7 / 7
第七話 鉄男君
しおりを挟む
新学期。私は小学六年生になった。進級準備やら何やらで、何かと忙しく、あれからおじいちゃんの所には顔を出していない。あれ、行って戻ってくると数日は頭がぼぉっとしちゃうのよね。だけどSLに乗りたいという私の夢はもう叶えられないのかな。見るだけだったら博物館とかに行けば見られるとは思うんだけど……そこまでするほどじゃあね。
クラス替えがあったので、あんまりよく知らない子もたくさんいて、また馴染むのには時間がかかりそうだなと思っていたのだが、五年生の時に同じクラスで仲良しだった佐々木秋代が居たので寂しくはないかな。
そしてある日。朝礼の後、担任の先生が先週の国語のテスト返すぞって言って、一人ずつ前に呼ばれた。私は……はは。まあ、これならお母さん怒らないかな? 後ろの席の秋代は難しい顔をしているが、どうやらあんまり点数良くなかったみたい。
五十音順に呼ばれていって最後の方で、先生が「吉村等」と男子を呼んだ。そしてその子が後ろの方から歩いて来て私の脇を通って、教室の前に行き……あれ、なんかズボンの後ろポケットからはみ出してるけど……あれってSLのキーホルダー?
吉村君は先生から「この調子で頑張れよ」と声を掛けられていたが、点数よかったんだろうか。すると秋代が小声で「やっぱ、塾で一番は違うねー」と言った。
秋代、彼の事知ってるんだ。次の休み時間に、その事を秋代に聞いてみる。
「あー、吉村君。私も行ってる学習塾の定期模試。ほとんど一番なのよ。多分、中学お受験するんじゃない? でも二葉。彼は辞めといたほうがいいわよ」
「えっ、何が? 私、別に彼に気があるって訳じゃ……ただ彼、SLのキーホルダー持ってるなーって」
「やだ二葉。あんたは鉄じゃないでしょ。でも彼。バリバリの鉄男君よ。頭もよくて顔もまあまあなんだけど、女の子には全く興味ないっぽくて……電車と結婚するクチ?」
「ははは……」
別に異性として気になる要素は全くないのだけど、同じクラスなもので、ちょくちょく彼の挙動は目に入る。それでキーホルダーだけじゃなくて、下敷きとかクリアファイルも鉄道関係みたいだし、カバンにはやっぱり鉄道の缶バッチが付いている。秋代の言う通り、かなりの鉄道マニアなのだろう。でも私もそれほど鉄道に詳しくなりたいかと言われればそうでもないし……何より、彼はとっつきづらい。別に成績がいい事を鼻にかけている訳でもないけど、あんまりしゃべらないし、男子同志の会話にも参加してないみたいだし。
結局、彼とは特に接点もないままゴールデンウィークに入り、久々におじいちゃんのところに顔を出した。
「へえ。六年生になったのか。学校は楽しいか?」
おじいちゃんは、前回、最後に私が突然消えてしまった時、眠っていたらしく、目が覚めたら私がいなかったので、ああ帰ったんだな……と何となくわかったと言っていた。
「うん。それでね。クラスの男の子で、鉄道が好きそうな子がいるんだよ」
「ほー。それでお前はその子が気になっていると?」
「違うわよ! ただね。C61との約束で、未来の事はおじいちゃんに話せないし、ここでの経験もやたらに人には話せない。でもね。元の世界でも身近に鉄道に詳しい人がいたら、私自身いろいろ勉強になっておもしろいかなーって」
「なるほどな。いいんじゃねえか? そういうのがきっかけで恋が芽生える事もある!」
「だからそう言うのじゃないんだって!」
「まあいいや。そしたらもう少しいろいろ勉強してから来な。今、出版社に出してる企画があって、それがうまく通れば七月位に明星で鹿児島まで行けるからよ」
「明星? 焼きそばかな。でも鹿児島って遠くない? でもまあ登別も遠かったけど……」
「ああ。ほんとは去年、桜島か高千穂でこの企画やりたかったんだけど、出版社の決裁が延び延びになってるうちに山陽新幹線のお陰で両方無くなっちまったからな。だから新大阪まで新幹線で行って、わざわざそこで明星に乗り換える」
「……全然意味わかんない」
「はは、そうか。でも、せっかくだからまた温泉にも泊まろうや。都合がつけば枕崎まで行こうかと思ってるんで……指宿温泉とか」
「それって、やっぱり混浴?」
「当然だろ……嫌ならいいけど。とは言っても指宿の砂蒸し風呂は男女関係ねえか」
「おじいちゃんの意地悪! でも行ってみたいな」
「それじゃ、しっかり予習しておけよ」
◇◇◇
結局、おじいちゃんとは次回六月位にまた来るねと言う事で別れ、私のゴールデンウィークは何事も無く終わった。そして学校も始まり、お昼休みに秋代と昨日の晩のお笑い番組の話をしていたら、いきなり教室の反対から男子達の大声が聞こえた。
「えー、ヒトシ。SL乗ったの?」
どうやら吉村君がゴールデンウィーク中に、どこかへ行ってSLに乗って来たらしく、珍しく彼が他の男子達と楽しげに会話していた。
「ああ。SLレトロぐんまでC61に乗ったんだよ。しかも旧客車だったんだよ」
ちょっと待って。今彼、何て言った? C61に乗ったですって⁉ SLはあの追分の火事のちょっと前に営業終了したんじゃないの?
「ほらこれが水上の転車台……」
なんか吉村君が、スマホの写真を他の男子に見せてるわ。
うわー、気になってしょうがないよ。
「ちょっと二葉。あんたそわそわしちゃってどうしたの?」
いきなり秋代がそう聞いてきた。
「えっ、いや。違うの。別にC61がどうこうって訳じゃ……」
「C61? あー、あっちで男子が何か話してる奴ね……ねえ、吉村君。ちょっといい? なんか松嶋がそのC61って奴に食いついたんだけど?」
うわっ秋代。いきなり何言ってんのよ⁉ 吉村君がこっち向いたじゃない! いやいやちょっと待ってよ。吉村君がこっち寄って来たじゃない!
「……松嶋さんも……SL好きなの?」これが彼の第一声だった。
クラス替えがあったので、あんまりよく知らない子もたくさんいて、また馴染むのには時間がかかりそうだなと思っていたのだが、五年生の時に同じクラスで仲良しだった佐々木秋代が居たので寂しくはないかな。
そしてある日。朝礼の後、担任の先生が先週の国語のテスト返すぞって言って、一人ずつ前に呼ばれた。私は……はは。まあ、これならお母さん怒らないかな? 後ろの席の秋代は難しい顔をしているが、どうやらあんまり点数良くなかったみたい。
五十音順に呼ばれていって最後の方で、先生が「吉村等」と男子を呼んだ。そしてその子が後ろの方から歩いて来て私の脇を通って、教室の前に行き……あれ、なんかズボンの後ろポケットからはみ出してるけど……あれってSLのキーホルダー?
吉村君は先生から「この調子で頑張れよ」と声を掛けられていたが、点数よかったんだろうか。すると秋代が小声で「やっぱ、塾で一番は違うねー」と言った。
秋代、彼の事知ってるんだ。次の休み時間に、その事を秋代に聞いてみる。
「あー、吉村君。私も行ってる学習塾の定期模試。ほとんど一番なのよ。多分、中学お受験するんじゃない? でも二葉。彼は辞めといたほうがいいわよ」
「えっ、何が? 私、別に彼に気があるって訳じゃ……ただ彼、SLのキーホルダー持ってるなーって」
「やだ二葉。あんたは鉄じゃないでしょ。でも彼。バリバリの鉄男君よ。頭もよくて顔もまあまあなんだけど、女の子には全く興味ないっぽくて……電車と結婚するクチ?」
「ははは……」
別に異性として気になる要素は全くないのだけど、同じクラスなもので、ちょくちょく彼の挙動は目に入る。それでキーホルダーだけじゃなくて、下敷きとかクリアファイルも鉄道関係みたいだし、カバンにはやっぱり鉄道の缶バッチが付いている。秋代の言う通り、かなりの鉄道マニアなのだろう。でも私もそれほど鉄道に詳しくなりたいかと言われればそうでもないし……何より、彼はとっつきづらい。別に成績がいい事を鼻にかけている訳でもないけど、あんまりしゃべらないし、男子同志の会話にも参加してないみたいだし。
結局、彼とは特に接点もないままゴールデンウィークに入り、久々におじいちゃんのところに顔を出した。
「へえ。六年生になったのか。学校は楽しいか?」
おじいちゃんは、前回、最後に私が突然消えてしまった時、眠っていたらしく、目が覚めたら私がいなかったので、ああ帰ったんだな……と何となくわかったと言っていた。
「うん。それでね。クラスの男の子で、鉄道が好きそうな子がいるんだよ」
「ほー。それでお前はその子が気になっていると?」
「違うわよ! ただね。C61との約束で、未来の事はおじいちゃんに話せないし、ここでの経験もやたらに人には話せない。でもね。元の世界でも身近に鉄道に詳しい人がいたら、私自身いろいろ勉強になっておもしろいかなーって」
「なるほどな。いいんじゃねえか? そういうのがきっかけで恋が芽生える事もある!」
「だからそう言うのじゃないんだって!」
「まあいいや。そしたらもう少しいろいろ勉強してから来な。今、出版社に出してる企画があって、それがうまく通れば七月位に明星で鹿児島まで行けるからよ」
「明星? 焼きそばかな。でも鹿児島って遠くない? でもまあ登別も遠かったけど……」
「ああ。ほんとは去年、桜島か高千穂でこの企画やりたかったんだけど、出版社の決裁が延び延びになってるうちに山陽新幹線のお陰で両方無くなっちまったからな。だから新大阪まで新幹線で行って、わざわざそこで明星に乗り換える」
「……全然意味わかんない」
「はは、そうか。でも、せっかくだからまた温泉にも泊まろうや。都合がつけば枕崎まで行こうかと思ってるんで……指宿温泉とか」
「それって、やっぱり混浴?」
「当然だろ……嫌ならいいけど。とは言っても指宿の砂蒸し風呂は男女関係ねえか」
「おじいちゃんの意地悪! でも行ってみたいな」
「それじゃ、しっかり予習しておけよ」
◇◇◇
結局、おじいちゃんとは次回六月位にまた来るねと言う事で別れ、私のゴールデンウィークは何事も無く終わった。そして学校も始まり、お昼休みに秋代と昨日の晩のお笑い番組の話をしていたら、いきなり教室の反対から男子達の大声が聞こえた。
「えー、ヒトシ。SL乗ったの?」
どうやら吉村君がゴールデンウィーク中に、どこかへ行ってSLに乗って来たらしく、珍しく彼が他の男子達と楽しげに会話していた。
「ああ。SLレトロぐんまでC61に乗ったんだよ。しかも旧客車だったんだよ」
ちょっと待って。今彼、何て言った? C61に乗ったですって⁉ SLはあの追分の火事のちょっと前に営業終了したんじゃないの?
「ほらこれが水上の転車台……」
なんか吉村君が、スマホの写真を他の男子に見せてるわ。
うわー、気になってしょうがないよ。
「ちょっと二葉。あんたそわそわしちゃってどうしたの?」
いきなり秋代がそう聞いてきた。
「えっ、いや。違うの。別にC61がどうこうって訳じゃ……」
「C61? あー、あっちで男子が何か話してる奴ね……ねえ、吉村君。ちょっといい? なんか松嶋がそのC61って奴に食いついたんだけど?」
うわっ秋代。いきなり何言ってんのよ⁉ 吉村君がこっち向いたじゃない! いやいやちょっと待ってよ。吉村君がこっち寄って来たじゃない!
「……松嶋さんも……SL好きなの?」これが彼の第一声だった。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる