本日は性転ナリ。

ある

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After Story…My Dearest.26

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…ゆらゆらと風に靡くカーテンが差し込む日差しにキラキラと輝いている。
私は、そんな海面のように綺麗な真っ白な布の揺らめきをぼーっと見つめた。
ゆっくりと過ぎる時間の中、窓の外からは小鳥たちの囀りが私のコトを噂しているかのように微かに聞こえている。
そして部屋の外側、廊下の方から時々響く物音や話し声を聞く度に、誰かが私の部屋の扉を開くんじゃないかと思うけど、その音は私の部屋の前をそよ風のように通り過ぎて、次第にまた静かな空間が訪れる。そんな事を何度か繰り返すうちに、またふっと浮かんだレイちゃんの事を思い出し、笑顔を絶やす事の無かったレイちゃんも、きっと寂しかったんだろうな…って思った。
勿論、私の置かれている状況とレイちゃんの置かれていた状況は違うけど、なんとなくレイちゃんの気持ちを知る事が出来た気がして嬉しかったり寂しかったり…
そして、いつになく弱気な自分の目に、また小さな水玉が溜まっていく。
そんな中、静かすぎる室内に私の心はどうかなってしまいそうになって、小さく肺を膨らませると、ふと頭に浮かんだ懐かしい歌を口ずさんだ。

「いま…わたしのー…ねがーいごとがー…」

でも…すぐにそんな自分が切なく感じて、小さな溜息と共に歌うのをやめた。
翼をください…か。
昔は何も考えずにただ歌っていたその曲も、今となってその作者の気持ちが少し分かる気がした。いや、違う。その歌が別の意味を持って私にスッと重なった。
私に翼が、翼のような勇気があったなら、こんなぐちゃぐちゃな気持ちを地上に置き去りにして、遥か遠い空に飛んでいけるのに…
今の私は翼を失った鳥のように、当たり前のように飛んでいた空をただただ見上げて嘆いているだけだ。
もう生えることのない翼が本当に自分に必要なのかも分からないままに。

するとまた、廊下から小さな足音が近づいてくる。だけどその足音は、通り過ぎる事なく私の部屋の前で音を止め、私がカーテン越しに部屋の入り口の方へと視線を向けるのと同時に部屋の扉が開いた。
そして、私の寝ているベッドを囲むカーテンの前へと足音が近づくと『瑠衣ちゃん、起きているかい?』と先生の声がした。
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