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5章 好き嫌いが多い子どもたち
第3話 良い匂いだな。そろそろ飯か?
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「じゃあカレーの味付けで煮込んで行きましょう。そうだなぁ、ピーマンと茄子、豚肉で行きましょうか。ビーフストロガノフの方も温めるだけで食べられる様にしておきますので、明日のお昼か晩に食べてくださいね。粗熱を取って冷暗庫に入れておけば、明日の夜まで保ちますから。煮込みは一晩置くと、もっと美味しくなりますよ」
「あら、そうなのね」
「はい。味が馴染むと言いますか落ち着くと言いますか。なので明日でも美味しくいただけますから」
「楽しみだわぁ。今日はカレーなのよね。ピーマン大丈夫かしら」
エレノアが不安げに言うと、浅葱も「どうでしょう」と首を捻る。
「カレーソースは味が強めなので、ピーマンも巧く馴染むと良いんですが。とりあえず試してみましょう」
「そうね。もし食べなかったら、無理強いするのもね……ピーマン以外を食べて貰う事にするのが良いのかしら。いつもは一緒に入ってるものもピーマンの味がする気がするなんて言って残されちゃうのだけども、このソースなら大丈夫でしょうし」
「そうですね。無理に食べさせて、余計に嫌いになっちゃったら困りますもんね」
では調理開始である。先にビーフストロガノフを仕上げてしまおう。
フライパンにオリーブオイルとバターを引き、塩で下味を付けた牛の薄切り肉を炒めて行く。
火が通ったら少量の白ワインを入れ、フライパンの底にこびり付いた牛肉の旨味を刮げ取りながら煮詰め、ビーフストロガノフの鍋に加える。
全体を混ぜて、火を止める。
その横で湯を沸かし、塩を入れて、鞘から外したグリンピースを下茹でする。2分ほどしたら火を止めて。
「これで両方ともこのまま置いて粗熱を取ります。ビーフストロガノフは明日温めて貰って、水気を切ったグリンピースを散らしてください」
「グリンピースっで茹でるの?」
「はい。そうしたら青臭さみたいなのが取れますよ。ケアリーくんグリンピースは大丈夫ですか?」
「あまり好きでは無いみたい。でもどうにか食べてくれているわ。どうしても食べられないもの以外は、少し我慢して食べてねって言っているから」
「じゃあこの下茹でで、少しは食べ易くなるかも知れませんね」
「だと嬉しいわ。こんな一手間で、食べ易くなったりするのね」
「そうですね。癖のある野菜は、下茹ででその癖が抜ける事があります。ピーマンなんかもそうなんですよ」
「そうなの?」
「はい。まずは切り方なんですが」
ピーマンを縦半分に切り萼と綿を取ったら、縦方向にやや太めの千切りにして行く。
「ピーマンは横に繊維が走っています。なのでこうして縦に切ったら、苦味が出難いんです」
「切り方で変わるものなの?」
「そうなんです」
そうして切り終わったピーマンを、塩を入れた湯で茹でて行く。
「これでも苦味とか青臭さが粗方抜けますよ」
「成る程ねぇ」
ピーマンを笊に上げてカレーの鍋に投入。ピーマンを茹でた鍋をさっと濯いだら、水気を蒸発させて、多めのオリーブオイルを入れる。
そこに乱切りにした茄子を入れ、炒め揚げにする。それもカレーの鍋へ。
同じ鍋で一口大に切り塩胡椒で下味を付けた豚肉を焼き付けて、良い色になったらカレーと合わせて。
鍋にブイヨンを入れ、豚肉の旨味を刮げ、それもカレーに鍋に入れて、煮込んで行く。
「今回はソースを先に作ったので材料をこうして後入れしましたけど、普段はいつもの作り方で大丈夫ですよ。玉葱炒めて、茄子を炒めて、スパイス入れて、トマト入れて、ブイヨン入れて。豚肉は焼き付けなくても大丈夫ですけど、したら香ばしさが加わるので更に美味しくなりますよ。ピーマンはケアリーくんが食べられないうちは、下茹でしてあげてください。あ、今日食べられたら、ですけど」
「そうね。でもこれだけ手を掛けてくれているのだもの。絶対に食べてくれると思うわ!」
エレノアが力強く言うと、浅葱も「そ、そうですよね!」と自らに言い聞かせる様に言った。
さて、塩と胡椒で味を整えて、豚肉と茄子とピーマンのカレー煮込みが完成である。
「食べるのは主人が帰って来るのを待ちたいのだけども。もうすぐ戻ると思うわ」
「じゃあ片付けられるものは片付けちゃいましょう。もう1品の仕上げも帰って来られてからで」
そうして洗い物などをしていると、エレノアの夫、ケアリーの父親が帰って来た。
「ただいま! お、立派な城だなぁ。カロムに遊んで貰ってたのか良かったなぁケアリー。カロムありがとうな! お、こちらのカピバラは錬金術師さまだな? 初めまして、ケアリーの父のタッドです!」
大きな声で、ほぼ一息でそう言う男性の声が台所まで聞こえて来て、あ、ケアリーの落ち着き無さはやっぱり父親似かも知れない、と浅葱は思った。
「騒がしくてごめんなさいね。主人のタッドは声が大きくて良く喋る人で……」
エレノアが少し恥ずかしげに言い、顔を伏せた。
「いえ。賑やかなのは良い事だと思います」
「そう言って貰えると。ケアリーはタッド似なんですよ」
はい、そうでしょうね。と浅葱は思ったが、口には出さず、にっこりと微笑むに留めた。
さて、もう1品の仕上げ。ピューレ状で鍋に入れておいたピーマンと玉葱と馬鈴薯。そこに牛乳を加えて温める。分離してしまわない様に弱火で。
その時、タッドが台所に顔を覗かせた。細面で神経質そうだと言われても違和感が無いが、くりっと開かれた眼がその印象を裏切っている。
「エレノア、ただいま! あ、アサギくん世話になるな。ありがとうな!」
「お帰りなさい。本当にアサギくんにはお世話になっちゃって。凄いのよ、アサギくん」
「お帰りなさい。いえいえ、そんな大層な事では無いので」
浅葱が恐縮すると、タッドは「謙遜すんなって!」と豪快に笑った。
「良い匂いだな。そろそろ飯か?」
「ええ。もう出来てるわよ。貴方のお帰りを待っていたの」
「おっと、そりゃあ済まないな! 手伝いは要るか?」
「今日は僕がいますので。食堂で待っていてください」
「あ、ケアリーに積み木を片付ける様に言っておいてね」
「ああ、解った。後はよろしくな!」
タッドは言うと、食堂兼居間に戻って行った。
牛乳を加えた鍋がゆっくりと沸いて来た。全体が温まったら塩胡椒で味を整えて。
ピーマンのポタージュの完成である。
浅葱たちが出来上がったカレー煮込みとポタージュを器に盛っていると、食堂から「やだ! ママに見せる!」と言うケアリーの叫び声が聞こえて来た。エレノアは「あらあら」と苦笑する。
2枚のトレイに乗せた全員分のカレー煮込みとポタージュ、そして籠に盛ったパンを食堂に運ぶと、ケアリーがタッドから守る様に、積み木の城の前で両腕を広げていた。
エレノアがテーブルにトレイを置くと、ケアリーが「ママ!」と嬉しそうに叫んで駆け寄って来る。
「ほら、お城出来たよ!」
そう言って城を指差す。エレノアはケアリーに引っ張られる様に城の前へ。
「本当に凄いわねぇ、立派なお城ねぇ」
エレノアが感心した様に言うと、ケアリーは「きひひ」と得意気に笑った。
色取り取りの積み木で作られている城。積み木の形を重視して積んだからか、色彩感覚は何とも面白いものになっているが、その形状は確かに立派なものだった。
「じゃあケアリー、お片付けしてくれる? ご飯の用意が出来たから」
「はーい!」
ケアリーはエレノアに城を見せて満足したのか、素直に片付けを始めた。カロムとタッドもそれを手伝うとあっと言う間に城は瓦解し、テーブルは綺麗になった。
さぁ、夕飯である。
「あら、そうなのね」
「はい。味が馴染むと言いますか落ち着くと言いますか。なので明日でも美味しくいただけますから」
「楽しみだわぁ。今日はカレーなのよね。ピーマン大丈夫かしら」
エレノアが不安げに言うと、浅葱も「どうでしょう」と首を捻る。
「カレーソースは味が強めなので、ピーマンも巧く馴染むと良いんですが。とりあえず試してみましょう」
「そうね。もし食べなかったら、無理強いするのもね……ピーマン以外を食べて貰う事にするのが良いのかしら。いつもは一緒に入ってるものもピーマンの味がする気がするなんて言って残されちゃうのだけども、このソースなら大丈夫でしょうし」
「そうですね。無理に食べさせて、余計に嫌いになっちゃったら困りますもんね」
では調理開始である。先にビーフストロガノフを仕上げてしまおう。
フライパンにオリーブオイルとバターを引き、塩で下味を付けた牛の薄切り肉を炒めて行く。
火が通ったら少量の白ワインを入れ、フライパンの底にこびり付いた牛肉の旨味を刮げ取りながら煮詰め、ビーフストロガノフの鍋に加える。
全体を混ぜて、火を止める。
その横で湯を沸かし、塩を入れて、鞘から外したグリンピースを下茹でする。2分ほどしたら火を止めて。
「これで両方ともこのまま置いて粗熱を取ります。ビーフストロガノフは明日温めて貰って、水気を切ったグリンピースを散らしてください」
「グリンピースっで茹でるの?」
「はい。そうしたら青臭さみたいなのが取れますよ。ケアリーくんグリンピースは大丈夫ですか?」
「あまり好きでは無いみたい。でもどうにか食べてくれているわ。どうしても食べられないもの以外は、少し我慢して食べてねって言っているから」
「じゃあこの下茹でで、少しは食べ易くなるかも知れませんね」
「だと嬉しいわ。こんな一手間で、食べ易くなったりするのね」
「そうですね。癖のある野菜は、下茹ででその癖が抜ける事があります。ピーマンなんかもそうなんですよ」
「そうなの?」
「はい。まずは切り方なんですが」
ピーマンを縦半分に切り萼と綿を取ったら、縦方向にやや太めの千切りにして行く。
「ピーマンは横に繊維が走っています。なのでこうして縦に切ったら、苦味が出難いんです」
「切り方で変わるものなの?」
「そうなんです」
そうして切り終わったピーマンを、塩を入れた湯で茹でて行く。
「これでも苦味とか青臭さが粗方抜けますよ」
「成る程ねぇ」
ピーマンを笊に上げてカレーの鍋に投入。ピーマンを茹でた鍋をさっと濯いだら、水気を蒸発させて、多めのオリーブオイルを入れる。
そこに乱切りにした茄子を入れ、炒め揚げにする。それもカレーの鍋へ。
同じ鍋で一口大に切り塩胡椒で下味を付けた豚肉を焼き付けて、良い色になったらカレーと合わせて。
鍋にブイヨンを入れ、豚肉の旨味を刮げ、それもカレーに鍋に入れて、煮込んで行く。
「今回はソースを先に作ったので材料をこうして後入れしましたけど、普段はいつもの作り方で大丈夫ですよ。玉葱炒めて、茄子を炒めて、スパイス入れて、トマト入れて、ブイヨン入れて。豚肉は焼き付けなくても大丈夫ですけど、したら香ばしさが加わるので更に美味しくなりますよ。ピーマンはケアリーくんが食べられないうちは、下茹でしてあげてください。あ、今日食べられたら、ですけど」
「そうね。でもこれだけ手を掛けてくれているのだもの。絶対に食べてくれると思うわ!」
エレノアが力強く言うと、浅葱も「そ、そうですよね!」と自らに言い聞かせる様に言った。
さて、塩と胡椒で味を整えて、豚肉と茄子とピーマンのカレー煮込みが完成である。
「食べるのは主人が帰って来るのを待ちたいのだけども。もうすぐ戻ると思うわ」
「じゃあ片付けられるものは片付けちゃいましょう。もう1品の仕上げも帰って来られてからで」
そうして洗い物などをしていると、エレノアの夫、ケアリーの父親が帰って来た。
「ただいま! お、立派な城だなぁ。カロムに遊んで貰ってたのか良かったなぁケアリー。カロムありがとうな! お、こちらのカピバラは錬金術師さまだな? 初めまして、ケアリーの父のタッドです!」
大きな声で、ほぼ一息でそう言う男性の声が台所まで聞こえて来て、あ、ケアリーの落ち着き無さはやっぱり父親似かも知れない、と浅葱は思った。
「騒がしくてごめんなさいね。主人のタッドは声が大きくて良く喋る人で……」
エレノアが少し恥ずかしげに言い、顔を伏せた。
「いえ。賑やかなのは良い事だと思います」
「そう言って貰えると。ケアリーはタッド似なんですよ」
はい、そうでしょうね。と浅葱は思ったが、口には出さず、にっこりと微笑むに留めた。
さて、もう1品の仕上げ。ピューレ状で鍋に入れておいたピーマンと玉葱と馬鈴薯。そこに牛乳を加えて温める。分離してしまわない様に弱火で。
その時、タッドが台所に顔を覗かせた。細面で神経質そうだと言われても違和感が無いが、くりっと開かれた眼がその印象を裏切っている。
「エレノア、ただいま! あ、アサギくん世話になるな。ありがとうな!」
「お帰りなさい。本当にアサギくんにはお世話になっちゃって。凄いのよ、アサギくん」
「お帰りなさい。いえいえ、そんな大層な事では無いので」
浅葱が恐縮すると、タッドは「謙遜すんなって!」と豪快に笑った。
「良い匂いだな。そろそろ飯か?」
「ええ。もう出来てるわよ。貴方のお帰りを待っていたの」
「おっと、そりゃあ済まないな! 手伝いは要るか?」
「今日は僕がいますので。食堂で待っていてください」
「あ、ケアリーに積み木を片付ける様に言っておいてね」
「ああ、解った。後はよろしくな!」
タッドは言うと、食堂兼居間に戻って行った。
牛乳を加えた鍋がゆっくりと沸いて来た。全体が温まったら塩胡椒で味を整えて。
ピーマンのポタージュの完成である。
浅葱たちが出来上がったカレー煮込みとポタージュを器に盛っていると、食堂から「やだ! ママに見せる!」と言うケアリーの叫び声が聞こえて来た。エレノアは「あらあら」と苦笑する。
2枚のトレイに乗せた全員分のカレー煮込みとポタージュ、そして籠に盛ったパンを食堂に運ぶと、ケアリーがタッドから守る様に、積み木の城の前で両腕を広げていた。
エレノアがテーブルにトレイを置くと、ケアリーが「ママ!」と嬉しそうに叫んで駆け寄って来る。
「ほら、お城出来たよ!」
そう言って城を指差す。エレノアはケアリーに引っ張られる様に城の前へ。
「本当に凄いわねぇ、立派なお城ねぇ」
エレノアが感心した様に言うと、ケアリーは「きひひ」と得意気に笑った。
色取り取りの積み木で作られている城。積み木の形を重視して積んだからか、色彩感覚は何とも面白いものになっているが、その形状は確かに立派なものだった。
「じゃあケアリー、お片付けしてくれる? ご飯の用意が出来たから」
「はーい!」
ケアリーはエレノアに城を見せて満足したのか、素直に片付けを始めた。カロムとタッドもそれを手伝うとあっと言う間に城は瓦解し、テーブルは綺麗になった。
さぁ、夕飯である。
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