【R18】魔王を倒すには聖なる処女の魔力が足りないみたいです。

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第19話 夜遊び

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「おお。確かにでっかい町だな。いろいろ楽しめそうだぞ、スズラン」
「姫路‥‥‥無駄使い禁止!」
「堅い事言うなって。
 お前、人生の楽しみ方知らなすぎだし、いろいろ教えてやんよ」
 姫路とスズランは、モルモルの意見に従って、ザラデンヌまでやってきた。

「おーい、ジルベルリ。今度は、勇者と間違えられんの嫌だかんなー。
 お前先に行って根回しして来い!」
「あー、お兄ちゃん。ついでに何人分か、精気も集めてきて。
 後で私がお兄ちゃんから吸うから……」
「……」

 僕、いつの間に姫路と妹のパシリになったんだろう……。
 忸怩じくじたる思いを胸に、ジルベルリはザラデンヌに入って行った。

 ◇◇◇

 半日ほどして、ジルベルリが戻ってきた。

 警察当局に、これから町に入る姫路は、人間ではあるが魔王に指名手配された逃亡勇者ではなく、その捜索に当たる自分たちの協力者であると説明し、責任者のお墨付きをもらってきた。

「おー、やるときゃやるじゃねえか」姫路はご満悦だ。

「お兄ちゃん! 精気は?」
「あー、ごめん。あんまり美味しそうなのいなくって……」
「うっきー! もうお腹ペコペコなのよ! 
 そんじゃ、お兄ちゃん。先払いだかんね!」
 そう言いながらモルモルが、ジルベルリの襟首をひっつかんで、近くにあった農具置き場の後ろに引っ込んでいった。

「あー、スズラン……子供はそっち行っちゃだめだ!」
 姫路はスズランの手をしっかり握った。

 二人は程なく戻ってきたが、ジルベルリは見るも無残に枯れはてていた。
 その後、四人は宿を取り、そこに腰を落ち着けた。
 夕食の後、作戦会議だ。

「おい、ジルベルリ。警察行ったんなら、ヤミーの事も聞いて来たよな?」
「あ、はい! ここ最近、特に勇者や人間の情報は無いそうです。
 そして数日前に、エルフの逃亡勇者捜索隊が来てたらしいんですが、御領主様が、ザラデンヌ内の捜索は、自分が責任を持つと言って追い返したとか。
 まあ、御領主のザザビー様は、有名なエルフ嫌いですからね」

「そっか。見かけてないか。でも、勇者が近くに来たらモルモルが分かるんだろ? 
 せっかくこんな町に来たんだし、少しゆっくりしようや」
「あのー。姫路様。僕、外に食事に行っていいですか? 
 そろそろ精気をどっかで吸わないと、ちょっと指先が消えかけてますんで……」

「ははは……好きにしな。でも騒ぎ起こすんじゃねえぞ!」
「はい! それはもちろん……」
 そう言いながらジルベルリは、夜の町に出て行った。

「あの……姫路姉様。
 せっかくですから、私たちも夜の町に繰り出しませんか?」
「モルモル。お前なんか面白いところ知ってるか? 
 でも、あたいは酒はダメだぞ。
 それにスズランもいるから、R-18も禁止な!」

「はい。私もそれほどこの町に詳しい訳ではありませんが、確か常設で曲芸団の見世物小屋があったかと……」
「サーカスか? そいつはいいや。行ってみようぜ」

 ◇◇◇

「すごい。すごい!」

 スズランがめちゃくちゃはしゃいでいる姿を見て、姫路もなんだかうれしい。
 サーカスの出し物は、姫路からしたら、まあそんなに大したものではなかったが、この子、こういう経験、今までなかったんだろうしな……。
 モルモルは退屈そうにしながらも、しっかりと姫路の左手を握っている。
 このわずかな接触でも多少精気は吸えるらしく、ここまでは許してやっている。
 
 サーカスのショーを終え、すっかり興奮気味のスズランを伴って歩きながら、宿に戻ろうかという途中の事だった。
 
「うわーーー。姫路様―! 助けて下さいー!」
 大声でそう言いながら、ジルベルリが走り寄ってきた。

「えっ、お兄ちゃん? どうしたの?」モルモルが心配そうに様子を窺う。
「なんだよ、お前。騒ぎ起こすなっていっただろうが……何やらかしたんだ?」
「いえ、姫路様。それが……」

「おい、そこのインキュバス! おとなしくお縄を頂戴しろ!」
 なんと、ジルベルリは警官に追われていた。

「おいおい、お巡りさんよ。こいつが何をしたって言うんだい? 
 こいつは魔王様の命で逃亡勇者を追っている役人? みたいなもんだ。
 何かの間違いだったら、この姫路さんが黙っちゃいないよ!」

「間違いだと! ふざけるな。この男は、よりにもよって、御領主様の御息女、
 メルリア様から精気を吸おうとしたんだぞ!」
「へっ? まじかよ……」
 姫路が不信感満載な目つきでジルベルリの顔を見た。

「いや、あっ。姫路様。違うんです……誘ってきたのはあっちのほうで……」
「ふーん……って言ってるけど……そのお嬢様のお話は聞いたのかい?」
「いや……だが、しかし。どんな理由があるにせよ、ご息女と関係した時点で有罪だろ!」

「そんなはずないでしょ。いくらお兄ちゃんがボンクラでも、予め身分や格の違いは分かります! お嬢様が了解なさらなければ、精気を吸ったりはしません!」
「おお、わが妹よ……僕は、あの方のエッチしたいというお気持ちを汲んで……」
「ふざけるな! だからといって、ご息女とエッチしていいという事にはならん!」警官も引くわけにはいかない。

「ええい、埒が明かねえ。そのお嬢様もここに呼んで来い! 
 ちゃんと二人の話を聞いた方が公正だろ! 
 もし、本当に自由恋愛だったらどうすんだー、マッポさんよ!」

「あ、いや。そんなまさか……」
 警官も姫路の迫力に気おされたのか、今一度、事実関係を確認することに同意した。

「こっちは、逃げも隠れもしねえ。あそこの宿にいるからいつでも来な」
 そう言って、姫路たちは、ジルベルリを伴って宿に帰っていった。
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