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2章 それがふたりの絆というもの
第1話 仲が良いばかりでは無い
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「ほらあれだよ、最近の若いのは、あれだよ」
赤い顔をしたスーツ姿のおじさんがビールのグラスを片手に、カウンタ越しの厨房に立つ佳鳴にとつとつと語る。しかしそのセリフはいろいろと言葉が抜けていて、あまり意味が通じない。要は酔っ払いのたわ言である。
佳鳴は少しだけ眉尻を下げつつ、おじさんの話に相槌を打つ。これも仕事のひとつだ。そう割り切らないとやっていられない。なにせそう愉快では無い内容だ。
この煮物屋さんでは酒を出しているが、酷い酔っ払いになるお客さんは出ない。この様な酒癖のよろしく無いお客さまは珍しいのである。
常連では無い。一見さんだった。
「セクハラだのパワハラだの虐待だの、あれだ、そんなもんなぁ、俺ら当たり前なんだよ。それが今じゃいちいち騒ぎ立ててさぁ。たかだか手ぇ触られたぐらいでよぉ」
大声でまくし立てる。他のお客さまも苦笑するしか無い。
結局そのおじさんは瓶ビールを2本空けて、ふらふらと緩やかな千鳥足で帰って行った。おじさんの姿がドアの向こうに消えた瞬間、他のお客さまの「はぁ~」という溜め息が店内に響く。
「あれが昭和のおじさんってやつよねぇ」
呆れた様に言う女性、こちらは常連である。この門又さんが麦焼酎の水割りで唇を湿らせ、続けて口を開く。
「うちの会社にもいるよ。令和の世の中で昔の常識を通そうとするおじさん上司。時代云々じゃ無くて、常識が無いって私なんかは思っちゃうんだけなぁ」
すると門又さんの隣で「うんうん」と頷く、こちらの榊さんも女性である。ふたりはこの煮物屋さんで出会い、親しくなった。
この店以外で会うことはほとんど無いみたいだが、この店には同じ時間帯に来られることが多いので、こうして隣り合って会話を楽しんでいる。
「うちにもいるわぁ。事あるごとに肩とか腕とか触ってきてさぁ、気持ち悪いったらぁ」
榊さんはそう言って、嫌そうに顔をしかめた。
「そうなの? セクハラパワハラに関しちゃ、講習とか無いの?」
「あるわよぉ。でも自由参加だからねぇ、そういうの平気でする人に限って参加しないもんなのよぉ」
「それもそうか。自分には無関係って思ってるんだろうねぇ。無関係どころか周りに嫌な思いをさせてるって言うのにねぇ」
なかなか辛辣である。しかし佳鳴は表情には出さずに、心の中で頷く。こっそりと同意見なのである。
「そういえば店長さんたちって、会社とかで働いた経験ってあるの?」
おや、話の矛先がこちらに向いた。佳鳴と千隼は「ふふ」と笑みをこぼす。
「ふたりとも会社員経験ありますよ」
千隼が応えると、門又さんは「そっかぁ」と頷く。
「脱サラってやつよね。店長さんなんかはもしかしたらあったんじゃ無いの? セクハラとか」
この場合、店長は佳鳴のことである。千隼は常連さんからは「ハヤさん」と呼ばれている。
「ああ~、ありましたねぇ。そんな酷いものでは無かったですけど、程度云々じゃ無くて嫌なものですね~」
会社員時代のことを思い出す。男性社員はしようと思ってしている訳では無いのかも知れないが、やはり服越しでも、特に親しくもない異性に触られるのは良い気分では無い。
「やっぱりあったかぁ。そう、程度の問題じゃないよね。いや、そりゃあ酷かったらもっと嫌だろうけどね?」
「あ~あぁ、本当にもうそんな昭和親父たち絶滅してくれないかしらぁ」
榊さんはそんな物騒な事を、ハイボールを飲みながらぼやく。
その時、店のドアが開いた。顔を覗かせたのは、また常連の男性、結城さんだった。
「こんばんは。行けます?」
「いらっしゃいませ。どうぞー」
佳鳴がにこやかに応え、千隼も「いらっしゃいませー」と声を上げる。
今は14人掛けのこの店に、お客さまは門又さんと榊さん、そしてこちらも常連の山見さんご夫妻の4人。店の奥から山見さんご夫妻、2席空けて門又さんと榊さんが座っていた。
結城さんは榊さんから2つ空けて掛ける。佳鳴から温かいおしぼりを受け取って、気持ち良さそうに手を拭いた。ここで顔などを拭かないところが、結城さんが紳士であることの表れである。
「定食とお酒、どちらにされますか?」
「定食で。今日は仕事を持ち帰っちゃったんですよね。家に帰ったらまた仕事です」
「大変ですねぇ」
「若い子がミスっちゃって。明日朝イチでいる会議の資料作りですよ。その若い子と手分けしてね」
「結城さぁん、そのミスっちゃった若い子にパワハラなんてしてないでしょうねぇ?」
榊さんがからかう様に言うと、結城さんは慌てた様に「え、え」とどもる。
「もちろん気を付けているつもりなんですが。でもそう思われていたらやっぱりショックでしょうかね」
「あっはっは、そう思ってるんなら結城さんは大丈夫だわ」
門又さんがそう言って笑った。
「さっき帰った初めて見るお客さんが、いわゆる昭和親父でねぇ。そんなの俺たちの時代じゃ当たり前だーってがなってたもんだから」
「ああ。それは僕の会社にもいますよ。反面教師じゃ無いですが、気を付けなきゃなって思います」
「うんうん、やっぱり結城さんは大丈夫だと思うわぁ」
榊さんも頷くと、奥から「いやぁ」と男性の声が届く。山見さんご夫妻の旦那さんである。
「耳が痛い話です。私も昭和生まれの親父ですから」
山見さんの頭髪には白髪も目立つことから、そこそこ年嵩が行っていると思われる。奥さんは綺麗な黒髪だが、細っそりとした首の年齢はなかなか隠せない。
ご夫妻はひとつの2合とっくりからそれぞれのお猪口に、熱燗を注ぎ合って仲良くちびりとやっていた。
「確かに私の世代は、部下が失敗すると怒鳴ったりするのも当たり前だし、女性社員の肩を気安く触ったりするのもね、毎日の様にありましたからね。確かに女性に触るのはどうかと思いますが、怒鳴るのは部下のためを思っての側面もあるのかと思っていましたが……」
「怒鳴ることに関しては程度問題ですよ。あ、麦焼酎の水割りお代わりちょうだい」
門又さんが氷だけになったグラスをカウンタの台に上げながら言う。千隼が「はい」とグラスを受け取った。
「中にはただ感情的に怒鳴る人っていうのもいるでしょうしね。そういう人はセクハラもしますよ。ただ、これは子育ての話なんですけど、怒鳴って育てると脳に影響が出るんですって。精神的な成長を妨げるらしいです。なので問題行動が多くなったりするって聞きました。怒鳴られないために狡いことをしてしまったりね。就職するころにはもう大人なので、そこまで影響があるかどうかは判らないですが、例えば大事なことを相談してもらえなかったり、ミスをした時に報告が遅れたり、そんなことはあるかも知れませんねぇ」
「あー、それは確かにそうかもぉ」
横で榊さんが頷く。そのころには門又さんのお代わりはできていて、門又さんはそれを美味しそうに傾けた。そして結城さんの定食も揃って、結城さんは温かな食事を前に「いただきます」と手を合わせた。
今日のメインは牛すじと根菜の煮物、小鉢はシンプルなポテトサラダとほうれん草のおひたしである。
「解ります。僕は上司の立場ですけど、あまり部下が萎縮しない様に気を付けてるつもりです。僕も上司に怒鳴られて良い気がしませんでしたからね」
結城さんが言いながら、味噌汁をずずっとすすって顔を綻ばせる。今日はたっぷりあさりの味噌汁である。
「また怒鳴られる、怒られるって思うとぉ、すごく言いづらいわよねぇ。叱られるならともかくねぇ。叱られると怒られるって混合されがちだけどぉ、まったく別物なんだからぁ」
榊さんが言うと、山見奥さんが「ふふ」と笑みをこぼす。
「門又さんと榊さんは、将来お子さんを産んだら良いお母さんになりそうね」
その言葉にふたりはきょとんと顔を見合わせて、「あっはっは」と楽しそうに笑う。
「いえいえ山見奥さん、私たちもうアラフォーですから!」
「そうですよぉ。もう結婚はほぼほぼ諦めちゃってますぅ」
門又さんと榊さんは独身なのである。そして今はあまり結婚願望は無いらしい。
「まあぁ、おふたりとも良いお嬢さんなのにねぇ」
そんな話で店内が沸いた時、また店のドアが開いた。顔を見せたのは、これまた常連の田淵さんだった。
「いらっしゃいませ。今日は珍しくお早いんですね」
「いらっしゃいませ」
佳鳴と千隼が続けて声を掛けると、田淵さんは「ええまぁ、はは……」と力無さげに小さく笑う。
田淵さんは既婚者で、この店に夕飯を食べに来られるのは、仕事で遅くなった日だけと決めているらしい。
この店はたいがい24時ごろに閉店なのだが、だいたいは21時以降、ぎりぎりの23時に来られることも珍しく無かった。それも1、2週間に1度ほどだ。家族に負担を掛けないためなのだと言う。
なのに、今日はまだ19時半だった。
「ええ。あの、実は家内と喧嘩をしてしまって」
田淵さんは言いながら、結城さんからひとつ離れて掛けた。
「それは……」
「あらぁ……」
門又さんと榊さんが呟き、店内に不穏な空気がかすかに流れた。
赤い顔をしたスーツ姿のおじさんがビールのグラスを片手に、カウンタ越しの厨房に立つ佳鳴にとつとつと語る。しかしそのセリフはいろいろと言葉が抜けていて、あまり意味が通じない。要は酔っ払いのたわ言である。
佳鳴は少しだけ眉尻を下げつつ、おじさんの話に相槌を打つ。これも仕事のひとつだ。そう割り切らないとやっていられない。なにせそう愉快では無い内容だ。
この煮物屋さんでは酒を出しているが、酷い酔っ払いになるお客さんは出ない。この様な酒癖のよろしく無いお客さまは珍しいのである。
常連では無い。一見さんだった。
「セクハラだのパワハラだの虐待だの、あれだ、そんなもんなぁ、俺ら当たり前なんだよ。それが今じゃいちいち騒ぎ立ててさぁ。たかだか手ぇ触られたぐらいでよぉ」
大声でまくし立てる。他のお客さまも苦笑するしか無い。
結局そのおじさんは瓶ビールを2本空けて、ふらふらと緩やかな千鳥足で帰って行った。おじさんの姿がドアの向こうに消えた瞬間、他のお客さまの「はぁ~」という溜め息が店内に響く。
「あれが昭和のおじさんってやつよねぇ」
呆れた様に言う女性、こちらは常連である。この門又さんが麦焼酎の水割りで唇を湿らせ、続けて口を開く。
「うちの会社にもいるよ。令和の世の中で昔の常識を通そうとするおじさん上司。時代云々じゃ無くて、常識が無いって私なんかは思っちゃうんだけなぁ」
すると門又さんの隣で「うんうん」と頷く、こちらの榊さんも女性である。ふたりはこの煮物屋さんで出会い、親しくなった。
この店以外で会うことはほとんど無いみたいだが、この店には同じ時間帯に来られることが多いので、こうして隣り合って会話を楽しんでいる。
「うちにもいるわぁ。事あるごとに肩とか腕とか触ってきてさぁ、気持ち悪いったらぁ」
榊さんはそう言って、嫌そうに顔をしかめた。
「そうなの? セクハラパワハラに関しちゃ、講習とか無いの?」
「あるわよぉ。でも自由参加だからねぇ、そういうの平気でする人に限って参加しないもんなのよぉ」
「それもそうか。自分には無関係って思ってるんだろうねぇ。無関係どころか周りに嫌な思いをさせてるって言うのにねぇ」
なかなか辛辣である。しかし佳鳴は表情には出さずに、心の中で頷く。こっそりと同意見なのである。
「そういえば店長さんたちって、会社とかで働いた経験ってあるの?」
おや、話の矛先がこちらに向いた。佳鳴と千隼は「ふふ」と笑みをこぼす。
「ふたりとも会社員経験ありますよ」
千隼が応えると、門又さんは「そっかぁ」と頷く。
「脱サラってやつよね。店長さんなんかはもしかしたらあったんじゃ無いの? セクハラとか」
この場合、店長は佳鳴のことである。千隼は常連さんからは「ハヤさん」と呼ばれている。
「ああ~、ありましたねぇ。そんな酷いものでは無かったですけど、程度云々じゃ無くて嫌なものですね~」
会社員時代のことを思い出す。男性社員はしようと思ってしている訳では無いのかも知れないが、やはり服越しでも、特に親しくもない異性に触られるのは良い気分では無い。
「やっぱりあったかぁ。そう、程度の問題じゃないよね。いや、そりゃあ酷かったらもっと嫌だろうけどね?」
「あ~あぁ、本当にもうそんな昭和親父たち絶滅してくれないかしらぁ」
榊さんはそんな物騒な事を、ハイボールを飲みながらぼやく。
その時、店のドアが開いた。顔を覗かせたのは、また常連の男性、結城さんだった。
「こんばんは。行けます?」
「いらっしゃいませ。どうぞー」
佳鳴がにこやかに応え、千隼も「いらっしゃいませー」と声を上げる。
今は14人掛けのこの店に、お客さまは門又さんと榊さん、そしてこちらも常連の山見さんご夫妻の4人。店の奥から山見さんご夫妻、2席空けて門又さんと榊さんが座っていた。
結城さんは榊さんから2つ空けて掛ける。佳鳴から温かいおしぼりを受け取って、気持ち良さそうに手を拭いた。ここで顔などを拭かないところが、結城さんが紳士であることの表れである。
「定食とお酒、どちらにされますか?」
「定食で。今日は仕事を持ち帰っちゃったんですよね。家に帰ったらまた仕事です」
「大変ですねぇ」
「若い子がミスっちゃって。明日朝イチでいる会議の資料作りですよ。その若い子と手分けしてね」
「結城さぁん、そのミスっちゃった若い子にパワハラなんてしてないでしょうねぇ?」
榊さんがからかう様に言うと、結城さんは慌てた様に「え、え」とどもる。
「もちろん気を付けているつもりなんですが。でもそう思われていたらやっぱりショックでしょうかね」
「あっはっは、そう思ってるんなら結城さんは大丈夫だわ」
門又さんがそう言って笑った。
「さっき帰った初めて見るお客さんが、いわゆる昭和親父でねぇ。そんなの俺たちの時代じゃ当たり前だーってがなってたもんだから」
「ああ。それは僕の会社にもいますよ。反面教師じゃ無いですが、気を付けなきゃなって思います」
「うんうん、やっぱり結城さんは大丈夫だと思うわぁ」
榊さんも頷くと、奥から「いやぁ」と男性の声が届く。山見さんご夫妻の旦那さんである。
「耳が痛い話です。私も昭和生まれの親父ですから」
山見さんの頭髪には白髪も目立つことから、そこそこ年嵩が行っていると思われる。奥さんは綺麗な黒髪だが、細っそりとした首の年齢はなかなか隠せない。
ご夫妻はひとつの2合とっくりからそれぞれのお猪口に、熱燗を注ぎ合って仲良くちびりとやっていた。
「確かに私の世代は、部下が失敗すると怒鳴ったりするのも当たり前だし、女性社員の肩を気安く触ったりするのもね、毎日の様にありましたからね。確かに女性に触るのはどうかと思いますが、怒鳴るのは部下のためを思っての側面もあるのかと思っていましたが……」
「怒鳴ることに関しては程度問題ですよ。あ、麦焼酎の水割りお代わりちょうだい」
門又さんが氷だけになったグラスをカウンタの台に上げながら言う。千隼が「はい」とグラスを受け取った。
「中にはただ感情的に怒鳴る人っていうのもいるでしょうしね。そういう人はセクハラもしますよ。ただ、これは子育ての話なんですけど、怒鳴って育てると脳に影響が出るんですって。精神的な成長を妨げるらしいです。なので問題行動が多くなったりするって聞きました。怒鳴られないために狡いことをしてしまったりね。就職するころにはもう大人なので、そこまで影響があるかどうかは判らないですが、例えば大事なことを相談してもらえなかったり、ミスをした時に報告が遅れたり、そんなことはあるかも知れませんねぇ」
「あー、それは確かにそうかもぉ」
横で榊さんが頷く。そのころには門又さんのお代わりはできていて、門又さんはそれを美味しそうに傾けた。そして結城さんの定食も揃って、結城さんは温かな食事を前に「いただきます」と手を合わせた。
今日のメインは牛すじと根菜の煮物、小鉢はシンプルなポテトサラダとほうれん草のおひたしである。
「解ります。僕は上司の立場ですけど、あまり部下が萎縮しない様に気を付けてるつもりです。僕も上司に怒鳴られて良い気がしませんでしたからね」
結城さんが言いながら、味噌汁をずずっとすすって顔を綻ばせる。今日はたっぷりあさりの味噌汁である。
「また怒鳴られる、怒られるって思うとぉ、すごく言いづらいわよねぇ。叱られるならともかくねぇ。叱られると怒られるって混合されがちだけどぉ、まったく別物なんだからぁ」
榊さんが言うと、山見奥さんが「ふふ」と笑みをこぼす。
「門又さんと榊さんは、将来お子さんを産んだら良いお母さんになりそうね」
その言葉にふたりはきょとんと顔を見合わせて、「あっはっは」と楽しそうに笑う。
「いえいえ山見奥さん、私たちもうアラフォーですから!」
「そうですよぉ。もう結婚はほぼほぼ諦めちゃってますぅ」
門又さんと榊さんは独身なのである。そして今はあまり結婚願望は無いらしい。
「まあぁ、おふたりとも良いお嬢さんなのにねぇ」
そんな話で店内が沸いた時、また店のドアが開いた。顔を見せたのは、これまた常連の田淵さんだった。
「いらっしゃいませ。今日は珍しくお早いんですね」
「いらっしゃいませ」
佳鳴と千隼が続けて声を掛けると、田淵さんは「ええまぁ、はは……」と力無さげに小さく笑う。
田淵さんは既婚者で、この店に夕飯を食べに来られるのは、仕事で遅くなった日だけと決めているらしい。
この店はたいがい24時ごろに閉店なのだが、だいたいは21時以降、ぎりぎりの23時に来られることも珍しく無かった。それも1、2週間に1度ほどだ。家族に負担を掛けないためなのだと言う。
なのに、今日はまだ19時半だった。
「ええ。あの、実は家内と喧嘩をしてしまって」
田淵さんは言いながら、結城さんからひとつ離れて掛けた。
「それは……」
「あらぁ……」
門又さんと榊さんが呟き、店内に不穏な空気がかすかに流れた。
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