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第十四話 A小隊全滅?
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ランドルフ中尉と共に師団長室に駆け込んだところ、すでにアイリス少尉も来ていた。
「お疲れのところ済まない、諸君。
細かい状況は現在確認中だが、作戦行動中だったA小隊のサンダー・クレイン中尉以下全員が、死亡ないし戦闘中行方不明者とのことだ」
「なにかの間違いじゃないんですか? あのサンダーに限って……
負けて逃げてくることはあっても、全滅なんて……」
ランドルフ中尉は苦しそうだ。
サンダー中尉もランドルフ中尉が手塩にかけた部下だった。
「すまん、今のところは何とも……とりあえず次の方針が定まるまで、通常通り訓練にあたってくれ。ただ、A小隊が抜けたことで、前線は混乱しているはずだ。もしかすると、B・C小隊当たりには、近く出動命令が出るかも知れん。心しておいてくれ!」
そう語る師団長の顔をまっすぐ見ながら、アイリス少尉が強ばった顔つきで言った。
「お任せ下さい。すでに準備は整っております!」
◇◇◇
「行軍で疲れているところすまない。
だが、こうしたことは、早く共有したことがいいと思ってな」
もう、夜中の十時を回っていたが、E小隊のメンバーに、ブリーフィングルームに集合してもらい、状況を説明した。
「A小隊のエレノアさん、基礎訓練の時、同じ班で、すごく良くしていただいたんです。ご無事だといいんですが……」
エルは半泣きである。
「でも、戦争だから、こういうこともあるんだよね。だから僕は……」
何かを言いかけて沙羅はしゃべるのを止めた。
「で、これからどうなりますの? 私たちも応援に行ったりとか?」
カレンも珍しく不安顔だ。
「うむ、正確にはまだ何も判らないが、師団長は、B・Cの出撃はほのめかしていたよ。しかし、我々も、いつ何があってもいい様に、心の準備をしておく必要があるな」
そう言いながら、まだ準備らしい準備が何もできていない我が小隊を戦地に連れて行くことを考えたら、全身の産毛が逆立つような悪寒を覚えた。
次の日の夕方。
A小隊の戦闘の詳細が戦術ネットに上がったので、訓練後にみんなで集まり、ポコに説明してもらった。
シャーレン中央平原の国境敵国側の森の中に、敵が新たに要塞を築いたとの調査報告があり、威力偵察のため、夜間、第六師団の第十二小隊とA小隊が向かったが、敵斥候と遭遇し、戦闘を避け退却開始した。その際、A小隊は、要塞側からの竜族の追撃に備えてしんがりに配置していた。しかしその逆の、退却する方向から竜族の一隊が襲い掛かり、十二小隊がパニック状態に陥り、暗い中の乱戦になったとのこと。結局、朝までに帰隊できたのは、十二小隊の三名だけだった。
「なによそれ~。細かい状況が何もわからないじゃないのよぉ~」
「そうですね。竜族が何体いたとか、A小隊の人がやられたのか捕虜になったのかとかもまったく分かりません!」
結局何もわからないことに、カレンとエルがいら立っている。
「そうだな。しかし、ここで我々がいら立ってもしかたない。落ち着こう。
それにしても国境付近に新要塞か……早めに気づけなかったのか。厄介だな」
「でも、自国の領土内に基地つくるのは当たり前なんじゃないの?」
沙羅が珍しくまともな質問する。
「それはそうなんだが……この時期に新しく作るということは、中央平原に進出しますよという意欲の表れでな。あそこがより激戦区になるのは間違いない。
とすると、あそこにどれだけの竜族が配置されてくるのか……」
「それによって、我々の動き方が変わるということですよね」
いつになく、きりっとした顔つきで、エルが言った。
◇◇◇
二日後の朝、師団長室に呼び出された俺たち小隊長は、命令書を受け取った。
『E小隊は、B小隊のサポ―ト部隊として随伴し、シャーレン中央平原戦線に、翌0800をもって出撃する事。現地では第六師団の指揮下に入ること』
隣にいたアイリス少尉に深く敬礼し、よろしくお願いしますと声をかけた。
「お互い同階級ですし、堅苦しいのはやめましょう。こうなっては是非もなし。お互いにベストを尽くしましょう。こちらこそ宜しくお願い致します」
アイリス少尉もこちらに頭を下げる。
師団長が口を開いた。
「なお、C小隊には、北部山脈方面に出ばってもらうことになった。陽動かもしれんが、そっちにも竜族の目撃情報があってな」
「それで、B・Cではなく、B・Eなのですね。大丈夫です……隊を編成したばかりの頃より、それなりに頑張れるとは思いますよ」
一応、大見えを切ったが、心中、あいつらをちゃんと守れるかというプレッシャーで、押しつぶされそうではあった。
「頑張ろうな」
ランドルフ中尉が優しく肩をたたいてくれた。
「ローアイ少尉、心配しないでよ。敵主力の竜族は私たちで対処するから。沙羅ちゃんで後方からの援護をお願いします。あと、カレンさんのシールドとヒールも出来ればあてにしたいので併せてよろしく。大丈夫! BとEで力を合わせれば、きっとA小隊より実力は上よ!」
俺の顔色を見て心配してくれたのか、アイリス少尉も声をかけてくれたが、心なしか彼女自身が、自分に向けて「大丈夫!」と言い聞かせているようにも感じられた。
◇◇◇
「ということで……明朝八時に、B小隊と一緒にトラックで出撃だ。急だったんで何も準備していなかったんだが、これで我慢してくれ」
訓練後で、もう夜も遅かったが、購買で売れ残っていたショートケーキをいくつか買って、ブリーフィングルームに持ち込み、決起大会としゃれこんだ。
「こんな時は、水杯じゃないの?」
「沙羅ちゃん、それ、死にに行く時……」
カレンが縁起でもないとすねる。
「そうだ、俺たちは死にに行くわけじゃないからな。
具体的な作戦なんかは、第六師団に着いてから指示があると思うが、いままで訓練でやってきたことの、ベストを出すことだけ心がけていればいい」
「じゃあ、当面の作戦は、沙羅フォーメーションと、私がエルちゃんで高揚しながらの、シールドとヒールということでよろしいんですかね?」
「そうだ、アイリスさんも、竜族の主力はB小隊で抑えるので、我々にはそれを期待していると言ってた」
「よっしゃ、そんじゃ、B小隊が動きやすいように、僕の魔法弾で、竜族の足元をすくうよう努力するよ」
「ああ、くれぐれも節約しながら撃ってけよな! とにかくだ。みんな、命を大事に……
なっ!」
「ラジャ――」
三人の声がハモッた。
「お疲れのところ済まない、諸君。
細かい状況は現在確認中だが、作戦行動中だったA小隊のサンダー・クレイン中尉以下全員が、死亡ないし戦闘中行方不明者とのことだ」
「なにかの間違いじゃないんですか? あのサンダーに限って……
負けて逃げてくることはあっても、全滅なんて……」
ランドルフ中尉は苦しそうだ。
サンダー中尉もランドルフ中尉が手塩にかけた部下だった。
「すまん、今のところは何とも……とりあえず次の方針が定まるまで、通常通り訓練にあたってくれ。ただ、A小隊が抜けたことで、前線は混乱しているはずだ。もしかすると、B・C小隊当たりには、近く出動命令が出るかも知れん。心しておいてくれ!」
そう語る師団長の顔をまっすぐ見ながら、アイリス少尉が強ばった顔つきで言った。
「お任せ下さい。すでに準備は整っております!」
◇◇◇
「行軍で疲れているところすまない。
だが、こうしたことは、早く共有したことがいいと思ってな」
もう、夜中の十時を回っていたが、E小隊のメンバーに、ブリーフィングルームに集合してもらい、状況を説明した。
「A小隊のエレノアさん、基礎訓練の時、同じ班で、すごく良くしていただいたんです。ご無事だといいんですが……」
エルは半泣きである。
「でも、戦争だから、こういうこともあるんだよね。だから僕は……」
何かを言いかけて沙羅はしゃべるのを止めた。
「で、これからどうなりますの? 私たちも応援に行ったりとか?」
カレンも珍しく不安顔だ。
「うむ、正確にはまだ何も判らないが、師団長は、B・Cの出撃はほのめかしていたよ。しかし、我々も、いつ何があってもいい様に、心の準備をしておく必要があるな」
そう言いながら、まだ準備らしい準備が何もできていない我が小隊を戦地に連れて行くことを考えたら、全身の産毛が逆立つような悪寒を覚えた。
次の日の夕方。
A小隊の戦闘の詳細が戦術ネットに上がったので、訓練後にみんなで集まり、ポコに説明してもらった。
シャーレン中央平原の国境敵国側の森の中に、敵が新たに要塞を築いたとの調査報告があり、威力偵察のため、夜間、第六師団の第十二小隊とA小隊が向かったが、敵斥候と遭遇し、戦闘を避け退却開始した。その際、A小隊は、要塞側からの竜族の追撃に備えてしんがりに配置していた。しかしその逆の、退却する方向から竜族の一隊が襲い掛かり、十二小隊がパニック状態に陥り、暗い中の乱戦になったとのこと。結局、朝までに帰隊できたのは、十二小隊の三名だけだった。
「なによそれ~。細かい状況が何もわからないじゃないのよぉ~」
「そうですね。竜族が何体いたとか、A小隊の人がやられたのか捕虜になったのかとかもまったく分かりません!」
結局何もわからないことに、カレンとエルがいら立っている。
「そうだな。しかし、ここで我々がいら立ってもしかたない。落ち着こう。
それにしても国境付近に新要塞か……早めに気づけなかったのか。厄介だな」
「でも、自国の領土内に基地つくるのは当たり前なんじゃないの?」
沙羅が珍しくまともな質問する。
「それはそうなんだが……この時期に新しく作るということは、中央平原に進出しますよという意欲の表れでな。あそこがより激戦区になるのは間違いない。
とすると、あそこにどれだけの竜族が配置されてくるのか……」
「それによって、我々の動き方が変わるということですよね」
いつになく、きりっとした顔つきで、エルが言った。
◇◇◇
二日後の朝、師団長室に呼び出された俺たち小隊長は、命令書を受け取った。
『E小隊は、B小隊のサポ―ト部隊として随伴し、シャーレン中央平原戦線に、翌0800をもって出撃する事。現地では第六師団の指揮下に入ること』
隣にいたアイリス少尉に深く敬礼し、よろしくお願いしますと声をかけた。
「お互い同階級ですし、堅苦しいのはやめましょう。こうなっては是非もなし。お互いにベストを尽くしましょう。こちらこそ宜しくお願い致します」
アイリス少尉もこちらに頭を下げる。
師団長が口を開いた。
「なお、C小隊には、北部山脈方面に出ばってもらうことになった。陽動かもしれんが、そっちにも竜族の目撃情報があってな」
「それで、B・Cではなく、B・Eなのですね。大丈夫です……隊を編成したばかりの頃より、それなりに頑張れるとは思いますよ」
一応、大見えを切ったが、心中、あいつらをちゃんと守れるかというプレッシャーで、押しつぶされそうではあった。
「頑張ろうな」
ランドルフ中尉が優しく肩をたたいてくれた。
「ローアイ少尉、心配しないでよ。敵主力の竜族は私たちで対処するから。沙羅ちゃんで後方からの援護をお願いします。あと、カレンさんのシールドとヒールも出来ればあてにしたいので併せてよろしく。大丈夫! BとEで力を合わせれば、きっとA小隊より実力は上よ!」
俺の顔色を見て心配してくれたのか、アイリス少尉も声をかけてくれたが、心なしか彼女自身が、自分に向けて「大丈夫!」と言い聞かせているようにも感じられた。
◇◇◇
「ということで……明朝八時に、B小隊と一緒にトラックで出撃だ。急だったんで何も準備していなかったんだが、これで我慢してくれ」
訓練後で、もう夜も遅かったが、購買で売れ残っていたショートケーキをいくつか買って、ブリーフィングルームに持ち込み、決起大会としゃれこんだ。
「こんな時は、水杯じゃないの?」
「沙羅ちゃん、それ、死にに行く時……」
カレンが縁起でもないとすねる。
「そうだ、俺たちは死にに行くわけじゃないからな。
具体的な作戦なんかは、第六師団に着いてから指示があると思うが、いままで訓練でやってきたことの、ベストを出すことだけ心がけていればいい」
「じゃあ、当面の作戦は、沙羅フォーメーションと、私がエルちゃんで高揚しながらの、シールドとヒールということでよろしいんですかね?」
「そうだ、アイリスさんも、竜族の主力はB小隊で抑えるので、我々にはそれを期待していると言ってた」
「よっしゃ、そんじゃ、B小隊が動きやすいように、僕の魔法弾で、竜族の足元をすくうよう努力するよ」
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