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Prologue
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――男の子緊急大募集のお店で働く
――初心者大歓迎♪ ソフトサービスで高収入☆ エステ&マッサージ
――お兄ちゃんの大好きなキミに!
誌面に踊る文字から目を離し、彼はため息を吐いた。
「あ~あ」
ばさりと、それを机の上に放り出す。
それは、10pほどのブックレット。
表紙には『Weekly Willy Work』とある。
さらに見れば「男の子のための高収入求人マガジン」、「FREE PAPER \0」などといった文字も躍っていた。
求人情報サイト「高収入求人情報Willy Work」が発行、街角で配布されているフリーペーパーである。
「高収入求人のウィリー」といえば、派手な広告宣伝で有名だ。
そう、CMソングを大音量で流す、「ウィリートラック」と呼ばれる宣伝カー。
W・I・L・L・Y ウィリー!
W・I・L・L・Y ウィリー!
ウィーリー ウィリー ウィーリー 求人!
ウィーリー ウィリー 高収入!
――というアレだ。
ちなみにこの「willy」というのは幼児語で「おちんちん」の意味。
それで、少年を対象にした求人誌ということは、その業種は――え~と、まあ、大体お察しの通り。
しかしでは、この少年は今、「そういう仕事」を探しているのかとなると、そういうわけではなく――。
――ぴきゅん!
デスクのPCに、チャットにメッセージありとの通知が表示された。
【吉野さくら】
ちょっとアンタ、どこに取材に行くか、決めたんでしょうね!?
相手の質問に、彼はレスする。
【富士進一郎】
いえ、それがまだ
【吉野さくら】
あぁ!?
相変わらずポンコツね!!
いつまで待たせる気!?
(#゚Д゚(#゚Д゚(#゚Д゚【ゴルアァァッ!!!!】゚Д゚#)゚Д゚#)゚Д゚#)
派手な顔文字と共に送られてきたメッセージに、彼はうんざりといった感じで返した。
【富士進一郎】
そうは言うけど、こういうのって向いてないですよ
ぼく、ホントは科学ジャーナリストになりたかったのに・・・
【吉野さくら】
そんなこと聞いてないわよ!
明日までに原稿が上がらなきゃ、『WWW』が落ちるのよ!!
【富士進一郎】
落ちる?
【吉野さくら】
分かってないわけ!?
あんた、ホントにバカポンね!!
一分以内に決めて、五分以内に現場に行きなさい!
【富士進一郎】
そんなムチャな・・・
【吉野さくら】
ムチャでも何でもいいわ!
原稿落としたらアンタの家に最大音量で歌を流しながら、ウィリートラックで突っ込むわよ!
いい? 突っ込むってのは比喩表現じゃなくて昭和30年代の神風トラックのそれみたいに家の壁ぶち破ってやるわよ!!!!!!!!!!!!!!
【富士進一郎】
了解しました
何とか間にあわせます
――それだけ書いて、彼はチャットからログアウトした。
「さて、と」
観念したように一度放り出したブックレットを再度手に取り、ページをめくり出す。
彼――富士進一郎は14歳。
中学生として通学する傍ら、少年記者として働いてもいる。
顔の1/3を隠してしまうような丸メガネに襟足をきれいにカットしたおかっぱ頭という、中二にしては幼い印象の顔立ちに、まだ第二次性徴を迎えていないかのような小柄な痩せた肢体。
そんな身体を、自宅だというのにブレザーにネクタイ、フォーマルな半ズボンに白いハイソックスという、ちょっと「少年探偵」風のコスチュームに包んでいる。
文科省の全国学力テストでベスト10に入ったこともある天才的な頭脳を持ちながら、性格的には幼く、勉強以外のことに欠けては全くの無知で、ついたあだ名が「天才バカポン」。
天才で、バカで、ポンコツ。
といっても最近は「天才」が取れて単に「バカポン」呼ばわりが多い。
本来はジャーナリスト志望のはずが、そんな性格が災いしたせいか、気づいたらこんなフリーペーパーの記者をする羽目に……というのがここに至るまでの経緯。
吉野さくらは『Weekly Willy Work』、略して『WWW』の編集長で、つまりは彼の上司。彼のあだ名の名づけ親であり、彼の性格を周知して、上手く利用している面も。
まあ、しかし、ひとまずそれは置くとして……。
「ん? ぷれ……せみねーしょん……えいじ……???」
ブックレットを眺めていて、ふと進一郎はつぶやいた。
そう、誌面には「Pre Semination Age特集」の文字があった。
「……ていうと、つまり“射精”以前の……?」
進一郎は言い淀む。
そう、【semination】というのは、まあ、語義は多義に渡るが、一つには「射精」の英語。
つまりプレセミネーションエイジというのは――。
「よし」
進一郎は立ち上がる。
何にせよ仕事はしなければならない。
なら、「そういうこと」をしない店の方がまだマシだろう、という判断だ。
しかし、さて、その「Pre Semination Age特集」を見てみれば、紹介されている店は三つ。
――仔犬カフェ「1.1.C.C.」
――アイドルのいる喫茶店「SX」
――コスプレカフェ「C.C.C.」
この中から一つ選んで、店に取材に行かなければならない。
さて、では上の三軒の内、どこへ行くか……。
1.仔犬カフェ「1.1.C.C.」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804917)へ
2.アイドルのいる喫茶店「SX」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804955)へ
3.コスプレカフェ「C.C.C.」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804968)へ
――初心者大歓迎♪ ソフトサービスで高収入☆ エステ&マッサージ
――お兄ちゃんの大好きなキミに!
誌面に踊る文字から目を離し、彼はため息を吐いた。
「あ~あ」
ばさりと、それを机の上に放り出す。
それは、10pほどのブックレット。
表紙には『Weekly Willy Work』とある。
さらに見れば「男の子のための高収入求人マガジン」、「FREE PAPER \0」などといった文字も躍っていた。
求人情報サイト「高収入求人情報Willy Work」が発行、街角で配布されているフリーペーパーである。
「高収入求人のウィリー」といえば、派手な広告宣伝で有名だ。
そう、CMソングを大音量で流す、「ウィリートラック」と呼ばれる宣伝カー。
W・I・L・L・Y ウィリー!
W・I・L・L・Y ウィリー!
ウィーリー ウィリー ウィーリー 求人!
ウィーリー ウィリー 高収入!
――というアレだ。
ちなみにこの「willy」というのは幼児語で「おちんちん」の意味。
それで、少年を対象にした求人誌ということは、その業種は――え~と、まあ、大体お察しの通り。
しかしでは、この少年は今、「そういう仕事」を探しているのかとなると、そういうわけではなく――。
――ぴきゅん!
デスクのPCに、チャットにメッセージありとの通知が表示された。
【吉野さくら】
ちょっとアンタ、どこに取材に行くか、決めたんでしょうね!?
相手の質問に、彼はレスする。
【富士進一郎】
いえ、それがまだ
【吉野さくら】
あぁ!?
相変わらずポンコツね!!
いつまで待たせる気!?
(#゚Д゚(#゚Д゚(#゚Д゚【ゴルアァァッ!!!!】゚Д゚#)゚Д゚#)゚Д゚#)
派手な顔文字と共に送られてきたメッセージに、彼はうんざりといった感じで返した。
【富士進一郎】
そうは言うけど、こういうのって向いてないですよ
ぼく、ホントは科学ジャーナリストになりたかったのに・・・
【吉野さくら】
そんなこと聞いてないわよ!
明日までに原稿が上がらなきゃ、『WWW』が落ちるのよ!!
【富士進一郎】
落ちる?
【吉野さくら】
分かってないわけ!?
あんた、ホントにバカポンね!!
一分以内に決めて、五分以内に現場に行きなさい!
【富士進一郎】
そんなムチャな・・・
【吉野さくら】
ムチャでも何でもいいわ!
原稿落としたらアンタの家に最大音量で歌を流しながら、ウィリートラックで突っ込むわよ!
いい? 突っ込むってのは比喩表現じゃなくて昭和30年代の神風トラックのそれみたいに家の壁ぶち破ってやるわよ!!!!!!!!!!!!!!
【富士進一郎】
了解しました
何とか間にあわせます
――それだけ書いて、彼はチャットからログアウトした。
「さて、と」
観念したように一度放り出したブックレットを再度手に取り、ページをめくり出す。
彼――富士進一郎は14歳。
中学生として通学する傍ら、少年記者として働いてもいる。
顔の1/3を隠してしまうような丸メガネに襟足をきれいにカットしたおかっぱ頭という、中二にしては幼い印象の顔立ちに、まだ第二次性徴を迎えていないかのような小柄な痩せた肢体。
そんな身体を、自宅だというのにブレザーにネクタイ、フォーマルな半ズボンに白いハイソックスという、ちょっと「少年探偵」風のコスチュームに包んでいる。
文科省の全国学力テストでベスト10に入ったこともある天才的な頭脳を持ちながら、性格的には幼く、勉強以外のことに欠けては全くの無知で、ついたあだ名が「天才バカポン」。
天才で、バカで、ポンコツ。
といっても最近は「天才」が取れて単に「バカポン」呼ばわりが多い。
本来はジャーナリスト志望のはずが、そんな性格が災いしたせいか、気づいたらこんなフリーペーパーの記者をする羽目に……というのがここに至るまでの経緯。
吉野さくらは『Weekly Willy Work』、略して『WWW』の編集長で、つまりは彼の上司。彼のあだ名の名づけ親であり、彼の性格を周知して、上手く利用している面も。
まあ、しかし、ひとまずそれは置くとして……。
「ん? ぷれ……せみねーしょん……えいじ……???」
ブックレットを眺めていて、ふと進一郎はつぶやいた。
そう、誌面には「Pre Semination Age特集」の文字があった。
「……ていうと、つまり“射精”以前の……?」
進一郎は言い淀む。
そう、【semination】というのは、まあ、語義は多義に渡るが、一つには「射精」の英語。
つまりプレセミネーションエイジというのは――。
「よし」
進一郎は立ち上がる。
何にせよ仕事はしなければならない。
なら、「そういうこと」をしない店の方がまだマシだろう、という判断だ。
しかし、さて、その「Pre Semination Age特集」を見てみれば、紹介されている店は三つ。
――仔犬カフェ「1.1.C.C.」
――アイドルのいる喫茶店「SX」
――コスプレカフェ「C.C.C.」
この中から一つ選んで、店に取材に行かなければならない。
さて、では上の三軒の内、どこへ行くか……。
1.仔犬カフェ「1.1.C.C.」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804917)へ
2.アイドルのいる喫茶店「SX」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804955)へ
3.コスプレカフェ「C.C.C.」→(https://www.alphapolis.co.jp/novel/773569317/693264230/episode/1804968)へ
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