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第一部・第一章 エッチをしないセクサロイド?
第6話 娼婦じゃないから!
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モルツの話だと昼前には町に着く予定だったのだが、山脈麓の古都モンデルマにアリーナが到着した時、陽はすでに大きく西に傾いていた。自分の足で歩いたのが久しぶりだった事もあるのだが、途中、乗物酔いみたいな感じになってしまい、都度休憩を入れなければならなかったのが大きい。
「ああ、もっと早く着くはずだったのに。これじゃすぐ夜になっちゃうね。今夜はどうしましょう。お食事はともかくお布団で寝たいものだわ。それに身体もすごく汚れていると思うし、お風呂にも入りたい」
【本機は特殊コーティングが施され、生物の様に代謝をしていないので、表面だけ軽く水洗いすれば問題ありません】
「もう……気分の問題なの! それでモルツ。宿に泊まりたいのだけれどお金はこれで足りそう? どこかいいホテル知ってる?」そう言いながらアリーナは、ロッカールームで入手した紙幣をモルツに確認させた。
【本機のこの町に関するデータは二十年前から更新されていません。候補の宿所が現時点で存在しているか不明。 またその紙幣も旧王国のものですので、現在は通用しないでしょう】
「えーっ。せっかく拝借してきたのに使えないのかー。でもどうするのよ。このまま野宿?」
【本機は雨や雪でも行動に支障はありません】
「だからー。そういう事じゃなくてね……」
あてもないまま町の中央部を目指してフラフラ歩いていたら大きな噴水のある広場に出た。すでに陽は落ちて街灯がともり出しており、噴水が綺麗にライトアップされている。
「あー。あれで行水しようかしら……なんかまだ血生臭い気がするし。でも、こんなに人目があったらだめだよね」
周りには行き来する通行人や、ライトアップされた噴水を眺めているカップルが結構いるが、ほとんどが獣人で、何か物珍しそう……というか怪訝そうな眼でアリーナを見て見ない振りをしている様に思える。
人間が珍しい? いや、数こそ少ないものの、人間もたまに通るし……。
あー。もしかして、この衣装のせいで悪目立ちしている!?
「モルツ! なんかあんまり人目につくのまずくない?」
【今のところ敵性反応はありません。レーダー波・銃器兵装センサーもクリア】
「いや、そうじゃなくて……」
「おい、姉ちゃん!」
いきなり後ろから声をかけられた。
振り返ってみると中年の犬型獣人の様だが、酒臭くかなり酔っぱらっている様にも見える。
「あんた。こんなところで商売しちゃいけんよ。さっさと第三区画に戻らないとお巡りに捕まるぞー。でも……なかなかいい体してるじゃないか。いくらだ?」
「あ、あの……いくらかと言われましても、何の事やら。それに第三区画って何ですか?」
「何言ってんだ。あんた娼婦だろ? あんまりここに長居しちゃ、ほんとにお巡りさんが来ちゃうからさ。俺とあっちのホテルに行こうや」
「娼婦!? あああ、あなたね。王国の王女をつかまえて、よりにもよって娼婦と……」
【アリーナ。身分を明かしてはいけません!】
「あっ! そうだった……あ、あのねおじさん。私は娼婦じゃないのよ! ここの噴水が綺麗で見とれていただけで……」
「何言ってんだい、そんなエロエロ衣装で……取り繕わなくていいって。第三区画の取締りが厳しくなって、食うに困ってこっちに流れて来たんだろ? 安心しろよ。俺は優しいから……」
「違うのー。たまたま服がこれしかなくてー」
「あなた!」
また後ろから大きな声がした。見ると今度は中年の犬型獣人女性だ。
「ありゃ!? お前、先に帰ったんじゃ?」
「忘れ物を取りにお店に戻ったのよ。そうしたらあなたの下品な声が聞こえたの!」
「あ、いや。この人間の娘が第二区画に紛れ込んで商売しようとしていたので、注意してだな……」
「まったく。そんなのに構わないで……帰りますよ!」
そして酔っぱらった獣人のおじさんは、奥さんと思われる人に引っ張られて行ってしまった。
「もう。やっぱりエッチな人に間違われるじゃない! この衣装もうやだ……でも、第二とか第三って何かな? 第三ならこの格好でもいいのかな?」
【データがありません】
「ねえあんた。本当に娼婦じゃないの?」
また後ろから声をかけられて振り向くと、今度は猫耳の綺麗な獣人少女が立っていた。
「ああ、ごめんなさい。酔っ払いに絡まれてたみたいだったんで手を貸そうかと思ったんだけど、なんかやり取り聞いてたら面白くなっちゃってつい見物しちゃった。ごめんね!」
「えっ? ええ。あ、あなたは?」
「私はメランタリ。そこのお店で店員していて仕事の帰りなの。あんた衣装は娼婦っぽいけど、しゃべり方や身のこなしは結構上流階級っぽいわよね。何でこんな所にいるの? 酔っ払いならまだいいけど、そのうち警察来るわよ」
「えっと。それは……私はどこに行けばいいのか……って、第三区画って何ですか?」
「えっ? あんたそんな事も知らないの? 流れ者?」
「いえ、そう言う訳では……」
【進言。ここは彼女が納得する様、適度にごましつつ現状説明する事を推奨】
「あ、はい……ちょっと他の所で粗相をして居られなくなって、さっきこの町に着いたんですけど、今日寝る所もない状況でして……ぼーっと噴水を眺めていたと言うか……」
「やっぱりねー。人間は食い詰めて逃げるヤツ結構多いからね。それで服もそれしか持ってないんでしょ? あんた名前は?」
「アリ……いやスフィーラです。十七歳」
「スフィーラか……よし、スフィーラ。とりあえず今夜はうちに来なよ。多分、ここでこのまま立ち話しているの、結構まずいと思うし」
「でも私、お金とかも……」
「そんなのいいって。でも一晩だけよ。うちも苦しいからそれ以上は無理! でもあなた美人さんだし、お友達にはなりましょうよ」
「あ、うん。ありがとう……」
「ああ、もっと早く着くはずだったのに。これじゃすぐ夜になっちゃうね。今夜はどうしましょう。お食事はともかくお布団で寝たいものだわ。それに身体もすごく汚れていると思うし、お風呂にも入りたい」
【本機は特殊コーティングが施され、生物の様に代謝をしていないので、表面だけ軽く水洗いすれば問題ありません】
「もう……気分の問題なの! それでモルツ。宿に泊まりたいのだけれどお金はこれで足りそう? どこかいいホテル知ってる?」そう言いながらアリーナは、ロッカールームで入手した紙幣をモルツに確認させた。
【本機のこの町に関するデータは二十年前から更新されていません。候補の宿所が現時点で存在しているか不明。 またその紙幣も旧王国のものですので、現在は通用しないでしょう】
「えーっ。せっかく拝借してきたのに使えないのかー。でもどうするのよ。このまま野宿?」
【本機は雨や雪でも行動に支障はありません】
「だからー。そういう事じゃなくてね……」
あてもないまま町の中央部を目指してフラフラ歩いていたら大きな噴水のある広場に出た。すでに陽は落ちて街灯がともり出しており、噴水が綺麗にライトアップされている。
「あー。あれで行水しようかしら……なんかまだ血生臭い気がするし。でも、こんなに人目があったらだめだよね」
周りには行き来する通行人や、ライトアップされた噴水を眺めているカップルが結構いるが、ほとんどが獣人で、何か物珍しそう……というか怪訝そうな眼でアリーナを見て見ない振りをしている様に思える。
人間が珍しい? いや、数こそ少ないものの、人間もたまに通るし……。
あー。もしかして、この衣装のせいで悪目立ちしている!?
「モルツ! なんかあんまり人目につくのまずくない?」
【今のところ敵性反応はありません。レーダー波・銃器兵装センサーもクリア】
「いや、そうじゃなくて……」
「おい、姉ちゃん!」
いきなり後ろから声をかけられた。
振り返ってみると中年の犬型獣人の様だが、酒臭くかなり酔っぱらっている様にも見える。
「あんた。こんなところで商売しちゃいけんよ。さっさと第三区画に戻らないとお巡りに捕まるぞー。でも……なかなかいい体してるじゃないか。いくらだ?」
「あ、あの……いくらかと言われましても、何の事やら。それに第三区画って何ですか?」
「何言ってんだ。あんた娼婦だろ? あんまりここに長居しちゃ、ほんとにお巡りさんが来ちゃうからさ。俺とあっちのホテルに行こうや」
「娼婦!? あああ、あなたね。王国の王女をつかまえて、よりにもよって娼婦と……」
【アリーナ。身分を明かしてはいけません!】
「あっ! そうだった……あ、あのねおじさん。私は娼婦じゃないのよ! ここの噴水が綺麗で見とれていただけで……」
「何言ってんだい、そんなエロエロ衣装で……取り繕わなくていいって。第三区画の取締りが厳しくなって、食うに困ってこっちに流れて来たんだろ? 安心しろよ。俺は優しいから……」
「違うのー。たまたま服がこれしかなくてー」
「あなた!」
また後ろから大きな声がした。見ると今度は中年の犬型獣人女性だ。
「ありゃ!? お前、先に帰ったんじゃ?」
「忘れ物を取りにお店に戻ったのよ。そうしたらあなたの下品な声が聞こえたの!」
「あ、いや。この人間の娘が第二区画に紛れ込んで商売しようとしていたので、注意してだな……」
「まったく。そんなのに構わないで……帰りますよ!」
そして酔っぱらった獣人のおじさんは、奥さんと思われる人に引っ張られて行ってしまった。
「もう。やっぱりエッチな人に間違われるじゃない! この衣装もうやだ……でも、第二とか第三って何かな? 第三ならこの格好でもいいのかな?」
【データがありません】
「ねえあんた。本当に娼婦じゃないの?」
また後ろから声をかけられて振り向くと、今度は猫耳の綺麗な獣人少女が立っていた。
「ああ、ごめんなさい。酔っ払いに絡まれてたみたいだったんで手を貸そうかと思ったんだけど、なんかやり取り聞いてたら面白くなっちゃってつい見物しちゃった。ごめんね!」
「えっ? ええ。あ、あなたは?」
「私はメランタリ。そこのお店で店員していて仕事の帰りなの。あんた衣装は娼婦っぽいけど、しゃべり方や身のこなしは結構上流階級っぽいわよね。何でこんな所にいるの? 酔っ払いならまだいいけど、そのうち警察来るわよ」
「えっと。それは……私はどこに行けばいいのか……って、第三区画って何ですか?」
「えっ? あんたそんな事も知らないの? 流れ者?」
「いえ、そう言う訳では……」
【進言。ここは彼女が納得する様、適度にごましつつ現状説明する事を推奨】
「あ、はい……ちょっと他の所で粗相をして居られなくなって、さっきこの町に着いたんですけど、今日寝る所もない状況でして……ぼーっと噴水を眺めていたと言うか……」
「やっぱりねー。人間は食い詰めて逃げるヤツ結構多いからね。それで服もそれしか持ってないんでしょ? あんた名前は?」
「アリ……いやスフィーラです。十七歳」
「スフィーラか……よし、スフィーラ。とりあえず今夜はうちに来なよ。多分、ここでこのまま立ち話しているの、結構まずいと思うし」
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