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第17話 反応あり?
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「あー、りんたろー。私、余計なこと言っちゃったかな?」
長野から帰ってきて、首尾をカス姉に報告していた時、彼女がそう言った。
「それって、僕が姫様を好きだって事?
うーん、でもまあ、あれでよかったかなとも思うよ。あれから姫様、僕にへんな隙見せなくなったし……まあ、ちょっと残念ではあるけど」
「そうか……そうだよね。まあ元気を出せよ、青少年!
私でよかったら、ナンボでも隙見せてあげるから……」
「えー……カス姉じゃ、いまさら……」
「いまさらって何よ! いいじゃん別に……。
幼なじみだって別に、男女の仲になったって……」
「えっ、カス姉。僕と男女の仲が希望なの?」
「あっ、いや……別にそう言うわけでも……でもさ、所詮人間とエルフじゃ、添い遂げられないし、あんたも人間好きになったほうがいいかもね……例えば真理ちゃんとか……」
「真理ちゃんか。確かに彼女も可愛いんだけど……ちょっといろいろあって……」
(そっか。ピンとこないのか……にしても私何言ってんの? ここは真理ちゃんの名前出すとこじゃないでしょ!)
ちょっとホっとはしたものの、自分のヘタレ具合に、カスミはちょっと自己嫌悪になった。
出待ち作戦からひと月ほど経過したが、勇者から連絡が来たとかいう事はまったくなく
ただ日だけが過ぎて行った。ファンレターにも、以前より具体的にいろいろ書いて、毎日のように投稿しているが、何も返事はない。こりゃ、また何か手を打たないといけないなと皆が思い始めたころ、真理から招集がかかり、日曜の昼に寿旅館に集まった。
「えっと、私の友達にマホガニー推しがいて、その子にも何か気になることあったら教えてって言ってあったの。そしたら、先日、これが出たって……」
真理がスマホの画面を、みんなに見せる。
「これ、セシル……あ、勇者のほうね……のツイートなんだけど、どうやら新曲の歌詞を、リリース前に載せてるらしいのよ。それで、彼がこんなことするのすっごい珍しいって、その友人が言うのよ」
りんたろー達は、その歌詞を頭からなぞっていく。
「えっ? これって……」カスミが声を上げた。
「そうなの……『先日、古い恋人に会ったけど……もう元には戻れない』みたいな内容でしょ? これって、姫様へのメッセージじゃないかな?」真理が語調を強めた。
「確かに……先日の長野での事に対するノボルさんのお返事みたいですね。『一緒になっても幸せに出来ない。俺の事は忘れて他の幸せを探してくれ』ですか……。こりゃ脈無しと見た方がいいかも知れませんよ、姫さん」マサハルが、同情口調でそう言った。
肝心のセシルは、ずっと無言のまま、その歌詞を何度も読み返しているようだ。
「姫様……」ブレタムが心配そうに、セシルを見つめている。
しばらくその場で発言するものがいなくなったが、やがてセシルが口を開いた。
「皆さん。これは確かに、先日の長野の事に対するノボル様の御返事だと思います。
勇者様がもう私とお付きあいしたくないのだと、いくら鈍感な私でも分かります。
ですが……ですが、もう少しわがままを言わせていただいていいでしょうか。もし本当に勇者様の心が私から離れてしまわれているのであれば、ちゃんとご本人の口から言ってほしいのです。そうでなければ……今までいろんな方々にご迷惑をかけてまで、ここまでやってきて……あいまいなままでは納得出来ないのです!」
セシルは、眼から大粒の涙がポロポロ流しながらそう言った。
カスミもブレタムも真理も貰い泣きしているようだった。
「まあ、姫様。私達の帰還期限までには、まだもうちょっとあります。せっかくこうして
ここまで皆で頑張って来たんですから、もう少しあがいてみてもいいじゃないですか」
マサハルがそう言った。
「そうにゃん。出来ればあたいも帰るのもっと先延ばしにしたいし……。
こっちの世界の食べ物は美味しすぎるにゃん!」
そう言うマホミンの脇腹を、マサハルがひょいとつまみながら言った。
「あなた、絶対太りましたよね?」
「うにゃっ! バカハル! 変なとこ掴むにゃ!」
一同が爆笑した。
「でも、そうなると……直接身柄を抑えるしかないですよね。コンサートの宿泊先で夜這いかけるとか……いっそ、この旅館の無料クーポンを勇者さんに送りましょうか?
猫姉さんの添い寝サービス付きとか……いやー、一気に有名になっちゃうな、寿旅館」
「何馬鹿言ってんのよ、おっさん……でも、マジでそうでもしないと直接話は出来ないかもね。りんたろーが身体張って車止めても出てこなかったんだし……でもさ……そう、例えば、握手会とかサイン会とか?」カスミが、思いついた事を述べた。
「うーん。ビジュアル系のバンドでも、そんなのやるのかな? でも、無くはないのかも
……そしたら真理ちゃん。それも含めてちょっと調べてみようよ。どこかで直接会える接点はないか……」りんたろーの言葉に真理もうなずいた。
「そうにゃ。真理ちゃんはもっとりんたろーと密に会って、情報交換したほうがいいにゃ! そう、情交にゃ!」
「アホミンさん! 情報交換と情交じゃ、全く意味が違います!」
真理が真っ赤になって憤る。
「うーん……日本語はむずかしいにゃ!」
長野から帰ってきて、首尾をカス姉に報告していた時、彼女がそう言った。
「それって、僕が姫様を好きだって事?
うーん、でもまあ、あれでよかったかなとも思うよ。あれから姫様、僕にへんな隙見せなくなったし……まあ、ちょっと残念ではあるけど」
「そうか……そうだよね。まあ元気を出せよ、青少年!
私でよかったら、ナンボでも隙見せてあげるから……」
「えー……カス姉じゃ、いまさら……」
「いまさらって何よ! いいじゃん別に……。
幼なじみだって別に、男女の仲になったって……」
「えっ、カス姉。僕と男女の仲が希望なの?」
「あっ、いや……別にそう言うわけでも……でもさ、所詮人間とエルフじゃ、添い遂げられないし、あんたも人間好きになったほうがいいかもね……例えば真理ちゃんとか……」
「真理ちゃんか。確かに彼女も可愛いんだけど……ちょっといろいろあって……」
(そっか。ピンとこないのか……にしても私何言ってんの? ここは真理ちゃんの名前出すとこじゃないでしょ!)
ちょっとホっとはしたものの、自分のヘタレ具合に、カスミはちょっと自己嫌悪になった。
出待ち作戦からひと月ほど経過したが、勇者から連絡が来たとかいう事はまったくなく
ただ日だけが過ぎて行った。ファンレターにも、以前より具体的にいろいろ書いて、毎日のように投稿しているが、何も返事はない。こりゃ、また何か手を打たないといけないなと皆が思い始めたころ、真理から招集がかかり、日曜の昼に寿旅館に集まった。
「えっと、私の友達にマホガニー推しがいて、その子にも何か気になることあったら教えてって言ってあったの。そしたら、先日、これが出たって……」
真理がスマホの画面を、みんなに見せる。
「これ、セシル……あ、勇者のほうね……のツイートなんだけど、どうやら新曲の歌詞を、リリース前に載せてるらしいのよ。それで、彼がこんなことするのすっごい珍しいって、その友人が言うのよ」
りんたろー達は、その歌詞を頭からなぞっていく。
「えっ? これって……」カスミが声を上げた。
「そうなの……『先日、古い恋人に会ったけど……もう元には戻れない』みたいな内容でしょ? これって、姫様へのメッセージじゃないかな?」真理が語調を強めた。
「確かに……先日の長野での事に対するノボルさんのお返事みたいですね。『一緒になっても幸せに出来ない。俺の事は忘れて他の幸せを探してくれ』ですか……。こりゃ脈無しと見た方がいいかも知れませんよ、姫さん」マサハルが、同情口調でそう言った。
肝心のセシルは、ずっと無言のまま、その歌詞を何度も読み返しているようだ。
「姫様……」ブレタムが心配そうに、セシルを見つめている。
しばらくその場で発言するものがいなくなったが、やがてセシルが口を開いた。
「皆さん。これは確かに、先日の長野の事に対するノボル様の御返事だと思います。
勇者様がもう私とお付きあいしたくないのだと、いくら鈍感な私でも分かります。
ですが……ですが、もう少しわがままを言わせていただいていいでしょうか。もし本当に勇者様の心が私から離れてしまわれているのであれば、ちゃんとご本人の口から言ってほしいのです。そうでなければ……今までいろんな方々にご迷惑をかけてまで、ここまでやってきて……あいまいなままでは納得出来ないのです!」
セシルは、眼から大粒の涙がポロポロ流しながらそう言った。
カスミもブレタムも真理も貰い泣きしているようだった。
「まあ、姫様。私達の帰還期限までには、まだもうちょっとあります。せっかくこうして
ここまで皆で頑張って来たんですから、もう少しあがいてみてもいいじゃないですか」
マサハルがそう言った。
「そうにゃん。出来ればあたいも帰るのもっと先延ばしにしたいし……。
こっちの世界の食べ物は美味しすぎるにゃん!」
そう言うマホミンの脇腹を、マサハルがひょいとつまみながら言った。
「あなた、絶対太りましたよね?」
「うにゃっ! バカハル! 変なとこ掴むにゃ!」
一同が爆笑した。
「でも、そうなると……直接身柄を抑えるしかないですよね。コンサートの宿泊先で夜這いかけるとか……いっそ、この旅館の無料クーポンを勇者さんに送りましょうか?
猫姉さんの添い寝サービス付きとか……いやー、一気に有名になっちゃうな、寿旅館」
「何馬鹿言ってんのよ、おっさん……でも、マジでそうでもしないと直接話は出来ないかもね。りんたろーが身体張って車止めても出てこなかったんだし……でもさ……そう、例えば、握手会とかサイン会とか?」カスミが、思いついた事を述べた。
「うーん。ビジュアル系のバンドでも、そんなのやるのかな? でも、無くはないのかも
……そしたら真理ちゃん。それも含めてちょっと調べてみようよ。どこかで直接会える接点はないか……」りんたろーの言葉に真理もうなずいた。
「そうにゃ。真理ちゃんはもっとりんたろーと密に会って、情報交換したほうがいいにゃ! そう、情交にゃ!」
「アホミンさん! 情報交換と情交じゃ、全く意味が違います!」
真理が真っ赤になって憤る。
「うーん……日本語はむずかしいにゃ!」
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