復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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子供たちみんなにプレゼントを渡し終えたのはお祭りが始まってから2時間が経ったころだった。

予想以上の時間がかかってカーラには申し訳ないことをしてしまったわ。

私は初めて友達と一緒に何かをしたから、とても楽しくて全く疲れるなんてことは無かったのだけど。

「かーら、たくさんじかんがかかっちゃった。ごめんね。」

「きにしないでください!たのしかったですわ!これでおわりなのですか?」

「ううん、あとひとつあるの」

「そうなのですか?」

そう、今日の目当て、宰相の息子にまだ近付けていないのだ。

どうしても宰相のことが怖い。

あの日を思い出してしまうから。

「でんか、さいごはどなたなのです?」

「さいごは、さいしょうのむすこさん。」

「あっ、しえるさまですね!」

「しってるの?」

「はい!きょうわたしがまいごのおとうさまをさがしているときに、いっしょにさがしてくれたのです。」

「そうなのね。やさしいかたなのね。」

「ええ!やさしいです!」

そっか、息子は優しいのね。

それにしてもカーラ、私と会う前に迷子になっていたのね。

それはお父様も心配するわよね。

私は一応カーラと繋ぐ手にぎゅっと力を入れた。

「でんか、しえるさまとおはなししたいのですか?おはなししにいきましょう!」

「え!」

そう言うとカーラは私を引っ張って宰相とその息子の方に歩いていく。

「か、かーら、こわいの。」

思わずカーラの手を引き、引き止めてしまった。

「でんか、こわいのですか?しえるさまはやさしいですよ?」

「そ、そうだけど。でも…」

「あ、さいしょうかっかがこわいのですか?おおきいですものね!」

「そ、そうなの!おおきいひとはまだこわいの。」

本当は背が高いから怖いわけではないけれど、説明ができないからそういうことにしておく。

するとカーラはふむ、と考えた素振りをして私に言った。

「でしたら、わたしがしえるさまをおつれします!」

「ええっ!そんなことできるの?」

「できます!わたしと、しえるさまはおともだちですから!でんかもおともだちになれます!」

「ほんとう?おねがいしてもいい…?」

「まかせてください!」

私の両手をきゅっと握ったカーラは満面の笑みで私を見た。

カーラは1日で友達になれるのね凄いわ。

私はカーラの心強い笑顔に重く沈んでいた心が軽くなったように感じた。

「ではでんか、しえるさまをつれてきますので、でんかはここでまっていてください!」

そう言うとカーラはシエルの方に向かって走り出した。

彼女の護衛も急いで追いかけていく。

あっ、結局手を離してしまったわね。

ごめんなさい侯爵。カーラがあまりにも頼もしかったから離してしまったわ。

「ねぇマリ」

「はい!殿下どうされましたか!」

「かーらはとてもいいこだね」

「はい!とっても素直であられますね!」

…。私はカーラに任せたままでいいのかしら。

友達になりたいのは私なのに全てカーラに任せてしまうのはダメな気がしてくるわ。

怖いけど、とっても怖いけど…カーラにばかり任せるのはお友達になりたいという私の思いが伝わらないのではないかしら。

カーラもマリもいる今ここで1歩踏み出さないと、私はこれから宰相に会ったらどうすることも出来ないわ。

私も覚悟を決めないと。

すーはー、と深呼吸してマリの手を握りしめた。

「まり、わたしもしえるさまのところにいく。」

「殿下!?大丈夫なのですか?先程怖がっておいででしたが…」

「うん。がんばるの。まりもきてね。」

「それはもうもちろんです!頑張られる殿下、とっても素敵ですよ!」

ありがとう、私は小さく答えてマリの手を握って歩き出した。

怖いけれど、カーラだけを見て、宰相は見ないで歩けば何とか足は前に進んだ。

カーラはいま挨拶をしているみたい。

私も挨拶してシエルと友達にならないと!

早くカーラの隣に行かないとと焦る気持ちとカーラに任せて戻ってしまいたい気持ちがぐるぐる回っている。

どうしよう、もうあと10歩くらいでそばに行けるのに。

もう足が前に出ない…。

カーラ、マリ、やっぱり無理かも。

そんな時、宰相と話して私に背を向けていたカーラが振り返って私を見た。

「あっ!でんか!こちらにいらしたのですか?」

ととと、と走ってカーラは私のそばに来てくれた。

「ごめんなさい、やっぱりわたしがしえるさまとはなさないといけないのに、かーらだけにまかせるのはだめかとおもって。」

「あやまらないでください、でんか!そうなのですね。いっしょにごあいさつにいきますか?」

「ええ、がんばるわ。まり、わたしごあいさつにいってくる。」

「かしこまりました!マリは応援しておりますね!」

うん、と頷きカーラの服をきゅっと掴んだ。

「かーら、ここをつかんでもいい?」

「いいですよ!おててをつなぎますか?」

「いいの?」

「ええ!おててをつないでいきましょう!」

カーラは私の手を取ってニッコリ笑った。

私の緊張も少し解けたみたい。

カーラはやっぱりすごいわ。

「ありがとう。ごあいさつのときはがんばってひとりでするから、おそばにいくまでつないでいてね。」

「はい!いっしょにいきましょうね!」

そうして私たちは宰相の方に歩き出した。
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