葱は薄くスライスしておく。
ブロッコリは小房に分けて、塩を振って固めに蒸しておく。
続けて鶏肉を出す。首を落として羽根を毟られ、内臓が抜かれた姿まるままの鶏肉である。
それを捌いて、様々な部位に分けて行く。もも肉や胸肉、ささみ、手羽など。今回使うのはもも肉と胸肉、ささみである。そして骨から軟骨を剥がす。
肉の部分を細かく切り、2本の包丁を使ってリズミカルに叩いて行く。そうして出来上がった挽き肉を、ボウルに入れておく。
軟骨は荒微塵切りにしておく。
挽き肉に塩を加えて捏ねる。粘りが出るまでしっかりと。そうしたら小麦粉と軟骨を入れて更に練る。
それを一口大に丸めて、オリーブオイルを引いたフライパンで、ころころと表面を焼き付けて行く。
程良い焼き色が付いたそれをバットに上げておいて。
同じ鍋でにんにくと生姜の微塵切りを弱火で炒め、香りが出て来たら玉葱のスライスを加える。軽くこびり付いた鶏肉の旨味をこそげ取る様にして、塩を振り、中火で炒めて行く。
玉葱から甘い香りがしてしんなりとして来たら、トマトとブイヨンを加える。沸いたら焼いた鶏肉の団子を入れる。
そこからはくつくつと煮込んで行く。
そこで洗い物などをするところだが、カロムが抜かり無い。流し台は綺麗なものである。
「へぇ? 細かくした肉に軟骨を混ぜてるのか。そんな調理法も初めてだぜ。軟骨は骨付き肉を食う時に一緒に食う事はあるが、こんな使い方は初めてだ」
「この世界には挽き肉を使った料理は無いの?」
「ひきにく? 細かくした肉をそう言うのか。そこまで細かくするのは面倒だしなぁ。大概はごろごろ切って煮ちまうな」
「僕の世界には簡単に挽き肉が作れる機械もあるんだよ。手で作るのは確かに面倒だよね。でも今回は軟骨を使うから、少しでも面白い食感になると良いなと思って」
「へぇ、食うのが楽しみだな!」
トマト煮込みが大分煮詰まって来たので、ブロッコリを加えて混ぜ、味を整える。砂糖を少量、塩と胡椒、バター。
耐熱皿にオリーブオイルを塗り、トマト煮込みを平らになる様に入れ、その上にスライスしたゴーダチーズをたっぷりと乗せ、ガス窯へ。
数分後、チーズが溶けて程良い焦げ目が付いたら完成である。
ガス窯を開けると、香ばしいチーズの香りが台所にほわっと広がった。
「へぇ!? チーズって焼くとこんな風になんだな」
「こっちではグラタンとか作らないの?」
「ガス窯で作るのはパンとか菓子ばっかりだからな。こいつでこんな料理とかは無かったな。チーズはパンに挟むとか、酒と一緒にそのまま食べるとか、まぁやっぱり煮込みには使うか」
「ああ、成る程。ガス窯でお肉とか魚も焼けるよ。勿論フライパンでも充分なんだけど、フライパンで表面だけを焼いて、ガス窯で弱火でじっくり焼いたら、中が柔らかくふっくらと焼き上がるんだ。蒸し焼きみたいになるのかな」
「前に焼いてくれた肉も、充分柔らかくて旨かったけどな」
「蒸し焼きにすると、もっと柔らかくなるよ」
「そうなのか!?」
「今度やってみようか。でもそうしたら、ミリアさんのお家にガス窯あるかなぁ」
パンはこの世界でも買う事が多いらしいし、菓子も趣味で無ければそう作る事は無いらしい。なら無い家庭があってもおかしく無い。
無かったら無かったで、別のチーズにして、仕上げにさっと入れて煮込み料理にしようか。
「確かあった筈だぜ。結構前だが、ミリアおばさんが焼いたクッキー食った事がある。壊れて無かったらある筈だ」
「そっか。なら良かった。やっぱりね、グラタンの美味しさは別格だよ。お家で手軽に作れる洋食ってところかな」
「何の事かは良く判らんが、早速食おうぜ。あ、スープの味付けよろしくな」
カロムが浅葱の横で、玉葱とレタスと卵、ブイヨンでスープを作ってくれていたのだ。
浅葱がその味を見て、塩と胡椒で調味をし、完成である。
「しっかし、同じ調味料を使ってるのに、何が違うんだろうなぁ」
カロムが首を傾げる。
「僕、カロムさんが作ってくれる朝ご飯、美味しいと思っていただいてるよ」
「いやいや、あんなの買って来たパンに塩漬け豚とか挟んでるだけだからさ。いや、何かこう、違う気がするんだよなぁ」
「んー、カロムさんの気の所為だと思うんだけどなぁ」
今朝の食事は、たっぷりレタスとチーズを挟んだパンと、燻製豚と豆類がたっぷり入ったスープだった。確かに凝ってはいないが、ブイヨンはいちから作ってくれているのだし、美味しいと思っているのは本心なのだ。
さて、出来た料理をダイニングに運ぶ。グラタンをテーブルの中央に、金属製の鍋敷きを使って置き、スープはスープボウル、ロロアの分はサラダボウルに注いでそれぞれに置く。スプーンを添えて。
「ロロア、ご飯だよー」
呼ぶと、ロロアが研究室から慌ただしく出て来た。待ち兼ねていたのだろう。
「とても良い香りがするのですカピ! 楽しみですカピ」
「ロロアも初めて食べるものかも知れない」
ロロアはテーブルの上でほかほかと湯気を上げているグラタンを見て、首を傾げた。
「これは何と言うお料理なのですカピか?」
「俺も初めてなんだよ。グラタン、て言うらしいぜ」
「ぐらたん……初めてですカピ。僕はこれまで煮込み料理やスープが殆どだったのですカピ」
「俺もだ。昼のパスタの食い方もだが、焼いた肉も、アサギが来てからやっとちゃんとした旨いものが食えたし」
「そうですカピね……そう思うと、この世界のお料理は種類が少ないのですカピね」
確かにオリーブが作ってくれていたご飯も、食堂でメニューを見た時も、煮込み料理をメインに、サイドにスープかサラダばかりだった。
肉や魚を焼く事を不得手としているとは知っていたが、和え物の小鉢だとか、そういう細々したものも無い。
そして肉類を焼かないからか、野菜もそうした調理法をしていなかった。基本なところだと野菜炒めなども、この世界では見ない。野菜を炒めても最終的には煮込み料理の具材になるのだ。
「そうだな、今まであまり考えた事が無かったが……って、冷めないうちに食おうぜ」
「そうですカピ!」
はっと気付いた様に椅子に上がるロロア。カロムが小皿にグラタンを取り分けてくれて、食事の開始である。
食事の前には神への祈り。食事を出来る事への感謝をするのである。そう長いものでは無い。「今日もありがとうございます」と、そんな簡単な言葉を捧げる。
祈りが終わると、浅葱だけがあらためて手を合わせて「いただきます」をした。
スプーンを手に、まずはスープを啜る。良い塩梅だ。とろとろに煮込まれて甘い玉葱、しゃきしゃきが残るレタスも甘みが引き出されていて、卵はふわふわだ。
やはりベースのブイヨンが美味しくなければ、いくら味付けをきちんとしても美味しいものにはならないのだ。
「カロムさん、スープやっぱり美味しいよ?」
「そりゃあアサギが味付けしたんだからさ」
「そうじゃ無くて、ベースのブイヨンだよ。カロムさんもお料理上手なんだよ。ただ僕が元の世界、異世界の知識があるってだけで」
「確かに俺は自分で言うのも何だが、この世界では料理上手な方だがな。で無ければ錬金術師の世話係にはなれんさ。そうだ、その知識ってのが狭い世界で止まっちまってるんだな。教えてくれな、アサギ」
「うん。僕の知ってる事なら何でも」
浅葱はゆったりと頷いた。
「さ、このグラタンてやつを食ってみるか。スプーンで良いんかな?」
「うん。その方が食べ易いと思う。ロロアは齧り付くから、いつもより熱いのに気を付けてね」
「はいカピ」
カロムがグラタンにスプーンを入れ、掬う。すると蕩けたチーズが見事な糸を引いた。
「お、いいねぇ、溶けたチーズはこれが醍醐味だよな」
「そうですカピね」
そうして大きな口へ。カロムも、そろりと噛り付いたロロアも眼を見開いた。
「焼いたチーズってこんなに香ばしくて旨いのか!? いや、そのまま食っても煮込みで溶けても勿論旨いんだが、これは凄いな!」
「本当ですカピ! 独特の癖も不思議と和らいでいますカピ」
「だよな。トマトはフレッシュチーズと合わせる事が多かったけど、これは良いな」
「そうですカピね。煮込みですカピと、ミルク味と合わせるのが多かったと思いますカピ」
「同じ乳製品だから相性良いもんね。でもトマトも良いでしょ」
「おう、旨いな! トマトも何だかまろやかな味だ。酸味が控えめと言うか」
「はい、美味しいですカピ!」
香ばしく焼けたチーズと、角が取れ甘みが引き出されたトマトの組み合わせが良い。そして肝心の鶏団子。
「お、鶏肉ほろっと崩れるな。細かくしたからなんだな。で、その中にコリッとした軟骨の食感のアクセント。面白いなぁ」
「そうですカピね。これは不思議な食感ですカピ。でもとても美味しいですカピ。美味しいしか言えないのですカピ」
「ブロッコリも良いし。これで関節痛が良くなって痩せられるんなら、ナリノ婆ちゃんも喜んでくれるんじゃ無いか?」
「だと良いけどなぁ。ブロッコリは骨を強くするのを助けてくれるんだ。トマトをベースにしたのは、血液を少しでもさらさらに出来たらと思って。チーズはホワイトソースとも凄く合うし、牛乳だから骨に良いけど、軟骨も入れてるしね。ナリノさん、今までお肉沢山食べてたんなら、血液の状態も心配だから」
「成る程なぁ、考えてあるんだな。凄いな」
「本当ですカピ。これで少しでもナリノお婆ちゃまの容態が改善すると良いですカピ」
「後は、ロロアのお薬だね」
「はいカピ。もう少しなのですカピ。頑張りますカピ!」
軟骨入り鶏団子とブロッコリのトマトグラタン。評判は上々で、浅葱は嬉しくて笑みが止まらなかった。
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