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After Story…My Dearest.44
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靴裏のゴムが擦れる規則的な音だけが廊下へと響く。
既にホームルームが始まっている時間ともあって、ピッシリと綺麗に閉じられた各部屋の扉が廊下を孤立した別世界のように感じさせた。
階段を昇り教室の前まで来ると、教室の扉の丸ガラスの前で頭を下げ、見つからないようにそうっと通り過ぎた。
そして私たちは中から見えない位置で壁へと背中をもたれ掛けると、そっと胸を撫で下ろした。
原則として遅刻した生徒は、その"遅れて登校した時間"によって対処方法が異なっている。私たちのようにホームルームの開始時刻に遅れた生徒は、ホームルーム終了まで廊下で待機するのだ。
そして後教室から出てきた担任へと遅刻の理由を告げ、軽い注意を受けた後、教室へ入り通常の学校生活へと戻る。それ以降、休み時間や授業中に登校した場合は職員室で所定の用紙に記入の後、遅刻した理由、時間によって追加の課題等が与えられるのだが、遅刻して課題をやらされるくらいなら"病欠"扱いで一日休んだ方が絶対にお得だと思う。
…なんて言ったら莉結に怒られそうだけど。
つまり私たちは今、怒られる為にこうしてホームルームの終了を待っているわけなのだ。健気だよね、ほんと。
「寝坊して遅刻しましたって言えばいいよね?」
私がそう小声で囁くと莉結は少し眉を潜ませて考える仕草をした。そして何かを閃いたかのように表情がパッと明るくなる。すると莉結は内緒話をするように口元に手を当てると、反対の手で手招きをしてきたのだった。
そこで私が「なに?」と囁くと、莉結は『いいから♪』と言いつつ私へ歩み寄る。
…不意に触れた肩の感触が伝わって、思わず私は顔を伏せた。
その時だった。私の視界に莉結が映り込んだと思うと、次の瞬間、唇に触れる柔らかな"あの感触"、そして鼻に届けられる莉結の安心する匂い。気がつくと私は目を閉じてその幸せな感覚に包まれていた。
私の指は莉結の艶やかな髪に包まれ、莉結の指には私の髪が絡まっていく…
"ガラガラガラ"
突然、私達の世界に響いた"現実の音"に慌てて姿勢を正す。
いつの間にかホームルームが終わり、先生が教室のドアから姿を現したのだ。
これは流石にマズいと思った。
多分大丈夫…きっと大丈夫。そう自分に言い続ける中、先生の視線が私を見つめ続けている事に気付いた。すると先生は私の顔を軽く覗き込むように背中を曲げた。
『キサラギぃ、大丈夫かぁ?』
先生のその言葉に私の口から"えっ?"という言葉が溢れた。
『顔、真っ赤だぞ?熱あるんじゃないのか?』
すると莉結が割って入るように口を開く。
『朝からちょっと熱っぽくて、あんまり無理させないようにゆっくり歩いてきたら遅くなってしまって…すいません』
『そうかぁ、体調悪いなら保健室行けよ』
先生はそう言い残し立ち去って行った。
そして先生の姿が見えなくなるのを確認して私は莉結の裾を掴む。
「何今の?まさか、この為にじゃないよね?!」
まさかではあるけど、もしこの理由付けの為にあんな事したんだったら、私は何だか嫌な気持ちになってしまう。
『そんな訳でないでしょ?何だかドキドキしない?あぁいうの。みんなが一枚の壁を挟んだすぐ側に居るのにさ♪それにしても危なかったね』
私の耳元で莉結が囁いた。
それを聞いた私は、また更に顔の熱が増してしまった気がしたのだった。
既にホームルームが始まっている時間ともあって、ピッシリと綺麗に閉じられた各部屋の扉が廊下を孤立した別世界のように感じさせた。
階段を昇り教室の前まで来ると、教室の扉の丸ガラスの前で頭を下げ、見つからないようにそうっと通り過ぎた。
そして私たちは中から見えない位置で壁へと背中をもたれ掛けると、そっと胸を撫で下ろした。
原則として遅刻した生徒は、その"遅れて登校した時間"によって対処方法が異なっている。私たちのようにホームルームの開始時刻に遅れた生徒は、ホームルーム終了まで廊下で待機するのだ。
そして後教室から出てきた担任へと遅刻の理由を告げ、軽い注意を受けた後、教室へ入り通常の学校生活へと戻る。それ以降、休み時間や授業中に登校した場合は職員室で所定の用紙に記入の後、遅刻した理由、時間によって追加の課題等が与えられるのだが、遅刻して課題をやらされるくらいなら"病欠"扱いで一日休んだ方が絶対にお得だと思う。
…なんて言ったら莉結に怒られそうだけど。
つまり私たちは今、怒られる為にこうしてホームルームの終了を待っているわけなのだ。健気だよね、ほんと。
「寝坊して遅刻しましたって言えばいいよね?」
私がそう小声で囁くと莉結は少し眉を潜ませて考える仕草をした。そして何かを閃いたかのように表情がパッと明るくなる。すると莉結は内緒話をするように口元に手を当てると、反対の手で手招きをしてきたのだった。
そこで私が「なに?」と囁くと、莉結は『いいから♪』と言いつつ私へ歩み寄る。
…不意に触れた肩の感触が伝わって、思わず私は顔を伏せた。
その時だった。私の視界に莉結が映り込んだと思うと、次の瞬間、唇に触れる柔らかな"あの感触"、そして鼻に届けられる莉結の安心する匂い。気がつくと私は目を閉じてその幸せな感覚に包まれていた。
私の指は莉結の艶やかな髪に包まれ、莉結の指には私の髪が絡まっていく…
"ガラガラガラ"
突然、私達の世界に響いた"現実の音"に慌てて姿勢を正す。
いつの間にかホームルームが終わり、先生が教室のドアから姿を現したのだ。
これは流石にマズいと思った。
多分大丈夫…きっと大丈夫。そう自分に言い続ける中、先生の視線が私を見つめ続けている事に気付いた。すると先生は私の顔を軽く覗き込むように背中を曲げた。
『キサラギぃ、大丈夫かぁ?』
先生のその言葉に私の口から"えっ?"という言葉が溢れた。
『顔、真っ赤だぞ?熱あるんじゃないのか?』
すると莉結が割って入るように口を開く。
『朝からちょっと熱っぽくて、あんまり無理させないようにゆっくり歩いてきたら遅くなってしまって…すいません』
『そうかぁ、体調悪いなら保健室行けよ』
先生はそう言い残し立ち去って行った。
そして先生の姿が見えなくなるのを確認して私は莉結の裾を掴む。
「何今の?まさか、この為にじゃないよね?!」
まさかではあるけど、もしこの理由付けの為にあんな事したんだったら、私は何だか嫌な気持ちになってしまう。
『そんな訳でないでしょ?何だかドキドキしない?あぁいうの。みんなが一枚の壁を挟んだすぐ側に居るのにさ♪それにしても危なかったね』
私の耳元で莉結が囁いた。
それを聞いた私は、また更に顔の熱が増してしまった気がしたのだった。
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