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8章 好きなものを作って、食べて、そして。
第9話 うわぁ、優しい味だなぁ
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さて、折角醤油が用意出来たのだから、がっつりと和食を作りたい。
まずは浅蜊である。殻同士を擦り合わせる様に流水で洗い、水を張ったバットに広げて砂抜きをしておく。この世界の海は真水なので、水で大丈夫なのだ。
次に大根である。青々と新鮮で綺麗な葉もついているのだから、使わない手は無い。
大根の身の部分を、まずは4センチほどの輪切りにし、厚く皮を剥いたら、半分の2センチの輪切りにする。それを銀杏切りにしておく。
この世界の大根はとても太いので、そう切っても一口でたべられるかどうか。そして1本は男3人でも食べ切れやしないだろう。残りは明日に使うとしよう。
大根葉は適当にざく切りしておく。ちなみに葉は短めである。この長さで良く土の中であのサイズの大根が育つものだと思う。土の質が良いのだろうか。
次は鶏肉である。手羽元を用意した。適当にぶすぶすと包丁の先で切り込みを入れておく。これで味染みが良くなり、火通し時間も短縮出来る。
鍋を温めてオリーブオイルを引き、手羽元を焼いて行く。適度にころころと転がしながら、全体的に香ばしい焼き目が付く様に。
そこに大根を入れる。木べらで全体を混ぜ合わせ、大根にしっかりとオイルを回してやる。
大根の表面が艶めいて来たら、ひたひたにブイヨンを入れ、落し蓋代わりの丸い木板を乗せて煮込んで行く。
横でフライパンを用意し、砂抜きした浅蜊を入れ、ひたひたに米酒を入れて火に掛ける。米酒が沸騰して来て、やがて浅蜊の口が開いて来たら、順に取り出して行く。
フライパンに残った米酒は細かい笊で漉して、灰汁と塵を取り除いておく。
他の料理の準備だ。牛蒡は縦半分に割り、薄く斜め切りにしていく。人参は牛蒡に合わせた太さの千切りに。
胡麻をフライパンで乾煎りにしておく。ぱちぱちと香ばしく炒り上がったら、乳鉢に上げておく。
この世界では、胡麻は菓子に使われる事が多いのだそうだ。パウンドケーキやクッキー、サブレなどに入れる。なので胡麻油は無い。オリーブオイルを作っている商店に教えたら、商業ベースに乗らないものだろうか。
この世界では、オリーブオイルは圧搾法と呼ばれる方法、材料を擦り潰して油を搾り出す遣り方をしている。胡麻油も同じ方法で出来ると思うのだが。
さて、それはさて置き。
胡麻を炒ったフライパンをさっと拭いてオリーブオイルを引き、牛蒡と人参を炒めて行く。全体にオイルが回ったら塩を少し振る。
火が通って来てしんなりとして来たら、砂糖と米酒を入れて、更に炒めて行く。米酒のアルコールがしっかりと飛んだら、さてお待ちかね、醤油を加える。
香ばしくなる様にしっかりと炒め上げたら、火を止めて置いておく。
粗熱が取れた胡麻を、乳棒で潰しておく。
さて鍋である。砂糖と、浅蜊の旨味を含んだ米酒を加え、煮込んで甘味を素材に含ませて行く。
その間に牛蒡と人参を器に盛り、フライパンを洗っておこう。
さて、5分程が経った。醤油を追加し、また煮込んで行く。
横ではカロムにお任せした米が炊き上がろうとしていた。今日は奮発して貰って短粒米だ。短粒米の中では1番安価なものだか、それでも充分に美味しいのだ。
洗い物なども済ませ、カロムと雑談などをしながら鍋の中身が煮上がるのを待つ。
さぁそろそろだろうか。トングで木板を外してみると、大根は透明感がありながら薄っすらと色付き、この分だと手羽元も柔らかくなっているだろう。
そこに貝から外した浅蜊の剥き身と大根葉を入れて、大根葉が少ししんなりする程度に色良く火を通し、器にこんもりと盛り付ける。
さて仕上げだ。牛蒡と人参を炒めたものに潰した胡麻をたっぷりと振り掛けたら。
手羽元と浅蜊と大根の煮物、牛蒡と人参のきんぴら、完成である。
それにご飯を添えたものを見て、食卓でロロアとカロムはくんくんと鼻をひくつかせる。
「初めての香りなのですカピ」
「だよな。俺も作るの手伝いながら、面白いなぁって。でも良い匂いだよな」
「はいですカピ。やっぱり少しオミソに似ている気もするのですカピ。同じ大豆から作られている調味料だからなのでしょうかカピ」
「それにほら、こっちの炒め物に掛かってるのは胡麻だぜ。きんぴらって言うんだってさ。胡麻って料理にも使えるんだな」
「そうなのですカピね! お菓子のイメージしか無かったのですカピ」
ロロアが言って、眼を丸くする。
「さて問題は味だよ。僕の好みには出来上がっていると思うけど、ロロアとカロムのお口にはどうかな。少し緊張するかも。お味噌の時にもしたんだけどね」
「オミソの料理が旨かったんだから、これも旨いだろ。基本ロロアと俺はアサギの腕と味覚を完全に信用してるからな」
「そうですカピね」
「うわぁ、そう言われちゃったら余計に緊張するよ」
浅葱は少し焦って天を仰ぐ。
「じゃあ食おうぜ」
カロムが言い、浅葱たちは神に感謝を捧げ、続けていただきますと手を合わせる。
ではいただこう。まず浅葱は、きんぴらの小鉢に手を伸ばし、フォークで器用に掬って口に運ぶ。
まず口に広がるのは胡麻の風味。香ばしく甘い味わいが突き抜ける。しかし噛んで行くと、牛蒡と人参の甘味、そして牛蒡のポリフェノールが醸し出すほんの微かな渋みが胡麻と相まって、新たな旨味を作り出す。
胡麻が牛蒡と人参を存分に纏い、旨味を生み出していた。
「へぇ、面白いな、胡麻ってオショウユの味に合うんだな」
「そうですカピね。オショウユが香ばしいのですカピ。そこに甘くて香ばしい胡麻が合うのですカピ。ふたつが掛け合わされて良い旨味になっているのですカピ」
どうやらお気に召してくれた様である。浅葱は胸を撫で下ろす。
「美味しいかな、どうかな」
そろそろと聞いてみる。
「旨い」
「はいカピ。とても美味しいのですカピ」
「ああ。初めてのオショウユと、胡麻を料理に使うなんてな。本当にアサギの世界には色々な調理法があるんだなって羨ましいぜ」
「アサギさんはこの世界でそれを発揮してくれていますカピ。なので、僕たちは本当に嬉しいのですカピ」
「本当だよなぁ。肉を柔らかく焼く方法とかさ、驚いてばかりだぜ」
「煮物も食べてみて。きんぴらと使っている調味料は一緒なんだけど、ブイヨンを使っているのと、割り合いとかも違うから、違う味わいだと思う」
「おう。楽しみだ」
大根にナイフを入れると、何の抵抗も無くするりと切れる。フォークでそっと刺して口に運ぶと。
大根に染み込んだ旨味がじわっと溢れ出す。和の出汁が用意出来なかったが、ブイヨンと手羽元、浅蜊が充分にその役割りを果たしてくれていた。骨付き肉を使ったのも大きかった。
甘味は普通に加えたが、醤油は少し控えめにした。なので出汁の味がしっかりと効いていて、何とも優しい味わいである。
手羽元にナイフを入れたら、ほろりと綺麗に骨から外れてくれた。浅蜊などの旨味を含み、鶏肉のしっかりとした甘味と旨味を引き立てている。
そしてふっくらとした浅蜊の剥き身、しゃきしゃきの大根葉がアクセントである。今回大根葉は下茹でをしていないので、仄かな苦味があって、それが旨味にもなっている。
「うわぁ、優しい味だなぁ。なのに旨味が凄い」
「そうですカピね。きんぴらはしっかりとしたお味だったのですカピが、こちらはとても優しいのです」
ふたりは言って、「ふぅ」とうっとりとした表情で眼を細めた。
「美味しいですカピねぇ。何だかとても身体に良さそうな優しさなのですカピ」
「確かにな。トマト煮込みとか味の強めなのを食う事が多いから、そんな感じがするよな」
「塩の量とかはあまり変わらない筈なんだけどもね」
「ブイヨン煮込みは作るが、やっぱり浅蜊の有り無しが決定的な差だよな。旨味が全然違うぜ」
「言ってた昆布と鰹節のお出汁が取れないから、代わりになったらと思ってたけど、やっぱり浅蜊は良いよねぇ。他の貝類でも良さそうだけど、肉類に合わせるんだったら浅蜊が1番無難かも」
「成る程なぁ。今度他の食材とも組み合わせてみたいよな」
「豚肉と合わせても美味しそうなのですカピ」
「牛肉や魚や海老なんかでもな」
「そうだね。また色々作ってみよう」
浅葱にとってはまた懐かしい、醤油の風味の煮物。だから里心でも付いてしまったのだろうか。浅葱はぽつりと漏らした。
「そう言えば今、元の世界はどうなっているのかな」
その呟きに、ロロアとカロムは顔を見合わせ、「ああ……」と少し沈んだ声を上げた。
まずは浅蜊である。殻同士を擦り合わせる様に流水で洗い、水を張ったバットに広げて砂抜きをしておく。この世界の海は真水なので、水で大丈夫なのだ。
次に大根である。青々と新鮮で綺麗な葉もついているのだから、使わない手は無い。
大根の身の部分を、まずは4センチほどの輪切りにし、厚く皮を剥いたら、半分の2センチの輪切りにする。それを銀杏切りにしておく。
この世界の大根はとても太いので、そう切っても一口でたべられるかどうか。そして1本は男3人でも食べ切れやしないだろう。残りは明日に使うとしよう。
大根葉は適当にざく切りしておく。ちなみに葉は短めである。この長さで良く土の中であのサイズの大根が育つものだと思う。土の質が良いのだろうか。
次は鶏肉である。手羽元を用意した。適当にぶすぶすと包丁の先で切り込みを入れておく。これで味染みが良くなり、火通し時間も短縮出来る。
鍋を温めてオリーブオイルを引き、手羽元を焼いて行く。適度にころころと転がしながら、全体的に香ばしい焼き目が付く様に。
そこに大根を入れる。木べらで全体を混ぜ合わせ、大根にしっかりとオイルを回してやる。
大根の表面が艶めいて来たら、ひたひたにブイヨンを入れ、落し蓋代わりの丸い木板を乗せて煮込んで行く。
横でフライパンを用意し、砂抜きした浅蜊を入れ、ひたひたに米酒を入れて火に掛ける。米酒が沸騰して来て、やがて浅蜊の口が開いて来たら、順に取り出して行く。
フライパンに残った米酒は細かい笊で漉して、灰汁と塵を取り除いておく。
他の料理の準備だ。牛蒡は縦半分に割り、薄く斜め切りにしていく。人参は牛蒡に合わせた太さの千切りに。
胡麻をフライパンで乾煎りにしておく。ぱちぱちと香ばしく炒り上がったら、乳鉢に上げておく。
この世界では、胡麻は菓子に使われる事が多いのだそうだ。パウンドケーキやクッキー、サブレなどに入れる。なので胡麻油は無い。オリーブオイルを作っている商店に教えたら、商業ベースに乗らないものだろうか。
この世界では、オリーブオイルは圧搾法と呼ばれる方法、材料を擦り潰して油を搾り出す遣り方をしている。胡麻油も同じ方法で出来ると思うのだが。
さて、それはさて置き。
胡麻を炒ったフライパンをさっと拭いてオリーブオイルを引き、牛蒡と人参を炒めて行く。全体にオイルが回ったら塩を少し振る。
火が通って来てしんなりとして来たら、砂糖と米酒を入れて、更に炒めて行く。米酒のアルコールがしっかりと飛んだら、さてお待ちかね、醤油を加える。
香ばしくなる様にしっかりと炒め上げたら、火を止めて置いておく。
粗熱が取れた胡麻を、乳棒で潰しておく。
さて鍋である。砂糖と、浅蜊の旨味を含んだ米酒を加え、煮込んで甘味を素材に含ませて行く。
その間に牛蒡と人参を器に盛り、フライパンを洗っておこう。
さて、5分程が経った。醤油を追加し、また煮込んで行く。
横ではカロムにお任せした米が炊き上がろうとしていた。今日は奮発して貰って短粒米だ。短粒米の中では1番安価なものだか、それでも充分に美味しいのだ。
洗い物なども済ませ、カロムと雑談などをしながら鍋の中身が煮上がるのを待つ。
さぁそろそろだろうか。トングで木板を外してみると、大根は透明感がありながら薄っすらと色付き、この分だと手羽元も柔らかくなっているだろう。
そこに貝から外した浅蜊の剥き身と大根葉を入れて、大根葉が少ししんなりする程度に色良く火を通し、器にこんもりと盛り付ける。
さて仕上げだ。牛蒡と人参を炒めたものに潰した胡麻をたっぷりと振り掛けたら。
手羽元と浅蜊と大根の煮物、牛蒡と人参のきんぴら、完成である。
それにご飯を添えたものを見て、食卓でロロアとカロムはくんくんと鼻をひくつかせる。
「初めての香りなのですカピ」
「だよな。俺も作るの手伝いながら、面白いなぁって。でも良い匂いだよな」
「はいですカピ。やっぱり少しオミソに似ている気もするのですカピ。同じ大豆から作られている調味料だからなのでしょうかカピ」
「それにほら、こっちの炒め物に掛かってるのは胡麻だぜ。きんぴらって言うんだってさ。胡麻って料理にも使えるんだな」
「そうなのですカピね! お菓子のイメージしか無かったのですカピ」
ロロアが言って、眼を丸くする。
「さて問題は味だよ。僕の好みには出来上がっていると思うけど、ロロアとカロムのお口にはどうかな。少し緊張するかも。お味噌の時にもしたんだけどね」
「オミソの料理が旨かったんだから、これも旨いだろ。基本ロロアと俺はアサギの腕と味覚を完全に信用してるからな」
「そうですカピね」
「うわぁ、そう言われちゃったら余計に緊張するよ」
浅葱は少し焦って天を仰ぐ。
「じゃあ食おうぜ」
カロムが言い、浅葱たちは神に感謝を捧げ、続けていただきますと手を合わせる。
ではいただこう。まず浅葱は、きんぴらの小鉢に手を伸ばし、フォークで器用に掬って口に運ぶ。
まず口に広がるのは胡麻の風味。香ばしく甘い味わいが突き抜ける。しかし噛んで行くと、牛蒡と人参の甘味、そして牛蒡のポリフェノールが醸し出すほんの微かな渋みが胡麻と相まって、新たな旨味を作り出す。
胡麻が牛蒡と人参を存分に纏い、旨味を生み出していた。
「へぇ、面白いな、胡麻ってオショウユの味に合うんだな」
「そうですカピね。オショウユが香ばしいのですカピ。そこに甘くて香ばしい胡麻が合うのですカピ。ふたつが掛け合わされて良い旨味になっているのですカピ」
どうやらお気に召してくれた様である。浅葱は胸を撫で下ろす。
「美味しいかな、どうかな」
そろそろと聞いてみる。
「旨い」
「はいカピ。とても美味しいのですカピ」
「ああ。初めてのオショウユと、胡麻を料理に使うなんてな。本当にアサギの世界には色々な調理法があるんだなって羨ましいぜ」
「アサギさんはこの世界でそれを発揮してくれていますカピ。なので、僕たちは本当に嬉しいのですカピ」
「本当だよなぁ。肉を柔らかく焼く方法とかさ、驚いてばかりだぜ」
「煮物も食べてみて。きんぴらと使っている調味料は一緒なんだけど、ブイヨンを使っているのと、割り合いとかも違うから、違う味わいだと思う」
「おう。楽しみだ」
大根にナイフを入れると、何の抵抗も無くするりと切れる。フォークでそっと刺して口に運ぶと。
大根に染み込んだ旨味がじわっと溢れ出す。和の出汁が用意出来なかったが、ブイヨンと手羽元、浅蜊が充分にその役割りを果たしてくれていた。骨付き肉を使ったのも大きかった。
甘味は普通に加えたが、醤油は少し控えめにした。なので出汁の味がしっかりと効いていて、何とも優しい味わいである。
手羽元にナイフを入れたら、ほろりと綺麗に骨から外れてくれた。浅蜊などの旨味を含み、鶏肉のしっかりとした甘味と旨味を引き立てている。
そしてふっくらとした浅蜊の剥き身、しゃきしゃきの大根葉がアクセントである。今回大根葉は下茹でをしていないので、仄かな苦味があって、それが旨味にもなっている。
「うわぁ、優しい味だなぁ。なのに旨味が凄い」
「そうですカピね。きんぴらはしっかりとしたお味だったのですカピが、こちらはとても優しいのです」
ふたりは言って、「ふぅ」とうっとりとした表情で眼を細めた。
「美味しいですカピねぇ。何だかとても身体に良さそうな優しさなのですカピ」
「確かにな。トマト煮込みとか味の強めなのを食う事が多いから、そんな感じがするよな」
「塩の量とかはあまり変わらない筈なんだけどもね」
「ブイヨン煮込みは作るが、やっぱり浅蜊の有り無しが決定的な差だよな。旨味が全然違うぜ」
「言ってた昆布と鰹節のお出汁が取れないから、代わりになったらと思ってたけど、やっぱり浅蜊は良いよねぇ。他の貝類でも良さそうだけど、肉類に合わせるんだったら浅蜊が1番無難かも」
「成る程なぁ。今度他の食材とも組み合わせてみたいよな」
「豚肉と合わせても美味しそうなのですカピ」
「牛肉や魚や海老なんかでもな」
「そうだね。また色々作ってみよう」
浅葱にとってはまた懐かしい、醤油の風味の煮物。だから里心でも付いてしまったのだろうか。浅葱はぽつりと漏らした。
「そう言えば今、元の世界はどうなっているのかな」
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