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エンデラ王国と不死族
天詔琴の奏弦
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「どっ! せえええええい!」宙音はさらに払子で薙ぎ払い、その後滅多やたらに振り回した。水音はその間に気力を補給するために『桃華丸薬』を飲みこんだ。そしてその様子を見ていた、ローブを身に纏った集団が、あっけにとられ言葉を失っている。
集団の中の一人が、口に当てたマスクを取り外しながら、千景達の方に向かってきて「貴方はいったい……」と聞いてきた。千景は「アヴァルシスから来た者だ」と言いながら、微弱な光を放ち、聳え立つアールシャールの眼光に近づき、帰還してもここに戻ってこれるようにと『定点十字石』を地面に打ち込み、チェックポイントを作成した。
「黒き雲を打ち払うあの力……天使が舞い降りてきたのかと思いました」
「て、天使、れっきとした人間だよ、俺達は」
宙音と水音は、ひさしぶりの大総力戦のような戦いに、満面の笑みを浮かべながら、蠢く影の者達や、空を飛んでいる者に対して、ありったけの術を打ち込みまくっている。
「ではあの少女達はいったい……」
「こういうことに対応するために修行してきた少女達だよ」
「あ、アヴァルシスにはそのような集団がいたのですか……ゴルビスがエンデラに、魔晶石を供給しないという選択肢を取れた理由はそういうことでしたか……もう不死族の対策は出来ていたと……」
「ゴルビスは関係ないかな」
千景とローブの男が、そんな話をしていると、腹の底までズンとくる角笛の音が鳴り響いた。そちらの方に目をやると、漆黒のヴァンプドラゴンが、空中で隊列を組んでこちらの方に向かってきている。
「あれは……」
再度、地面を揺るがすような角笛が鳴る。その音が合図となって、ヴァンプドラゴン達の咆哮がこだまする。次の瞬間、その口から一斉に黒い炎が吐き出された。それを見た宙音が道術『青龍水克の陣』を敷いた。丸く敷かれた陣の周りを這うように青龍が昇り炎を打ち消していく。
宙音は、水音とハイタッチして後ろに下がり、前に出た水音は『地奏武具』を越えた最上位武具『天華七武具』の一つ『天詔琴の奏弦』を取り出した。それを空中に投げると、長い針金のように伸びる琴の弦の先端が、波打ちながら、ヴァンプドラゴンの群れに突っ込んでいく。
水音は、光華巫女術『陽炎禊祓の舞』を舞踊り、さっきの炎のお返しとばかりに浄化の炎を、琴の弦に伝えて、ヴァンプドラゴンの群れの目の前で炸裂させた。その一連の動きの速さに、ヴァンプドラゴン達はついていくことが出来ず、水音の放った浄化の炎に焼かれたドラゴン達は、地面に落下していった。
黒い大地と黒い雲は、こちらに向かうのをやめたようで、徐々に後退していった。それをただじっと見ていたローブを被った者達は、何が起こっているのか理解出来ていなかったようで、微動だにしなかったが、水音と宙音が意気揚々とこちらに走って戻ってきて「おやかたあああ、見ましたああ、あれえええ」
「すごかったでしょ、褒めていいんですよ、褒めて」と言ってきたのを見て、全身で喜びを爆発させた。
「あ、あんなの見たことないです! 黒い大地が後退していくなんて! これは人類の進歩だ!」
「お、追い返した……嘘みたいだ……」
「黒い大地から来る不浄な冷気が、消えている」
ローブを被った者達は、マスクを取って、それを確かめていた。
「奇跡だ、奇跡だ……こんな日が来るなんて……あなた達は本当に奇跡だ」
「ありがとう、二人をもっと褒めてやってくれ、よくやったぞ、水音、宙音」
「えへへへ、やったね水音ちゃん」
「そうだね、宙音ちゃん」
「本当にすごかったですよ、もう僕はすごいとしか言えません!」
しかし次の瞬間「ちょっと待て、あれはなんだ」一人の男がそう言って指さす方向を見ると、高く険しい山々が見えたが、その一つの山の頂上付近に、大きな帆船のような形の黒い雲があり、それがこちらに向かってきているように見えた。
集団の中の一人が、口に当てたマスクを取り外しながら、千景達の方に向かってきて「貴方はいったい……」と聞いてきた。千景は「アヴァルシスから来た者だ」と言いながら、微弱な光を放ち、聳え立つアールシャールの眼光に近づき、帰還してもここに戻ってこれるようにと『定点十字石』を地面に打ち込み、チェックポイントを作成した。
「黒き雲を打ち払うあの力……天使が舞い降りてきたのかと思いました」
「て、天使、れっきとした人間だよ、俺達は」
宙音と水音は、ひさしぶりの大総力戦のような戦いに、満面の笑みを浮かべながら、蠢く影の者達や、空を飛んでいる者に対して、ありったけの術を打ち込みまくっている。
「ではあの少女達はいったい……」
「こういうことに対応するために修行してきた少女達だよ」
「あ、アヴァルシスにはそのような集団がいたのですか……ゴルビスがエンデラに、魔晶石を供給しないという選択肢を取れた理由はそういうことでしたか……もう不死族の対策は出来ていたと……」
「ゴルビスは関係ないかな」
千景とローブの男が、そんな話をしていると、腹の底までズンとくる角笛の音が鳴り響いた。そちらの方に目をやると、漆黒のヴァンプドラゴンが、空中で隊列を組んでこちらの方に向かってきている。
「あれは……」
再度、地面を揺るがすような角笛が鳴る。その音が合図となって、ヴァンプドラゴン達の咆哮がこだまする。次の瞬間、その口から一斉に黒い炎が吐き出された。それを見た宙音が道術『青龍水克の陣』を敷いた。丸く敷かれた陣の周りを這うように青龍が昇り炎を打ち消していく。
宙音は、水音とハイタッチして後ろに下がり、前に出た水音は『地奏武具』を越えた最上位武具『天華七武具』の一つ『天詔琴の奏弦』を取り出した。それを空中に投げると、長い針金のように伸びる琴の弦の先端が、波打ちながら、ヴァンプドラゴンの群れに突っ込んでいく。
水音は、光華巫女術『陽炎禊祓の舞』を舞踊り、さっきの炎のお返しとばかりに浄化の炎を、琴の弦に伝えて、ヴァンプドラゴンの群れの目の前で炸裂させた。その一連の動きの速さに、ヴァンプドラゴン達はついていくことが出来ず、水音の放った浄化の炎に焼かれたドラゴン達は、地面に落下していった。
黒い大地と黒い雲は、こちらに向かうのをやめたようで、徐々に後退していった。それをただじっと見ていたローブを被った者達は、何が起こっているのか理解出来ていなかったようで、微動だにしなかったが、水音と宙音が意気揚々とこちらに走って戻ってきて「おやかたあああ、見ましたああ、あれえええ」
「すごかったでしょ、褒めていいんですよ、褒めて」と言ってきたのを見て、全身で喜びを爆発させた。
「あ、あんなの見たことないです! 黒い大地が後退していくなんて! これは人類の進歩だ!」
「お、追い返した……嘘みたいだ……」
「黒い大地から来る不浄な冷気が、消えている」
ローブを被った者達は、マスクを取って、それを確かめていた。
「奇跡だ、奇跡だ……こんな日が来るなんて……あなた達は本当に奇跡だ」
「ありがとう、二人をもっと褒めてやってくれ、よくやったぞ、水音、宙音」
「えへへへ、やったね水音ちゃん」
「そうだね、宙音ちゃん」
「本当にすごかったですよ、もう僕はすごいとしか言えません!」
しかし次の瞬間「ちょっと待て、あれはなんだ」一人の男がそう言って指さす方向を見ると、高く険しい山々が見えたが、その一つの山の頂上付近に、大きな帆船のような形の黒い雲があり、それがこちらに向かってきているように見えた。
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