26 / 32
は
しおりを挟むマリがクビにならなくて本当に良かった…!
今度からは心配かけないようにじい様にお願いしなくちゃ。
「殿下!今日は両陛下と一緒に寝られるそうですね!お風呂に入っておきましょうか!」
あ、そうだった。
今日はお母様とお父様とねるんだ。
「うん。はいる。」
「では入りましょう!」
お風呂は別の侍女さんが入れてくれる。
マリはこの間に近くの使用人用のお風呂に入る。
ちなみにご飯の時もそう。
だから私たちはできるだけゆっくり入って、侍女侍従のみなさんが急がなくてもいいようにするの。
のーんびりのーんびり、お風呂に入ったあと保湿とマッサージまでしてもらってだいたい1時間。
用意が出来たらベルを鳴らすとマリが来てくれる。
「殿下!では王妃陛下の寝室に向かいましょう!」
マリとポテポテ歩いていくとお母様がこちらに向かって歩いてきてくれた。
「アリス、いらっしゃい。今日はたくさん抱っこさせてほしいの。いいかしら?」
「はい。」
お母様はわたしをそっと抱き上げた。
「さあ、マリ、今日は疲れたでしょう?
もうおやすみなさいな。
アリスは私が連れていくわ。」
「陛下…ありがとうございます。
では殿下、おやすみなさいませ!」
マリは使用人用の棟にむかっていった。
「さあ、アリス。今日は私が寝かしつけてあげますね。」
ふんふん言いながらお母様はお部屋にむかう。
ガチャリ、と扉を開けてお母様はソファに座った。
私はお母様のお膝の上だ。
「今日は人生で1番ヒヤッとしたわ。
私も小さい頃はよくやんちゃをしたけれど、親ってこんな気持ちになるものなのね。」
「おかあさま…。ごめんなさい。」
「いえいえ、今回はアシム陛下から呼び出されたのよね?仕方がないわ。」
「はい。
…おかあさまも、やんちゃした?」
「ふふふ。お母様はものすっごいお転婆だったわぁ~。」
な、なんですって!
「あら、気になるかしら?
じゃあ私のお転婆だった頃のお話をしましょうか。
そうねぇ、私が8歳の頃だったかしら。
その時に開かれた王宮のパーティーであなたのお父様に出会ったのよ。」
「お父様に!」
「ええ、我が国は大人しい子なら何歳でもパーティーに参加できるでしょ?
でも幼い頃はほんとうにお転婆で、なかなかパーティーに参加できなかったのよ。
でもそのまま8歳まで来てしまって…大抵の子は4,5歳である程度大人しくしていられるじゃない?
これ以上パーティーに参加しないのは変な噂が広まる!と思ったお父様に、大人しくしているようキツく言われて王宮に連れてこられたの。
あなたはここしか知らないから分からないかもしれないけれど、初めて見た王宮は、物語のお城みたいでほんとうに大きくてキラキラして見えたわ。
その日のパーティーは夕方に開かれて、最後は22時頃終わりだったかしら。
大人達は1回はダンスをすべきだとされていたから、お父様とお母様は私を壁際に残してダンスに行ったわ。
絶対にその場から動かないように、
話しかけられたら自己紹介だけして、お父様とお母様は踊っていると伝えなさい、そうしたらダンスの話をしてくださるから!
と色々なことを早口に告げて、最後にもう一度、
ほんとうに動かないで!
と言って踊りに行ったのよね。
何度も何度も2人してこちらを振り返って。
もう、そんなに言わなくてももう8歳なのに。わかるわよ。
とか思っていたわ~。
でもあなたも知っての通り、ダンスが中央でされているということは、サイドにはお菓子や軽食が並んでいるのよ。
私はその時、パーティードレスを着ないといけないから、お昼ご飯を早めに済ませてしまってとてもお腹がすいていたの。
どうしても何か食べたくなった私は、動かないでっていうのは他の場所に行かないでという意味よね!と都合よく解釈して食事のあるテーブルを物色し始めたわ。
給仕を捕まえて軽食を軽食と思えないほどお皿に乗せてサーブしてもらったの。
やっと食べられるわ!と喜んだところにやってきたのがあなたのお父様よ。
『お腹がすいてるの?』
なんて後ろから声をかけてきて。
空いてるから食べようとしてるに決まってるじゃない
って思った頃には遅かったわ。
まん丸に目を開いた彼が目に入ったの。
どうやら口に出してしまっていたみたいね。
もう手遅れだと悟った私は取ってつけたようにごめんなさい、とだけ言って食事にフォークを刺したわ。
『いや、当たり前のことを言ってしまった僕が悪かったね。
お詫びに美味しい料理を紹介するよ。』
と苦笑しながら彼は言って給仕を呼んで料理を渡してくれたわ。
まあ、なんて気が利くのかしら、と思ったことを覚えているわ…。
でも自分ばかり食べるのも申し訳なく感じて来た私は一緒に食べましょうと彼を誘ったのよ。」
0
あなたにおすすめの小説
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜
雪水砂糖
ファンタジー
穢れから産まれる異形の化け物――禍憑(まがつき)と戦うべく存在する神守の家の娘、瑞葉は、従姉妹・花蓮の策略によって、何よりも大事な弟の光矢と共に命を奪われる。
弟の最期を目にした瑞葉の慟哭が暴走した神気を呼び起こす――そして目覚めた時、彼女は過去へ戻っていた。
二度目の人生は、弟と自らの命を守るための戦いであると同時に、これまでの狭い世界を抜け出し、多くを学び、家族との絆を取り戻し、己の望む道を切り拓くための戦いでもあった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
舞台は、日本風の架空の世界です。
《数少ない読者の方へ》
読んでくださりありがとうございます。
少ないながらもポイントが毎日増えているのが励みです。イイネを押してくださると飛び上がるほど喜びます。
タイトル変更しました。
元タイトル「神守の少女、二度目の人生で復讐を誓う」
書き進めているうちに、瑞葉が復習だけにとらわれるのではなく、二度目の人生とどう向き合っていくかが主題となりました。
たまに読み返して、名前や家格、辻褄が合わなくなった箇所をしれっと変えることがあります。作品を良くするため、何卒ご理解ください。
役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました
☆ほしい
ファンタジー
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。
しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。
誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。
「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」
ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。
本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる