復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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そうしているうちに夕食の時間になった。

「まり。ゆうしょく、たべにいきましょう。」
「はい!」
「るーもいっしょにいく。」

私はマリと部屋を出てルーカスの部屋に向かった。

マリが連絡を入れてくれたのだろう。
ルーカスは用意万端の状態で部屋のソファにちょこんと座っていた。

私が見えるとルーカスはよいしょとソファから降りて1歩1歩とてとて歩いてこちらに来た。

「ねー!」

やだ、どうしましょう。
私のドレスにがぼっと抱きついた、いや、埋もれたルーカスがとても可愛い。

「るー。ごはんをたべましょう。」
「あい!」

かわいい…!
ルーカスの手を引きながらゆっくりゆっくり食堂へ向かう。
よちよち歩きのルーカスはつい2ヶ月前に歩き始めたばかりだ。

食堂の扉を開けてもらうと、お母様とお父様はもう座っていた。
いつもおふたりは忙しいから夜遅くに2人で食事を取っているそうだ。
私とルーカスはまだ幼いので早めに済ませてしまうため、家族4人揃って食べる夕食は久しぶりだった。

「いらっしゃいアリスとルーカス。お腹がすいたでしょう。」
「久しぶりだね、ふたりとも。今日は一緒にご飯を食べれるよ。おいで。」

「はい。おまたせいたしました。おかあさま、おとうさま。」
「うぅ…」

ルーカスは人見知りを発揮している。
お母様はともかくお父様は忙しいからなかなか会えないものね。
でもマリが言っていたわ。
おふたりは私たちが寝た後に毎晩こっそり寝顔を見に来てくださっているそうよ。

「るー、だいじょうぶよ。いっしょにおかあさまのおとなりにいきましょう。」
「う…。あい…。」
こくんと頷くルーカスの可愛いこと!

なんてやり取りをしているとふふ、とかすかな笑い声とともに「な、な、なんてこった…」というお父様の声が聞こえた。

ふと視線をやるとお父様はこの世の終わりかのような表情をうかべお顔を真っ青にしていた。
どうしたのかしら。
もしかして普段の過労がたたってお風邪でも召されたのかしら。

「おとうさま、おかぜなの?おやすみしますか?」
「ふふ、いいえ大丈夫よアリス。」
「そうなのですか?でもまっさおです。」
「ッ!アリス!心配してくれるのかい!」

あれ?途端に顔に血の気が戻ってきました。

「しんぱいです。」
「あああ!ナリア!うちの娘は優しいね!」
「ええそうね。アリス、ルーカス。立ちっぱなしは辛いでしょう。こちらにいらっしゃい?」

「はい。るーいきましょ。」
「あい、ねーたま」

2人でお母様の隣に座る。

お父様はいわゆるお誕生日席というやつだ。
その横にお母様、ルーカス、私と並ぶ。
つまりお父様の隣にはお母様しかいない。

お父様は私たちを少し寂しそうに見つめたあと、羨ましそうにお母様を見た。

「もぅ。仕方がないじゃない。あなたは忙しいのだから…」
「私だって本当は子供たちともっと遊びたいのに…」

お父様がめそめそしている。
優しいけれど少し寂しがり屋なお父様。

ふぅ、仕方がない。
私が横に行ってあげよう。

「おとうさま。わたしおとうさまのおとなりにいきます。」
「来てくれるのかい!」

お父様がぱあっと顔を輝かせたその瞬間

「うぅーー。ねー…。」

ルーカスが私の手をきゅっと掴んだ。

「やっぱりやめます。」

ごめんお父様。

ガーーンと音がつきそうなお父様には申し訳ないけれどルーカスの方が優先だ。
あんな可愛いうるうるの瞳と必死に結んでいる唇を見たらルーカスを取るに決まっている。

ルーカスは私にニコッと笑ってからお母様の方を向き、あーんと食事を貰っている。

少し湿っぽい人が1人いたような気がするけれど
私たちは久しぶりの4人の夕食をたのしんだのだった。










うぅ…
眠たい目をゴシゴシ擦ってうっすら目を開ける。
部屋は暗く、窓から綺麗な満月が部屋を覗く。

「あ…また…」

小さなため息とともに諦めの心が沸き上がる。
体を起こしてふぅと息を着くと、そっとベットから降りた。

初めは全然眠れなくてイライラしていたこの時間も、もう3年も続くと有効活用しようとさえ思えるのだから人間って慣れる生き物なんだなと思う。

枕元に置いてあるカーディガンを羽織り机に向かう。
この時間にしか出来ない事。

机の下にもぐり、お母様に貰った宝箱を開けた。
可愛らしいハートのダイヤの鍵がついた宝箱を開けると、ノートが入っている。

ここには私がこれまで書いた前世の記憶と、それを回避するために考えたアイデアが書かれている。
3歳の手では全く綺麗に書けないのが悔しいけれど、何も無いよりはマシだし、きっとこのまま書き続ければ早く上手になると信じている。

机に座りライトをつける。パラパラノートをめくり、今日もこれから起こるだろうことを確認する。
体が思うように動かせないのなら、頭をうごかすのよ

「でも3さいのころなんてほとんどおぼえてないのよね…」

それもそうよね…
ただ、ひとつだけすごく覚えているのは秋祭りのとき。

お城から見えるあかりがあまりにも綺麗で、行きたいと強請った私のためにお父様はお城のお庭で小さなお祭りをしてくれたのよね。

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